Mercedes Benz C200 Avantgarde 特別編
  [C200 vs 320i 後編]


特別編へようこそ。
前編でも御注意申し上げたように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

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今から30年ほど前に初めて乗ったメルセデスが300TDだったことは日記や試乗記で何度か触れているが、兎に角ドアを開けた瞬間から広がる景色が異次元空間に見えたのは、当時の国産車とはあまりにも違う雰囲気だったからだ。シートに座ると、高級車=フワフワのキャバレーシートという日本人の感覚が如何に世界の常識からかけ離れているかを思い知らされる硬くて無骨な座り心地と、何時間乗っても疲れないという脅威。そしてステアリングホイールは当時の国産車が硬くて滑りやすい樹脂丸出しだったのに対して、太めで柔らかく表面には皮目のような模様が付いていた。当時の国産車でも上級のスポーツモデルならば本皮ステアリング(革質は悪い)というのはあったが、こういうウレタンは初めて見るものだった。

それ以上に驚いたのがATのセレクターで、当時の国産車が米車を範としたT型レバーの直線式だったのに対して、MTのようなグリップとジグザクゲードという、これまた初めて見るものだった。他にも運転席をロックすれば全てのドアがロックされたのも脅威で、当時の国産車はクルマから離れる時には4つのドアを車内内側から手動でロックする必要があった。あれから30年、今では国産車もウレタンの内装など当たり前であるし、ジグザグATゲートに至っては既に時代遅れで低価格車くらいにしか使われない迄なっている。したがって、メルセデスとはいえ以前のような特別感は無いのだが、そうは言ってもやはり独特のものはあるから、C200の運転席に座れば、そこはやはり国産車とは違う物を感じるのは間違いない。

これに対してBMWはといえば、以前からメルセデスのような威厳はなく、内装だって何となく国産車的なところもあって、例えば3代前の3シリーズであるE30のドアはプラスティック丸出しのインナートリムが使われていたし、190やCクラスと比べればやはり格落ちのクルマという感があった。それがCクラスと対等に扱われるようになったのは先々代のE46からだろう。その前のE36で既に不動の地位を築いてはいたが、やはりCクラスよりも格下だし安っぽかったが、それに比べてE46は出来も風格も堂々として、チャチになっていたCクラスの自爆もあり、ついには不動の地位を確保して、今では人気度でメルセデスを追い越した感すらある。

と、前口上はこのくらいにして、今回は走行系に関する部分を比較してみる。先ずはエンジンの始動はどうするかといえば、どちらもインテリジェントキーとプッシュボタンによる。このプッシュボタンの位置はC200が運転席から見て右で、3シリーズは左にあるが、まあこれはどうでも良い話だ。



ATセレクターはC200が根本にブーツが掛かっているが、実は多少のジグザクゲードのために慣れないとスムースにPからDまで移動出来ない。しかもマニュアル時のシフト操作は右でアップ、左でダウンという独特のパターンで、これは慣れないと使いづらいし、左右というのは感覚的にも加減速と関係ない方向だから、何とも理解できない。これを使って実際にマニュアル操作をしているユーザーっているのだろうか、と疑いたくなってしまう。

これに対して320iは最近のBMWに共通な電子式セレクターで、レバーは単なる電子スイッチであり、前後左右に動かしても手を放すと中点に戻ってしまう。したがって、レバーの位置をみて今現在のポジションを想定することが出来ないという問題がある。まあ、これも慣れだろうが。ところで、メルセデスの場合はCクラスではメカ式だが、Eクラスになると電子式セレクターとなり、しかもステアリングコラムから出ているために、コンソール上は何もない状態で、初めて運転したら間違いなく戸惑う事請け合いだ。 



ATセレクターをドライブに入れ、パーキングブレーキをリリースするには、Cクラスの場合は足踏み式で、ブレーキパダルの左側でフートレスの上部にあるペダルを踏んでONとする。そして、リリースはダッシュボード右端下端にある(P)と書かれたレバーを引くとストンと外れる。足踏み式のパーキングブレーキというと、国産車に多い踏む度にON/OFFを繰り返すいわゆるプッシュ/プッシュ式が思い浮かぶが、あれにはどうしても賛成できない。まあ、国産車でもクラウンなどはメルセデスと同様にリリースレバー方式を採用しているのをみれば、トヨタだって本来こうするべきなのは知っているからだろう。

