レクサス LS460 (2006/9/26) 【前編】


BMW 740i

 
LEXUS GS450h

 

 

 

    
    新型LSの外観は、一言で言えば大きなカムリのようであり、また大きなクラウンでもある。
    最近のトヨタ車の典型なのだけれど何やら無国籍な雰囲気がする。レクサスのアイデンティティ
    というものは全く存在しない。

昨年の新規開業の時には押すな押すなの大騒ぎで、マスコミも大々的に取り上げたレスサスというニューブランドも、半年経つと開業時に絶賛したマスコミもアッという間に批判的になり、レクサスは失敗だったと言い出した。そして、開業から1年遅れでやっと登場したレクサスの真打 であり本命にして最上級車種でもあるLSが遂に発売された。

B_Otaku の試乗記では昨年のレクサス開店直後にGS350/430を、1ヶ月遅れで発売されたISについても早い時期でIS250と350を取り上げてきた。 さらに話題のハイブリッド車GS450hも取り上げたので、トヨタブランド当時のソアラと事実上変わらないSCを除いてはレクサス車の一通りの試乗は実施したことになる。実は何を隠そうB_Otaku の試乗記でアクセスカウントがトップなのがIS250/350で2番はGS350/430となっている。 何故なのかといえば、例の巨大掲示板から度々リンクを張られているからで、レスサスは欧米ではベンツ・ビーエム以上のクルマなのに、日本の見栄っ張りな外車オーナーはレスサスを買わずに欧州車を買うという例のパターンに対して、それを否定するのに使われているようだ。 勿論、誹謗中傷もあるのは当然の成り行きだが、アクセスが増えることは悪いことでもないし、どこから来ようが数の中には常連さんになってくれる人だってい るから、ここはひとつ、必要悪ということで否定するのは止めておこう。

さて、そんな訳で米国でさえISとGSはマイナー車種だなんてバラしてしまった責任を感じて、その後の状況も載せておこう。巨大掲示板では古いデーターを載せているのは作為的だなんて書いている奴がいたが、あの試乗記を発表し たのは2005年の夏だから、その時点で05年の年間販売台数は判るわけが無い。 まあ、そんな事も判らない連中だということだが、とに角2005年の米国販売台数を見てみよう。

ブランド名     2005年販売台数  2006年販売台数
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レクサス       287.9千台   302.9千台
メルセデス      221.4千台   224.3千台
BMW(ミニを除く)  262.0千台   266.2千台
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ややっ!レスサスは前年よりも1万5千台も増えているではないか。対して、メルセデスもBMWも前年とほぼ変わらず。さて、レクサスは何が増えたのか?

車種名        2005年    2004年     2003年
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LEXUS IS      15.8千台    10.0千台    13.6千台
LEXUS ES      67.6千台    75.9千台    65.8千台
INFINITY G     68.7千台    71.2千台     64.7千台
SUBARU LEGACY   87.8千台    89.5千台
MERCEDES BENZ C  60.7千台    69.3千台    66.0千台
BMW 3er       107.0千台   106.5千台   111.9千台
AUDI A4       48.9千台     47.2千台    51.0千台
VOLVO 40series   24.2千台     25.5千台
VOLVO 50series    5.7千台    2.5千台
JAGUAR X-TYPE   10.4千台     21.5千台   
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LEXUS GS     33.4千台    8.2千台    13.3千台
INFINITY M     24.0千台    2.1千台    4.8千台
ACURA RL     17.6千台    8.8千台     6.8千台
MERCEDES BENZ E 50.4千台    59.0千台    55.7千台
BMW 5er       52.7千台     45.6千台    47.0千台
AUDI A6       18.1千台     14.9千台     17.6千台
VOLVO 60series  24.7千台     27.8千台
VOLVO 70series  22.8千台     30.6千台
JAGUAR S-TYPE   8.9千台     11.0千台
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LEXUS LS     26.0千台    32.3千台   23.9千台
INFINITY Q     5.4千台    2.0千台    2.4千台
MERCEDES BENZ S 16.0千台   20.5千台   22.9千台
BMW 7er      18.2千台    16.2千台   20.5千台
AUDI A8      5.4千台    5.9千台    4.1千台
VOLVO 80series  10.2千台    13.4千台
JAGUAR XJ     8.3千台    10.6千台
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こうして見るとレクサスISが多少伸びている事と、GSが前年の4倍近くという大幅な増加をしている。 実はGSは日本ではレクサス店の新規展開に合わせて8月から発売されていたが、米国では05年の初めから既に新型が発売されていた。そこで05年の状況を細かく見てみると。

