BMW G29 Z4 M40i 試乗記特別編 [Z4 M40i vs Porsche 718 Boxter 後編 その1] 特別編へようこそ。 前編でも御注意申し上げたように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。 では実際の走行での比較を行う。ドライバーズシートはどちらも流石に本格的なスポーツカーらしく着座位置はサルーンに比べると圧倒的に低い。ではその中でもどちらが低いかというと、実はどちらも当然ながらシートの座面高さを調整出来るから、その調整によって大きく変わるが、目一杯下げた時はボクスターの方が低い、というか床位置がボクスターの方が明らかに低いのだ。 何故にこのような違いが出るかと言えば、フロントエンジンの Z4 は当然ながら床下に排気管を通す必要があるが、リアにエンジンがあるボクスターはその必要が無い。このためボクスターの床は目一杯地面に近い位置にある。 加えてボクスターは正面に迫るメータークラスターとダッシュボードの位置が高い事から、前面の視界は決して広く無い。ただし救いはポルシェが伝統的に守っている両端のフェンダーの峰が確認出来るというポリシーのお陰で、自車の位置を把握するのには大いなる助けとなる。 Z4も低いという面では当然低いが、ボクスターのように穴から外を覗くような感覚は無く、どちらかと言えばサルーンっぽいが、勿論シートを目一杯下げれば結構視界は悪くなり、如何にも本格的なスポーツカー的な気分は味わえる。 エンジンの始動は Z4 ではコンソール上の丸いスイッチを押すのは最近のBMW (G**) に共通のモノだ。そしてボクスターはといえばポルシェらしく未だにシフトレバーとは逆側のキースッチを捻るという、その昔のルマン式スタート時代の仕来りを守っている。しかも標準は電子式とはいえキーをスロットに挿入するところまで拘っているが、オプションでキーを挿さないでもキーのようなスイッチのモデルもあり、最新の 911(992) では遂に標準化されたようだ。 AT セレクターはどちらもコンソール上にあるが、Z4 は業界に先駆けて電子化されていたが、最近モデルではレバーが小さくなり、ポジション表示も変更されていて、勿論 Z4 もこのタイプを使用している。対するボクスターは既にモデルライフ末期である事から、ポルシェとしは旧世代となるメカ式の直線パターンで、通称ディぷトロタイプが装備されたている。ただしこれも最近の 911(992) では電子式に変更されている。ポルシェの最新モデルと言えばコンソール上のデザインも大幅に変更されていて、ボクスターや先代 911 (991) のズラリ並んだスイッチ類が無くなって妙にシンプルでチャチいものになってしまった。そういう意味では FMC 前であるボクスターは少し前の良き時代のポルシェの雰囲気を未だ持っている。 そしてパーキングブレーキは Z4 では最新の BMW 各車に共通となる電気式でコンソール上のスイッチを使用する。対するボクスターはダッシュボード下端のスイッチを使用するが、これも最新の 992 ではBMWと同様にコンソール上のスイッチに変更されている。言い換えれば、ポルシェも年々普通のクルマとなっていくのだった。 足元のぺダルは BMW では長年の間例え M モデルでさえウレタンパッドのショボいヤツが付いていたが最近は改善され、Z4 もそれらしいスポーツペダルとなった。対するボクスターは先代モデル辺りから何故か全面が白いアルミ艶消しのような材質なった。 では最初は Z4 M40i から走り出す事にしよう。公道に出てハーフスロットルで加速してみると、スペックどおりに中々トルクフルで、デフォルトのノーマルモードでもレスポンスは充分に満足できる。そこで走行モードをスポーツに切り替えて20q/hくらいから 2/3 程度スロットルを踏んだら、一瞬遅れてドッカーンという衝撃で背中がバックレストに押しつけられ、首もヘッドレストに食い込むくらいの加速で飛び出した。 まあ今回試乗したクルマのセッティングが偶々過激な特性を学習していたのかもしれないが、それにしても凄まじい加速力だ。 ではボクスターは如何だろうか?両車は P/W レシオとしてはほぼ等しいが、エンジンの絶対的トルクは 500N-m と、ボクスターの380N-mよりも30%も大きい。それで実際のトルク特性はといえば、これまた低速域から充分にパワフルだ。ここで走行モードをSに切り替えてフルスロットルを踏んでみると、これまた背中を蹴飛ばされたような衝撃を感じるた直後がらクルマは猛然とダッシュをして言った。 ただし Z4 M40i ではアッと言う間に回転計はレッドソーン近くまで振れた、というよりもデジタルなので一瞬ワープしたような多少インチキ臭さもあったが、兎に角高回転域まで一瞬だったが、ボクスターは加速中に4,500rpm 辺りからトルクが落ち込むのを感じる。 ところが、ここでもう一つ感じる事があった。というのは Z4 M40i の方がレッドゾーン近くまで達するのが早いのだが、その割には速度が出ていない。はぁ〜?なんだこりゃ、という気持ちだが、実はギア比をみれば一目瞭然だが、 Z4 M40i の8速という多段の AT は 1速のギア比が異様に低く、2速でボクスターの 1速に近いくらいで、要するにウルトラローがある感じだったのだ。 それに加えて回転計のレッドゾーンは Z4 M40i が6,500rpmだが、ボクスターは更にそこから1,000rpm 回す事が出来る。すなわちボクスターは1速が高くで更に高回転まで使用できるから、フル加速で引っ張った時にどうしても加速が悪く感じるのだった。対する Z4 M40i は低いギアと低い最高回転から、一瞬でレッドソーンまで行くとはいえ、速度自体はボクスターより大分遅いのだった。具体的には下表のように Z4 M40i は最高出力まで回しても1速では42.2q/h だがボクスターでは 61.3q/h まで引っ張る事ができる。 ギア比の話が出たので、Z4 でもスタンダードもでるとなる 20i についても考察すると、試乗時にスペックでは考えられないくらいにトルクフルだったが、そのギア比はローギアードの M40i を更に上回る低さであり、それこそ2速がボクスターの1速と同じ設定になっている。ということは 20i の場合、試乗時のように街中なら驚く程にトクルフルだが、高速道路に持ち出せば結構カッタルいだろう。要するに街中でカッコ良いオープンスポーツという事であり、見かけどおりの性能を求めるには M40i が必要ということだ。 大分長くなったのでこの続きはその2にて。 |