Mercedes-Benz (W213) E220d (2017/4) 後編 その1 |
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ドライバーズシートに座った感覚は E200 と全く変わらいのは当然で、エンジンを始動するための手順も同じだ。そしてスタートボタンを押すとエンジンが始動してアイドリング状態となるが、この時の振動は当然ならばガソリンエンジンの E200 に比べれば極僅かではあるがディーゼルエンジン独特の音と振動が感じられるが、神経を集中しないと殆ど気が付かない程度だ。 これまた E200 と同じステアリングコラム右側の AT セレクトレバーをDレンジに入れてダッシュボード右端底面にあるパーキングブレーキのリリーススイッチを引いていよいよ発進すると、特に変わった事も無く前進するが、この時点で既に充分な低域トルクが感じられる。そこから公道とは言え狭い裏道を進むが、この時も強力な低域トルクのお陰で実に走り易い。裏道を200m 程走ってから表の道路に出てここから最初の加速をした時のトルク感も勿論十分だが以後は E200 との比較を行ってみる。 デフォルトの COMFORT モードで負荷が少なく殆どアクセルを踏み込まない情況での巡航では回転計の針は 1,200rpm くらいを示しているが、この時点からシフトダウンが起こらない程度に加速した場合のトルク感は何故か E200 の方が少し勝るように感じた。そこで後程特性を調べてみたらばどうやら E200 は 1,200rpm から最大トルクの 300N-m を発生するが、E220d の 1,200rpm でのトルクは 200 N-mと E200 の 60%程度で、そこから急激に立ち上がって 400rpm 上昇した1,600rpm では最大トルクの 400N-m を発生していた。ディーゼルといえば極低回転域からガソリンエンジンに比べて絶大なトルクを発生すると思っていたが、どうもそういう訳では無さそうだ。 その内に大きな交差点を右折する場面となり、交差点内に停止して対向車をやり過ごしていた。ここは右折車線もある立派な交差点で、対向車側にも右折車がウィンカーを出してクルマの流れが切れるのを待っていた。そしてこちらはといえば対抗する直進車線の流れが切れたので右折の動作に入った瞬間に何と相手側の右折車線に待っていたクルマの列の後方から突然直進車線に出てきて、そのままこちらに向かってくるではないか (勿論車線変更禁止区間) 。ヤバイっ、なんて事をするんだ! とか思いながらも既に交差点内を横切っているから、そのまま加速して抜け出る方が寧ろ安全だと判断し即座にアクセルを踏むが、ややっ、これが思ったように加速もシフトダウンもしないで緩慢な加速で抜けていった。まあ相手だって自分に非がある事は判っていて減速しているからそれ程危険な情況にはならなかったが、あれが頭の足りないヤンキー兄ちゃんで、何も考えずにフル加速してきたりしたら結構ヤバいシチュエーションだったかもしれない。 |
なおW213 のメーターは大きなカラー液晶パネルにメーター類はCGによる映像であり、メーター式メーター一切無い。 |
さてそんな目にあったので、早速ドライブモードを SPORT に切り替える事にした。切り替えスイッチは E200 と全く同じコンソール上のコマンドダイヤル左にあり、これを奥側に押せば良い。SPORT モードに切り替わると目の前のメーター類が突然赤い目盛りに変わってモードが切り替わった事を知らせる‥‥というのは新型5シリーズの場合で、Eクラスにはそういう機能はない。ただしEクラスはメーターの液晶化という面では5シリーズ以上に進んでいて、メータークラスターは一枚のカラー液晶ディスプレイで、アナログ表示も実は全てソフトによるグラフィック表示だから、やる気になれば何時でも出来そうだ。新5シリーズのように液晶メーターによりモード切り替え時に大きくデザインが変わる手法は、元をただせばトヨタがレスサスの上級モデルで始めた方法だから、メルセデスとしてはプライドに掛けてもそう簡単にはこの方法を採用することは無いだろう。 SPORT モードに切り替えると当然だがより低めのギアを選択するようになるが、それでも極穏やかな巡航では1,500rpm くらいの事もある。しかし少し踏み込めば COMFORT モードに比べれば遥かに敏感にシフトダウンをして、この時目の前の回転計の針がピョンと大きく動く。ややっ、このクルマは9速AT だから各ギア間の回転数の差は少ない筈だが‥‥と思ってよく見ればディーゼルエンジンのために回転計のフルスケールはガソリンエンジンの E200 が 8,000rpm であったのに比べると何と 6,000rpm という低さだから、同じ回転数分上昇したとしても大げさに針が跳ね上がるように感じたのだった。 折角 SPORT に切り替えたので今度は停止からのフルスロットルを試してみる。信号待ちで停車中に信号機が青になって、それっと踏み込むと一般的な常識では十分な加速感を感じながら速度を増していくが、この時のエンジン音はある程度ディーゼルらしい音が聞こえるのは仕方ないが、個人的には決して質の悪い音とは感じなかった。でもまあ、気持ちの良い音でないことは確かだ。エンジン音なんていうものは小さければ良いというモノでも無く、ポルシェなんて爆音マフラーのオプションに高い金を出すユーザーもいるくらいだし、フェラーリが静かだったら魅力半減間違い無しだ。 さてこのフルスロットル時の加速は E200 と比べてどうかと言えば、これは似たようなものだった。というのも E220dの最大トルクは E220 の 33% 増しで、9速 AT のギア比は両車共全く同じ、しかし E220d とE220 のファイナルギアレシオはそれぞれ2.474 および 3.067 であり、これからトルクの比率はギア比の低い E220 が 24% 増しとなる。結局 E220d が最大トルクで 33% のアドバンテージがあってもファイナルギア比を考慮すると駆動力では 7% (1.33/1.24=1.07) 程度しか優位にならない。 なおファイナルギア比の低い E200 はより高回転側を使う事になるが、最高出力発生回転数が 5,500rpm であり、対する E220d は 3,800 rpmで、そこまで引っ張った時の速度は1速では E220d が38.6q/h で E200 は31.2q/h と、それでも E220d が24%速い事になる。要するに最高出力まで回した時の伸びではガソリン車の E200E よりもディーゼル車の 220d の方が多少上回る設定になっていた。両車の価格差を見ると同じアバンギャルドで E220d は698万円で E200 は675万円であり、E220d は僅か 3%高いだけで、その割には実走行時の性能(トルク) は7%勝っているから買い得、とかいう理屈も通るが、まあメルセデスもディーゼルに多少の有利さを持たせているのだろう。 ということで、この続きは後編その2に続く。 |