車種名    2005年1月  2月   3月 ・・・ 9月   10月  11月   12月
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LEXUS IS     453   428   439    468  2,563  4,447  4,518
LEXUS GS     502  3,612  3,209   2,739  2,345  2,619  3,431
LEXUS ES    4,487  4,583  5,706   5,060  4,507  4,637  6,770
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INFINITY G    4,783  5,984  7,228   5,472  4,708  4,986  6,221
INFINITY M      90   225  2,253   2,351  2,231  1,982  2,552
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BMW 3er      7,033  7,181  7,555   8,693  10,719  10,273  10,592
BMW 5er      3,278  3,794  3,947   4,137  4,880  5,185  6,396
MERCEDES BENZ C  3,548  4,020  4,901   5,050  4,625  4,858  9,805
MERCEDES BENZ E  2,725  2,596  3,608   4,544  4,670  3,884  6,334
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レクサスISは新型にモデルチェンジしたと思われる10月から急に販売台数が増えている。新車効果ということもあるだろうが、日本では散々だったISも米国では好評だったことになる。 この販売台数は06年の6月までのデーターを見ても大きく変わらずに数千台/月の売り上げを上げているから、ISの米国での好調は間違いない。と、いっても天下のトヨタがニッサンのインフィニティG35(スカイライン350)に追いついた程度だから大成功とは言えない。 このDセグメントの王者であるBMW3シリーズは相変わらず強いが、以前程の勢いはない。米国でもE90の人気はイマイチなのだろうか。このクラスで意外だったのはレガシィで、国産車の中ではトップどころかBMW3シリーズに迫るほどの売り上げを示している。
以上の事実を検証してみれば、新ISは日本のレクサス開店に合わせて旧アルテッツアより高級化したという事になっているが、実は主戦場である米国でBMW3シリーズの 市場に食い込むべく開発されたのではないかという疑問が湧く。すなわち、日本のCクラスや3シリーズのオーナーが見て同等以上だと感心して、 次はレクサスにしようと思わせる事は二の次で、米国人が見て3シリーズより魅力的に見えるようなクルマ創りを目指しているような気がする。レクサスが不振だと攻められて真っ青になっている実担当の関係者を横目に、実は経営陣から見れば、そんな事は既にお見通しなのではないか??

次にEセグメントに目を向ければ、長年の王者であったメルセデスEクラスがBMW5シリーズに追いつかれ、遂に追い抜かれてしまった。日本でも問題になったSBC(電子制御ブレーキシステム)の不具合が致命的だったようだ し、ブレーキの問題以外でもチープになったメルセデスは、このクルマを購入する階層から見れば決して好評とはならないのも理解できる。
そして今回の主人公であるLSが属する高級車のグループであるFセグメントでは、レクサスLSは堂々の1位をキープしている。まあ、実際にはLSは価格的にはEセグメントに近かったから直接販売台数を比較すると状況を見誤る心配はあるが、高級車市場でトップなことは間違いない。 更に今回のLSは上級志向だし、来年早々には追加発売されるハイブリッドのLS600hで、今まで対抗車を持たなかったレクサスがS600や760iをライバルとする商品を揃えた事になるから、これは今後が楽しみだ。 このセグメントでも長年の王者であったメルセデスSクラスが遂にBMW7シリーズに抜かれてしまった。本来7シリーズは如何頑張ってもSクラスの半分程度のシェアしか 持てなかったのだが、ナマズのようだのマツゲが不気味だのiドライブが使い物にならないだのと言われた割には、現行のE65になってからはジワジワとSクラスを追い詰めて行き、遂に逆転した事になる。 メルセデスは一体如何なってしまったのだろう?とはいっても天下のメルセデスだから、このままジリ貧になるとも思えないので、近いうちに挽回策を練ってくるだろうが。


