BMW 320i Highline 試乗記
 <特別付録>450万円のクルマ選び 前編  ⇒ 
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国産/輸入車を問わず、満足感を満たすクルマを選ぼうと思ったらば、今の時代では450万程度の車両価格は必要だろう。逆に言えば、このくらいの投資をすれば各自の希望を満たすようなクルマが手に入るということだ。 ただし、このクラスは全ての項目を満足するには至らないから、選択にあたっては充分な検討が必要となる。まあ、クルマというのは1000万円超えだとしても、 それぞれに特徴があって、一台で全てを満足するというのは難しいから、そんなモンだと納得するしかないが・・・・・・。

さて、新春の特別付録として今年こそは満足のいくクルマを買ってやろうと目論んでいるあたなも、500万円程度のクルマってドンナもんなんだ、と庶民からみれば腹が立つような独りごとを言っているセレブのあたなも。 そしてクルマに500万円なんてとんでもない、200万円もだせば充分だし、それ以上は単にボッタクリか無用の性能をもっている反社会的なクルマだといっている 社会派のあなたも、50万円のクラウンに150万円かけたシャコタン、引っ張りタイヤに爆音マフラーetc.が自慢の兄ちゃんも、勿論プレステのグランリスモで全てを語る脳内オーナーの君も、この不景気に気持ちだけは明るくいってみよう。

今回比較する車種はといえば、320i試乗記の付録だから320i ハイラインは当然として、残り3台については何れも国産車を各分野から選んでみた。別に輸入車vs国産車をやろうという訳ではなく、この価格体で320 iとは性格の異なる輸入車が見当たらなかったからだ。 そこで対戦相手だが、まずはクラウン 3.0ロイヤルサルーン。450万円クラスでは最も売れているのではないかという事と、オーナードライバー向けの高級サルーンとして日本向けに徹した点では320iとの対比として興味があったこと も理由の一つだった。 フーガ350GTという手もあるが、これだとBMWとキャラが被るし、何よりクラウンに比べて販売台数で圧倒的に負けている。3つ目はフェアレディZで 、320iが動力性能を全く求めないユーザーを狙ったことに対して、 3.7ℓエンジン搭載の2シータースポーツという全く方向の違う代表として取り上げてみた。最後はランサーエボリューションで、320iと同じ4ドアセダンがベースとはいえ、フェアレディZどころかポルシェカレラにも迫るほどの動力性能を誇る、日本独自のクルマおたく定番モデルとして取り上げてみた。 それに、ランエボを4ドアファミリーカーと偽って山ノ神の稟議を通してしまうという話もチラホラ聞くし。

先ずは例によって主要緒元を比較してみよう。
 

 表1

    BMW 320i Toyota Crown Nissan FairladyZ Mitsubishi Lancer
      High Line 3.0 Royal Soloon 3.7 Version ST  Evo.]HP Package
     

全長(m)

4.540 4.870 4.520 4.495

全幅(m)

1.800 1.795 1.845 1.810

全高(m)

  1.440 1.470 1.315 1.480

ホイールベース(m)

2.760 2.850 2.550 2.650

車両重量(kg)

  1,470 1,600 1,520 1,550
 

最小回転半径(m)

  5.3 5.2 5.2 5.9
 

乗車定員(

  5 5 2 5

エンジン種類

  I4 DOHC V6DOHC V6DOHC I4 DOHC TURBO

総排気量(cm3)

  1,995 2,994 3,696 1,998

最高出力(ps/rpm)

156/6,200 256/6,200 336/7,000 300/6,500

最大トルク(kg・m/rpm)

20.4/3,600 32.0/3,600 37.2/5,200 43.0/3,500

トランスミッション

  6AT 6AT 6MT 6AT

駆動方式

  RWD RWD RWD AWD

サスペンション方式

ストラット ダブルウイッシュボーン ダブルウイッシュボーン ストラット

5リンク マルチリンク マルチリンク マルチリンク

タイヤ寸法

205/55R16 215/55R17 245/40R19 245/40R18

205/55R16 215/55R17 275/35R19 245/40R18

燃料消費率(10/15モード km/L)

12.0 11.8 9.5 10.0

カーナビゲーション

HDD HDD

レザーシート

●(ハーフレザー)

車両価格(\)

