BMW X3 xDrive 20d (2017/12) 前編 その1 |
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BMW が初めて SUV を発売したのは 2000年に発売された初代 X5 (E53) であり、当時オフロード車といえば一般道での走行は目をつぶって不整地での走破性を重視したクロスカントリー車であり、それ以外と言えばライトクロスカントリー車 (ライトクロカン) 等とよばれたサルーンをベースとした軟弱なモデルで、勿論これとてハンドリングなどを論ずるレベルでは無かった。 そんな中で高級クロスカントリー車としては唯一の存在で、オフロードのロールスロイスとも言われていたのがレンジローバーだったが、オフロード走破性と乗り心地を重視したためか高速での安定性が悪く、勿論大きなロールで旋回特性も全く駄目。オマケにエンジンはGM から製造権を買い取った恐ろしく旧式な V8 OHV で、更にはクルマ自体の信頼性が半端無じゃないくらいに低い事から、路上で行き成り身動きが出来なくなる事もある等問題も多く、折角の他に類の無いクルマもこれでは販売はイマイチだった。 そんな状況の中でレンジローバーを製造するランドローバー社は1994年に BMW がローバーグループを買収した事により BMW 傘下となり、次期レンジローバーは BMW の主導で開発されていて、その噂はレンジローバーの欠点が一掃されるかもしれないという期待が広がった。ところが、2000年に BMW はローバーグループを手放した事で開発中の次期レンジローバーは宙に浮いてしまう事になった。そのレンジローバーを元に BMW 版として発売したのが初代 X5 であり、2000年の発売時は 4.4i という V8 4.4L 286ps 440N-m エンジン搭載で価格は835万円というグレードのみだったから、当時としては結構な高級車だった。なお X5 はローバー売却とは関係なく元々レンジローバーの BMW 版を出す予定で開発していたモノだったようで、確かに売却決定で急遽 BMW 版を設計するのは時間的に不可能だ。この X5 はサイズも全長 4,665 x 全幅 1,870 x 全高 1,705o 、ホイールベース 2,820o という、当時としては結構大柄なクルマだった (写真1) 。 発売当時に X5 4.4i に試乗した時の第一印象は兎に角デカくて威圧感万点だったし、V8 エンジンの強力なトルクや当時の SUV の常識を完全に覆す旋回性能の高さなど、これは画期的な乗り物だった。その後 2001年には X5 にも 直6 3.0L 搭載の 3.0i が追加され、価格も 645万円と大分買い易くはなったが、それでも当時の感覚では普通のサラリーマンが買える価格では無かった。後にこの 3.0i にも試乗したが、その時偶々助手席に同乗した友人曰く、コーナーで遠心力を感じる SUV って初めてだ、と言っていたのを思い出した。なおクロカン系とは異なる乗用車ベースの所謂 SUV のルーツとも言えるトヨタ ハリアー (レクサス RX) が発売されたのは 1997年だから X5 より3年早かった事になる。 |
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そんな状況の折、X5 の弟分ともいえる初代 X3 (E83) が発売されたのが 2004年で、エンジンバリエーションは何れも直6 の 2.5L (2.5i) と3.0L (3.0i) 、価格は其々 513万円および573万円であり、2.5L ならば500万円チョいと大分買い易くはなった。 しかしこの X3 は兎に角カッコの悪い車だった (写真2) 。全体に角ばっていてフロントデザインも何故か安っぽくて、見る角度によってはこれが 500万円以上もするとは誰も思わないだろう、というくらいだった。そのカッコ悪い X3 が2代目 F25 に FMC されたのが E83 から7年後の 2011年で、スタイルも大分マシにはなったが、未だイマイチの部分は多々あった。なお F25 とその後期モデルをベースにしたクーペの X4 については何れも xDrive 28i の試乗記があるので参照されたい。 ここで新旧の X3 を比較して見ると先代 F25 と比べて G01 のアウターサイズは全長とホイールベースが +55o 、全幅は+10o と何れも多少大きくなっているがそれ程の差でも無い。因みに初代 E83 は F25 より少し小さいから、X3 の場合は FMC 毎のサイズアップは極控えめだった事が判る。 エンジンについては F25 と比べると特にトルクが大幅にアップしている。というのは G01 はエンジンも一新されて BMW として新時代のモジュラータイプであるB系のエンジンとなっているからだ。なお E83 は直6 2.5L で、やはり時代を感じるものがあるが、2.5L のシルキーシックスも捨てがたいフィーリングがあった。 |