初代セルシオ10型(1989〜1993)
始めて世界で勝負できる国産高級車が発売になった。静かな室内と高品質という面では世界一との評価を得た。高品質ゆえ今でも現役で結構走っているが、多くはDQN車の部類になってしった。写真は横断歩道の前に駐車中のフルスモーク車で、オマケに斜めに止まっている。


2代目セルシオ20型(1994〜2000)
正常進化だが初代程の思い入れは無いように感じる。これでもかと手を掛けていた初代に比べて原価低減を図ったのも事実。この2代目も今や多くはフルスモーク+金バッチの類だ。

1989年に発売された初代セルシオは、それまでライバルが存在しなかった高級車の分野に始めて国産車が挑戦したことでも、大いなる意義があった。 このセルシオは米国で新たに展開された高級車ブランドのレクサスチャンネルにモデル名をLSとして販売され、米国の高所得者層の中でも先進的なタイプのユーザーの間でステータスとなった。 一方国内の高級セダンの分野では、一足先にニッサンがセドリック/グロリアをベースに3ℓターボを搭載したシーマを発売して、大人気となっていた。  

 
3代目セルシオ30型(2001〜2005)
この3代目をもって国内でのトヨタブランド(セルシオ)は終了する。ベースグレードならば600万円を下回る価格は非常に魅力的だった。

 

 

シーマの発売以前はショーファードリブンの公用車的存在のセンチュリー/プレジデントは特殊な用途と言えるので除外すれば、クラウン、セドリック/グロリアは5ナンバーサイズの中で無理に大きく見せるボディと相対的に狭いトレッドで如何にも不安定そう だった。更に2ℓエンジンを積むことから、ターボをつけて頑張っては見たものの所詮は2ℓ車だから、とてもではないが欧州の高級車と比較出来るレベルではなかった。
そんな時代に発表されたセルシオは、クラウンのプラットフォームやコンポーネントを流用するようなことをせずに、専用に設計された正真正銘の高級車だった。 当時のセルシオ人気は凄まじく、納車まで1年は当たり前で、新品同様の中古車はプレミア付きの価格となり、米国から逆輸入されたレクサスLSはメルセデスEクラス並みの値札が付いていたものだった。この初代セルシオの静粛性は群を抜いていて、これを見た欧州のメーカーはその後研究を重ねたことから、今ではSも7も可也静かになっているが、その発端は セルシオ/LSであった事は間違いない。 セルシオのもう一つの脅威は、徹底した高品質の仕上げと共に驚くほどの低価格を実現したことだ。これを見たメルセデスが脅威を感じて、「最善か無か」という徹底した理想主義を捨てて、コストダウンに走ったのはご存知のとおりで、その結果は前項の販売台数の推移で述べたように、100年以上かかって築き上げた信頼を1 5年程で台無しにしてしまった。
セルシオは初代の発売から5年目の1994年に2代目の20型へのモデルチェンジされた。普通、このクラスの欧州車のモデルサイクルは早くても7年程度と長いのが通例で、セルシオ/LSの5年と言うのは相当に短いが、結果的にはキープコンセプトのビッグマイナーチェンジと言っても 良い程度のものでもあった。 このFMCの最大の目的は、あまりにも手を掛けすぎた初代に対して、いわばコストダウンを図ることで、確かに初代の”これでもか”の品質感と比べると少し落ちるようにも感じられたが、だからといって人気が下降することもなかった。
次の30型へのFMCは7年後の2001年に実施され、もちろんコンセプトは大きく変わらず、国産車としては珍しく初代から基本的に同じ系統のデザインを引き継いでいった。 国内でもセルシオの人気は高く、中古車価格も高値を維持しているし、当然下取りも高いから買って損のないクルマともいえる。初代10型の場合は最後期型でも12年程経過しているが、マダマダしゃきッとしているのは、流石に金が掛かっているから耐久性も一般の国産車とは桁違いなことを証明している。ただし、残念なことに旧型のセルシオの多くがフルスモークに金バッヂは当然で、シャコタンにフルエアロ、ハの字になったネガキャンのはみ出しタイヤ等等・・・・ 見るに耐えない所謂DQN車が多いし、その運転マナーもトンでもない奴を結構見かける。

