Volvo XC60 試乗記特別編 [Volvo XC60 vs BMW X3 前編 その2] 特別編へようこそ。何時ものように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。 室内を見るためにフロントドアを開けて最初に見たのは、実はドアヒンジだった。このサイトの常連読者諸氏ならご存知と思うが、BWM を始めとして欧州のプレミアムブランドといわれるクルマのドアヒンジはスチールブロック製となっている。これに比べると国産車は板金プレスで見るからにチャチい。ただし、少なくとも旧レクサス LS はスチール製だったから、国産車だって本気になれば出来るという事だ。それではスウェーデン製のボルボはといえば‥‥は〜い、おめでとう。BMW と殆ど同じ構造だった。なおボディ側のヒンジについては以前はがっちりと全周が溶接されていたが、最近はヒンジ自体にねじを切ってボディの裏側から高張力ボルト1本で止めるという構造になった。 実はこれはドアの設計を仕事としている読者からの情報で、BMW をバラして調査した結果だという。いやぁ、有り難い情報だ。こういうプロからの確実な情報は大歓迎だ。しかし多くは知ったかぶりの素人のメールで、もう見ただけで「アホかぁ!」っていうのが多くて困ったものだ。と、特別編らしい内容を書いてみた。 ドアを開けての室内を見た時、特に XC60 は「おおっ、これは」というくらいに明るくモダーンで、BMW には無い良さを感じる。そう言えば 900シリーズ時代のボルボのインテリアは確かに北欧家具を髣髴させる独特の高級感があったが、会社が傾きだしてからは手抜きが明らかになり、フォードグループとなってからは見る影も無くなってしまったが、この XC60 を見るとボルボもやっとの事で復活してきたな、という感じがする。なお写真のインテリアカラーはボルボではブロンドと命名しているが実際にはピュアホワイトに近く、この色がまた独特のモダンな雰囲気を醸し出している。 対する X3 は カタログではモカと呼ばれるブラウンの内装で M Sport ではオプションのもので、標準は Mスポ専用のクロス・レザーコンビネーションシートでカラーはブラックとなる。ということは X3 は M Sport でもお馴染みのアルカンターラとクロスのコンビでは無いという事だ。 ![]() XC60 のシート表皮は上位モデルである inscription では本革で、色は写真下の場合は前述のブロンドで座面には通気孔が開いているパーフォレーテッドレザーというヤツだ。X3 では前述のようにオプションのヴァーネスカレザーという何時もの BMW よりも薄くなめした本革を使用している。レザーの質についてはどちらも文句は無い。フォード時代のボルボは安モノのレザーを使っていたのか、ツルツルと滑ってそれ以前のボルボとは比べるべくも無い惨状だったが、ここに来て完全に復活したようだ。 ![]() シートのポジション調整は両車共に当然ながらフルパワーで、その調整スイッチもシートベース側面とほぼ同じ。そしてシートポジションのメモリースイッチはドア側にあるのも両車共同じだ。BMW の場合、メモリースイッチは長い間シートベースの調整スイッチ付近にあったが、最近のモデルでは徐々にドア側に移ってきている。 なおサイドスカットル上の化粧プレート、いわゆるスカッフプレートとか言われているプレートは XC60 では良く見ないと判らないが奥ゆかしく浅い掘り込みで ”VOLVO” のロゴが、そしてX3 は M Sport と言う事でお馴染みの ”M” のロゴが付いている。M モデルでないのにMロゴを付けるというこの BMW 商法に嵌った読者も多いだろう。全く上手い商売を考えてモノだ。その面ではボルボもスポーツモデルとして "Rなんてら” っちゅうシリーズとかもあるが、Mに比べればまるでマイナーでハッキリ言ってステータスも無い。 ![]() ドアのインナートトリムも両車共に中々高級感があるのは伊達にプレミアムブランドを謳ってはいない、と煽てておく。特にこれも XC60 のブロンドとダークグレーのツートーンの配色が実にセンスが良い。フォード、というかハゲタカに乗っ取られていた当時はハゲタカセンスで安モノの偽プレミアムだったが、ここで漸く本来の北欧センスが戻ってきたという感じだ。 そして X3 はといえば、これはもう上手いの一言で「伊達に長年プレミアムブランドやっちゃいねぇぞ」みたいな状況だ。写真は中間グレードの xLine なのに高級に見えるのに感心するが、実はアームレストとその付近はステッチの入ったパッドは何となく弾性樹脂のフェイクっぽい気もするが、だとしても良く出来ている。