次に3シリーズはといえば、オーソドックスなレバー式で、コンソール上のレバーを引いてON、解除は先端のボタンを押して下に降ろすという、文章で書くとややこしいが実際には極自然に操作できる。このタイプは走行中にレバーを引くことでリアのみに制動を掛けられるというメリットがある。えっ?それって何に使うのか?って。そんな用途はサイドターンなどといわれている、後輪をロツクさせて遠心力で後輪を外に滑らせる、まあドリフトの一分野というところだろうか。ところで、世の中のクルマの大部分はパーキング用ブレーキのホイールユニットにデュオサーボという方式のドラムブレーキを装着している。この方式は細かい減速度の制御は出来ないが、少ない力で大きな制動力を得られるから静止時にしか使わないパーキングブレーキに実に向いているが、走行中に使用すると行き成りガツンとロックしたりと超カックンの傾向がある。ところがBMWのパーキングブレーキにはドラム方式としては最も特性のリニアなリーディング&トレーリング、略称LTという方式が使われている。これは何のためかは判らないが、少なくとも雪道などでのスピンターンには具合が良い。

パーキングブレーキの話が出たところで、リアにドラムを持たないP付きキャリパーというメカ式でも使えるディスクブレーキのタイプがあるが、これはLT方式以上にリニアな手動制動が出来る。ただし、今はアテンザなど一部のマツダ車と、ステップワゴンなどのホンダ車などで使用されているが、間違いなくマイナーだ。そして歴代ではあの有名な86やMR-2など走り屋の定番車があるが、これらがドリ車として適しているとわれているのは、FRである事と共にパーキングブレーキにも関係していると思う。なお、ステップワゴンなどがP付きを採用しているのは、ホンダの系列ブレーキメーカーがパーキング用のドラムブレーキを苦手としているからという事情もある。

ホンダの場合は、優秀な部品メーカーを系列に持っていないという弱みがあり、特にブレーキが弱いと思う。このためにホンダが満身の力を注いで専用部品の多くも開発したというS2000のフロントブレーキにはアコードのキャリパーが流用されている。それどころかホンダが誇る、いや日本が誇るスーパーカーであるNSXでさえ、フロントにはやっぱりアコード(シビックだったかもしれない)のキャリパーが付いている。本来ならブレンボ辺りを使うのが定番なのだが、もしかしてブレンボに相手にされなかったとか? そういえば、ラリー系で有名な国産高性能セダンに付いているブレンボキャリパーから、ブレーキ液が微かに漏れるとう事実がある。まあ、漏れるというよりはピストンが動くときに僅かにブレーキ液を引っ張ってくるのだが、ユーザーによっては気にするようだ。そこで、そのカーメーカーがブレンボに改良を申し入れたところ、この程度に漏れは許容範囲であり、全く問題なく、ポルシェにも認められるいる、ということで、要するにポルシェでさえ納得しているのに、余計な文句をいうな。嫌ならよそのを使ったら。みたいな状況だったという噂(あくまで噂です)を聞いたことがあるような、無いような。



運転中に一番目に入る装備といえばメータークラスター類だが、この面では2車は全く異るレイアウトとなっている。C200はメルセデスのサルーン系で伝統の中央に大径速度計を置き、回転計は隣で少し直径が小さいことと、その反対には集合計が付いていることだ。これがEクラスになると、集合メーターの位置にアナログ時計が付いている。回転計としては小径の部類のスペースだが、車載の時計としては巨大に見え、そんなものが付いている理由は判らないが、あれでCクラスより高級なEクラスに乗っているというステイタスを感じるのだろうか?

3シリーズのメーターは左右対称に速度計と回転計が配置されているタイプで、メルセデスよりも回転計の重要度を上げることで走りを強調しているのだろうか。これがポルシェともなると、センターには大径の回転計が付くというメルセデスサルーンとは全く逆になっている。まあ、ポルシェというのはそれ程に走りを重視したクルマであり、普通の人からみれば変態の部類だから、何故に一般人にも人気があるのか不思議だ。



最近のクルマにはオンボードコンピューターの各種情報を表示するディスプレイがメータークラスター内に組み込まている。そこで両車のディスプレイを比較してみると、Cクラスはセンターの大径速度計の内周を利用して結構大きなスペースに大き目でハッキリした文字で表示している。メルセデスに乗るのはジジババが多いから、老眼でも見易いようにという配慮なのだろうか?