4,770,000 4,580,000 4,350,000 4,200,000
 

ベースグレード価格(\)
グレード名

4,450,000
320i
3,680,000
2.5 Royal Saloon
3,632,000
3.7
3,990,000
GSR X
 

備考

    レカロ製シート
標準装着
 

●標準装備 ○オプション

それでは早速エクステリアの比較から始めよう。
外形寸法としては320iとランエボは同等だが、ホイールべースはランエボが110mmも短い。320iはBMW独特の短いオーバーハングと目一杯のホイールベースという基本設計だが、ランエボは並みの国産セダンであるギャランフォルティスの流用だから設計も並の国産車といったところか。 クラウンといえば国産車的設計の代表のようなイメージだが、先代のゼロクラウンで大きくポリシーを変えたことで、BMW顔負けの短いオーバーハングとなり、ホイールベースは2,850mmとBMW5シリーズの2,890mmに迫ってきた。 フェアレディZは2シーターのスポーツクーペだから他の3車と比較するのは無意味なので特にコメントはしない。

外形のデザインについては写真1〜4を参照願うとして、こればかりは各自の趣味の問題とするしかないが、個人的な感想は各写真にコメントをしておく。


写真1:BMW320i
いうまでもなくお馴染みBMWセダンそのもののスタイルは、世界中の車が参考にしているだけに、本物感は充分。欠点は売れ過ぎて街に溢れていることか。


写真2 :トヨタ クラウンロイヤル
メルセデスやBMWに何となく似たデザインは批判もあるが、それでも伝統のクラウンのアイデンティティーはちゃあんと持ってはいる。冠婚葬祭なんでもありの日本のスタンダード。


写真3:ニッサン フェアレディZ
幅広で長いボンネットなど、フロントエンジンの2シータースポーツカーらしい、それでいて結構ユニークなデザインは先代以上に魅力的だが、量産セダンの部品を流用した腰高ボディが気にはなる。

 


写真4:三菱 ランサーEvo.]
元が国産の量産ミドルセダンだが、特徴的なフロントや大げさなリアウィングなどガンダムルックは健在だ。大人が乗るのはチト恥ずかしいが、これがまたランエボの特徴でもある。

クルマというのは人だけでなく、ある程度の荷物も運ぶ必要があるから、トランクの広さというのは結構重要となる。そこで、写真5〜8でトランクルームを比べてみる。
320iは凝ったサスペンションのデメリットで幅方向は狭いが、奥行きは驚くほどに深い。そして、お馴染みの高いトランクリッドによりハイデッキスタイルのお陰で高さ方向も充分だ。クラウンは4車 のなかでは一番長い全長という事もあり、面積的には一番広い。 なにしろこの手のクルマは親会社の担当者を乗せての接待ゴルフに使えなければ話にならないから、ゴルフバック4個分のスペースは当然となる。
フェアレディZの場合は殆ど荷物は積めないと思ったほうがよい。深さが極端に浅いし、ハッチバックで中身が丸見えで、しかも下手にモノを置いたらば急制動にフロントスペースに飛び込んで来ることも考えられる。 そして、ランエボの場合は、ベースのギャランフォルティスに比べて驚くほど奥行きが狭い。実はリアシートの後部はバッテリーなどのスペースとして使われているから、Dセグメントの4ドアセダンの常識からすれば使い物にならない狭さだが、これこそがランエボの特殊性を物語っている。


写真5:BMW320i
幅は狭いが奥行きは充分にある。


写真6:トヨタ クラウンロイヤル
ゴルフバック4個はマストだから当然広い。クラウンはカテゴリーとしては5シリーズと同じEセグメントだから広くて当然ではある。


写真7:ニッサン フェアレディZ
見てのとおりで、トランクルームとしは殆ど使い物にならない。夫婦2人で2〜3伯の旅行すら厳しいかもしれない。


写真8:三菱 ランサーEvo.]
実用車であるギャランフォルティスベースなのに極端に奥行きが浅い?実はリアシートの後ろにバッテリーなどを積んでいるため。
やはりエボは特殊なクルマとの割り切りも必要。

