CROWN 3.5 Athlete (2010/10) 前編


クラウンといえば日本を代表する高級車というのは誰もが認めることだろう。しかし、その反面として軟らかいサスの設定による不安定な挙動や如何にもオヤジ臭い内装など、若いユーザーや年配でもクルマ好きからは「タダでもいらない」なんて言われたりする。そんな、クラウンの ラインナップのなかで、少しはスポーティーに振って、ユーザーの 平均年齢を下げたり、欧州車に眼が行っているクルマ好きを取り込んだりという目論みでクラウンのバリエーションに加わったのが「アスリート」だった。初代のアスリートは11代目クラウン(S170系)から追加され、若手の2〜3代目経営者などに人気があったし、覆面パトカーのベースとしても結構使われていた 。

そして12代目の所謂ゼロクラウンでは、ロイヤル系も欧州車的なマトモなクルマに変身した事もあり、アスリートはよりスポーツセダンとしての性格を強めることとなった。ところが、13代目の現行クラウンでは、世間の受けが悪かったのか、ロイヤルは以前のふわふわクラウンの方に逆戻りする傾向となってしまった。と、いってもS170系のロイヤル程には酷くはないが、それでも残念なことだ。要するにクラウンユーザー、いや一般的な日本人のクルマに対する嗜好なんて、そんなものなのだ。

なお、S170では久々にワゴン(クラウンでエステートと呼ぶ)もFMCされて、一時は結構人気を博していた。そして、このエステートはセダンがFMCされた後まで継続生産されたが、2003年のマイナーチェンジでエステートは全てアスリートのみとなった。恐らく、エステートを買うユーザーはロイヤルのオヤジ趣味を好まないタイプが多かったのだろう。そのクラウンエステートも現在は絶版となり、Eセグメントのワゴンを欲しいユーザーは、欧州車を買うしか選択肢が無くなってしまったのは残念なことだ。 えっ?国産Eセグワゴンがなくなって残念だ、なんていって、それじゃあクラウンエステートがあっあら買う気になるこかよ、なんていう突っ込みは無しにしようね。

現行クラウンアスリートは発売時に2.5ℓの試乗を行い、フーガ250GTとの比較試乗記をアップしたが、アスリート3 .5については未だ試乗を済ませていないことに気が付いで、遅ればせながら今回アスリート3.5に試乗してみた。ゼロクラウンの発売時点(2003年12月)ではV6の最上級車種はロイヤルもアスリートも3リッターだった。 しかし、2005年10月のマイナーチェンジでアスリートには3.5リッターが塔載されたが、この3.5リッターは2005年7月にレクサスチャンネルの国内展開とともに発売されたGS用のエンジンであり、更に2ヶ月後の9月にはDセグメントのISにも塔載されて、レクサス専用のプレミアムエンジンとの位置づけだったのだが、何とわずか1ヶ月でクラウンアスリートにも塔載して発売してしまった。これにはレクサス関係者、それに勿論オーナーも相当腹を立てたようだった。その先代3.5アスリートには発売直後に試乗しているので、興味のあるかたはそちらも参照願いたい。
 


写真1-1
初代のアスリートは11代目クラウン(S170系)から設定された。

 


写真1-2
S170系のエステート(ワゴン)はセダンがゼロクラウンにFMC後も、継続生産された。なお、2003年のMCでアスリートのみとなり、ロイヤル系は廃止された。

 


写真2-1
お馴染みのクラウン顔は癖が無く無難でもある。

 


写真2-2
先代に比べてマッチョでアメリカンになった現行フーガ。

 


写真3-1
トランクリッドに小さいスポイラーが付く以外はロイヤルと変わらないアスリートのリアスタイル。
 

 


写真3-2
リアもフェンダーラインからしてマッチョなフーガのデザインはやっぱりアメリカンか。

 

今回の試乗車はGパッケージ(559万円)というグレードのために、シート表皮と内装トリムがレザーとなっている。クラウンの内装についてはマジェスタを含めて、これまで何度となく詳細を紹介してきたが、今回はアスリートとフーガタイプS+セミアニリン本皮シート(537.6万円)というレザーインテリア同士を比較してみることにする。 なお、クラウンvsフーガとしては現行クラウン(S200系)にFMCされた2008年4月にCROWN 2.5 ATHLETE vs FUGA 250GT という試乗記をアップしているが、この時点でのフーガは先代のY50系だった。今回の比較は2009年にFMCされたY51系で、エクテリアデザインは先代に対してよりアグレッシブでバタ臭くなっている。したがって、前回の比較では特にフロント デザインなど結構共通な雰囲気もあったが、今回は大分印象が異なっている。

