SUBARU LEVORG 1.6 GT 後編
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レヴォーグのATセレクターはフロアのセンターコンソール上にあり直線式のパターンはDレンジから右に倒してマニュアルモードとなるオーソドックスなもので、これは1.6も2.0も変らない。しかし、コンソール後方はマルで違い1.6 EyeSihgt 以上は電気式のパーキングブレーキを装着しているが、1.6GTのベースグレードのみレバー式のパーキングブレーキとなる。従ってブレーキレバーを更に引きながら先端部のボタンを押して解除するという半世紀前からの伝統的な方法で操作することになる。 ![]() 最初に走り出して駐車場内をユックリ移動する時に感るのは、極低速でも充分なトルク感とレスポンスであり、第一印象は中々良い。クルマの切れ目を見つけて公道に入ると最初の印象通りで、普通のユーザーならば1.6Lでも充分な動力性能を持っているというのは僅か10mも走れば感じられるという、久々に典型的な出来の良い車に巡りあった感じだ。そこから地方道を巡航すると、40〜50q/hの巡航では回転計の針は1,200〜1,500rpm位を指している。そこから少し踏み込むと回転計は2,000rpmくらいまで上がるが、更に強く踏むと少しのタイムラグの後に3,000rpmくらいまで上昇する。この時のレスポンスはトルコンATとしては標準的なものだが、特に苛つくことな無い。と、ここで、ふと脳裏に閃いたのはレヴォーグってCVT じゃなかったっけ? ということで、それならば、この特性は大したもので並のトルコンAT と殆ど変わらないから、予備知識が何も無ければこれがCVTとは気が付かないだろう。 次に最近のクルマには概ね装備されている走行モードの切り替えスイッチを探すが、コンソールにもインパネにもそれらしきものは見当たらないが、実はステアリングホイールのスポークに組込まれていた。巡航中にスポーツモードを選択すると、その時の速度や負荷により回転数が上昇するが、切り替えた途端に回転計の針がビョンとあがるという事はない。スポーツモードでは当然ながらアクセルレスポンスは向上するので、増々これで十分という気持ちにもなる。 ![]() ![]() 前にクルマがいなくなった時を狙ってS モードで30q/hくらいからフルスロットルを踏んでみると、適度のエンジン音を轟かせながら加速していくが、この時の音は以前のような水平対向独特のボロボロいう音ではなく、特に知識がなければ極普通のクルマとの区別はつかないくらいだ。そして加速力自体も人によってはもう少し欲しいと思うかもしれないが、大部分のドライバーは特に不満も持たないだろう。この加速は丁度メルセデスベンツの新型C180、すなわちシリーズではベースとなる1.6Lターボモデルに近いものだ。と、思ってスペックを見たらばC180 の1.6L ターボエンジンは156ps 250N・mで、レヴォーグ1.6GTの170ps 250N・mと事実上同等であり、車両重量はC180が1,490kgに対してレヴォーグ1.6GTは1,520kgと、これまた同等だから加速感が似ているのは当然ではあった。なお、高回転域でのスムースさは充分で、当然ながら嫌な振動もなくストレス無しで吹け上がるのもメルセデスとよく似ている。 ![]() 今度はマニュアルモードを試してみる。レヴォーグのマニュアルモードはコンソール上のATセレクターの表示を見れば判るようにDレンジから右にはMと表記されているから、それに従ってレバーを右に押して、さてその次は‥‥と思ったがMに入れたレバーを前後に動かそうとしてもビクともしない。よく見れば"+"とか"−"とかの表示もない。そこでステアリングのスポーク付近を見回したらば何と立派なバドルスイッチが付いていた。試乗車のようなベースグレードの場合は一般的にパドルが付いていない場合が多いが、レヴォーグはベースグレードでも標準でパドルが付いている。 走行モードはSPORT のままで先ずは3,000rpmで巡航中に左のパドルを引くと、一瞬の後に回転計の針がスーッと上がった。