実用車に使う場合は当然ながら後席スペースというのも重要だ。勿論使い方によっては必要ないかもしれないが、年に何回かはリアシートに人を乗せるというユーザーが多いのではないか。そこで、まずはリアパッセンジャーの居心地を見てみよう。 320iは先代E46に比べてクルマ自体のサイズが大きくなったこともあり、今や実用的には充分なスペースを持っている。それでも、決して余裕は無いから、リアシートを多用する用途には5シリーズが向いている。 今更でも無いが320iはあくまで高級ファミリーカーと考えるべきだ。クラウンはといえば、このクルマは公官庁での上級幹部用や大企業の役員用としてショーファードリブンでも使われるし、中小企業のオーナー社長からすれば取引先の大事なお客様を乗せることも多々あるから、 それなりのリアスペースは持っている。
2シーターのフェアレディZについては、当たり前だがリアシートはない。この事実はこのクルマを選ぶ時の最大のネックであり、逆に非現実感を味わうことも出来るという点では、他車とは全く趣を異にしている。どうしてもリアにシートが必要ならば、兄弟分のスカイラインクーペという手もある。 最後のランエボは中級セダンのギャランフォルティスのボディを流用しているから、当然ながらリアシートはファミリーセダンとして必要な程度のスペースがある。クルマ好きのお父さんにとっては、Zを買うのは家族の同意が得られなくても、ランエボならば何とかなる、という期待もある。 だから、Zのユーザーは独身貴族(古い表現だねぇ)か、子育ての終った熟年世代だったりするし、昨今のワーキングプア問題から若者には手が出なかったりするから、結局はオジン御用達が現実か?
 

写真9
BMW320i
 

写真10
トヨタ クラウン
ロイヤル






ニッサン フェアレディZ
2シーターのZは当然ながらリアシートが無い。

写真11
三菱 ランサー
Evo.]

次に前席はといえば、今回の4車は何れも車幅が1800クラスだから、スペース的に狭いとうことはない。 運転中に最も気になる部分といえば、やはりシートの座り心地だろう。国産車のシートといえば駄目な代表のように言われていたが、最近発売される新型車は随分と進歩している場合が多い。勿論、旧来のグニャグニャの安物ウレタンと出来の悪いスプリングや、短い座面。 そして、何より人間の骨格を無視して体の一部しか支えないで、他の部分は浮いてしまう形状等、駄目シートの典型みたいなのも残ってはいるが・・・・。
今回の4車はどれも夫々シートの出来は悪くない。3シリーズのシートは以前から座面が小さいことが欠点だったが現行E90では大分改良されている。ただし、5シリーズのような余裕はないのは仕方がないし、3と5シリーズの一番の違いがシートのような気がする。 それでも320iのハイラインを選べば、お馴染みのレザーシートが装着されているし、この手のレザーは国産車には無いものだから、好きな人から見ればこれだけで買う価値ありとなる。 クラウンといえばフワフワシートと相場が決まっていたが、ゼロクラウンに変身した際にシートも大きくポリシーを変えたようで、大分マトモになった。とは言ってもクラウンには変わり はないから、シート表皮のモケットの質感などは国産車丸出しで、欧州車ファンからみればちょっと引くのもまた事実だ。
2シータースポーツのフェアレディZは、当然ながらサポート重視のスポーツ系シートを装着している。今回比較するグレードは上級のSTだから両サイドはフェイクレザーで座面はスエード風のファブリックで通気孔が開いている。 この手のファブリックというのは古くなった時に表面がボロボロに禿てこないかと心配もあるが、少なくとも新しい時の見栄えは決して悪くない。座り心地も適度に硬くて、最近の国産車の良い傾向であるマトモなシートと評価して良いだろう。ランエボ]は競技用ベース車両のRSを除いて、すべてレカロ製のフルバケットシートが装着されている。 今回比較したハイパフォーマンスパッケージ車の場合はレザーコンビネーションシートとなるが、ランエボのシートは見てのとおり左右端が大きく張り出していて乗り降りは決して容易ではないし、座ってみればガッチリを体をホールドするので好き者には堪らないだろうが 、一般ユーザーなら年中こんなシートに座っていることは耐えられないと思う。そういう意味でもランエボは特殊なクルマであることを忘れてはならない。
 

写真12
BMW320i

写真13
トヨタ クラウン
ロイヤル

写真14
ニッサン
フェアレディZ

写真15
三菱 ランサー
Evo.]


