Porsche Macan (2017/5) 後編 その1 |
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ドライバーズシートに座るには特に意識する事も無く乗用車感覚で乗り込むことが出来るから、昔のオフロード車のようによじ登る何ていう動作とは全く無縁だ。シートに座ってみるとカイエンに比べてクルマ自体がワンサイズ小さく感じるが、実はスペック上ではカイエンとの全幅の差は僅かに15o しかない。確かに一番広い部分ではそうだのだろうが、ドライバーが感じる室内幅はもっと差があるのだろう。実際にボディーを真後ろから見た写真ではカイエンに比べてマカンはウエストラインから上が絞られているのが判る。 エンジンの始動はポルシェに共通の電子キーをダッシュボード右端のキースロットに差し込んで右に回すという方式で、実はこの電子キーの形状は 911 をモーフとしているという凝りようで、やっぱりポルシェ=911 なのだ。そのキーを右に撚るとエンジンは目覚め、そのアイドリングは「伊達にポルシェの製品ではないぞ」と言わんばかりのスポーティーなエクゾーストノートと振動が感じられる‥‥事は無く、残念ながら殆ど並の乗用車と変わらない。 AT セレクターはコンソール上に配置されているのはカイエンと同じだが、こちらは根本にレザーブーツが掛かっている。そのコンソールはポルシェらしく左右端に各種スイッチが配置されているが、何となく全体的にカイエンの方が高級感があり、さらにカイエンのコンソール後端にはグリップハンドルがあり、これがオフロードでも使える本格的なクルマである事を暗示している。実際にカイエンは、特に上級グレードになると本気でオフロードを走れる装備をしているから驚く。2千万円のクルマで不整地を走るって? と思うのは貧乏人の発想で、世界には2千万円何てホンの端た金という階層もいる訳で、特に中東なんて砂漠だからオフロード走行機能を必要とするのは当然だ。中東と言えば地底から湧いてくる石油、すなわち元は只のモノを高い金で売っているのだからあぶく銭ならぬアブラ銭と言う訳だなぁ。 ところで、ミッションはカイエンではポルシェとしては珍しくトルコン式の AT だが、マカンの方は何と 911 でもお馴染みのPDK 、要するにデュアルクラッチ方式を採用している。しかし何故により高価なカイエンが技術的には遅れているトルコン方式なのかを考えてみると、カイエンは前述のように本格的なオフロード車として設計されていて、グレードによっては駆動系も副変速機やデフロックなどの極悪路走破用の機能を持っているために PDK 化が出来ないのだろう。 次にブレーキを踏みながらセレクターをDに入れるが、そのブレーキペダル類はマカンの場合は安いだけあってポルシェとしては珍しいウレタン製のパッドが付いていた。尤もペダルとしての機能には特に変わりは無いが‥‥。そしてパーキングブレーキはというと、最近のポルシェの定番であるダッシュボード右下にあるスイッチを探すが‥‥無いっ!実はマカンではポルシェとしては珍しくコンソール上のATセレクター手前に他社でもお馴染みの電気式スイッチが付いていた。これを押してリリースしてユックリ発進すると、PDK とはいえ何も言われなければトルコンAT と大きな差が感じられないくらいにスムースな発進をする。 | |
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公道に出て最初に流れに乗るためにハーフスロットルで加速してみると、想像していたよりもトルク感がある。というのは、マカンのエンジンは718 ボクスターと同じ4気筒 2.0Lターボとはいえ、ポルシェの代名詞である水平対向ではなく直列4気筒だし、オマケにフォルクスワーゲン製でアウディー Q5 と型式・性能とも同じだ (ただしシリンダーヘッドと組み立てはポルシェだそうだが) 。その性能は 718 の 300ps/6,500rpm 380N-m/1,950-4,500rpm に対してマカンは 237ps/5,000-6,800rpm 350N-m/1,500-4,500rpm とパワーが20%程少ない。