BMW X4 xDrive 28i (2016/10) 後編 その1

  

BMW のXシリーズはどれも運転席の位置はそれ程高くはないから、決してよじ登る程の動作の必要は無く、まあサルーンよりは高いがそれ程の違和感はなく乗り込むことが出来る。シート表皮は実際に体が触れる部分の多くは M Sport 専用のファブリックで、これに左右が人工皮革のサポート部分となるが、座面のファブリックは同じ M Sport とはいえ本皮が標準のX5 に比べて滑りにくさ、要するにサポートという点では勝っている。ここで上体を少し左右に動かしてみると端面の盛り上がりが大きい事から体をシッカリとサポートすることで M Sport らしさを感じるが、国産のこの手のスポーツシートよりも自由に動く範囲は広く、これは欧米人との体型の違いだろうか。そう言えば日本人男性としても可成り小柄なドライバーが BMW の M Sport を買ったらばサポートが全く効かないと文句を言っていたのを聞いた事がある。

シーベルトを締めて、さてエンジンのスタートはと考える事も無く BMW に共通なセンタークラスター右のメータークラスターとの間くらいにあるプッシュボタンを押すが、この時隣接するアイドリングストップのキャンセルスイッチを押すことも忘れない (写真41) 。あれは個人の好みもあるが、キャンセルを忘れて右折の為に交差点内で停車していて、それ今だとアクセルを踏んでも直ぐに発進せずに肝を冷やすことにならないように、これはもう常時OFF モードが欲しいくらいだ。

AT セレクターも他の BMW車と同様にコンソール上にある電子式で、右側面のボタンを押してロツクを解除しながら手前に引くという何時もの動作をすれば良いだけだ (写真42) 。おっと、勿論ブレーキペダルを踏んでからだが‥‥。そして電気式パーキングブレーキの解除もBMW 共通の場所と形のスイッチを押すことで解除される。と、ここまでは前回の試乗記の主役であった X5 と全く同じだ。


写真41
スタートボタンはBMW各車に共通な位置と形状のものだ。


写真42
これまたBMW各車に共通の電子式ATセレクター,パーキングブレーキスイッチ,そして走行モード切り替えスイッチ。

 


写真43
例によってウレタンパッドのペダル類。

走り出して最初に感じるのは4気筒 2.0L ターボエンジンのスムースなことで、以前から BMW の4気筒は流石に ”バイエルンのエンジン屋” らしく滑らかではあった。とはいえ BMW と言えば思い浮かぶ 6気筒、いわゆるシルキーシックスのスムーズさには及ばなかったが、今回の4気筒はそれに近いくらいのスムースさに驚く事になる。ただし、同じくウルトラスムーズとはいってもそのフィーリングはちょぃと違う。シルキーシックスは振動は無いのに排気音は実に軽快に鳴り響くが、X4 では本当に静かで「マルで電気モーターのよう」と表現しても嘘にはならないくらいだ。言い換えれば BMW らしき官能的なフィーリングは無い訳で、この辺は難しいところだが、BMW に限らずこれが世の中の流れなのは間違いない。

走行モードはデフォルトのコンフォート、要するに他社で言うところのノーマルのままで片道3車線の立派な国道を流れに乗って巡航する。この時、回転計の指針は1,500rpm 辺りを指していて、その後流れが遅くなって1,000rpmくらいまで下がった辺りでシフトダウンされたようで、回転計は1,200rpmくらいを指している。ここからゆっくりとアクセルペダルを踏み込むと2,000rpmくらいでシフトアップが起こる。最近のBMW 各車はこの X4 も含めて8速AT が搭載されているから、AT ミッションのこまめなシフトアップ/ダウンにより回転計の針の動く範囲は少ない。その昔は AT といえば3速が当たり前で、メルセデスの4速AT の先進性に驚いたものだった、とジジイが申しておりまする。

それではここで走行モードをSPORT に切り替える事にする。切り替えスイッチは今更言うまでも無く AT セレクター右側の押し釦で奥側がSPORT ,手前がECO になるのも何時ものとおりだから、これまたBMW の運転経験があれば迷うことは無い。えっ、俺はBMW オーナーだけど、そんなの知らねぇぞっ!って、あ、いや、まあ、確かに E34 5シリーズには無かったかもしれないっスねぇ。

話を戻して1,500rpmで巡航中に SPORT モ―ドに切り替えると回転計は500rpm 程上昇するから、ここから踏み込んでみると3,000rpm くらいまではシフトアップが起こらない。これは言ってみれば高性能車をマニュアルミッションで走行させる時、マニアなら3,000rpmくらいで巡航するから、SPORT モードは正にそういう運転をシミュレートしている事になる。これは確たる証拠はないのだが、常に3,000rpm以上で巡航していたクルマ好きドライバーのクルマは、2万キロ位でトロ臭い運転をしていた同型車よりも明らかにエンジンのレスポンスもトルク感も上回り、とりわけレッドゾーン近くでのスムースさに勝っている場合を結構知っている。

話がまた脱線してしまったが、今度は SPORT モードでのフル加速を試みる事にする。前の車が左折して直前が開いた時にはクルマの速度は約20km/h で、ここからフルスロットルを踏むと短いタイムラグの後にシフトダウンが起こり、それと共に回転数が上がっていく。この時でもエンジン音は控えめで音質も軽快な感じで、まあ悪く言えば8気筒のド迫力は元より6気筒の迫力も無いが、この軽快感だって悪くは無く、この辺は好みの問題だろうか。

X4 xDrive 28i のエンジンは現行3シリーズ (F30) の前期型 328i (⇒ BMW 328i 試乗記 (2012/2) ) と同じN20B20A型 4気筒 2.0L 245ps,350N-m だが、車両重量が 328i の1,560kg に対して X4 は 1,870kg だからその差は何と 310s にも及ぶ。その為にパワーウェイト (P/W) レシオは 328i の 6.4ps/s に対して 7.6ps/s という具合で、この 328i のP/W レシオは数値的にトヨタ 86 (6.2kg/ps) に近い値であり、加速感も 86 と同等のマアマア速いスポーツカー並だった。対する X4 の 7.6ps/s という値は一般的な国産SUV であるエクストレイル (9.8ps/s) やハリアー (10.3ps/s) よりは可成り良いがスポーツカー並と言う程でも無い。それで実際の体感はと言えばエクストレイル等よりは遥かに活発に走るが、勿論 86 程ではないという、まさに P/W レシオの数値そのまんま、というところだ。

なお現在の3シリーズは後期モデルから4気筒 2.0L エンジンは B48B20A という全く型式の異なる新型184ps 270N-mとなり、320i ではこのエンジンを搭載し、その上位モデルでは同じエンジンにモーターを追加したハイブリッドで 330e という名称となっていて、4気筒のハイチューンエンジンを積む 328i は廃止となってしまった。

写真44
メータークラスターは X5 と共通というか5シリーズサルーンとも共通だ。


写真45
X4 に比べると左側の大径メーター下部に液晶表示の燃費計が追加されている点が異なる。


写真46
これまた使うことは殆ど無いがステアリングに仕込まれた立派なパドルスイッチ。

この先は ”後編その2” に続く。

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