BMW 525i M‐sport (2004/12/5)


 

※この試乗記は2004年 12月現在の内容です。
従って、文中の車種や価格は現在と多少異なる場合があります。


M5にソックリで、とに角カッコが良い。カラーは白(アルビンホワイト)で、これがまた良く似合う。

エアロパーツとワイドホイールという外観から、如何考えても清く正しい市民の乗り物には見えない。

試乗車は525i M-Sportパッケージで価格は645万円(消費税含む)で、さらにオプションのバイキセノンランプとサンルーフ等を装着されていたため、車両価格で671万円、総額なら7百数十万となる。

外観は最近発表されたF1ベースのV10エンジンを搭載したM5にソックリで、とに角カッコが良い。従来までのM-Sportは本物のMに似てはいるが、よく見ると違うというのがパターンだった。例えば3シリーズならば、良く見るとフェンダーのラインが異なっていたり、ホイールのデザインもスポークの数が異なっていた。ところが、今回の場合はエアロパーツのデザインも瓜二つで、ホイールもサイズは異なるものの、デザインは殆ど同じだ。ちょっと見て違いを判別するのは、サイドミラーか、後ろに回って排気管が片側2本か、左右各2本の4本出しかくらいだろう。オマケに試乗車のカラーは白(アルビンホワイト)で、これがまた良く似合う。
とは言っても、このアグレッシブなマスクにエアロパーツとワイドホイールという外観から、如何考えても清く正しい市民の乗り物には見えない。ハッキリ言って、マル暴関係の雰囲気ムンムンだが・・・・。

乗り込んでシートに座りドアを閉めると、重量感あるドアの動きと、閉まったときの音などそのフィーリングの良さは、未だに国産車では真似の出来ない世界のようだ。
M-Sportのシートは座面がクロスで、サイドは従来のアルカンターラ(人工裏皮)から、今回は本皮となった。座り心地はハイラインパッケージに比べて座面が硬く、せり上がった左右のサポートと共に、スポーツセダンの雰囲気ムンムンだ。これに比べるとハイラインのレザーシートは高級なソファ的な感覚に感じられる。とは言っても、ガッチガチサポートのバケットとは違うので、普通のユーザーがこれを選んでも問題はない。

3シリーズとの最大の違いは、リアのスペースだろう。3シリーズのリアシートで長距離を移動する気にはなれないが、このリアなら誰かに運転を任せても良いかな、なんて気にもなる。4人の大人が乗る機会が多いなら、やはり5シリーズだ。


3シリーズに比べて圧倒的に違うのがリアの居住性だ。

フロントシートはクロスの座面とレザーのサイドサポート。

シートと共に他の5シリーズと異なるのは、アルミにチェックのような模様を刻んだピュア・キューブ・インテリア・トリムと呼ばれるM-spに標準のトリムが目に付く。このタイプは3年前にメルセデスのC200スポーツクーペに乗ったときに初めて見たが、その時は廉価版なんでこんなチャチいトリム付けたのかと思ったら、その後に発表されたSLにも装備されていた。我々日本人の感性からすれば疑問だが、ドイツ人の感覚からすると高級でスポーティなのか?

3年前に7シリーズが発表されたときは、その外観と共にインテリアデザインも何やら変に未来的で、とてもついて行けなかったが、今になってみると5シリーズのインテリアは時代のトレンドになったようだ。その証拠に最近発表されたレジェンドもフーガも、これをパクっている。ただし、流石は本家で1年前に新5シリーズ(E60)が発表されたときには、何だか旧型に比べて内装が安っぽいと思ったが、慣れてしまうと独特の高級感が感じられるから不思議だ。


最近は慣れたのか違和感が無くなったダッシュボード。
ただし、アルミのトリムは日本人の感性にはチョッと?
 

