トヨタ クラウンアスリート2.5 (2004/02/02)
 

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今回の試乗車はアスリート2.5、タイヤは全車共通の224/45R18で色はライトブルーマイカというプジョー406クーペをパクったような色で、従来のオヤジクラウンには見えないセンスの良さがある。ベース価格は350万だが、オプションのナビ等がついて約400万となる。  

乗り込んでシートを合わせる。座面側面のスイッチは欧州車と同じ椅子の形をしたスイッチで、何も予備知識がなくても常識で操作できる。しかし、これって特許はもう切れたんだっけ?ドアを閉める時の音は、決して安ッポかったりはしないのだけれど、5シリーズのズンという感じは出ていない。ドア自体は結構重そうだし、シッカリ出来ているのだけれど。キーの差込口は無く、インテリジェントキーを車内に置いてあれば、あとはスタートボタンを押せば自動的にエンジンが始動される・・・・筈なのだが、ウントモ・スントモ言わず。そう、始動時にはブレーキを踏まなければイケナイのだ。ATはPレンジで、パーキングブレーキも掛けて、更にブレーキペダルを踏むというのは、本当に必要なのか?まあ、慣れればどうっていうこともないだろうが。

極めて静かなアイドリングで、このクルマはクラウンなんだと納得する。ATのレバーをジグザクゲートの従ってDレンジに入れる。昔(二十数年前)MBのS123(要するにベンツのワゴン)に乗ったとき、あのジグザクゲートに感動したが、ティプトロ全盛の今ではチョット時代遅れに感じるから不思議だ。いよいよ走り始めると、スロットルのレスポンスも結構自然で、オヤジクラウン丸出しのチョット踏むとガバット飛び出すこともない。従って、低速で飛び出すのが怖くて車庫入れに左足ブレーキを使うこともない。この点、先月乗ったアベンシスも同じだったから、トヨタも車種によってはマトモな味付けをするようになったということか。 あのボディに2.5ℓだから結構トロイかとも思ったが充分な動力性能で、1年前に乗ったロイヤルサルーン3ℓのマイルドハイブリッドより遥かに活気がある。キックダウンの反応も結構速く、これならイライラすることはない。走行400キロ程の新車なので、流石にレッドゾーンまで引っ張る訳にはいかないが、4000回転程度までならスムースに回るし、音もメルセデスのV6より遥かに静かだ。ただし、メルセデスのようにエンジンがチャンと仕事をしているという安心感も、BMWのようにゾクゾクする気持ち良さも無い。が、これは好みの問題もあるので、この静けさが好きな人には良いだろうし、クラウンはクラウンだから、MBやBMWの真似をすることも無いと考えれば、これは正解だ。

と、ここまでは想像したとおりだった。さて、最大の関心事の乗り心地と操舵性はどうか?まず、乗り心地は当然硬い。しかし、アベンシンシスのような不快な硬さではない。ただし、少し気になったのが、ガツンと来た後になにかブルブルッと震えるような感じがすることで、この現象は何度も現れた。ホディの剛性感は決して悪く無いのだけれど、なにかシックリとこない。と言っても、従来のクラウン(特にロイヤル)と比べたらまさに月とスッポンであり、ボディ剛性の面ではかなり気を使って開発されたのだろう。

次にステアリングだが、これも結構シッカリしており、中心付近の遊びも少なく、それでいて特にクルマの運転に秀でた訳ではない普通のオヤジにも危険でない程度のトロさも残っている。良く解釈すれば、メルセデスのEクラス的。いや、相当意識したのだろう。試乗コースは途中から裏道に入った。ここは道幅5m程度でキツいブラインドコーナーが結構あった。ここで、アスリートは意外にも結構なハンドリングと正確なライン取りが出来ることが判った。コーナーでは弱アンダーで安定して回って行くし、決してクイックではないが、クルマは狭い道でも思ったラインを通ることが出来るので、クラウンとしては異例のハイペースで走れる。ただし、コーナーを攻めても決して面白くはない。それでいてスピードメーターは結構な数字を指している。このへんも良く言えばMB的だ。(ちょっと誉めすぎだけど、今までが酷すぎたから)