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さて今回の 新型X3 の試乗車は xDrive 20d でデザインラインは M Sport であり、このクルマの内外装については例によって既に日記にてより大きな写真を掲載してあるので、そちらを参照願いたい。 そして、こちらの試乗記では内外装編としては新 (G01) 旧 (F25) の X3 を比較する事とした。ところで F25 は大きく分けると前期型と後期型が存在し、後期型ではフロントのフェイスリフトが実施されていて、X3 としては随分と洗練されたのだが、今回のエクステリア写真では前期型を使用している。あっ、それって新型をより良く見せるためのセコい戦略じゃねぇか、って、べっ、別にそんな大それた事は考えてはおりませぬ。只々手持ちの写真の都合でございまする。 でもまあ本音を言えば評論家の大先生は新型の時はよいしょしまくり、あんなガラクタをよくもあそこまで誉められるもんだ、流石プロは違う、と感心したのに新型が出ると行き成り旧型は酷かったが新型は大幅に改良されている、なんて事を平気で言う。勿論新型だって大したモノじゃあないんだが。それで少しはそれを見習って新型の良さを強調しよう‥‥なんていう企みも無いので念の為。(ムキになるのが怪しい) それでは先ずは斜め方向から眺めてみると基本的にはキープコンセプトであり、SUV だから決してスマートでは無い。まあ全長の割に背の高い SUV はサルーンのような低く安定性のあるデザインが難しく、ましてやスポーツカーのような低く幅広のスタイルは望むべくも無いから仕方無いのだが‥‥。尤もこの辺は個人の好みもあり低いスポーツカーを誰もがカッコ良いと思う訳も‥‥いや、やっぱりカッコと思うでしょう! |
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新型のフロントビューはボンネット位置が高い SUV ということもあり、キドニーグリルが高さ方向に大きく、またセダンのようにライトがグリルに繋がっているという事も無い (写真5-1) 。対する先代 (F25) は新型に比べてキドニーグリルは少し小さく (特に高さ方向) セダンに近い。比較の為に F25 後期とほぼ同じ X4 (F26) および新型5シリーズ (G30) とも見比べる (写真5-2) と、X4 は F25 前期に対してヘッドライトがキドニーグリルまで繋がっていて 3シリーズセダンのようだ。これは G30 でも同様であり、この点では G01 は少し違っている。なお写真の G30 はグリルがブラックアウトされている事で随分と見た目が違っている。 サイドビューに関しては G01 と F25 のサイズを比べると前述のように全長が+55o (4,665→ 4,720o) 、ホイールベースも+55o (2,810 → 2,865o) と多少長くなっているが、全高については両車とも1,675o と変わらない。 ところでサイドビューの写真はオリジナルを旨とする当サイトとしては珍しくメーカーのオフィシャルフォトを使用しているのは丁度良い写真を撮影出来なかったからだ (写真6) 。まあこの辺は色々事情があって思うように出来ない事もある訳で、この手の試乗って結構難しいんでっせぇ。 リアビューについてはコンビネーションランプ形状が全く新しい形状で、5シリーズツーリング (G31) とも異なっているが強いて言えば先代 X3 (F25) に近いから、ここは踏襲しているとも言える (写真7) 。 |
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リアゲートを開けるとそこに現れるラゲージスペースはどちらも十分なスペースがあり、それは幅方向に突起が少ないことも幸いしている (写真8) 。奥行きは車両全長が 55o 長い新型がその分長い、という程でも無く、一見すればそれ程の違いは感じられなかった。SUV はステーションワゴンに対して室内が高い為にラゲージエリアの容積と言う面では結構有利になるが、ただしそれは高さの高い荷物を積んだ時であり、ハテ、そんなものを積む事はあるのだろうか? まあ夜逃げには頼りになるかもしれないが、普通はそうなる前にクルマを処分しているから大したメリットとはなりそうもない。 ところで、写真9 の F25 前期型のヘッドライトを見ると、ホンの6年前なのに妙に古めかしく感じるが、それでも後期型 (写真5-2 F26参照) では大分近代的になってはいる。 |
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そしてインテリアについてはその2にて。 |