BMW M2 Coupe (2017/1) 後編 その1


  

前編の比較でも判るように M2 と M235i の内装は限りなく同じであり、ということは 220ï M Sport とも同じで、更には 1シリーズと 2シリーズのインテリアは特にフロントについてはこれまた殆ど同じだから、M2 のドライバーズシートに座っても特別な感動は無い。要するに止まっている限りは 220ï クーペと同じという事だ。

何やら初めから否定的な事を言ってしまったが、まあクルマというのは走ってナンボだから先ずはエンジンを始動する。その方法も勿論 1 & 2 シリーズに共通な位置と形状のボタンを押す (写真31) 。この時に当然ブレーキペダルを踏むのだが、これがM モデルらしいアルミスポーツペダル‥‥で無いことは BMW を知っていれば当然であるが、M2 のブレーキペダルは逆三角形のパッド形状で、その位置と左側の空白と共に3ペダル MT 車からクラッチベダルを取っ払ったと推定できる (写真32) 。それで実際にエンジンが掛かった瞬間の音は如何にも高性能車という実に良い音がして、やっぱりMモデルは違うと思わせる。

次に AT セレクターはといえば 220i とほぼ同じコンソール上の同じ位置にあるが、良くよく見ればセレクターレバーの形状が違う (写真33) 。そこでレバー頭部を拡大してみると 220i、というかM235i も同様だがBMW のAT 車に共通した電子式だが、同じ電子式といぅても M2 は M5 などと同じで古くは E60 M5 の DSG からの伝統であるパターンを採用している (写真34) 。これはMモデルに共通のようで、例えば X5 M もこのタイプのセレクターが装着されていて、これを操作する時にこそオーナーは本物のMを所有する実感を感じるのだが、何を隠そう X5 M のミッションはトルコン式のAT だった。そんな事もあるので、もしかして M2 もトルコンかぁ? 何て思ったりするが、実はちゃあんと DCT タイプを採用している。

そしてパーキングブレーキはと言えば世間では電動式が主流となりつつある時代だが、M2 は2シリーズと共通のレバー式だ。そういえば3シリーズも未だ電動式の採用に至っていないが、恐らく次期モデルでは電動化されるだろう。尤もレバー式にも良いところはあって、これを旋回中に引くことでリアタイヤをブレークさせるような特殊な運転に適しているいからジムカーナ等には威力を発揮する、というか電動では出来ない。


写真31
エンジンスターターボタンは BMW 各モデルに共通の形状と場所にある。


写真32
伝統的にショボい BMW のペダル。


写真33
センターコンソールも2シリーズ (と1シリーズも)と共通となっている。


写真34
だだしATセレクターは同じく電子式ながら形状とパターンはMモデル独特のもので2シリーズとは異なっている。

ゆっくりと発進すると DCT であることを特に意識しないで済む程度のスムーズさは備えているから、そのままゆっくりと駐車場内を進む。実はこの駐車場は出口で公道との段差があり、ここを最徐行でしかも斜めに降りないと下腹を擦ったりホイールを痛めたりするそうで、確かにホイールの角には多少の打痕があった。しかし低い車体では M2 以上のポルシェ 911では、この程度の段差で腹を擦るなんて事は無いのだが‥‥。やはり生まれが乗用車だから無理に低くて硬いサスを装着していると何処かで無理があるのだろうか、と最初からズッコケ気味だ。さて公道に出てハーフスロットルで加速してみると、そんな程度でも十分なトルクを感じるし実際に車速は簡単に上がっていく。その後も広い2車線の道路を速い流れに沿って巡航するが、途中で前車の減速や信号などで再加速する際にも活発な加速は多いに頼りになる。

M2の 0-100q/h 加速は欧州仕様の DCT で 4.3秒とカタログに記してあり、これはポルシェ911カレラ(PDK) の4.4秒と同等以上で、確かに速いことは間違いないし、街中ではこの性能を発揮する場面は無さそうだ。とはいえ加速の良いクルマはクルマ好きからすれば実に気持ちが良い、と褒め讃えては見たけれど、しかしポルシェカレラと同等の加速とは言われてもフルスロットル踏んでみたらば何となく伸びがない感じがするのは気のせいだろうか。

そのポルシェといえばレーシングカーばりのレスポンスを誇る PDK があるが、同じDCTタイプのミッションを搭載した M2 はといえば、先ず同じBMWのトルコンタイプの 8AT と比べれば明らかにレスポンスが良い。ただしポルシェの PDK と比べると流石に一歩を譲るのは仕方ないが、まああれは別物と考えよう。なお今までのところは AT セレクター以外は殆ど同じだった M2 とM235i だが、パドルスイッチについても明らかに形状が違う (写真35) のはトランスミッション形式が違うからだろうか? しかしパドルスイッチなんて単なる電気式スイッチの筈だから共通でも良さそうだが、そこも本物Mとしての拘りか?

さてこの様な高性能車は実際の加速と共にその時のエンジン音が重要だが、前述のように既にエンジンを始動した瞬間の音で十分に魅力的なのは判っていたが、加速時の音も中々スポーティーでドライバーをその気にさせるには十分だ。M135i の排気音がどうだったかの記憶は定かではないが、M2 程の良い音がした記憶は無いところをみると、多分これについては M2 の勝ちだろう。まあ排気管の本数の違いなどを見ても排気音で差をつけることは当然とも思えるが。


写真35
パドルスイッチもM2 と2シリーズでは形状が異なっている数少ない部分だ。

この続きはその2にて。

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