Mercedes Benz C200 Avantgarde 特別編
  [C200 vs 320i 前編]


特別編へようこそ。何時ものように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

前回の911 vs 86では、最初からマトモに比較すること自体が無理なアイテムを、ウケ狙いのネタとして取り上げたところもあり、比較に使用したグレードなども結構いい加減に選んだのだが、今回のC200 vs 320iという組み合わせは、もうガチンコ勝負もいいところで、本当の意味でのライバル比較という事になる。

実はこのC200 vs 320iという企画は1年以上前のC200 Avantgarde試乗記で予告したのだが、準備を始めたらば何とBMW3シリーズの新型F30の発売が当初の予測よりも前倒しとなることが判明したため、一時保留にしていたものだ。そして320iが発売されたのが今年の春で、その当時は86/BRZの発売も重なり中々この特別編に取りかかる余裕も無く、結局は一年越しとなってしまった。一部の読者の皆さんにはお預け状態となってしまい、誠に申し訳ないことをしたと本気(←ここが大事!)で思っております。えっ?ということは、何時もは本気で申し訳ないなんて思っていないのか?なんて、痛いことろを突くじゃあありませんか。そりゃそうでしょう。ショボい国産コンパクトカーの試乗記に間違った記述があったとして、だからどうした、とうのが本音でして、大体1,500万円級のマニア垂涎のクルマの試乗記と、安物の国産車の試乗記では制作に費やす時間(とモチベーション)の差は10倍、いやそれ以上かもしれない。それでは、なんで気が乗らない安物も取り扱うのかといえば、あれを読んで庶民のクルマの状況を少しでも把握してもらおうという目的なのですよ。そうです、社長に院長、大企業エリート社員のア・ナ・タ達のためなのです。

という訳で冒頭から毒舌を吐いてみたのは、1年間も焦らしてしまったお詫びの大サービスということです。いやぁ、取り分け先生方はこのコーナーがお好きなようで‥‥‥。

それでは本題に入るとして、先ずは定番のスペック比較から。

    

こうしてみると流石にガチンコライバルだけあってサイズやパワーなどお互い随分意識しているようだ。アウターサイズは伝統的にCクラスの全幅が広かったが、現行型では30mmにまで迫ってしまった。逆に3シリーズの場合は例によって日本向けとして薄い取っ手を付けてジャスト1,800mmとしているのは、言うまでもなくマンションなどの立体駐車場の制限に合わせているためだ。そういえば輸入車vs国産車というのと同様にマンションvs一戸建てなんていうのも結構盛り上がりそうだが、まあこの場では触れずにおこう。ただし、一言で言えば今までの勤務先や取引先関係に限れは、マンション志向の方が高学歴&都会生まれが多かった、なんてちょっと煽ってみたりして。

なお、Cクラスはいつの間にかC200のベースグレードが無くなって、これらはC180となってしまった。それでC180は何が違うのかといえば、これまた同一排気量のチューニング違いのようだ。この件については後編で取り上げることにする。

それにしてもメルセデスの車種名は長いので、気を抜くとスペルミスをしてしまいそうだ。そういえば、大分以前になるがちょっとしたスペルミスがあったことに対して、「スペルも判らないなら日本語で」なんていうメールが来たことがある。このテのメールは滅多に来ないのだけれど、殆ど全てが真面目にも本アドレスから、しかも自分の本名までくっ付けてくれる。最初は奇異に感じたのだが、考えれ見たらばトップページのメールというボタンから入った場合、ユーザー側で標準設定されているメールソフト、多くの場合はアウトルックであり、実際にはこれを使って送信するために、アウトルックで本名なんかを登録していると、そのままくっ付けてしまうし、アドレスも当然ながら本アドレスからの発信となってしまう。誹謗メールが本名付きで、本アドレスだから、これとともにIPアドレスなどと一緒にググれば、結構な確率で本人が特定できたしまう。ちなみち、この嫌味メールの発信元は‥‥‥って、流石にこれは公開しないが。

