FORD MUSTANG V8 GT 特別編
  [MUSTANG V8 GT vs Skyline Coupe 370GT 前編]

特別編へようこそ。何時ものように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

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マスタングの特別編として相手を何にしようかと考え抜いた結果 (という程に大袈裟ではないが) として、2月26日の日記で検討したスカイラインクーペを引っ張りだす事にした。実を言えば最初は BMW 650i というのを考えはみたのは、特別編としては結構面白い事になりそうでもあり、その場合は
 @ マスタングとスペックでは同性能の 650i をボッタクリだの詐欺だのと徹底的に貶す。
 A 価格を無視してマスタングの安っぽさを強調し、 650i に比べてダサいのチャチいのイモだのと糞味噌に言う。
なんていうのを考えたりしたのだった。これはまあ、どちらもアホ丸出しなのだが、最近は減ったとはいえ上記@みたいな事を言っている輩って今でも未だいるし、20年前なんてマニアも含めて殆どがベンツ・ビーエムは名前だけで国産車の方が安くて性能も良い、と思っていたようだ。そして、当時のアメ車はと言えば、これがまたボッタクリもいいところだったし、更に昔に戻って1968年の価格ではマスタングのハイチューンバージョンとはいえシェルビー コブラ GT500 ファストバックが550万円であり、これはポルシェ 911S の550万円と同価格で、911ベースの4気筒モデルである912は305万円だったから、このシェルビーコブラは結構なボッタクリだったわけで、因みに日本が誇る歴史的な名車であるトヨタ 2000GT が238万円だった。

 

とまたまた本題から逸れてしまったが、それでも結局はスカイラインクーペを選んだもうひとつの理由は、今回のマスタングは試乗記でも何度も触れているように新旧交代の時期だから言ってみれば旧型でもある訳で、その点ではスカイラインだって既にセダンはFMCが実施されているから、クーペも時間の問題だろうという状況で結構条件が似ているなどもあり、この組み合わせとした訳だ。

そして下表には何時ものように比較対象と関連するクルマの諸元を纏めてみた。

表の内容の考察については以下の写真比較の項目で述べることにする。

先ずは斜め前からの比較からだが、やはりこうして見るとマスタングは全幅が1,880o もあるのに低く広くというスポーツカールックに見えないのは何故だろうかとの疑問があったのだが、全高が少し高めというのもあるが、それ以上にフロントのボンネットカバーが盛り上がっていて、これが車全体のイメージを腰高に見せているように感じる。 まあ、逆にそれが独特のマッチョ感覚を醸しだすのだが‥‥。

斜め後方からの眺めではマスタングもフロントのようなマッチョ感がなく、結構スマートに見える。また、スカイライン クーペのリアクォーターウィンドウは面積が広く、結果的にCピラーば細く華奢に見える。

真正面から見れば前述のようにマスタングのボンネットカバーがモッコリと盛り上がっているのが解り易いし、スカイラインクーペは全く逆に低くて、特に先端に向かって更に低く下がっているから、フェンダーラインに峰が出来ている。

マスタングの全長4,815 x 全高1,515o、ホイールベース2,720oに比べるとスカイラインクーペは全長4,655 x 全高1,380o、ホイールベース2,850oであり、マスタングよりも全長が160o 短いがホイールベースは逆に130o 長いからその分は特にリアオーバーハングの短さに繋がっている。これがサイドから見たスカイラインクーペの寸詰まり感というか、イマイチ格好が良くない原因となっている。

後方から見るとマスタングは初代のイメージをモチーフにしていることもあり、今の時代でもオーソドックで安心感がある。これはオリジナルデザインの優秀性だろうか。しかも今から半世紀前にこういうデザインがあったのは脅威ではあるし、それが初代マスタングが一世を風靡する大成功となった一因でもあるのだろう。

それに比べると、スカイラインクーペのリアデザインは‥‥まあ何というか、伝統も何もないし、単なる思いつき程度に見えてしまうのだが。

今度はラッゲージルームを比較してみるが、両車とも決して小さい車では無いがボディー形状は実用性は2の次でもある2ドアクーペだから、ラッゲージスペースが多少狭くても文句は言えない。それで実際はと言えば流石にリアオーバーハングの長いマスタングは奥行きについては充分だが、車幅の割には幅方向のスペースが狭いし、床位置が高いことから高さ方向も狭い。そしてスカイラインクーペはといえばボディー形状を見れば想像がつくように奥行きは短いし高さもマスタングより更に狭い。

室内の比較写真ではスカイラインクーペの場合、タンカラーのインテリアは Type P (466.6万円) というどちらかと言えば豪華に振ったモデルを使用している。スカイラインクーペのラインナップはベースグレード (434.2万円) とそれより装備を落とした廉価グレードのA Package (397.4万円)、スポーティーグレードの Type S (486.0万円) 、そして豪華スポーツグレードの Type SP (516.2万円) となっている。

それでは米国でのマスタングとスカイラインクーペ、というかインフィニティ Q60 クーペの価格はどうなっているのだろうかと思って調べてみたらば、 Q60 クーペはベースグレードが約4,100ドルでS Limited という日本で言うところの Type SP 相当らしきモデルが約5万ドルとなっていて、これはマスタング GT (ただし新型だが) の32,300 〜 46,170ドルよりも少し高い価格帯にあるが、結構ラップしている。それではマスタングGT の4.5万ドルクラスに対してBMW でこの価格帯はというと何と435ï クーペとなる。435i クーペの日本での価格は765万円であり、日本仕様は米国向けのベースモデルよりも装備が良いとはいえ精々5千〜1万ドルだから、1万ドル分のオプションを付けてとしても5.5万ドルであり‥‥まあ、これ以上は言わないが、BMWがボッタクリなのかフォードが良心的なのか‥‥。