これに気を良くしてもう一度左を引くと更に回転は上がり、これらのレスポンスは可成り素早いトルコンATと同等以上という感じだから、CVT としては驚異的にハイレスポンスだ。今度は右を引いてシフトアップを繰り返したが、ダウンと同様に素早く切り替わる。最近のスバルはCVT オンリーという感じでレヴォーグとその兄弟のWRX は300ps級の2.0GT でさえCVT であり、正直言ってこれには疑問だったのだがこの心配は見事に外れて、CVTでもここまでやれるのか、という感じだ。しかし、そうなると他社のCVT は何なんだ、と言いたい気持ちだが、まあ単にCVTと言っても原理は同じでも中身が違うとういことだろうか? 次に足回りはといえば、レガシィ時代から乗り心地と安定性の両立といいう意味では国産車トップ、いや欧州車を含めてもこれだけ靭やかなサスはそう簡単には見つからないぞ、というくらいだったから今回のレヴォーグも十分期待が出来たし、実際に走った瞬間からやっぱり予想通りだった。まあ、この辺が熱烈なスバルファンを生む一つなのだろう。おっと、いけない、もう一つ。今更言うまでもないが水平対向エンジンの独特のフィーリングもあったっけ、と言いたいが前述のように新型の直噴エンジンは水平対向らしきフィーリングは殆ど無い。この原因の一つにはメルセデスにしろBMWにしろ、最新の直列4気筒ターボエンジンは、スバル得意の水平対向4気筒ターボと比べても引けをとらないくらいにスムースになったという事もある。 そして操舵感覚はといえば、これも中心付近から不感帯も極少なく、それでいて決して過敏ではないがその気で少し振ってやると間髪をいれずに反応するという、これまた国産トップというところか。考えてみればレヴォーグはステーションワゴンであり、運動性能から言えば決して有利ではない訳で、それが下手なスポーツモデルでは歯が立たないくらいの操舵感というのは考えてみれが脅威だ。それで、スポーツ系まで範囲を広げて、国産でこれ程の操舵感のクルマといえば、思いあたるのはトヨタの86だが、あれっ、86ってスバルで作ってたんだっけ。そりゃ、フィーリングが似ているわけだ。 ステアリングのフィーリングと共に旋回時の特性自体も、これまた予測通りに弱アンダーの素直なもので、一般道のコーナー程度で常識の上限程度、すなわち危険運転にならない範囲では全く余裕で、限界なんてはるか遠くという感じだ。当日のコースは田舎道が主体で、コーナー自体の数は多かったのだがどちらかと言えば緩やかだったから、余計に余裕たっぷりになってしまったし、エンジンパワーが多少不足気味なのもシャーシーがパワーに勝っているという、安全性から見たらば実に良い状況だったこともあり、ある程度の予想はしていたとはいえ、やっぱりスパルの良さを思い知らされてしまった。 前述のCVT と共に、このハンドリングをフルに生かせるようなワインディングロードを走りまくったら結構楽しめそうだし、できればパワーに余裕のある2.0GT なら更に良しという事だろうか。
メルセデスC180と比べても動力性能もエンジンのスムースさも、ハンドリングだっていい勝負であり、それで価格はC180の419万円(これも大バーゲンだが)に対してレヴォーグ1.6GT は266.8万円だから何と150万円も安い訳で、これはもコストパフォーマンスとしては抜群だ。とはいえ、内装を比べれば最近は大分改善されたとは言ってもCクラスと比べればレヴォーグの内装は所詮安物であり、この違いとメルセデスのステイタスに150万円を投資するかどうかはユーザー次第で、どちらを選んでも正解ではある。 スバルは今ではトヨタの傘下であり、そのトヨタがメルセデスやBMWに対抗して立ち上げたプレミアムブランドのレクサスは、しかしISやGSでは残念ながらCやEクラス、そして3や5シリーズの敵ではなく、それどころかヒュンダイ辺りにライバル視されている現実を考えれば、この際レクサス車はスバルに開発させて、内装などはトヨタが目一杯頑張ってレクサスLS並のものを投入すれば、これこそベンツ・ビーエムイーターになれる可能性も有りそうだ。さあて、どうですか、豊田さん! 注記:この試乗記は2014年11月現在の内容です。
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