という訳で、冒頭からマタマタ大サービスをしてしまったが、本人はこれが正式なメールとして発信されるという事を知らなようで、ネットで人を誹謗するのならソレナリの情報リテラシーを持つことが必要で、いわゆる情弱(情報弱者の略称らしい)なことを自覚せずにネットの世界を徘徊するのは非常に危険だ。と、言うわけで、腹が立つ前にかわいそうになってしまう。多分今頃は、どこかのサイトで痛い目にあっていることだろう。



大分余計な事を書いてしまったが、それではエクステリアの比較をしてみよう。なお、今回の比較はCクラスがAMGスポーツであることから、3シリーズもMスポーツで比較するのが本来ではあるが、F30は発売されてから日が浅く未だMスポーツの設定がないために、比較車をデザインラインのスポーツとしていて、エアロパーツなどが大人しくなっている点を考慮願いたい。

それでも、こうして比べてみれば誰が何と言おうとメルセデスとBMWで、このアイデンティティこそ日本車がどう頑張っても手に入らないものであり、特にフロントについてはこれこそ誰が見ても判るくらいにメジャーな物だ。



とはいえ、メルセデスの場合は本来一部の特殊なスポーツカーのみに使われていたラジエーターグリル中央のでっかいスリーポインテッドスター、すなわちベンツマークが付くタイプがいつの間にかCクラスでもメジャーになってしまった。本来は高さのある格子模様のラジエーターグリルとボンネットフード先端に立つ、小さなベンツマークのマスコットがコンフォートモデルの特徴であり、運転席からみるとこれがマーカーになってとても運転しやすいし、何よりも初めて運転したときは、遂にメルセデスを運転したぞ、という感動で胸が一杯になったものだ。そして、この手の感動は、初めてBMWを運転した時には残念ながら感じなかった。



リアビューを比べてみると、まずCクラスの場合はトランクリッドで切られたテールランプが特徴的で、これはW124で初めて実施されてから次第にブームとなり、国産車もこれをパクっているのがあった。それに対してBMWは意地でも同じ方法は使わないとばかりにトランクリッドに跨ってテールランプを配置している。



そしてトランクを開けてみるとスペース的には幾分Cクラスのほうが幅方向に広い気がするが、明らかな差は無い。開口部の下端位置も似たようなものだ。そしてトランクリッドの開閉リンクも円弧を描くような形状といいソックリだ。

 

次にサイドビューを比べてみるとウエストラインはCクラスが水平に近いのに対して、3シリーズは多少キックアップしていてトランクリッドの位置も高い。両者は大分キャラクターが近づいたとはいえ、やはりオーソドックスなメルセデスとスポーティーなBMWという基本は以前程ではないにせよ残ってはいるようだ。



メルセデスの特徴として10年ほど前から採用しているサイドミラーにウィンカーを組み込む方式があり、その後多くのカーメーカーが同じような方法を採用していたが、BMWは意地でも使わなかった。しかし今回のF30では遂に観念したのか、サイドミラーにはウィンカーが組み込まれていた。



次にドアを開けると、サイドスカットルプレートにそれぞれのロゴが入っている。Mereudedes BenzもBMW Sportも、マニアにとっては憧れのブランドだから、クルマに乗る度にこれを見て満足感に浸れるとうことだろうか。

インテリアの眺めはどちらもドイツ車らしく、ある面似ている。ドイツ車のシートといえば厚めのシッカリしたレザーか粗い織目の丈夫そうなファブリックが思い浮かぶ。そういうことから、下の写真は左の前後席ペアがレザーシートで右のフロントのみの写真がファブリックとなっている。





シート表皮を拡大して比較すると、レザーシートの場合ではCクラスはある程度なめして表面に多少艶があるのに対して3シリーズではBMWらしく例によってシボが深くぶ厚くて、いかにも丈夫そうなレザーを使用している。



ファブリックシートではC200がレザーツインシートと呼ばれるサイドが人工皮革でセンターがファブリックのタイプが使用されている。なお、フルファブリックのシート表皮はベースグレードのC180のみで使用されている(C180でもアバンギャルドはレザーツイン)。3シリーズはスポーツの場合で、デザインラインによって異なるが、コンフォートモデルは多くが本革シートを装着しているであろう。



ところで、両車ともフルファブリックの廉価グレードの写真が無いのは、展示車、試乗車など殆ど見当たらないことによる。しかし、3シリーズの場合は、実際にはファブリックシート装着車も結構納入されていると思うのだが。CクラスではベースのC180の割合が極めて少ないらしく、3シリーズユーザーとは少し層が違うようだ。



