フェアレディZ ロードスター (2006/6/4) (vs ポルシェ ボクスター)
※この試乗記は2006年4月現在の内容です。現在この車種は新車販売が終了しています。





FAIRLADY Z


PORSCHE BOXSTER

 


写真ではそれ程でもないが、実際に2台を並べるとコンセプトの違いがハッキリ判るくらいにスタイルからして大いに異なる。
 

2002年に久々にフルモデルチェンジされた現行フェアレディZ(Z33)は一年後の2003年にロードスターが加わった。勿論ターゲットは米国なのは間違いない。1989年にマツダがリリースしたユーノスロードスターの成功により、世界的に絶滅寸前だったオープンスポーツカーが相次いで復活した。マツダはその後2度のフルモデルチェンジにより現在は3代目(名称は2代目からマツダロードスター)となった。マツダロードスターlはモデルチェンジの度に重く・大きくなっていったが、それでも十分に小型軽量ではある。
これに比べてフェアレディZの場合は元来重量級だから、マツダなどの軽量級スポーツとは購買層が異なる。北米でのフェアレディZはプアーマンズボクスターの位置づけで3.5ℓの350Zロードスターのベースグレードは35000ドルからと、ボクスター2.7ℓのべースグレードに対して約1万ドルも安い。 しかも、ポルシェのべースグレードは何も付いていない文字通りのべースだから、実際の価格差は更に広がる。

米国の2005年販売台数ではクーペを含む350Zの合計では27.3千台で、ボクスターの7.9千台を大きく上回っている。 やはり、1万ドル以上の価格差は絶大なのか?その前に、この2車はライバルとしてみた場合に、フェアレディはどの程度ボクスターに肉薄しているのだろうか。 そんな事を思いながら、今回は日本国内で米国でのベストセラーオープンスポーツを比較してみることにする。


リヤはクーペと完全に共通となっている。

 

クーペのリア。
お互いに同一パーツを使用しているのが判る。

フェアレディZロードスターとボクスターを並べてみると、お互いのコンセプトがマルで違うことはハッキリ判るほどに、全く違うカテゴリーの形をしている。ボクスターに対 してZロードスターはウエストラインが高く、量産エンジンを搭載しているフロントは、ボンネットの位置も乗用車的なのが一目瞭然だ。勿論、2台を並べるようなことをしないで、Zロードスターだけを見 ていれば十分にスポーツカーの雰囲気を出していることは間違いない。
試乗車は既に8000キロ弱を走行しており、ロードスターとしては初期型の2003年モデルだった。 当時の価格はべースグレードで378万円(5AT)、現在は05年9月のマイナーチェンジにより385.4万円となっている。クーペのべースグレードは338.1万円だから、その差は47.3万円と約50万円 にも及ぶ。
室内はオープンである事を除けば、内装自体はそのまんまクーペと同じだが、昨年試乗したクーペの内装はオレンジのレザーシートが装着されていて独特の派手さがあった 。これに対して今回の試乗車はファブリックシートの為に何やら地味に感じる。ダッシュボード付近の眺めをボクスターと比較してみれば、これもまた、外観同様に、いやそれ以上にランクの違いを思い知らされる。ボクスターのシート形状や表皮の質感、ダッシュボードのパネルの質感と仕上げの良さ、それにメーター類の精密な高級感や緻密なデザインに比べると、Zロードスターは余りにも差が付きすぎる。これは、傍に居合わせた複数の デーラーマン氏達も一様に溜息を付いていたから、個人的な感覚に関係ない程の差と思って間違いない。
ドアを開けてシートに座ってみると、着座位置は当然ボクスターよりは高いが、フーガーなどに比べれば当然低いから、普通のサルーンしか知らない人が乗れば、これは十分にスポーツカーの感動を得られるだろう。ドアを閉めると、当然ながらボクスターの ようにオープンの常識を覆す、BMW5シリーズ並みのズシンっという感触は無いが、それでも剛性不足を感じることはない。日本での直接のライバルであろうBMW Z4よりもドアを閉めた時の剛性感は上回る。Z4の場合は剛性不足もさることながら、米国生産による出来のラフさというか、閉めた時の振動でドア内部が振動するような不利な面 がある。
シートの座り心地は既に内外装でボクスターとの違いを思い知らされているから、まあこんな物だろうという居直った目で見れば我慢の範囲内だし、今更欧州のシートと国産のシートの差を指摘する気も無いほどに、この分野での日本の技術は遅れているのは周知の事実だ。 同じフェアレディZでも、クーペと違いロードスターの場合はベースグレードにも標準装着となるパワーシートを合わせてから、ステアリングの上下をチルト機構であわせる。この時メーターも一緒に上下する(カタログにはチルトステアリング&チルトメーターと表記してある)。ボクスター の場合はステアリングをもう少し下げたいと思っても、メーターの上部が隠れるために、結局メーターの位置に合わせざるを得ないから、これは中々良い機構だ。ただし、その機構の為にメーターデザインが制約を受けていることも間違いない。


