HONDA FIT 13G & HYBRID 簡易試乗記 特別編 その2
  [HONDA FIT HYBRID vs VW up! 前編]

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正直に言えば、個人的にはホンダというメーカーは決して好きではない。えっ? 判っているって? そう、特にレジェンドや旧オデッセイなど、どうしようもないクルマが結構あったりするのが大きな理由だが、そのホンダの中では例外的に気に入っているのがフィットで、やっぱり餅は餅屋というか、ホンダの真骨頂は小型車ということだろう。更に、後発だったハイブリッド車でも、短期間でトヨタに迫るまでになったのは、流石にホンダの技術力を見せつけられる思いだった。

そのフィットについては、この特別編でも既にフィット ハイブリッドと直接のライバルであろうトヨタ アクアとの比較を行ったが、今回はその続編ということでフォルクスワーゲンのAセグメント車であるup!と比較してみる。

ここで、何故同じカテゴリー(Bセグメント)のPOLOではなく、Aセグメントのup!なのかという疑問があるだろうが、最大の理由は価格の問題であり、フィットがハイブリッドでも163〜193万円であるのに較べてPOLOは何と219〜246万円と、その差は約50万円であり、この価格帯で50万円はチョッと差があり過ぎということを考慮した。それに現在のVWはメルセデスやBMWなどのプレミアムブランド程には金を掛けていないが、国産車や米国ビッグ3(今やヨレヨレだが)系のような大衆価格に徹しているクルマとは違い、言ってみれば半プレミアムカー的なところがある。

このプレミアムブランドというのが日本で一般人が知るようになったのはレクサスが大々的に宣伝したからだが、そのレクサスが実はそれまでトヨタブランドで売っていた車種をFMCを機にレクサス名になったら、価格帯が一気に上昇してしまった訳で、例を挙げれば

 トヨタ アルテッツァ 214万円(AS200)〜319万円(RS200)
  → レクサス IS 390万円(IS250)〜525万円(IS350 バージョンL)
 トヨタ アリスト 366万円(S300)〜455万円(V300 Vltec Edi.)
  → レクサス GS 520万円(GS350)〜630万円(GS430)
 トヨタ セルシオ 593.3万円(A仕様)〜787.5万円(C仕様F Pac Interia Serec.)
  → レクサス LS 770万円(LS460)〜965万円(LS460 バージョンL U Pckg)
 トヨタ ソアラ 630万円(430SCV)〜661.5万円(430SCVノーブルカラーE.)
  → レクサス SC 680万円(SC430)

という具合で、しかもSCはFMCではなくMC、というかソアラそのまんまだったから、その差額がレクサスの上乗せ分というのが直ぐにバレてしまった訳で、トヨタではアルテッツァとISは全く別のクルマと言ってはいたが、米国では旧アルテッツァ時代には同じものをISとして売っていたわけだし、日本のレクサスでは販売していないが、それまでは国内でもウィンダムと言って売っていたレクサス ESに至っては、テレビCMで「レクサスES、日本名ウィンダム‥‥」なんてやっていた訳で、まあ先を見る目のないCMを作っちまったもんだ、なんて公開しても既に遅く、結局日本では売れないということもあるが、ESの国内販売は行われていないのはトヨタ ウィンダムと同じっすよ、と言ってしまったから売るに売れないのではないか、なあんて、考え過ぎだろうか。

あれぁ、フィット vs up!が本題なのに何やらレクサスの話に燃えてしまった。やはり、レクサスのプレミアム路線というのは突っ込み処多くて、やりがいがあるという、実に有難いキャラクターだと再認識する。それで本題に戻して、フィットのベースモデルであるガソリン1.3Lに加えて本来Bセグメントのフィットと比較するべきな、同じくBセグメントのポロを加えた4車でスペック一覧表をまとめてみた。

アウターサイズはやはりBセグ同士ということでフィットとポロは全長が同じで、全幅とトレッドもほぼ同じ。しかし、ホイールベースはフィットが60oも長いが、まあ車両の寸法は同じと考えて良いだろう。そしてup!はといえば、やはり一回り小さいが、ホイールベースは意外にもポロより50o短いだけだった。

パワートレインについては、先ずエンジン自体がフィットは1.5L 110psだが、up!は1.0L 75psで、しかもフィットはハイブリッドだから29.5psのモーターによるアシストさえもある訳で、動力性能から言ったらば比較の対象外ということになる。

エクステリアを比べてみると、やはりBセグとA セグの違いというか、up!は軽自動車に毛の生えたようなスタイルになるのは致し方ない。up!のスタイルを「ダッセー」と思うか「わーっ、きゃわいい」と思うかはユーザー次第というところだ。ただし、現物を見るとup!は決して安っぽく見えないのは流石に小型車を作り慣れているVWだけのことはある。と、書いてはみたものの、よくよく考えたらホンダだって小型車メーカーだった。

正面から見るとフィットは最近のホンダ顔だが、up!はフォルクスワーゲン一族とは少し違い見たところグリルやエアインレットらしきものがない。これでは一見するとリアエンジンみたいだが、写真右上をよく見れば、黒い部分がインレットになっている。こんな面積で大丈夫なのか心配になるが、大騒ぎになっていない事を考えれば問題ないのだろう。

次に真後ろから見ると、フィットはウエストラインから上をルーフに向かって大きく絞っているが、up!は四角四面となっている。

サイドから比べてみるとホイールベースはフィットが60o長い程度だが、全長は何と410oも長い。言い換えればup!の前後オーバーハングが極めて短いのが原因で、写真で見れば良く判る。