本物のM5との違いは回転計と速度計の目盛。

新5シリーズ(E60)については既に525iと530i(どちらもハイラインパッケージ)に試乗し、さらに530iについては今年の春に3日間のモニターで2日間は通勤主体のウイークディの使い方、残る1日は高速と一般道を織り交ぜた日帰りのドライブと合計500km程走行した。従って、今回のM−spはこれ等との違いがどの程度かを主体に乗ってみた。

半年ぶりに乗った試乗車は初期型に比べて、ATの変速ノイズは殆ど気にならなくなっていたが、走り出した第1印象は意外とトロイと言うか、アクセルレスポンスが悪くパワー不足に感じる。前回の525iは絶対的なトルク感は530iに比べればも少し欲しいが、一般的な使用状況では十分だったし、レスポンスに於いてはむしろ530iを上回っているくらいだった。ところが今回のM−spはスタート直後のレスポンスが明らかに劣る。試乗車が走行600kmの下ろしたてだった事もあるだろうが、それよりも18インチホイールに履く極太タイヤの慣性と走行抵抗の影響も大だろうと想像する。

それでも、例によって踏み込めばエンジンは軽快で気持ちの良い排気音を、3シリーズよりは小さいが一般の国産高級車よりは大きな音で轟かせる。BMWの直6エンジンはそのスムースさやレスポンスで国産車の6気筒車を大きく引き離し独壇場の状態だ。これに慣れたら、ホンダのV6だってスムースさや、その何とも気持ちの良いサウンド比べて見劣りするし、日産のVQエンジンは、ただガサツなだけに感じる。

アクティブステアリングによる極めてクイックな操舵性も、相変わらず他車を大きく引き離す。ただし、初期型に比べて今回の試乗車は操舵力が重めになっていた。太いタイヤが原因か、それともセッティングを変えたのか?何れにしても前回の試乗車に比べてより自然な操舵感で、好みもあるが個人的には好ましく思う。

ハンドリング自体は相変わらずハイレベルで、特に40タイヤを履いた今回の試乗車は、マトモな感覚と腕では限界どころか、その片鱗も見えない。ただし、一つ問題があった。それは1845mmという、その全幅にある。一般的な6m程度の地方道では、チョッとしたコーナーでも対向車線に迫る大型トラックなどを見ると、如何しても減速ぎみになり、コーナーリングを楽しむどころではない。

40タイヤでしかもランフラットと考えれば、如何にも乗り心地が悪そうだが、実はかなり良い。BMWらしくフラットで、路面の突き上げも一瞬で、流石は本家というところだ。これに比べればレジェンドなんて、まだまだ発展途上と言えるし、クラウンアスリートだって、この境地には達していない。最近の日本車は欧州志向で、サスは硬めのセッティングが多いが、その分だけ以前に比べて乗り心地が悪くなる傾向だが、この5シリーズM−spに乗ると見事に両立しているのを目の当たりにして、やはり国産車には未だ越えられない壁があることを思い知らされる。

ブレーキに関しては、現行3シリーズに比べるとストロークが長めで、これは1ヶ月程前に試乗した1シリーズでも同じ傾向だったから、最近のBMWは多少ストロークを長くして、マイルドな味付けに変更したのかもしれない。でも、個人的には現行3シリーズのストロークが短く、ガッチガチ気味のブレーキが好きなのだが・・・。

 
245/40R18タイヤを装着する。ホイールのデザインはM5ソックリ。ただし、M5は19インチ。

ブレーキ系は標準車と同じ。したがってホイール内は風通し抜群!
 

今回の525i M-spパッケージは、スタイル、性能、ステータスなどのどれをとっても中々のもので、クルマに700万円つぎ込んでも良い人には、実にお勧めできる。レジェンドのスッピンより120万円高いが、どう考えてもその差以上の価値があると思える。欲を言えば、もう少し動力性能が欲しいところで、しかし、そうなれば530iとなり、さらに100万円の予算オーバーとなる。

世の中、高価なものは、それだけ良いものという考えは、あながち間違いでは無い。日本での価格はブッタクリだの、アメリカではアリストやフーガと同格だのと言う連中がいるが、実際に乗ってみれば国産のEセグメントなんてマダマダ発展途上だと言うのを再認識されられた今回の試乗だった。