室内は基本的にクーペと同一。ただし、昨年試乗したクーペが黄色いレザーシートを装着していたのに対して 、今回のロードスターはファブリックシートのため、印象はかなり異なる。

セレクーをDに入れてユックリとアクセルと踏むと、フェアレディZは静かに、スムースに、まるで高級サルーンのように走り出す。 この瞬間から良くも悪くも、このクルマは実は乗用車なのだと思い知らされる。同じフェアレディZでも前回乗ったクーペ版はもっとアメリカンでガサツだったような気がするが、 このロードスターは良く表現すれば品が良くなったと言えるが、悪く言えば折角のゴ太いトルクの塊りのような、アメちゃん丸出しの迫力が無くなってしまったようにも感じる。 原因の一つにはオープン化による補強のためにクーペに比べて100kgも重くなってしまったことが考えられる。車両重量が1560kgでは軽快に走れといっても無理がある。 このために280psエンジンを搭載しているにも係わらず、馬力当たりの重量は5.57kg/psとボクスター(2.7ℓ、240ps)の5.66kg/psと同等になってしまう。
試乗車はロードスターとしては初期のモデルのようだが、それでも前回試乗した初期型のクーペよりは一年以上新しいし、ロードスターの追加時点で、可也の改良を受けたのは周知の事実だ。 初期モデルのクーペはフーガと同じエンジンを載せているとは思えない程にラフなエンジンフィーリングだったが、この点では大いに改良されているようだ。
今回の試乗は全てフルオープンで走行した。一番の興味はオープンとしてのZの乗り味ということになるだろう。まず、風の巻き込みは少ないしサイドウインドウを上げればオープン走行の実用性は十分だ。ただ、少し頭上での風が巻く傾向はあるが、まあ合格 と言っても良いだろう。と、いってもボクスターのように殆ど風は入らないし、それでいて爽快という程のハイレベルでもない。
乗り心地は以前試乗したクーペより遥かに良い。クーペは常にゴッツン、ゴッツンとしていたが、ロードスターは突き上げも無く、これまたサルーンのようでフーガを少し硬めたくらいと思えばよい。 フルオープンで走行中にルームミラーを見ても、振動でミラーの画層が振れている、所謂スカットルシェイクの兆候は顕著には見られない。この点でもドアを閉めた第一印象でのBMW Z4より剛性感が勝るように感じたのは正解のようで、実はZ4はフルオープン走行時にはミラーが振動するのが判る。最も一般にオープンボディにスカットルシェイクは避けられないと思われていたくらいで、ボクスターがオープンとしては異常に剛性が高い訳で、その点ではZロードスターも決して悪くはないと断言できる。正直言って、これは結構以外な結果で、Z4と同程度かそれ以下と予想していたのだが。
操舵性はこれまた初期型クーペのドアンダーで曲がらない特性に比べれば遥かに素直になっていた。これも考えようによっては、初期型の方が アメリカンな雰囲気で味があったという表現も出来る。今回はボクスターとの比較もテーマのうちだが、流石に操舵性については、Zロードスターとボクスターでは比較にならない位に違う。 確かに、スペックだけ見ても、片やミニバンにも使われる汎用3.5リッターエンジンと、D/Eセグメントセダン用のプラットフォームを短縮してホイールベースを縮めたフェアレディZを補強して屋根を取っ払ったZロードスターに対して、 911カレラのコンポーネントを使って、エンジンや足回りを多少スペックダウンさせた代わりに、破格の安値をつけたボクスターとでは、始めから真っ向対決は無理なのだ。
 


