|
|
![]() |
|
カローラ (アクシオとフィールダー) は今年の4月にいわゆるビッグマイナーチェンにが実施されて後期型となった。後期型のエクステリアはフロントフェイスのみ変更していわゆるフェイスリフト、言い換えればグリルとバンパーというどうせ金型の寿命が来て新規製作が必要な樹脂部品をついでに変更したというところだが、結果的にはコレがカローラ? なんて思うくらいにアグレッシブなイメージとなった。 さてエクステリアのイメージが大いに変化したカローラだが走りの方はどうだろうか? 実はその昔に (と言ってもホンの13年前だが) 新型となった9代目カローラに試乗したらば、そのグニャグニャのステアリング特性に唖然としたものだった。その当時の試乗記のデーターが見つかったことから、ここで復刻してみたので興味のある方は下のリンクにて参照願おう。 しかしその後2005年に同じ9代目の後期モデルに乗ったらば、あっと驚く大幅に改良されていて、まあそれでも大した事は無いとはいえ世間の標準程度には達していた事に驚いた経験がある。 同じような状況では現行アクアも発売直後のモデルの走りは最悪だったが、後期モデルは十分にマトモになっていたという経験があり、この辺は下の2つの試乗記を比べれば判ると思う。 話をカローラに戻すと現行カローラ (11代目) が FMC されたのは2012年で、この時は最初にワゴンのフィールダーの上級モデルである 18S ”Aerotourer" に試乗したが、結果は想像以上に良かった。とは言っても 1.8L の上級モデルだからある面良くて当たり前でもあり、価格もカローラとしては高めの200万円を軽く超えるということもあり、まあそれでも充分に買い得車であるという結論だった。そしてその後に一般的な1.5L のセダン (アクシオ) に試乗したが、これもまあ悪くは無いとはいえ 18S の出来の良さを体験してしまうといくら安いとはいえ更に洗練されたものにならないのだろうか、という期待もあった。その辺の詳細は以下の試乗記を参照願いたい。 Corolla Fielder 18S "Aerotourer" (2012/5)![]() Corolla Axio Luxel (2012/7) ![]() さて、このように出来の良さに感心した Fielder 18S に比べて Axio の方は如何にもカローラ丸出しな部分もあり、しかし18S だって基本的には同じプラットフォームなのだから Axio だってもう少し手を入れれば結構良くなるのではないか? という疑問と、先代カリーラや現行アクアなどで後期型は大きく改良されていた事実を考えれば、カローラ アクシオも今回のMCで大きく改良されているかも知れないと思った訳で、それを試すために今回再度カローラアクシオに試乗することにした。 なお、何時もなら試乗記の前半は車両自体を写真で紹介しているが、これは既に日記で済ませているためにここでは実際の走行のみについてのレポートとし、内外装については9月28日からの日記 早速試乗のためにドライバーズシートに座ると、座り心地は前期型と特に変わらないがシート表皮は前期型の試乗車の方が少しマシだったのは Luxel という ”高級” グレードだったからのようで、そう言えば前期型に試乗した時にインテリアの要所にフェイク丸出しの安っぽさはあるが一応木目調のパネルを使用していたが、今回の試乗車はベースグレードに相当する ”X” だからプラスチック丸出しのモノだ。 以前に比べれば格段の進歩があるとはいえ所詮は国産のしかも安物だからシートの座り心地が良い訳が無いが、まあそれでも大きな不満というものも無い程度には出来ている。早速エンジンを始動するが、最近では余程の低グレードモデルでもなければ軽自動車でさえ当たり前のインテリジェントキーではなく、金属式のキーをステアリングコラム側面のキーホールに差し込んで撚るタイプだ。ただし、このキーにはキーレスエントリーだけは仕込まれていて、解錠や施錠はいちいちボディ側面のキーホールに鍵を挿す事は必要無いだけでも多少は文化的にはなっている。 エンジンが始動して駐車場の枠内から一端バックして出るために、フロアーコンソール上のチャチなレバーをジグザグゲートに従って、何も考えずに ”R” と表示された辺りまで動かし、ブレーキペダルを離したがクリープする気配は無く、更に少しアクセルを踏んでも発進しない。不審に思い正面のメーター内にあるこれまたセコい液晶表示を見れば何と ”N” を表示していた。種明かしをすれば、写真右下のように後退の位置は右側の表示が ”R” の位置よりも少しずれてレバーは上になる、というか要するにゲートと表示がドライバーの視線から見るとずれているのだった。しかしこれは金型で作った樹脂製品だから個体差があるわけもなく、要するに全てがこのようにズレているのだろう。まあインジケータを見れば良いので慣れれば特に問題もないが、行き成り安物路線全開に遭遇してしまった。
走り出した第一印象は「おっ、結構トルクがあるじゃあないか」という感じだが、それは低速域で大人しく加速をした場合で、少しでも強く踏み込むとその割に速度は上がらない事に気付くし、しかも音もある領域を超えると突然不快なノイズと化す。とにかく大人しい運転をすれば間違いないクルマだ。 そう言えば AT セレクターにはDの右にSというモードがあったのでこれを試してみる。レバーを右に引くと正面の液晶インジケーターも当然DからSに変わり (写真右下) 、これ以後はエンジンの回転は‥‥回転計が無いので正確には判らないが、Sに入れた直後にエンジン音がヴォーという音に変わって、この音から巡航時でも2,000〜3,000rpm くらいは回っている感じだ。その甲斐もあってこの状態での巡航時はスロットルレスポンスは結構良いが、常にエンジン音が耳に付くことから常用する気にはなれない。それでもこういうモードが付いていることが驚きで、このクルマの性格には全く合っていないがあっても邪魔にはならない。 またSレンジとはいえエンジンの出力が変わるわけではないので、フルスロットル時はDレンジと変わらない。言い換えればDレンジは巡航時は低回転域を使うのでレスポンスは悪いし、ここからスロットルを踏み込むと少し遅れてモア〜っと回転が上がるが一度上がってしまえばそこからはSレンジと変わらない加速、というかどちらも一生懸命踏んでも速度は上がっていかないのは同じとなる。