そして今回4代目となるフルモデルチェンジを迎えたわけだが、今回は開業から1年遅れでやっと登場したレクサスの最上級車種であるLSとして販売されることになった訳で、そういう面では今までのモデルチェンジとは 大いに事情が異なる。
 


どこかで見たようなリアの眺め、ハテ、何に似ているのだろう。巷では7シリーズに似ていると噂だが


LSのリアは世間で囁かれている7シリーズ似というよりも、むしろ5シリーズに似ている。いや似ているというよりもソックリに近い。


真正面から見れば、やはりクラウンに似ているし、明らかにトヨタの顔でもある。

 


元々トヨタ車を可也パクッた、ではなく意識したデザインのためにLSともイメージが似ている。
しかし、こうして並べて見れば巷で騒ぐほどに似てはいない・・・・・・と思いたいが。

 

新型LS460はバリエーションとしてベースグレード(770万円)とスポーティーなバージョンS(845万円) 、さらにショーファードリブン前提に後席を充実させたバージョンU(920万円)、それぞれのバージョンにセミアニリンシートやルーフとピラーの内張りを最近は欧州車でも流行のアルカンターラ(人工皮革の裏革)とするなどの高級内装を施したIパッケージが 約50万円程の価格差で用意されている。ベースグレードはシートがファブリックで他はレザーシートが標準となり、バージョンSはサスのセッティングやタイヤ&ホイールサイズ、ブレーキローターサイズが異なる。

セルシオ改め新型LSの外観は、一言でいえば大きなカムリのようであり、また大きなクラウンでもある。正真正銘、最近のトヨタ車の典型なのだけれど何やら無国籍な雰囲気で、隣の国の上級車でもあるグレンジャーにも何となく似ているのが辛い。もっとも隣国のクルマは日本車、とりわけトヨタ車をパクって、オッと失言!お手本にしているから、トヨタ的雰囲気の大型高級セダンとなると似てくるのは納得できる。ライト形状を如何変更しても見た瞬間にそれと判るメルセデスのグリルや、釣り目だろうが未来的だろうがキドニーグリルを見ればBMWと誰もが判るアイデンティティがレクサスには無いのも辛い。 巷ではBMW7シリーズに似ていると囁かれているLSのリアのデザインは実は5シリーズに似ているようで、写真を参照すれば判るように、似ているを通り越して5シリーズにソックリな雰囲気なのには驚いた。そんな訳だから、最初に試乗車を見た瞬間に何の感動もないし、とても800万円クラスのクルマには見えず、場合によってはクラウンどころか大きなマークXのようにさえ感じる。 800万円という高価な値札を付けるのなら周りにオーラを発して、見る者を魅了すると同時にビビらすのが普通だが、LSにそれは無い。


当然ながらトランクの容量は十分にある。4人分のゴルフバックが載らなければ国内での、このクルマの価値はない。


写真はベースグレードのためにファブリックシートが装着されている。 実際は、このグレードを注文するユーザーは殆どいないそうだ。


リアスペースは当然ながら十分なスペースがある。


こちらはバージョンSの後席。ベースグレードに対してレザーシートが装着されるのが大きな違い。


’Iパッケージ’に装着される話題のセミアニリンシート。しかし、チョット見ただけでスゴーいと声 をたてる程ではない。

 


これまた’Iパッケージ’だけのルーフとピラーにアルカンターラの内張り。しかし、標準の布製スエード調と区別が付かない。 そう言えばBMW M5もピラーとルーフの内張りはアルカンターラだか、あちらは見るからに裏革っぽかったのだけれど・・・。

 


後編につづく