BMW G29 Z4 M40i 試乗記特別編 [Z4 M40i vs Porsche 718 Boxter 後編 その2] 特別編へようこそ。 前編でも御注意申し上げたように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。 ここで正面のメータークラスターを比べてみる。Z4 は最新のフルディスプレイタイプで、これは BMW の新世代モデルに共通のものだ。本来 Z4 は BMW サルーンとは違うメーターを装備したいがた、フル CG によりハードは共通化されていて、表示は多少異なるとはいえ、基本的には変わらないところが特別なモデルに乗っている感に乏しい。 対するボクスターは3連のメカメーターであり、オーソドックスな雰囲気はやっぱり嬉しい。しかし一足先に FMC された 911 (992) はセンターの大径回転計を除くと全てディスプレイ方式となり、これは次期ボクスター 982 でも同様となるだろう。言い換えれば、コンベンショナルなメカメーターが装備されるボクスターとしてはこれが最後となるのは確実という事だ。 メーカー発表の 0-100km/h 加速は Z4 M40i が4.5秒で、718 ボクスターは 4.9秒だが、まあ日本の行動では 5.0秒を切れば充分であり、この0.4秒の差は条件次第では大した違いにはならないだろう。尤もこの数字をマトモに受けて、ヤッパリ Z4 の方が速い、と思うのは勝手だし、兄弟車のスープラは3.9秒と発表されているから、それを信じでヤッパリ国産だよ、と思うのもこれまた勝手だ。 と言う訳で、動力性能についてはどちらも充分過ぎるから、後は個人の好みの問題としておこう。そして話は操舵性とコーナーリングへと進む。 実は Z4 20i に試乗した時に、一般に多少ダル目に設定されている BMW としては異例にクイックでレスポンスの良いステアリング特性に驚いたが、フロントが80kgも重 Z4 M40i では残念ながらそれ程良くは無かった。 そして旋回特性は前述のようにスロットルのオーバーレスポンスが仇となって丁度良い速度をキープ出来ず、また旋回中も下手にアクセルを踏むと不用意なパワーが掛りそうで、結局ある程度の速度を保っての余裕のコーナーリングというのが出来ず、ギクシャクして危なっかしいものとなってしまった。そういう面ではアンダーパワーでフロント重量の軽い Z4 20i の方がコーナーリングマシンとしては楽しめる。 次にボクスターはというと、操舵力は意外に軽いが中心付近のレスポンス自体は BMW と同様で決して良く無い。さりとてトロイ訳では無く、微妙な修正もシッカリと付いてくるが、Z4 と違い如何にもフロントが軽い感じは否めなくて、どっしりと大地を掴んでいる、なんていう雰囲気は無い。ただし、減速による荷重移動を上手く使えば突然シッカリとグリップする訳で、そこはやっぱりボルシェだから、シッカリと走るにはそれなりのテクニックは必要となる。 ここで両車のエンジンを比較してみると、最近では珍しくなった直列6気筒という長〜いエンジンの Z4 M40i に対して、4気筒と短くしかも高さの極端に低い水平対向エンジンのボクスターでは、本来の安定性で大きく差が付くのは当然であり、このクルマを本当に操れるドライバーが乗れば、これは結構な戦闘力を発揮する事になるが、へぼドライバーだと全く価値を見いだせない事になる。 話は逸れるが、兎に角誰がどのように運転してもニュートラルに曲ってしまうという特性を求めるならば、今は亡きランサーエボリューション、通称ランエボが一番だ。正にコーナーリングロボットという感じで、オンザレールでのコーナーリングは反則技と言いたくなるくらいだ。 次はブレーキを比較すると、従来はMモデルでさえ片押しキャリパーを使うと言うブレーキのショボさで有名ったBMW だが、最近は上位モデルには定番のブレンボ製と思しき対向ピストン(オポーズド)キャリパーを使用している例が多くなった。今回の Z4 も M40i にはフロントのみだがオポーズドキャリパーが装着されている。なおリアはあい変わらずチンケな片押しキャリパーだがフロントと同じブルーに塗装して素人を騙している‥‥と言っては言い過ぎか。 ボクスターは勿論前後にオポーズドキャリパーは当然であり、リアにも4ピストンタイプを使用しているが、これは一つにリアの軸銃が重い為にリアブレーキの負荷が大きい事が原因ではある。またローターには穴が開いたドリルドホールタイプを使用しているから見た目は如何にも高性能そうで、この点では Z4 を圧倒している。ただし、この穴開きローターが何のメリットがあるかは判らないが、デメリットは直ぐに亀裂が入る事だ。 では実際のブレーキの効きはと言えば、Z4 では以前のような喰いつくような特性では無く、自然なフィーリングという最近のBMWの傾向に従っている。勿論効き自体は全く問題無い。 ではボクスターはといえば、これも特に以前のボクスターのように多少踏力が重くてストロークが長いものから、極々標準的なフィーリングになっているから、両車の違いに大きな差は無い。 最近のポルシェは911も含めて、以前のようにマルで違うペダルフィーリング何て事は無く、その意味では他のクルマとフィーリング上で大きな違いは無いのだが、リアヘビーによるリアブレーキの踏ん張りというか動的なブレーキ配分が前後差が少ないというメリットは相変わらずで、キャリパーが如何したこうした以上に車両自身の基本設計が重要という事だ。ただしその代償はクルマとしての実用性の無さだが、Z4 だって実用性では似たようなものだ。 本来オポーズドキャリパーを装着していたら、ペダルの遊びを目一杯少なくして、ガッチガチの板踏み的フィーリング、というのが以前の傾向だったが、最近では片押しと大して変わらないモノが多い。となるオポーズドキャリパーもドリルドホイールも、その最大の目的はファンション!という事になるが、勿論否定はしない。何たって、カッコ良いから! さてここまで長々グダグダ比較して来たが、この手の趣味性の高いクルマは結局は個人の好みで選ぶしかない。という事で、お好きな方を‥‥。 それで、お前の好みはどっちなんだ、って? いやまあ、そのう‥‥勿論言うまでもないでしょう。Z4 を一言で表せば天ぷら屋の寿司であり、やっぱり寿司は寿司屋でしょう。 ‥‥おっと、その前に乗り出し800万円以上の資金を確保しないと。
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