アスリートのインテリアは基本的にはロイヤルと同様だが、ウッド(風)のパネルがロイヤルの茶色に対してダークグレーとなり、雰囲気的にスポーティーにしている。アスリートのレザーシートは座面に細かい通気穴があいているが、材質はテカテカと光って安っぽいし滑り易く、何やら ヒュンダイ製のような雰囲気で、同じトヨタ製のレクサスとは大いに差が付いている (写真5-1)。
これに対してフーガのウッドトリムは本物のウッドの木目に職人仕事で銀粉を刷り込むことで独特の雰囲気を出していて、これはドイツ車とは違うジャパンオリジナル的で中々好ましい。シートもオプションのセミアニリンシートを装着していたことから、クラウンに比べればレザーの質感も完全に勝っていた(写真5‐2)。
また、ドアインナートリムも高級感ではフーガに軍配があがり、ドアハンドルの質感も最近のドイツ製高級車のような半艶消しのシルバークロームメッキ(写真7-2)など、アスリート(写真7-1)に差をつけている。

さて、こうして比べてみると各自の好みがあるとはいえ、インテリアの質感ではフーガに分があるが、これはフーガとしては最上位の内装であることと、フーガ350GTは米国ではインフィニティMだから、本来のライバルはレクサスGSとなり、クラウンとは立場が違う。というと、あれっ、GSよりフーガの方が安目の値付けだが・・・・なんて言いたいア・ナ・タ。まあ、まあ、堪えて。
 

写真 4-1
ゼロクラウン以来、世界の標準に近づいたインテリア。特にアスリートはドイツ車的な内装になっている。

写真4-2
雰囲気的にはアスリートと変わらないフーガのインテリア。米国向けはインフィニティMだから、世界の標準的な雰囲気を持っている。


写真5-1
テカテカと光って安っぽいレザー表皮。見てのとおりで滑りやすい。レクサスとの差別化でワザと出来が悪いと思いたくなる。

 


写真5-2
アスリートよりは大分出来の良いフーガのレザー表皮。写真はレザーの中でも上位モデルのセミアニリンシート。

 


写真6-1
左からランバーサポート、バックレスト(リクライニング)、座面上下のスイッチ。

 


写真6-2
アスリートとほぼ同一配置のスイッチ類。

 


写真7-1
高級感という面では質感がイマイチのアスリートのドアインナートリムやスイッチ、ドアハンドル。

 


写真7-2
アスリートよりも高級感で上回っているフーガのドアインナートリム類。特にドアハンドルの半艶消しクロームメッキや銀粉で木目を強調したウッドパネルなどが良い。

 


写真8-1
木製(風)やアルミなどが多いダッシュボード下端のトリムに、クラウンはソフトパッドを使い、ステッチ(糸の縫い目)も見える。
 

 


写真8-2
フーガのウッドは本木目に銀粉を擦り込んで独特の風合いを持たせている。
 

 

ダッシュボードの眺めはといえば、この2車は大いに違う雰囲気を持っている。先ずナビのディスプレイの位置が、クラウンはダッシュボード上面より少し下で、エアコンの噴出し口 の下にある(写真 8-1)。対してフーガはダッシュボード上面一杯にディスプレイを配置している(写真8-2)。運転中の視認性では当然フーガの方が良いが、ディスプレイ自体の大きさはクラウンの方が大きい。この配置やディスプレイの寸法などは強いて言えば、クラウンがメルセデス風で、フーガはBMW的といえる。 ただし、最近はメルセデスのディスプレイはダッシュボード上面の高い位置に置いて走行中の視線移動を減らし、安全性の向上を狙っているようだが、それに比べると今時少し低めの位置にディスプレイを置くアスリートはちょっと問題がある。フーガは更にディスプレイの下にダイヤルやらスイッチを所狭しと配置した水平(多少の角度はあるが)なパネルが配置されていて、ある面では斬新なデザインと配置ではある。これに対してクラウンはオーソドックスでボタン類が少ない。

アスリートのオーディオはクラウンに共通のカバーに隠れているタイプで、カバーを開けると黒一色の操作パネルが出てくる(写真10-1)。対照的にフーガはセンタークラスター中段に多少湾曲したオーディオ操作パネルを持っている(写真10-2)。CDなんて聞くことはまず無いようなオッサンには、カバーで隠れていてオーディオの存在を忘れられるクラウンが適しているかもしれない。
 


写真9-1
アスリートのディスプレイは少し低目の位置で、走行中の視認性と視線移動に多少問題がある。
 


写真9-2
ダッlシュボードの高い位置に置いたディスプレイは視認性でアスリートに勝る。


写真10-1
通常はカバーに隠れているアスリートのオーディオコントロールパネル。ロイヤル、マジェスタと全く同じ。

 


写真10-2
フーガのオーディオコントロールパネルはアスリートのようにカバーは無い。パネルは多少湾曲させている。
 

 


写真11-1
ディスプレイの周りにスイッチを配したアスリート。

 


写真11-2
ミニバンも含めて最近のニッサンの上級モデルでお馴染みのコマンドダイヤルを中心としてたスイッチ類。
 

 

さて、室内も充分に見回したので、いよいよ走り出すことにするが、この先は後編にて。  

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