BMW X4 xDrive 28i (2016/10) 後編 その2

  

さてそれでは操舵性や旋回性はどうだろうか? 結論から言えば中心付近では多少の不感帯を持たせて、それでいて決してレスポンスが悪い訳ではなく、安定性と応答性を両立させた正に BMW の定番的フィーリングであり、操舵力も適度に軽いが走行モードを SPORT にすれば多少重くて中心付近の不感帯も少なくなる。それでも一部の国産GTカーのようなガキっぽくわざとらしいクイック感ではなく、まあ大人のフィーリングということだ。ここで前回試乗した X5 (⇒ X5 xDrive 50i 試乗記) と比べるとどうかと言えば、ステアリング系の特性自体は結構似ているが車両の大きさ、重さの何れも X4 より上回ることでレスポンスとしては X4 に軍配が挙がる。

それでは X4 の旋回性はということで、今回は以前から BMW やポルシェ等多くの試乗車のハンドリングを試してきた秘密のコース!に向かうことにした。久々のコースを早速走ってみるために走行モードを SPORT に、そしてシフトモードはマニュアルに切り替えて、先ずは最初のコーナーに入って行く。なお一般道ということも有り速度自体は各コーナーの入り口でそれ程変わる事も無いので、何を隠そうミッションは殆ど3速に入れっぱなしに近い状態になる。それでもマニュアルモードを使用するのは肝心なところで勝手にシフトアップ等されないためだ。それで最初のコーナーに多少慎重な速度で侵入してみると、4WD ということもあり RWD のBMWのような ”わざとらしいくらいのニュートラル感(?) ” ではないが、アンダーステアも弱く安定したコーナーリングを見せてくれる。そこで次のコーナーは少し速度を上げてみると素直な特性は変わらないが、途中で思ったよりも外側のコースを通り始めたので少し切り増しが必要だったが、チョッとステアリングで修正すれば直ぐに本来のコースを戻ったし、いやこれは SUV としてはなかなかのものだぞ、という気持ちも湧いてくる。それでは前回試乗した X5 xDrive 50i と比べてどうかと言えば、あちらは図体も一回り大きいし、車両重量は2,300kg と今回のX4 (1,870kg) よりも430kg!も重く、しかもフロントには V8 4.4Lターボエンジンを載せているから X4 の直4 2.0L ターボよりも遥かに重いモノがフロントアクスルの荷重として掛かっている訳で、まあここまで言えばX4 の方が明らかに軽快はハンドリングなのは想像できるだろう。

ただし、430kg もの差という程には感じないのもまた X5 の凄さだが、その為にはボディのフロントセクションが大幅にアルミ化されているなど、千二百万円クラスの価格は伊達ではない、と何やらX5 の話になってしまったが、今回のX4 のコーナーリングは SUV としては極めてハイレベルな事は間違いなく、結構「駆け抜ける喜び」だって味わえる。とはいえ重心の高さはどうにもならない訳で、調子に乗りすぎると「駆け抜けた苦しみ」となるので無理は禁物だ。

ということで、コーナーを頑張って云々なんていうのは X4 の本来の使い方では無いことは当然であり、それよりも一般道での巡航時の安定性や乗り心地の方が重要だが、これに関しては適度な動力性能と安定した走り、そして適度にクイックで思った通りに反応するステアリングなど、実際にこのクルマを運転して巡航している時の安心感と楽チンさは国産 SUV ではとても味わえないものだ。まあ国産 SUV と言っても色々あるが、それじゃあ RX や NX などレクサスの車種ならどうかと言えば、あの手も悪くはないが、やはり X4 や X5 と比較するとマダマダ敵わないのは車作りで100年間の経験の差が効いてくるのだろうか。

写真47
直4 2.0L ターボで 245ps/5,000rpm 350N-m /1,250-4,800rpm を発生するN20B20A エンジン。直6 を積むスペースに直4 2.0Lだから前部がスカスカとなっていて、これが軽快なハンドリングに貢献している。

写真48
X3 前期型では 28i と言っても直6 3.0L NA で 258ps/6,600rpm 310N-m/ 3,000rpm を発生するN52B30A エンジンを搭載していた。4気筒に比べて前方まで目一杯エンジンが詰まっている。

 


写真49
X5 はフロントに積む重量級のエンジンの分だけボディをアルミ化して重量軽減を実施している。
X4 はオーソドックスな鋼板による板金構造となっている。

ところで X4 のクーペボディの場合後方視界はどうかという事が気になるだろう。実は写真50 のように後方視界は殆ど無い! えっ、それじゃあ運転しにくいし特にバックなんか危険じゃないのか? という疑問があるだろうが、写真51 のようにリアのカメラがあるから後方視界はは問題なし。それにしてもコレを見ての車庫入れって、何となく国産高級車っぽいと思うのだが‥‥。

最後にブレーキについてだが、これはもう今更言うまでもなくブレーキユニットに金を掛けないBMW らしく、見た目はセコい鋳物の片押しキャリパーで、しかも摩擦係数の高いパッドを使用しているから車両重量の割にはキャリパーもローターも小さいものが付いていて増々情けない気もするが、勿論軽い踏力で良く効くのは何時もの通りだ。そして最近のBMW の例に漏れずに、以前のようなカックン気味の喰いつくような特性は影を潜めているのも同じだ。


写真50
リアウィンドウは狭いために後方視界は良くない。


写真51
後方視界の悪さはバックモニターでカバー。しかしこういうのって何やら国産車っぽい。


写真52
M Sport もスタンダードもタイヤサイズはフロント245/45R10、リア275/40R19が標準となる。


写真40
BMW の常である車格の割にショボいブレーキキャリパー。

ということで X4 xDrive 28i のまとめしては、X5 に比べて適度な大きさと価格といえば X3 だが、如何せんあれはカッコが悪い。MC でフェイスリフトされて大分マシな顔にはなったが、あの四角い商用車のようなボディにはちょっと耐えられない、というユーザーにはドンピシャだが、その分価格はベースモデルでも712万円もするし、今回の M SPORT では744万円だから、これはセダンならば 528i M SPORT の754万円とほぼ等しい。まあカブリオレやクーペというはベースモデルのセダンに対して割高になるのは仕方ない、とはいえ X4 の割高感は結構なものだ。結局この辺はオーナーの考え方と嗜好しだいで、何時も主張しているようにクルマなんて自己満足の道具だから、他人がとやかく言うものではなく、自分で良いと思うものを買えばいい、という事が特に感じられるのが今回の試乗車だった。

それでは、この X4 が同価格帯の SUV と比べて果たしとどうなのだろう、という事が気にかかる。そこで特別編として Porsche Macan と比較することにした。 ここから先は例によってオマケだから、言いたい放題が気き入らない人達は、読まないことをお勧めいたします。

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