BMW Z4 sDrive 20i (2012/3) 前編


BMWの2シータースポーツカーであるZ4のベースグレードは直6 2.5L 自然吸気の23iであったが、3〜5シリーズセダンと同様に2.0L 4気筒ターボ化により20iとして発売された。Z4のエンジンラインナップを下表に示すと、スペック上は23iに対してパワーは多少ダウンしているが、トルクは寧ろ勝っている。実を言えば5シリーズの523iのMC前(2.5L)と後(2.0Lターボ)と の関係と全く同じ変更となるが、5シリーズの場合は2.0Lターボ化で、レスポンスは大分落ちてしまい、チョッと残念な結果だった。

今回のZ4は、果たしてどういう結果となるのだろうか。普通に考えれば5シリーズの場合と条件は同じだから、20iとなったZ4はレスポンスで2.5L 6気筒版に負けるのだろうか?Z4は2シータースポーツだから、遅いスポーツカーというのは洒落にならない が、さて結果はどうなることやら。

先ずはZ4のエンジンバリエーションを表にまとめてみた。
 
    BMW Z4 sDrive
      20i 23i 35i 35is

エンジン・トランスミッション

エンジン種類

  I4 DOHC Turbo I6 DOHC I6 DOHC Turbo
 

エンジン型式

  N20B20A N52B25A N54B30A

総排気量(L)

1,997 2,496 2,979
 

最高出力(ps)

184/5,000 204/6,800 306/5,800 340/5,900

最大トルク(kg-m)

27.5/
1,250-4,500

25.5/3,000

40.8/
1,300-5,000

45.9/1,500

トランスミッション

7AT 6AT 7DCT

その他

燃料消費率

10・15 12.4 11.4 9.9
 

  (km/L)

JC08 13.4 N/A 10.0
 

車両重量(kg)

  1,500 1,500 1,600

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

8.2 7.4 5.2 4.7

価格

車両価格

499万円 523(485)万円 695万円 815万円
 

備考

  在庫処分のみ
()内はスタイルエッセンス
   

今回試乗した20iに対して旧モデルとなった直列6気筒2.5Lの23iは、パワーでは20iに勝っているがトルクでは逆に20iが10%ほど上回っているから、レッドゾーンまでのフル加速を除いて、普段の街乗りなどでは寧ろ20iの方が多少ともパワフルに感じるという期待もできる。それにしても、中間グレードの35iとの差が 装備が違うとは言え195万円もある。更にその上の35isは35iと同一エンジンでチューニング(過給圧)を変えただけで100万円以上高いという、最近のBMWの常套手段をやっている。まあ、こんな事をやっていると、そのうちに痛い目に合うような気もするが ・・・・。Z4については、既に2009年8月にsDrive35iに試乗しており、車両としての基本は今回も変わっていないので、sDrive35i試乗記も参照願いたい。

久しぶりに間近でみるZ4は、鮫みたいなアグレッシブなフロントと、異様に長いボンネットという、これに乗れば非日常の世界に旅立てそうな 雰囲気がムンムンとしている。今回の試乗車と35iとの外観上の大きな違いは少なく、一番判別し易いのはフェンダーのサイドにあるエンブレムがS Drive20となっている(写真3)くらいで、あとはリアの排気管が片側から2本出しとなることくらいだ(写真4)。
 


写真1
古典的なスポーツカーのスタイルを持つZ4の独特の雰囲気は、これはこれで魅力がある。
 


写真2
フロントライトは勿論イカリングのポジションライトを持った丸目4灯となっている。
 

 


写真4
上位グレードの35i(直6 3Lターボ)との最大の識別点は排気管で、20iの片側2本出しに対して、35iは左右から各1本の2本出しとなる。


写真3
サイドのエンブレムが一般人には2.0iであることの唯一の識別点となる。
 

 

室内も前回の試乗車である35iと変わらないが、35iの内装がアイボリーとダークグレーのツートーンだったために明るく豪華に見えたが、今回の試乗車はブラックの内装 のため、当然ながら地味 な印象だった。他車でも同様だが、内装にアイボリーを使用すると、特に本皮の場合は実に良い雰囲気となるので、次回は自分でもアイボリーの本皮を買うぞ、と決心しても、いざ購入の段階になると汚れ 易さが脳裏を過ぎり、結局無難なブラックにしてしまうことなる。実際、薄汚れたアイボリーの本皮シートっていうのは、結構惨めで汚らしい感じがするものだ。

試乗車はオプションの本皮シートが装着されていたので、ベースモデルとは大分見かけが違うはずだが、実をいえば未だにファブリックシートのZ4というのを見たことが無 かった。これはZ4のみでなく、最近のBMWディーラーの展示車&試乗車全体にいえることで、言い換えればBMWやメルセデスなどの高級ブランドを好むユーザーは本皮シートを好むということになる。確かに、日本車も最近は本皮シートの設定があるようになったが、それでも質感などを考えるとどうしても国産より輸入車が勝っているのが現状だ。そりゃあそうだろ。欧州は大昔から牛肉を食いまくっていて、牛の数からしたら日本は手も足も出ないし、その膨大な牛肉を取った余りもである牛革 は安い し、加工技術が勝っているのは当然でもある。

