MAZDA DEMIO XD 6MT 後編
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スタートボタンを押すとエンジンが始動しアイドリングとなるが、この時は流石に多少の振動を感じる。とはいえ、チョッと振動の多いガソリンエンジン程度で、振動の質は違うが最近流行りの3気筒ガソリンエンジンと同程度だから、特に不快というものでもない。クラッチの踏力は軽いが小型MT車によくある異常に軽くてスカスカという事もなく、適度な重さという感じだから印象は良い。1速に入れてクラッチペダルを戻していくと素直に継るから、普通にMTに慣れているドライバーならば全く問題なく発進できる。 ![]() ![]() 公道の前で一旦停車して、クルマの切れ目で本線に入りここからハーフスロットルくらいで加速してみた時の第一印象は、ディーゼルの割にはトルク感に乏しいことだ。ところが、回転が上がってゆくに従ってトルクが増してくるのが感じられたから、次の加速では少し強めに (2/3くらい) アクセルと踏んでみると、2,000rpmくらいからトルクが増してきて3,000rpm 以上ではグングンと加速していく。そこで今度は信号待ちからの発進でフルスロットルを踏んでみると、やはり最初の出だしはチョッともたつくが3,000rpmからは充分な加速でそのままレッドゾーンの始まる 5,000rpm までストレス無く吹け上がる。ディーゼルエンジンで5,000rpmといえば結構な高回転だから、最近の技術の進歩ということで SKYACTIV-D は伊達ではないようだ。ただし、美味しい回転域は狭いのでガソリンエンジンのような最後の伸びが無いのは仕方ないが、それでも特に気になる程ではない。 ところで試乗車にはヘッドアップディスプレイが装着されていた。最近はデミオクラスでもこういうものがオプションで用意されているのかと関心したが、後で調べてみたらば何と XD にはこれが標準装備されているのだった。 ![]() ![]() 今度は県道に入って60q/h弱で巡航するが、この時のギア位置は2速で回転数は 3,000 rpm 強というところで、そのまま巡航するのがこの手のマニュアルを運転するセオリーだが、しかし2速巡航というのも気になったので3速にシフトアップしてみる。すると回転計の指針は約2,000rpmくらいまで下がり、そのまま巡航してみるとアクセルレスポンスが良くないし、前車の状況で50KM/hくらいまで速度が落ちた状態から再加速しようとするとトルク不足というかユックリとして加速しない。この時のエンジン回転数は1,700rpmくらいなのだが、この回転数では実用的なレスポンスが得られないわけで、マルでスポーツエンジンみたいだ。ということは、交差点を左折する際に3速のままで速度を20q/h程度まで落とすとエンジン回転数は1,000rpmまで落ちてしまい、左折しながらユックリと加速するには可成りの無理がある。勿論左折前に少なくとも2速にシフトダウンするのがセオリーだが、極々一般的なドライバーにMT車を運転させると、3速のままで左折したりするから、ここでギクシャクしてしまうしエンジンにも良くない状況となる。 それにしてもマツダのディーゼルって、こんなにマニアックな特性なのかとカタログを調べたらば、AT車の最大トルクは 250N・m / 1,500〜2,500rpm であるのに MT車の場合は220N・m /1,400〜3,200rpm であり、要するに最大トルクを落とす代わりに、より高回転まで維持するようにチューニングされているわけで、高回転側を重視している事になる。そして、これはディーゼルエンジンとしては異例なくらいに高回転までよく回るが低回転側ではトルク不足を感じる、正にスポーツエンジン的な味付けであり、MT を好む年季の入ったマニア向けと言うことになるから、特にクルマ好きではないが昔からMTしか運転したことがなく、ATは今でも違和感があるから何が何でもMT車を探している、なんていうユーザーからすればディーゼルのくせにトルク不足でレスポンスも悪い、という評価になってしまい、実際にマツダの営業マンがそういう事を言われた事があると話していた。 マツダのSKYACTIVでは CX-5 の試乗で重心の高いSUV としては驚くほどの安定感と旋回性能に驚き、次のアテンザでは大いに期待をしたが、SUV よりも条件が良いにもかかわらずCX-5 と同等、いや多少下回っているかという状況だった。とはいえ、アテンザだって世間一般の標準から見れば充分に立派なものだが、やはり期待が大き過ぎたようだ。そしてアクセラだが、これはアテンザよりも更に後退してしまい、何やら慣れてきて手を抜いたんじゃねぇ、とかC セグメントの予算じゃこんなものかな、とか思ったわけだが、さて今回のデミオはどうだろうか? 最初に走り始めて感じるのはBセグメントハッチの割にはステアリングは決して軽くはないことで、まあ適度な重さとでも言おうか、それでいて中心付近も結構クイックだから第一印象は中々良い。やがてそれ程タイトでもないが適度なコーナーに入ってみたが、アンダーステアも少なく中々良い印象で、それならと次に速度を上げて同程度のコーナーを試したがこの程度の速度なら全く問題なくクリアしてしまったから、結構良い線行っているということだ。 それならと気を良くして折角の MT ということもあり、コーナーの手前で2速にシフトダウンして入り口でチョイと減速し、そこから旋回してコーナーの頂点あたりで加速して‥‥という具合にスポーツハッチ的に使ってみたが、これが実に楽しい! 加速自体は特別に高性能というわけではないがトルク自体は充分にあるし、6MTのフィーリングも中々良い。このミッションは少しカチッと言う感じで、例えばポルシェの採用しているゲトラグとかアイシン製のように殆ど抵抗がなくてスパッという迅速なシフト操作をするというものではないが、カチッというタイプとしては可成り素早いシフトでも付いてくるから、これまた充分な評価を与えられる。 このようにマルでスポーツモデルのような XD だが、乗り心地はハッキリ言って硬めでありスポーツモデル的なチューニングになっている。まあ今時MTを欲しがるユーザーにはこのくらいの硬さが丁度いいだろう。
この予想外のスポーツテイストを考えればライバルはBセグホットハッチということになり、そうなればライバルはマーチ NISMO 、フィット RS そしてスイフト スポーツ (スイスポ) という異なる。そこで先ずはこれら 4車 のスペックを比べてみる。 ![]() 今回の結果から DEMIO XD は無条件に進められると思ったのだが、上の表を見るとスイスポと価格帯が重なっている。確かに DEMIO XD のスポーツテイストは充分に進められるレベルだが、これがスイスポとなると DEMIO XD も決して有利ではない。何故なら、いくらDEMIO のディーゼルエンジンの出来が良いとはいえ、スイスポはハイチューンのガソリンNA エンジンであり、最高出力は 6,900 rpm だから、ディーゼルとしては高回転型のデミオも高回転域の伸びでは敵わないし、トルクは充分とはいえパワーでは劣るなど、スポーツハッチとしてはスイスポに一歩を譲ることは仕方が無い訳で、これは結構悩むところだ。 結局、本来ならばベタ褒めで一押しのところだが、なんとスイスポの存在がこれを邪魔するという予想外の結果になってしまったが、後はユーザーの好みに任せよう。 注記:この試乗記は2014年11月現在の内容です。
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