トヨタ ハリアー 240G
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最近、本編の試乗記ではSUV特集を続けているが、取り上げる車種はBMW X5、ポルシェカイエンS、挙句の果てにはAMG G55など、価格的にも安くて700万円代、G55に至っては1650万円という非現実的な価格で、車好きに話の種を提供するという面では大いに意義があると思う のだが、それよりももっと現実的な車種を対象にして欲しいという要望に、まずは第1弾としてハリアー240Gを取り上げることにする。
ハリアーについては既に2006年2月にハイブリッド(Hyb)に試乗して、 結果は思いの他、好印象だった。しかし、Hybの車両価格が約410〜460万円であることを考えれば、まあ良くて当然。この価格は、ベースグレード ならばBMW3シリーズが買えるのだから、求める物が違うとはいえ、かなりの満足感があって当たり前でもある。そこで、今回はベースグレードの240G(2WD)、ただし少し豪華な装備を付けた”Lパッケージ”で価格は280万円と いう車両を取り上げることにする。

ハリアーの外観は、もう街でお馴染みだから今更いうまでもないだろう。早速ドアを開けて乗り込む と、適度に高い視線は当然ながら乗用車とは違うから、初めてこの手のクルマに乗るドライバーは一瞬の戸惑いを感じるかもしれないが、すぐになれるのも事実。シートは一時代前に比べれば格段に進歩をしているが、 残念ながら今回のチョイ乗りでは、長距離のドライブでも疲れないかは判らない。試乗車の内装は黒で随所にウッドパネルが貼られていて、なかなかの高級感 をかもし出している。この辺はトヨタの独壇場でもある。それでは、価格が2倍以上もするBMW X−5と比べても決して見劣りがしないか?と聞かれれば、いくらBMWが割高だといっても、700万円は伊達じゃあない。まあ、これ以上は触れないが、興味のある方は自ら比較していただきたい。

エンジンを始動すると、殆ど振動を感じない典型的なトヨタの上級セダンに比べると、多少の振動は感じる。 4気筒としては排気量が大きめであることが最大の原因だろうが、決して不快に感じる程でもない。

最初に発進した瞬間はちょっとスロットルを踏んだだけでグイグイと走り出す。とても2.4ℓとは思えない程だが、それ以上踏んでもたいしたことはないのは、何時ものトヨタ流だ。しかし、それが実に上手くチューニングされているから、一般道を普通に走るドライバーには、動力性能は十分で何の不満も 感じないだろう 。ただし、スロットルペダルを一気に踏み込むと、時代遅れの4速ATはステップも大きいからシフトダウンもスムースではないし、何よりエンジン自体のトルクも大したことはないので、加速も遅い。と、いっても我慢できない程には遅くないところが、また万人向きでもある。

ステアリングは適度の重さで自然なフィーリングだ。 以前乗ったハイブリッドとは同じハリアーといってもフィーリングは異なる。こちらは軽量なFFということで、操舵感も軽快だ。途中、少しきつ目のブラインドコーナーを抜けてみたが、その時の挙動は驚くほどニュートラルだった。これは今まで乗ったトヨタ車 の中ではトップレベルであることは間違いない。なぜ、これ程までにニュートラルな旋回特性なのかを考えてみたが、恐らく車両の形態からくる重量バランスが非常に良好なのではないか 。言い換えれば前後の重量配分がFFとしては等分に近いのではないかと想像する 。乗り心地も驚くほどに良い。一般道での凸凹程度なら簡単に吸収するし、その時のボディの振動も剛性感があり、低剛性ボディを柔らかいサスと緩いダンパーで誤魔化す、世間で言うトヨタ的な乗り心地とは一線を画している。

最近は軒並み5ナンバーサイズをオーバーしている国産車のなかでも、ハリアーのような米国を主な市場とする車の常で、1845mmと一昔前のセルシオ並の全幅となっている。しかし、意外と取り回しは良いし、車幅の感覚も採りやすい。ただし、左後方の視界は良くないので、交差点の左折時には横断歩道を直進してくる自転車などは認識しづらい。また、左側のボンネット先端ある、例のキノコのようなサイドアンダーミラーも、一体何の役に立つのかと疑問に思える程度の効果しかないのは、この手のSUVに共通している。

ハリアーHybの試乗結果が良かったのは偶然でも何でもなかったようだ。 ハリアーというクルマはトヨタのラインナップでも出来の良さではトップクラスに間違いは無い。総額300万円程度のSUVを探しているユーザーには実にお勧めできる。ただし、マークXと比べれば、あちらはV6だし、セダンだから車高も低くて安定性 も良いから、性能のみでは有利となる。まあ、これは他社でも同じで、同じ価格帯ならSUVは当然ながら性能的には不利になる。カイエンターボだって性能 ではカレラに敵わないし、X−5よりも5シリーズ等・等。

ところで、このハリアーは来年当たりにフルモデルチェンジされるだろう。ところが、噂によればトヨタブランドは今回で終わり。次期モデルからはレクサスRXとなるようだ。と、すれば、次期モデルに4気筒 の設定は無いだろうし、現在350万円のV6モデルもレクサスとなれば間違いなく500万円超となる。現在のハリアーはモデル末期とはいえ、内容的には十分に満足できるから、ハリアーを欲しいユーザーは今が買い時かもしれない。アルテッツアもアリストも、そしてセルシオも、単なる正常進化のモデルチェンジにも関わらず、レクサスの一員になった瞬間に100〜200万円の値上げが行われた。そんな事なら、トヨタ時代に買っておけばよかった、なんて後悔しているユーザーは結構多いようだ。

注記:この試乗記は2007年8月現在の内容です。