また、全高でもフィットが30o高いから、結局サイドから見るとフィットが一回り以上大きい。そんなup!ではあるが、ドアの大きさはフィット並に十分な長さがあり言い換えればup!は車両の長さ方向一杯にドアが付いているという感じだ。実はup!は欧州では最初に2ドアが発売された事でも判るが主流は2ドアのようで、逆に日本では軽自動車でも殆どが4ドアであり、言い換えれば日本のユーザーは如何に小さい車とはいえ4ドアでないと購入しないという傾向がある。

次にリアゲートを開けて双方のラッゲージルームを比べると、全長の短いup!は当然ながら奥行きは短いが幅方向についてはルーフまでのラインを絞っていないup!のほうが、特にリアシートを畳めば容積としては意外にありそうだ。逆にフィットはウエストラインから上のスペースは狭いから、例えリアシートを畳んだとしても容積は狭い。したがって、四角くてある程度の高さがあるもの、例えば仏壇などを運んだ時にはup!が威力を発揮するかもしれないが、今時デカい仏壇なんて余程の金持ちか、ナンミョウの信者くらいしか持っていないから、結局今の日本では大きな違いは無いかもしれない。

今度はドアを開けて室内を見ると、このアングルではどちらも大きな変わりは無いように見える。んっ? 少なくとも全長が410mmも長いフィットとup!がそれ程変わらないって、一体何なのだろう。up!はリアの足元も全長を考えたらば十分過ぎるほどだが、まあ、それを言ったらばハイトタイプの軽はもっと広いということになるが‥‥。

それで、シート表皮はといえば‥‥

先ず廉価モデル同士を比べてみると、どちらも安そうなファブリックを使用している。それで上級モデルはといえば、フィットはサイドに合成皮革を使用したものになるが、この合成皮革が如何にも”合成”という感じで、本皮ソックリにして騙そうという事の無い、実に正しいフェイクレザーとなっている。

up!の場合は上級のhigh up!では写真右下のようなポップな2トーンとなるが、他のWVに比べるとドイツ車らしさがまるで無いのは、下駄代わりのAセグメント車だからということなのだろうか。

up!のシートに座ってシートの位置を調整するために先ずは右手でシートの右側面にあるレバーを動かすと上下の調整が出来るのは今の世の中の常識となっているから何の違和感もなく、次にバックレストの調整のために手で後方を探るが、それらしきレバーなどは無い。もしかしてダイヤル式? と考えて更にバックレストの真横くらいまで探してみるが、それらしきモノは無い。実はup!のバックレストの調整は車両中央側、すなわち右側の席では左側面に付いているために、これを知らないとシート調整が出来ない事になる。

それにしても何で世間の常識と違うのかという理由を考えてみたが、狭い車幅のデメリット克服のためにシートを外側一杯に寄せて設置しているので、右側面にレバーを配置するのが難しかったのではないか、と推測したが、真の理由は定かではない。

ドアインナートリムはフィットの場合、当然車格からして安っぽいが、それでもシート表皮と同じクロスを貼ったりと、何とか高級そうに見えるようにと頑張ってはいる。これに対してup!はといえば、これぞプラスチックという安っぽさと、一部は最近珍しいボディと同じ塗装となっている。今時は商用車だってフルトリムなのに、と驚くばかりだ。しかし、このボディ同色のドア内側が結構良いアクセントになっているのを見ると、VWのデザインの上手さに感心するばかりだ。

インパネのレイアウトはフィットの場合センタークラスター最上部にはエアアウトレットが居座っていて、その下にナビのディスプレイスペースがある。それではup!はといえば‥‥無い? 何とup!のエアアウトレットはインパネの左右端のみで、最近のクルマでは常識のセンターには見当たらない。実はこれは今回初めて気が付いたわけで、なぜならup!の試乗は10月であり、1年のうちでは最も過ごしやすい気温とカラッとした空気で、エアコンなんて切ってドアを開けたほうが気持ちが良い、という天候だったからエアーアウトレットが車両の両端にしか無くても、その影響には全く気付かなかった訳だ。

エアコンはフィットの場合、ハイブリッドは全てにオートエアコンが標準装着されていて、そのパネルは電源ONで表示が開始されるタッチパネルとなっている。up!は全グレードでマニュアル方式が装着されていて、日本では軽自動車でさえ主流となっているフルオートエアコンは上級モデルでさえ設定が無い。

オーディオはフィットの場合、標準がオ−ディオレスであり、この2DINスペースにオーディオ一体型ナビもしくはCD付FMラジオなどを取り付ける。純正もあるが市販の後付なら低価格で装着できるというメリットも有り、国産の低価格車ではこの方法が定番となっている。えっ、そんなことは当然だろう、って? いやいや、このサイトの読者には、最近のクルマは標準でナビやらコントローラーが一体になっている、と思っているお金持ち達が多いので、下々の状況も説明が必要なのです。

それでup!のオーディオはセンタークラスターにエアコンの操作パネルとともに標準装備されているが、ナビはといえば、純正オプションとは言うものの市販のポータブルタイプをボディの塗装色と同じにしたOEM品で、いかにも後付という感じがチョイとシラケるが、取り付け位置が高いために視線移動は少ない。

以上、フィット ハイブリッドとup!の内外装を比較してきたが、特に内装についてはオーソドックスな国産車のフィットに対して、チョッと毛色の変わったup!、というかVW車としても少し異端児のようなup!には、ユーザーの好みにより評価が異なりそうで、取り分け派手な色を選んだ場合、例えば右の写真のような赤/白のインテリアなどでは一見するとイタリア車のようにも見えるくらいに派手になる。

という訳で、好みの分かれそうなup!ではあるが、肝心の走りの方はどうであろうか? ということで、この続きは後編にて。

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