そのZ4の本皮はBMWサルーンでお馴染みの厚くてゴワゴワしたダコタ・レザーではなく、もう少し薄くて柔らか目のカンザス・レザーとなる(写真6)。この表皮はダコタ・レザー程には皺(ギャザー)を寄せていない。Z4のレザーシートはハイラインパッケージ(38万円)に含まれていて、実際にはシートのみならず内装もレザーとなるレザーインテリアが付いてくる。そのシートの調整は電動パワーシートで2ポジションのメモリーも付いている(写真7)がこれもハイラインパッケージに含まれている。なお、Z4でも35iと35iSにはハイラインパッケージが標準装備されている 。他にも装備の差は多く、35i以上に標準で20iではオプションの装備はサーボトロニック(速度感応式パワーステアリング、3.6万円)、ウィンド・ディフレクター(3.8万円)、シート・ヒーティング(6.1万円)、PDC(パーク・ディスタンス・コントロール、12.7万円)、オートエアコン(8.2万円)、TVチューナー(10.8万円)HiFiスピーカーシステム(11.8万円)、UBSオーディオ・インターフェイス(5.1万円)であり、締めて100万円也。20i(499万円)と35i(695万円)の差は196万円だから、エンジンの差は96万円となる。

実は、今回の試乗車はMスポーツパッケージ(43万円)も装着されていたので、レザーシートはスポーツシートとなっている。Z4ってスポーツカーなのに、Mスポーツにすると更にスポーツなシートになるということか、それとも標準ではシートはスポーツしていないのか??しかもレザーインテリアのためにハイラインパッケージも必要となるが、Mスポとハイラインの両方を付けるという、何だか今までのBMWとちょっと違うのは2シータースポーツのという特殊な事情からなのだろうか。う〜ん、何やら混乱してきた。まあ、実際に購入する場合は、ディーラーマンと細かい打ち合わせをして、じっくりと選べば良いのだろうが、タコなディーラーマンに当って、トンでもない仕様が納入された、なんていうことが無い事を祈ろう。
 

写真5
インテリアカラーがブラックのために地味に見えるが、基本的には発売当時(2009年)から大きな変更はない。
 


写真6
試乗車のシートはオプションの本皮(カンザス・レザー)シートが装着されていた。

 


写真7
シート調整は電動で位置も2ポジションのメモリーがある。
 

 

ドアのインナートリムもレザーインテリアを装着している試乗車は、当然それなりの高級感に満ち溢れている。 まあ今時2シーターのスポーツカーなんていうのは非実用的な贅沢品なのだから、インテリアも豪華な仕様で当然かもしれないが、言い換えれば現行のZ4は走り屋系のマニア の購入は想定していないのだろう。

Z4はBMWとしては早い時点でナビのディスプレイをインパネ天板の高い位置に取り付けたが、最新の3シリーズなどと違い、ディスプレイを畳む事ができる (写真12)。まあ、これが良いか悪いかは趣味の問題だろうが、iDriveを装着しているのにティスプレイを畳んで走行するということ は無いと思うのだが。 そのiDriveへの入力に使用するコマンドダイヤルは、これまた最近のBMWにお馴染みの周辺に7つのボタンがついたタイプが付いている(写真13)。最初に7シリーズでiDrive化された時には、補助スイッチを付けないことがポリシーだった筈だが、いつの間にか翻したようだ。まあ、選挙の時のマニフェストと180度違う政策を平気で実行する何処かの政党よりまマシではあるが。

試乗車のエアコンはフルオートタイプが装備されていたが、20iの標準はマニュアルエアコンであり、オートエアコンは8.2万円のオプションとなる (写真10)。なお、試乗車のインテリアトリムはMスポーツということで、アルムニウム・カーボン・トリムと呼ばれるドイツのスポーツカーでは御馴染みのボツボツとしたエンボス加工を施したアルミパネルが付いている (写真17)。
 


写真8
高級スポーツカーらしく、地味だが質の高いインナートリムとなっている。

 


写真9
レザーインテリアがオプション装着されていた試乗車はシートと同じカンザスレザーの内装がオーナーに満足感を与える。
 

 


写真10
試乗車には20iではオプションとなるフルオートエアコンが装着されていた。
 

 


写真11
インテリアトリムはMスポーツ専用のアルムニウム・カーボン・トリムというドイツのスポーツカーでは御馴染みの例のボツボツしたアルミとなる。
 

 


写真12
ナビのディスプレイは折りたたみ式で、3シリーズの固定式とは異なる。
 

 


写真13
iDriveのコントローラは他のBMWと同じもの。
 

 

今回の試乗車はベース価格(499万円)に対して、ハイラインパッケージ(38万円)、Mスポーツパッケージ(43万円)、ウィンド・ディフレクター(3.8万円)、シート・ヒーティング(6.1万円)、PDC(パーク・ディスタンス・コントロール、12.7万円)、オートエアコン(8.2万円)、TVチューナー(10.8万円)が付いていたから、合計価格は622万円となる。

室内も見回したところで、いよいよ走ってみる事にする。
この続きは後編にて。  

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