さらに車両重量は 718 の 1,390kg (PDK) に対してマカンは1,830kg だからパワーウェイト(P/W) レシオはそれぞれ 4.6 と 7.7s/ps というように大きく差が付いている。実は 7.7kg/ps という P/W レシオはマツダロードスターMT と同じだから、成る程決して遅くは無いが特別速くも無いというところだ。因みに 718 ボクスターの 4.6kg/ps という値だが、これはもう立派なスーパースポーツの部類だ。 話をマカンに戻して、ノーマルモードでの穏やかな巡航時には回転計の針は 1,100rpm 辺りを指している事が多いが、この状態からのユックリとした加速ではかなりレスポンスは悪い。そこで焦ってアクセルを踏んでもエンジンは大した反応をみせないのでドライバーはより踏み込むと、ある点でシフトダウンしてそこからドツカーんと加速を始める。それでも巡航時は多少のイライラくらいだからまだマシだが、これが大きな交差点での右折時だったりするとチョイとヤバい場合もある。すなわち右折の為に対向車の流れが切れるのを待っていて、そのうち流れが切れたようなので取り合えす少し前進させて再度対向車を確認したら、対向車の先頭は充分に右折できそうなくらいに遠くに見えた。よし今だとばかりにアクセルを踏むが‥‥何っ? 殆ど前進しない!あっ、ヤバい、と無意識にアクセルと踏み増しすると‥‥少し回転を上げながらユックリと右折を始めるからドライバーは更に焦る。と、ある瞬間で突然ドッカーンと加速が始まって、なんだなんだ、何なんだ、という事になる。 実はこの情況は右折以外でも頻度としては概ね20分に一回程度に遭遇して、その度に肝を冷やす事になった。ただしこれはドライブモードがノーマルの時で、スポーツモードを使用中には多少レスポンスも向上するから問題無いかどうかが気になった。そこで今度はスポーツモードを試す事にする。 |
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試乗車のダッシュボード中央トップには例のストップウオッチが見えるから、要するにオプションのスポーツクロノが付いていた事になる。それじゃもしかしてオプション無しだとモード切替も出来ないのかぁ? なんて思うが、実はマカンの場合はスポーツモードは標準装備している。ではスポーツクロノはというとスポーツよりも更に過激なスポーツプラスというモードが使用できる。マカンの走行モード切り替えスイッチはコンソール上にズラリ並んだスイッチ群の中にあるが、これは旧モデルの 911 などと同じ方式で、しかしその 911 は昨年あたりから MC を機にステアリングスイッチに変更されている。 さて走行モードをスポーツに切り替えると巡航時の回転数は 1,500rpm から最大でも 2,000rpm 位で推移していて、これは 911 をはじめとするスポーツカー達に比べると大人しい設定だ。そしてアクセルを踏み込んだ時のレスポンスも当然ながら向上する。気持ちとしてはこのモードが標準と割り切ればポルシェらしくなる。それで一番知りたい前述の特に右折時の反応遅れだが、シフト位置が一つ下を選ぶ事と回転数も1,500rpm 以上を使用することからノーマルモード時のように反応遅れで青くなる事は無かった。従ってこのクルマのエンジンを掛けた直後の動作としては走行モードをスポーツに、そしてアイドリングストップをキャンセルにするのが正解だと思う。 情況も大分判ってきたので今度は信号待ちからのフル加速にチャレンジする。青信号と共にチョッと前進させてからフル加速に移ると猛然とダッシュ、という程ではないが決して遅くは無い程度で加速して、概ね 6,000rpm くらいでキチンとシフトアップされ、またまた加速していった。まあこの程度の加速でも一般道では十分だし、2速にシフトアップした時点で既に巡航速度を超えるくらいだから、それ以後の加速を試すためには高速道路に持ち込むしか無い。実は今回は結構時間に余裕があったので高速道路の起点から、すなわち料金所を出たらそこからは行き成り直線で本線というスタードダッシュ体験場所に持ち込んだので、後程詳細を述べる事にする。 |