これに対して3シリーズは何時ものように2つのメーターの中央下部のスペースにメルセデスよりも小さ目の文字で表示される。まあ、これも好き好きだが、メルセデスの思想も捨てがない。ところで、この手のディスプレイも最近は液晶式のTFTタイプを使っているらしい。液晶といえば韓国製かと思ったら、クルマ用の小型液晶ディスプレイは日本のある1社(規模も小さいし知名度も無い)が独占しているという。



走行性能を比べる前に先ずは両車のエンジンスペックをおさらいしてみよう。前編で使ったスペック一覧表からエンジンに関する部分を抜き出したのが下の表だ。

  

今回の主役であるC200と320iでは、どちらもエンジン出力が184ps、最大トルクが270Nmとまるで談合をしたかのように一致しているが、発生回転数は異るし、排気量もC200の1.8Lに対して320iは2.0Lと異っている。ところで、今年の初めに328iが発売された段階でのさるインプレッションでは、C200に比べて圧倒的に優っている、なんていう記述を見たことがあるが、328iだったらばC250と比較しなければ意味が無いわけで、ショウモナイことやっているなぁ、なんてね。 



それではC200と320iの動力性能を比較するとどうかという事になるが、上表のスペックではパワーウェイトレシオまで同じだが、実際に乗ってみると‥‥やっぱり大きな違いは判らない。強いて言えば設計の新しい320iの方がレスポンス等が良いような気がするが、3シリーズは全車にモード切り替えが付いているからSPORTモードを選択すれば当然ながらレスポンスは良くなる。これに対してC200の場合には3シリーズのようなスポーツモードが装着されているのはダイナミックハンドリングパッケージというオプションが必要となるが、シフトモードには全車標準でECOとSPORTというモード切替があるなど、Cクラスに相当精通していないと詳細が判らないくらいで、メルセデス門外漢のB_Otakuとしては残念ながら詳しい説明は出来ない。とはいえ、知っている限りで説明すると、下の写真のように普通のモデルはATセレクターのパターン表示の下にあるスイッチでエコ(E)とスポーツ(S)を切り替えるが、これはあくまでATのシフトパターンの切り替えで、3シリーズのSPORTモードのようにステアリング特性などまで総合的に切り替えるのはダイナミックハンドリングパッケージが必要で、これをオプションで装着すると、センタークラスター上に”SPORT"というスイッチが追加される。



ここでBMWの新4気筒ターボエンジンのラインナップについて補足することにする。主にターボの加給圧違いで2つのグレードを準備する場合、メルセデスはエンジン型式が同一だが、3シリーズは最後の一桁が320iのBに対して328iはAと異なっている。ということは3シリーズの4気筒2.0Lは単に制御プログラムが違うだけではなさそうだ。そして色々調べてみたのと、読者からの情報メールもあり、両車はエンジンの圧縮比が違うことが判明した。これが116iと120iの場合は両車のエンジン型式は全く同じであり、トルクの特性図をみても116iは120iに対して最大トルクのリミッターを低く設定しているだけで、フルスロットルを踏まない限りは特性が同じだった。これに対して320iと328iでは低回転域からの立ち上がりでも既に特性が異なっていたから、これは何故かと思っていたが、圧縮比を変えるという技にでたようだ。まあその場合、手法としてはピストンの厚みを変えて上・下死点の位置を上げるか、ヘッドの厚みを変えるかだが、いづれにしてもBMWの事だから、最小限の変更でその他は共通となっているのだろう。ところで少し部品が違うというのは生産側から言わせると非常に嫌だというのは、異品混入(異品組み付け)といって本来ではない部品が組み付けられた時の判別が難しことによる。そのため、ひと目で判る相違点を付けるのだが、一番わかり易いのはメッキの色を変えるなんていうのがある。本来は銀色の部品がついている出荷品に金色が混っていれば、異品が混入していると即座に判明する、などの手法がある。実際にBMWがどのように管理しているのかは知りたいことろだ。

という訳で、1シリーズは恐らく制御ユニットのプログラムの一部、場合によってはデーターテーブルのホンの数バイトを書き換えると116iが120iに変身するかもしれないが、320iを328iにするのは制御だけでは無いから、事実上は不可能だった。まあ、BMWだって色々戦略は練っているのだろう。