結局動力性能については前期型と特に違いは無かったが、まあ 1.5L の実用エンジンだからこれ以上パワーアップを求めて改良する意味も無いわけだが、それではもう一つの興味である旋回性能等はどうだろうか。前期型ではこの部分が 18Sと比べて大いに差が付いていたが、もしかするとMCで大幅に改良なんて事も多少は期待している。 先ず走行中に感じるのは乗り心地の良さで、それでいてフワフワしたりせずにシッカリとフラットな走行は安物の代表車みたいなクルマとしては立派なもので、これは前期型より優っているような気がする。ところが、ひとたび荒れた路面に差し掛かると今までのフラット感とは打って変わって、ガツンという不快な突き上げを感じるしこの状態では大した剛性でもないボディーの振動も現れる。また、滑り止めのためにザラザラしたような舗装路ではザーっというタイヤノイズと細かい振動がステアリングホイールに伝わってくるが、BMW のような路面のインフォメーションというようなレベルの高いものではなく、単にビリビリと不快な振動が手に伝わるだけだ。 中心付近のステアリングの不感帯は決して大きくは無いし、反応も適度で実用車としてはかなり出来が良い部類だが、結構軽い操舵力や弱いセンタリングとともに何となく心もとないが、まあそれは許して進ぜよう (と上から目線で言ってみる) 。 そしていよいよ最も興味のある旋回性能だが、先ずは一般道で特にキツくもないが緩くもないコーナーでは入り口でスロットルを離して軽く減速した後に特にトルクを掛けずに回れば殆どアンダーステアは感じられない。それではもっと厳しいコーナーはということで、今度は高速道路と平行に走る一般国道を使ってみた。このような道路は殆どが高速道路と並行に走るために直線が多いのだが、インターチェーンジ近くになるとランプウェイを避けるために右に左にキツいコーナーが連続する場所があり、これらは事故多発地点らしい。このような場所で先ずは 60q/hでコーナーに侵入してみると、まあ特に大きな問題もないがイマイチ正確さに欠けるステアリングでは正確な修正が難しく「これ以上はどうかな」という程度で通り抜けた。次に少し速度を上げてみると、少しの違いなのに結構不安なコーナーリングでこの辺が限界かと感じるし、更に速度を上げることは危険が多すぎると判断する状況だ。 実はこの道路は高速道路の両側に、しかも其々が隣り合う本線と同じ向きの一方通行というか、側道から見れば高速道路が巨大な中央分離帯という状況で、それぞれ2車線の道路となっていることもあり、夜などは80q/h程度で巡航しているクルマが多い。ということは、この道の特性を知らずにそのままの速度で上記のコーナーに進入すると曲がり切れずに道路を逸脱するなど、いわゆる ”刺さった” という状態で、もっと解りやすく言えば事故だ。しかも速度が結構出ているから、成る程これは重大 (死亡) 事故に繋がるわけだ。 ![]() 今回は多少時間の余裕があったので高速道路も走ってみたが、生憎当日は何故か混んでいて、例によって3つの車線が全て80q/h 程度で流れているという状況だった。このために100q/h は一瞬という程度しか試せながったが、勿論この程度の速度では特に問題はない。そして、混雑のために流れに沿っての80q/h 巡航はといえば、これは結構静かだし安定も良いし、ブレーキだって不安なく減速出来る。 今の日本でファミリーカーといえばミニバンであり SUV であり、セダンは勿論のことセダンベースのステーションワゴンでさえマイナーな存在となってしまった今日この頃。しかも、グローバル基準のワイドボディ化が進んだことで5ナンバーサイズもまた極めて稀な存在となっているから、5ナンバーのセダンであるカローラ アクシオは今や絶滅危惧種とさえ言える存在だが、それにもメゲずに生産を続けているのは流石にトヨタの資本力ということだろう。 今回はその絶滅寸前の、しかもベースグレードであるアクシオ 15X に試乗した訳だが、普通にのんびりと走るには実にピッタリのクルマだから、既ににリタイヤしている団塊世代やこれからリタイヤする世代も、老後に偶には必要な一家に一台としてアクシオを選ぶのは正解だ。ただし見えや高性能とは無縁だし、高級な内装などの自己満足感も満たされないから、老後とは言えある程度の満足感は捨てたくない、という場合にはメルセデスベンツ Cクラス、それもベーシックなC180 か精々 C200 なんていうのが最高だが、これは誰でもとはいかない訳で、しかも老後と成れば今更見栄も欲も無いから多くの場合はやっぱりアクシオで十分という結果ともなる。 なんて書いてはみたが、アクシオだって新車で買えば乗り出し価格は200万円に迫るだろうから、老後に200万何て冗談じゃない、というのが現状かもしれない。何しろ頼みの綱の年金はとっくに事実上破綻しているし、そのなけなしの資産すらハイリスクのギャンブルみたいな投資をして既に何兆円も減らしている今日此の頃。おっと、この手の話はどこかの特別編でやることにしよう。 注記:この試乗記は2015年9月現在の内容です。 |