前述のシートポジション調整がドア側にある件で、そのスイッチは何れもドアノブの隣にある。なお XC60 ではその前方にあるスピーカーのメッシュがメッキされた金属 (質) のもので、中が薄っすらと見えているが、これがまた独特の雰囲気作りに貢献している。X3 ではこの位置に大きな "X” のロゴが刻印されていたのを今知ったことろだ。 ![]() |
実は最初に XC60 のインテリアを見たのは後部ドアを開けて中に乗り込んだ時で、この時に視界に入ったフロントのインパネを見た瞬間に、おっ、こっこれは! と、その独特のセンスの良さに感心したのだった。まあ偶々試乗車のインテリアカラーがブロンドだった事もあり、これがブラックだったら感想は変わっていたかもしれないが‥‥。 そして X3 はというと、これもドアトリムと同じで実に安定した高級感を醸し出しているが、そこはドイツのセンスであって北欧テイストのモダーンインテリアとは違い、悪く言えばゲルマン的暑っ苦しさ?も感じるが、ドイツとは言ってもバイエルンという都会のセンスは一応感じられ、ここはシュツッツガルトの田舎企業であるメルセデスベンツとの違いだ。これは国産車で言えば横浜みなとみらいの日産とにゃごやのトヨタみたいなものだ。 ![]() 前述のように最初に XC60 の後席に乗ってそのモダンな雰囲気が大きな驚きだったが、その原因の一つに大型ディスプレイを主体としたセンタークラスターがあった。尤もこの手の手法は既にテスラでより大型のディスプレイを使って実現されているから決して珍しモノでは無いのだが、XC60 の場合は周辺の素材の質感とデザイン、そしてディスプレイの画面へ表示される内容のセンスが極めて良い事がインパネ全体の雰囲気を大いに高めている。これに比べてテスラの場合は単にパソコン用のモニターをくっつけただけ、みたいな感じだ。 対する X1 は最新の BMW としては標準的なモノで、これもエアアウトレットの外周やオーディオ&エアコン操作パネルの一部に半艶消しのクロームを使うなど中々の高級感を出しているが、やはり XC60 程の先進性とお洒落な雰囲気は感じられない。 ![]() BMW に限らずドイツ車の場合にはダッシュボード右端は回転式のライトスイッチが配置されている。それでは欧州車と言ってもドイツでは無く北欧のボルボはというと、そこにライトスイッチは無く、この面では日本車に近い。なおライトスイッチはどこかと言うとステアリングコラム左側から出たスイッチを使用するという、これまた日本車と同じ方式だ。と書くと「日本車は右側だぞ」なんて言う輩が居そうだが、日本車だって英国向けでは右ハンドルでもライトスイッチは左側にある。これは散々言って来た事だが、ISO による国際規格ではライト&ウィンカーは左でワイパーは右と決まっているのだ。 ルーフ先端のオーバーヘッドコンソールは、その昔に航空機を模していろんなスイッチやら表示をゴチャゴチャ付けた時代もあったが、結局これは流行らずに何時の間にか廃ってしまった。そしてその後は最小限の質素なものが主流となって現在に至っているが、そんな時代でも今回の2車は結構金を掛けている。特に XC60 ではそのデザインセンスはインテリアの他の部分と共通していて実に雰囲気が良い。特に先端部に赤とオレンジで表示する LED ディスプレイが実に良いアクセントになっている。 対する X1 では XC60 程ではないが結構デザインは凝っているし質感も良く、最近の標準からすれば随分と高級感があるが、やはりここは XC60 のモダーンな雰囲気に軍配を挙げたい。 最近のクルマでは定番のセンターコンソール後端を利用したリア用エアアウトレットは、両車共にコントロールパネルまで付いている。このパネルも実は XC60 では写真以上に良い雰囲気で、これも一目見て気に入った部分だ。更には XC60 ではBピラーにもリア用エアアウトットが装備されていて、これはDセグメントでは珍しい。 X3 もパネル下部には一通りの調整を出来るだけのスイッチが並んでいる。ただしデザインと言う面では XC60 に一歩譲っている。 ここまでの処では北欧のモダーンインテリアを満喫させてくれる XC60 にアドバンテージがありそうにも感じるが、まあこれは個人の好みでもあるので断言はしない事にする。そしてクルマと言えば走ってナンボだから、ここはやはり走りを比較してから結論を出すべきだ。 と言う事で、肝心の走行比較は後編に続く。 ⇒後編へ |