次に両車のミッションのギアリングを比べてみる。

  

両車のミッションの最大の相違は、Cクラスが7速であるのに対して3シリーズは8速と1段多いことで、その分3シリーズの各ギア比は接近している。しかしミッションの格段のギア比をみるとCクラスではC200とC250では同じであり、3シリーズも320iと328iで同じギア比となっている。それだけではなく、同じエンジンを使用するE250もCクラスと同じギア比であり、同様に523i/528iも320i/328iと同一ギア比を使用している。要するに両社とも基本的に同じ系統の4気筒搭載車は、ギア比まで同じミッシュンを搭載しているのだった。それどころか、メルセデスの場合はCクラスとEクラスでファイナルギア比までもが同じという徹底した共通化を実施していた。要するに過給圧の違いに関わらず、4気筒車同士ではそれぞれ同じギア比となっているということだ。

それで、実際のギア比の具合はどうかといえば、Cクラスは1速少ない分だけ、ギア比は分散しているが、それにも増して随分とハイギアードで、最高速度には恐らく5速で達するだろうから、その上の2段、すなわち6〜7速は巡航用のギアとなっている。3シリーズの場合は、6速で最高速度を発生するだろうから7〜8速は巡航ギアであり、結局両車とも上の2段が巡航ギアという燃費重視というか高速重視というか、いづれもギンギンのスポーツ用ではなく、多段化の最大の目的は省燃費だろうか。

ここまでの話題であったエンジンや駆動系の比較は、ある程度スペックなどから比較しても結果が想像できる。勿論エンジンやミッションのフィーリングや味付けの話もあるから、一概にスペックだけでは結果は出ないし、スペックが全てならばトヨタのクルマなんてもう少しマシになるのだろうが、そうは行かないところがクルマの奥深いところだ。

上記に比べて、操舵系というのはスペックを比較してもほとんど意味がなさそうだし、実際に操舵性能で一番気になるのはレスポンスやフィーリングであって、これを比較するのは言葉で表すしかなさそうだ。そこで一言で言えば、世間で言われているようにBMWの方がスポーティーであり、メルセデスはより安定志向ということだが、現行Cクラスでは3シリーズを相当意識したことからメルセデスとしては随分とスポーツ志向になっている。なお、328iの場合は320iよりも大幅にスポーツ志向を強めていて、これなら下手なスポーツカー以上に楽しめるという感じだが、基本的に320iと同じクルマでもチューニング次第ではこれ程も変わるという例でもある。そして、Cクラスの場合ではよりスポーツ志向のオプションであるダイナミックハンドリングパッケージを装着すれば、よりスポーツ志向となる訳で、一口にどちらがどうと結論付けるのは危険でもある。



ブレーキについては上の写真のように、とちらも特別なモノがついている訳ではなく、極々オーソドックスな4輪ディスクブレーキであるが、スペックをみればC200は後輪がソリッドディスクであるのに対して、320iはベンチレーテッドディスクとなっている。まあ、リアがソリッドディスクでも日本の公道を走る限りに置いては性能的に問題が有るとも思えないが、一つの可能性としては前後の重量配分が50:50である3シリーズはリアの負荷が大きいためにベンチレートタイプが必要になる、とも解釈はできる。そしてブレーキのフィーリングはといえば、メルセデスも以前のように重くて喰い付きの悪い、よく言えば踏力で締め付けるような、ポルシェとも似た如何にもドイツ車らいいフィーリングというのはいつの間にか止めてしまい、今ではBMWほどではないにせよ軽くて喰い付き感のあるフィーリングに変わっているから、例えBMWから乗り換えても違和感はないだろう。

以上、両車を各視点から比べてみたが、最後に言えることはどちらも実に出来の良いDセグメントセダンであり、ファミリーカーやプライベートカーとして、今現在では一番無難な選択であり、これらを勧めたことで恨まれることはまずないだろう。あとは、オーナーの趣味で選ぶことになるが、実際には昔からヤ○セとの付き合いがあって馴染みのセールスもいるということでCクラスを買うとか、昔ヤ○セへ行ったらば、とにかくムカツク対応をされたので問答無用でBMWとか、まあ人それぞれの事情があるだろう。

そう、結論は、勝手に好きな方を選べよ! でした。