米国と日本の価格差の話が出たので、ポルシェについても調べてみたらば、ボクスターのベースモデルは51,400ドルで日本では613万円だから、マスタングよりは多少割高とはいえ概ね納得できるところだ。この事実は当サイトでは既に何回か話題にしているが、考えてみればBMW の価格はあくまでも販売元の希望価格であり、BMW の殆どのモデルはワンプライスでは無いから実際の購入価格は其々異なるわけで、その購入価格が妥当なら全く問題ないことになる。実際に1本引きなんていう事実は結構見聞きしているから、国産しか知らない連中の言うBMWオーナーなんて騙されて高い金を払うブランド趣味の間抜け共だ、なんていうのは無知なる故の勘違いなのだ。た・だ・し‥‥確かにブランド趣味でボッタクられてその気になっている例も少なくはないのもまた事実。そういう客がいないと、販売経費が掛かるこの手のクルマは商売にならない訳で、取り敢えず自らがカモネギの客にならないようにすれば良いだけだ。ディーラーは経営の安定のために利益を出すための客と、数を売るための客を分けているという話は今や公然の秘密となっている。

話を戻して、ドアを開けて見えるインテリアの第一印象は、スカイライン クーペが "色モノ" ということで両車の印象が異なるが、これが一般的なブラックのインテリアの場合はもっと似た雰囲気になるはずだ。そして両車とも2ドアクーペということからリアシートへのアクセスの容易さが気になるが、両車ともこの手のクルマとしてはそれ程苦もなくリアパッセンジャースペースに入り込める。そのリアシートは両車共に形状は充分に人が乗れるもので、ポルシェ 911 のように見るからに一時しのぎの場所で本来は荷物置き場という雰囲気ではない。

シート表皮は両車とも本皮で、色こそ違うが革の質感などが両車とも良く似ているのに気が付く。つまり、靭やかさがなくて固くツルツルしているような質感はあまり品が良くない感じである。結局本皮と一口に言っても、レクサスの上級モデルが使用しているセミアニリン本皮のような薄くなめした靭やかな肌触りの英国風や、BMW でお馴染みの厚くて深いシボがシッカリと見えるようなモノなど、結構違いがあるのが解るが、後は個人の好みの問題だろう。

国産車の本皮素材は何処から購入しているのか判らないが、どう考えても牛革の素材は日本より欧米や豪州から輸入する方が合理的に思えるから、この2車を見ると日産車の本皮素材はもしかして米国より購入しているのでは、という想像も湧いてくる。

ところで、最近は国産車でも上級モデルになると本皮シートというのを結構目にするが、以前の国産車では本革シートというのは殆ど見かけなかった。それでレクサスが初代LS (日本ではセルシオ) に使用する本革シートを調達するにあたって大変な苦労をしたという話を聞いたことがあるが、確かにそのころから一部の国産車にも本革シートが設定され始めたようだった。ということで、日本車には本革シートの伝統が全くなかった訳だから、最近は良くなったと言ってもイマイチなモノが多いのは仕方ないであろう。

シートの調整方法は流石にこのクラスとなれば電動式だし、その操作スイッチもドア側のシート側面下部についている点や、欧州車のようにシート形状を模したスイッチ配置ではないもののそれに近いもので、だいたい想像で操作すれば説明書なしでも特に問題なく操作できるのも両車に共通している。

マスタングのドア インナートリムについては既に日記や試乗記本編で述べたように、何ともプラスチッキーな表面処理が笑ってしまうほどに安っぽく、それも単にコストダウンというよりも樹脂成形技術の遅れではいかと想像しているのだが、下の写真を見てもスカイライン クーペとの差は歴然だ。



写真上のようにドア全体でも質感の差が解るるほどだが更に拡大してみると、いや、まあ更にその差が解る。当たり前だが。

そしてアームレストも結構差が付いているが、こちらはスカイライン クーペの場合はパッドに人工皮革を貼ってステッチもあるから、マスタングの弾性樹脂の成形品に比べて明らかにコストが掛かってはいる。

そしてインパネはといえば、これについては其々のクルマの設計思想というかデザインセンスというか、ユーザー側から見ても評価の別れるところだが、とにかく両車のインパネデザインは全く異なっている。

次にセンタークラスターを比較するが、言うまでもなくどちらも末期モデルであり、マスタングは米国で既に新型が販売されているし、スカイラインクーペの場合はベースとなる4ドアセダンは国内でも既に新型となっているから、セダンと共有するであろう新型クーペのインパネ形状も既に判明していることになる。ということで、スカイラインクーペ のセンタークラスターのデザインは一昔前のニッサンの上級車に共通するデザインだが、今になってはチョイと古い。

マスタングのセンタークラスターについては、日本向けはナビの装着など全く考えていないわけだが、実は調べてみたらば米国向けでは写真右のように既に今回の試乗車と同じモデルにディスプレイも組み込んだものがあったのだった。ナビの場合、米国仕様のまま日本に輸入してもディスプレイにはニューヨークの地図が表示され‥‥何てこともなく、単に使えないだけだが、それでは売り物にならないし、輸入台数が少ないことから日本専用のパネルを作る予算も無かったのだろう。

今までのところでは、この両車の共通点は価格帯 (何と日米で) と2ドアクーペであることくらいで、デザインについても、内装の質感についても全く独自の世界を走っている。おっと、シートについては形状や材質など結構似ていた。実は米国サイトで価格などを調査中に、マスタングの項目の下に表示されるライバル車にはインフィニティー クーペは含まれておらず、その逆もまた同様だった。

これ以降はインテリアでも走行に関する部分と、そして実際の走りについて比べることにするが、この続きは後編にて。

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