写真16:BMW320i
 


写真17:トヨタ クラウンロイヤル
 


写真18:ニッサン フェアレディZ
 


写真19:三菱 ランサーEvo.]
 

BMWの上級グレードの定番は何度も紹介してきたように、シボが深くて分厚いレザーシートと、さらには同じレザーを使ったドアの内張り、ピッカピカに光輝くニス仕上げのウォルナットのウッドトリムで、この組合せが独特の高級感をもたらしているのは今更言うまでもない。 クラウンの場合は、それだけ見ていればフェイクとは思えない程に良く出来た”木目調”のトリムと、オプション価格が10万円近いような毛足のやたらと長いカーペット風のマットなど、これぞトヨタ的、いやクラウン的な旧人類御用達の雰囲気はBMWとは全く別の路線だから、これはもう趣味の問題と割り切るしかない。 欧州車ファンが仕事の関係で止む無くクラウンを仕事の足にする場合などは、このフィーリングに耐えられるかが重要となる。でも、まあ慣れれば気にする程でも無くなるのもまた事実だが。
フェアレディZのダッシュボードは先代のZ33に比べれば大幅にリファインされているから、ドアを開けた瞬間に愕然とすることもない。それにクルマの性格からしてもBMWやクラウンと直接比べてどうのこうのと言う事もないだろう。 ただし、同じ2シーターというとでメルセデスSLKやボクスター/ケイマンと比べるとマダマダという気がする。そして、ランエボの場合はといえば、これはもう他の3車と比較してはいけないという程に性格の違うクルマだが、それにしても内装のチャチさには圧倒される。 とくに写真のセンタークラスターはオーディオレスで、そのスペースにはメクラカバーと物入れがついているから、余計にチャチに見えるのだが、いやそれが無くてもダッシュボードの質感や形状など全てがチャチだ。なにしろ基本的には2ℓエンジンで180万円也のギャランフォルティスと同じなのだから、贅沢を言ってはいけない。 180万円といえば、ワゴンRの上級グレードにナビを付けたのと同じなのだから。

  
写真20
ウォールナットのウッドトリムが高級感をより高めている室内。このセンスは国産車には無いものだから、4気筒 2ℓの小型車に総額500万円出すユーザーが結構いるのも頷ける。
 


写真21
これだけ見ていると実に高級感があるが、隣の写真の320と比べれば、本物のウォールナットには歯が立たないようだ。


写真22
先代Z33よりは大きく向上した車内の質感。しかし、メルセデスSLKやボクスター/ケイマンと比較すると未だ未だ。


写真23
180万円也のギャランフォルティスの流用だけあってチャチさでは群を抜いている。やはり、このクルマを他の3車との横並び比較をするのは無理がある。

次はエアコンとオーディオの操作パネルを見てみよう。320iのエアコンパネルは左右独立で温度設定ができるが、その 調節はアナログ感覚のダイヤル式となっており、しかも左右独立している。 基本はフルオートで使うのだが、噴出し位置の設定ボタンなども見やすく並んでいる。ナビと一体のiDRIVEはディスプレイが固定されているためにCD用のスロット等はエアコン下のオーディオパネルに付いているし、 パワースイッチや選局ボタンも独立しているから結構アナログ感覚で使いやすい。これに対してクラウンは一見するとCDのスロットが見つからなかったが、もしかしてナビのディスプレイがビヨーンと上を向いて開いて、その 中にあるのかと思ったが、実はセンタークラスター下部の木目調にクラウンマークを付けた部分を開けると出てくる。
フェアレディZは最近のニッサンの手法に沿ったもので、スカイラインクーペとも似ているが実際の操作パネルはデザインが異なる。樹脂パネルの質感は以前のニッサンからすれd大いに改善されてきたが、高級感を感じさせるにはマダマダ改良の余地はありそうだ。そして、ランエボだが、 これは何度も言うように400万円超のクルマとして見てはいけない。

写真24
BMW320i

写真25
トヨタ クラウン
ロイヤル

写真26
ニッサン
フェアレディZ

写真27
三菱 ランサー
Evo.]

さて、前編としてエクステリア&インテリアについて比較してきたが、クルマというのは走ってナンボ、ということで後編では走行しての比較をしてみることにする。  

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