次にインパネを比較してみると両者の特徴が良く出ていて一見して違いが判るが、それでもナビのディスプレイを上部に持ってきて、その下にエアコンのエアーアウトレットを配置するなど安全性を考えれば当然ながら同じような結果となる。ただし、設計時点の新しい3シリーズの方が更に高い位置にディスプレイを置くなど、数年の違いが出ている。これらに比べると最近試乗した国産車、例えばオーリスもノートもインパネの上部にはエアアウトレットを配置し、ディスプレイはその下になっていて、メルセデスやBMWが視認性(安全)第一のレイアウトを採っているのに対して、国産車は生産性第一という対照的なものが見えてくる。すなわち、ディスプレイとヘッドユニットの間にエアアウトレットを配置すると、コスト第一の日本の日本車の思想では工場から拒否されることになる。

自動車業界に限らす、日本の製造業では製造現場の人間からすると「開発部署というのは優遇されていて自分たちが汗水垂らして製品を作って会社を支えているのに、開発の連中は楽している」という気持ちがあり、内心は相当なコンプレックスと敵対心を持っていたりする。従って、製造し難さを指摘することでコストダウンという成果を主張できるこれらの指摘は、製造部門で出世するための武器として使うのが定番になっている。BMWをベンチマークとして分解したあるメーカーの開発エンジニアは「自分たちがこんな設計したら、鬼の首を取ったように製造部門から原価低減要求がくるだろうなぁ。こんな設計が許されるなら、俺達だってあれくらいのクルマを作れるよなぁ」何て言ったとか。でも、まあ、それだけではBMWは作れないとは思うが‥‥。

うーん、今日はノッている。とはいえ本題も大切なので、今度はセンタークラスターを比較する。ここはもう両社のコンセプトの違いがハッキリしている部分で、メルセデスはゴチャゴチャとボタンスイッチが並び、とても走行中に操作はできそうもない。安全第一のメルセデスにしては不思議だが、きっと何かポリシーがあるのだろう。これに対してBMWはあっさりしていて、スイッチは最小限だし、表示も最近は一応ボタンの用途を表す記号くらいは付いているが、E60(旧5シリーズ)などはつまみやスイッチに何も表示がなく、オーナーでないと判らないような設計だったが、流石にあれはやめたようだ。



ナビのディスプレィはCクラスが国産と同じような縦横比であるのに対して、BMWは例によって横長を採用している。これについては賛否両論があるだろうが、運転中の視線移動が少ないという意味ではこの上下に短いディスプレイはメリットが有ると思うし、画面を分割して右側に拡大を出し、左に全体を表示させれば結構使い易いのだが、単に一枚の画像のみで使用すれば使いモノにならないという判断になる。



先ほどメルセデスの特徴であるターンシグナル付きのサイドミラーの話をしたが、オーディオやエアコン、ナビも含めて統合制御するのにコンソール上のダイヤルを使うiDriveが初めて搭載されたのは今から10年以上前のBMW7シリーズ(E65)からだったが、この方法はその後世界中で似たようなモノが使われている。しかしBMWと同じでライバルの真似は意地でもやらないメルセデスにしては珍しく、いつの間にかダイヤル式のコントロールが付いていた。しかも、日産やホンダのようにセンタークラスターに付けることで、BMWの真似なんかしてないもんねぇ〜、という言い訳も出来ないくらいにコンソール上に付いている。ただし、BMWが初期のポリシーをかなぐり捨ててダイヤルの周りに補助スイッチ並べたのに対して、メルセデスは当初のBMWの思想のように最小限のスイッチ(実際には2個)で、後は全てダイヤル操作によるというポリシーになっている。



ドアのインナートリムも両車では全く異なり、特にメルセデスは一種独特のデザインと配置になっている。これに対してBMWの場合は日本車的というか、オーソドックスで違和感がない。



今回は当初の予定より1年も遅れてしまったことで、そのお詫びも兼ねて言いたい放題全開でサービスしたこともあり、既にずいぶん長くなった割りには肝心の比較はあまり進んでいなかったりする。

ということで、この続きは後編にて。

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