ここで冷静になって考えるとアスリートは18インチタイヤ履いて足固めてこの安定性を確保したが、Eクラスは16インチタイヤで乗り心地は遥かに良く、それでも同じくらいの安定性を保っている。5シリーズは別世界で、あれと比較するのは無意味と言っておこう。

さて、肝心のブレーキはというと、遊びが大きく、効き初めが判り辛く、踏力を増すとストロークはどんどん増えて行く。ブレーキに関しては国産車の悪い面丸出しで、先月乗って印象の悪かったアベンシスの方がまだマシだった。ここで、納得したのは、クラウンやセルシオ(これも酷かった)のブレーキを標準とすれば、アベンシスは欧州車の良さなんだろう。操舵性などがやっと欧州車に近づきつつあるのに、ブレーキは全然駄目というのはどんなモンだろうか。日本のブレーキ屋はもっと頑張らねば・・・・・

今回の試乗結果は結構満足というものだった。と言っても、ある程度距離を乗った後どうなるのか?3万キロも乗ったらダンパー・スコスコかもしれない等、チョイ乗りでは判断できない点が気にかかる。

2.5ℓでナビなどを付けなければ350万で、価格的には318i(定価はアスリートより高いが上手く交渉すれば近い価格になる)とほぼ同等となる。国産車より更に上級クラスを狙って、その結果が欧州車だったのだが、価格的な面から318iを選んだユーザーは、買ってからこんな筈じゃなかったと後悔し、もう2度と外車は御免だというらしい。こんなユーザーには、アスリートは実に良い選択となるだろうし、そういうユーザーが(1度は)欧州車に逃げて行く歯止めの役目は充分出来るだろう。しかし、Cクラスや3シリーズの適度な大きさと、小さいにも係わらず内容の濃さがインテリジェンスだと考える、悪く言えば鼻持ちならない中産階級をクラウンに向けることは難しいところだろう。高級ホテルに大きさはプレミオ並で400万円のC180と、大きく立派な490万円のアスリート3.0G(ロイヤルでも同じだか)が同じに到着したとして、正面玄関に誘導されてフロントマンがすっ飛んで来て寄って集ってのVIP扱いはC180のほうで、アスリートは駐車場に誘導される。

これは事実で、去年の年末に泊まった伊豆稲取の旅館(伊豆でトップのSクラス、ストックオプションのお陰で宿泊できた)で実際に似たような経験をした。

性能的には下手な欧州車、例えばボルボV70あたりに比べて遥かに上で、クルマに詳しくない人ならば、MBのEクラスと乗り比べても大きな違いが判らないかもしれない。しかし、滅多にないが緊急時の挙動や長年乗ったときのヤレ、ステータスなど、チョット比べただけでは判らない事を知っている、すでに欧州プレミアムブランドのユーザーの大部分はクラウンに戻る事はないだろう。フル装備の3.0Gは「100万安いE240」で所詮プアマンズEクラスなのか?しかし、最大の進歩は今までは比較する事自体がチャンチャラ可笑しく、MBユーザーにしてみれば良い笑い者だったクラウンが、”プアマンズ”とはいえMBと比較できるようになったのは大いなる進歩だろう。

 結論として、アスリートの最大の欠点はトヨタ車であることと、クラウンであることだと思う。

 

補足:3Lロイヤル

アスリートの試乗をした2週間程後、仕事がらみで、3ℓのロイヤルサルーンを運転する機会があった。
まず、足回りと操舵性は、アスリートに比べれば、かなり柔らかい足回りにより、ステアリングの反応はイマイチだが、旧ロイヤルに比べれば比較にならない程安定している。ただし、これに乗ったオヤジ達は、こんな乗り心地の悪いクラウンなんて、クラウンじゃないと言い出すのではないか。

3ℓのトルクは流石で、一般道の加速感ではBMW530iと良いとこ勝負で、MBのE320より明らかに速い。残念ながら、高速を走る機会は無かったが、日本の道路事情では、Eや5との差はそれ程ないだろう。