ボンネットの中はクーペと全く同じ。 標準でストラットタワーバーが付くが、これもクーペと同じ。
 

次にブレーキについては、最近急速に改善されている国産の中級車以上の常で、一般的な用途には全く問題はない。踏力も 適度でストロークも長すぎる事もない。ただし、これもまたベースグレードでさえブレンボー製の軽量モノブロックキャリパーと ドリルドローターを標準装備するボクスターとは比較するほうが間違っていることには変わりはない。Zロードスターも上級グレードのバージョンST(448.35万円)にはブレンボー製キャリパーが装着されるが、果してフィーリングはどんなものだろうか。 最近の国産車にはスポーツ系の最上級グレードにブレンボー製のキャリパーを装着するのが定番のようだが、これら国産車に装着されているブレンボーキャリパーはポルシェに装着されているタイプとは可也構造的に異なっている。 何よりも国産車向けは2分割のボディをボルトで結合されるタイプの為に、如何しても大きく重くなる。更に、国産車向けは内側と外側のピストンを繋ぐブレーキ液の通路がボディ内部の穴を2分割面のパッキンでシールして使用するという、本当にヘヴィーデューティな使い方には疑問が残る構造をしている。 それに対してポルシェ向けは外付けのパイプで連結している等、小型・軽量で高性能となっているのが気にかかる。


ステアリングと共に上下するZのメーターパネル。
正面が回転計というはポルシェと同じ!Zはスポーツカーであることの主張か?

 

   

今回は米国でボクスターのライバルと言われているフェアレディZロードスターとの比較という企画を行ったが、終ってみれば比較するのに無理がありすぎた。まあ、薄々は感じていたが、今回ハッキリと判っただけでも収穫だったと考えよう。これはもう、バスとトラックを比べるような物で、カテゴリーがマルで違うと思ったほうがよい。
ところで、商用掲示板では夜な夜な国産車原理主義者による輸入車は高すぎる、ボッタクリだ。今や国産車のほうが性能も信頼性も遥かに上だという書き込みで、いつもターゲットになるCクラスや3シリーズ。そして、C200は1.8ℓの小型セダンで内容としてはカローラ1800と同等なのに2倍以上も吹っ掛けているという例の論法だが、それならフェアレディZと 同等の3.4リッターの2シータークーペであるケイマンSはZの3倍近い価格設定をしてボッタクっているとう書き込みがあっても良さそうなモノだが、流石にこれは見た事がない。 理由を考えてみれば中古のカローラ1.5のユーザーから見たら憧れの1.8は新車で200万円也。もしも、試乗の機会でもあれば、その豪華さと静かでパワフルな事に驚き、いつかは手に入れたいと夢を抱いて夜な夜なカタログを見ることになる。そして完全に暗記してしまったスペック・・・・と言っても、大した内容ではないが。ところが、ある日ヒョンなことから見たCクラスのスペックは、なんと憧れのカローラ1.8と同じではないか。しかも話によるとベンツというのヤタラ壊れるし、修理代もメチャ高いらしい。てな訳で、知人からもらってきた中古パソコン(今時Windows9 5だが)を毎月の支払いが大変とはいえ、これも時代に追いつくためと繋いだADSLで、最近嵌っているネットの世界に向かって、夜な夜な一本指でBBSに書き込むことになる。そんなら、一度ベンツに試乗してみるべきだ何ていうのは、ヤ○セの駐車場に入るや否や営業マンがすっ飛んでくる 事が当たり前だと思っているあなたの考え。そりゃSやSLとは言わなくても、EやSLKのオーナーならCクラスの試乗くらい訳は無い。 例え一見さんでもM5、いや525iや323iで乗り付ければ、調査費用なしで見込み客が飛び込んで来たのだから、喜んで対応してくれる。でも、8年モノのカローラで初めてヤ○セに乗り付けたら、どうなるかはご存知無いようで・・・・・。
話を戻して、何故ボススターはボッタクリだ。フェアレディZなら半値で買えると言わないのかという理由は、フェアレディの場合は安いと言っても総額は400万円超 。彼らにとっては元々比較の対象が全く非現実的な価格帯だから、それが更に倍だろうが一千万を超えようが、要するに未知の世界は皆同じ。まあ、そんなことだろうと思うが。

今回試乗したZロードスターのクーペに対して50万円の価格差は、フェアレディの最大の利点である買い易い価格と言う点では、かなり不利となることは間違いない。余程オープンが好きなら話は別だけど、それならBMW Z4の下位グレードが手中に入ってくる。 Z4は最近のMCでエンジンをマグネシュウム製の新型に改装したこともあり、これは是非とも近日中に試乗してみたいと思っている。