Toyota Prius α G (7人乗り) 後編
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センタークラスター上部の右端にあるスタートボタンを押すと、ダッシュボート天板中央にあるディスプレイに火が灯る が、エンジンは始動しないので無音の状態だ。ただし、バッテリーの充電容量が充分でなかったりした場合は 当然ながらエンジンが始動し、アイドリングしながら充電する。

ATセレクターはプリウスやSAIと共通の電子スイッチのタイプ(トヨタではエレクトロシフトマチックと呼ぶ)で、プリウスαの場合はスタートボタンの下に配置されている。このレバーを右下に動かして手を放すと、レバー自体は ホームポジションに戻る。パーキングブレーキは相変わらず足踏み式のプッシュ/プッシュタイプで、まあ今更何も言わないが・・・・。

   

パーキングブレーキをリリースして、ブレーキペダルを放すと無音で極自然にクリープ的な動作で僅かに前進するので、アクセルペダルをユックリと踏むとなめらかに前進するのは同じ動力系を持つプリウスと全く 同様だ。公道に出て少し多めにアクセルを踏むと、充分な加速力で簡単に流れに乗れるものプリウスと同じなのだが、発売当初に試乗したプリウスに比べると気のせいか加速はより強力に感じる。その後暫くは流れに乗って走ってみたが、動力性能は充分だったし、加速したい場面でも反応が遅くてイライラしたり、場合によってはヒヤッとしたりすることも無かった。

プリウスαはセンターメーターを採用しているから、ステアリングホイール の中を覗いてもメーター類は存在しない。このセンターメーターは慣れていないと実に使い辛くて、試乗中も速度計が何処にあるのかとついつい探してしまう。それでも良く見ればセンターディスプレイの右端に速度表示があるから、少しは見易さを考慮しているのだろう。そして、セレクターのポジションなどもセンターメーターに表示されるのだが、字が小さいこととドライバーからの位置が遠いことから、非常に読み取り辛い。特に年配のドライバーは殆ど認識できないのではないか。言ってみれば最近流行のスマートフォンのようで、若者に焦点を合わせたのではないか、なんて僻んでしまう。

今までは走行モードをデフォルトのNORMALで走っていたのだが、今度はPWRに切り替えてみる。PWRモードに切り替えた瞬間からアクセルレスポンスが格段に良くなり、トルクもたっぷりという状況を体感できて、これはもう誰がやっても明らかに違いが判るだろう。 PWRモードの強烈なトルク感はハイブリッド車や電気自動車などの電気モーターを装備するクルマに独特のもので、これはガソリンエンジンとは全くフィーリングが異なる。このPWRによるフル加速も何となくプリウスより強力に感じる。そこで両車の違いを調べてみるとオリジナルプリウスのファイナルギア比は3.260であるのに対して、プリウスαは3.703と16%もローギアードに設定しているから、トルクもその分だけ多く感じるのだろう。まあ、その分はエンジン回転数が上がったり伸びが無くなるのだが、CVTだから 体感上は良く判らない。ただし、高回転ぎみの走行は燃費では不利となり、その証拠にオリジナルプリウスよりも燃費データーも劣っている。

次に結果は良くないのは判ってはいるが、何よりもエコカーらしいということもありECOモードを試してみる。切り替えた瞬間から、明らかにアクセルレスポンスは悪くなり、巡航状態から加速しようとしても殆どトクルは伝わらず、極めて緩慢に 速度が上がっていく。 聞くところによると、一般のユーザーがECOモードを使用すると、どうしてもアクセルを深く踏んでしまうことで返って燃費が悪化する事態になる、とか。結局ECOモードは単なるポーズ、とともにJC08モード計測専用モードというところのようだ。
 



プリウスαの乗り心地は結構硬くて荒れた路面ではある程度の突き上げがあるが、特に不快というものではなく、ひいき目に言えば出来の良い欧州車的でしっかりした足回りという、トヨタらしくないものだった。 クラウンロイヤル的な乗り心地を求める典型的演歌オヤジからみれば、乗り心地が悪いとクレームが出そうだが、トヨタのマーケッティングの専門家はこのクルマの購買層ならば大きなクレームにはならない、と判断したのだろう。まあ、先進性のためにCセグメントのワゴンに300万円も払うユーザーだから、演歌オヤジではないことは想像できるが。

プリウスαの電動パワーステアリングの操舵力は老若男女全てが運転することを前提にしているトヨタの実用車らしく、軽くレスポンスも適度で可もなく不可もない。中心付近の不感帯も少なめだが、当然ながらクイック過ぎて運転の苦手なドライバーだと冷や汗をかくということもない。 今回はチョイ乗りであることと、クルマの性格からもハンドリングを本気で試すことはしなかったが、今回試乗したコースは復路が渋滞していたために急遽裏道を走ったことろ、上手い具合にクネクネとしたコーナーが繰り返す場面に遭遇した。ここで発見したのは 、意外にもプリウスαのコーナーリング特性が結構安定していて、FF車としてはレベルが高いことだった。 そういえば、電気自動車の@‐MiEVやリーフなども想像以上にニュートラルなコーリング特性だったのは、この手のクルマは低い位置に重いバッテリーを搭載することで重心を下げ、また搭載位置が中央付近だと前後の重量配分も向上することが原因だったのを思い出した。

それにしても、オリジナルのプリウスよりも更にバランスが良いような 気がするので、バッテリーの搭載方法などを調べてみた。 その結果、オリジナルのプリウスやプリウスαでは5人乗りがニッケル水素バッテリーを後席の後方に搭載しているのに比べて、7人乗りの場合はリチウムイオンバッテリーをセンターコンソール内に搭載しているために、より中央位置でより低いというクルマの運動性に対して良好な条件となってい た。勿論トヨタとしてはサードシートを実現するために考えた手法であって、決してハンドリング向上を目的としたのではないだろうが、結果的に安定した旋回性能にも結びついたようだ。

しかし、以上はあくまでも推定なので、これを確認するには5人乗りにも試乗してみる必要がありそうだが、まあ機会があったら、ということにしよう。

今回のプリウスαはこれこそトヨタ的な80点主義で、特に悪いところは見当たらないが絶賛するようなクルマでもなかった。300万円という価格もハイブリッド とはいえ割高感を感じるし、それでもバックオーダーを抱えているという程の人気であるということは、ハイブリッドと3列シートという日本人が 大好きなアイテムを2つも持っていることが理由だろうか。2列シートのモデルでも、その価格を考えれば、子育て真っ最中で賃貸住宅からの脱出を考えている若いファミリーからみたら、とてもではないが投資できる金額ではない。
何しろ上位モデルの価格は、BMW116iと完全に競合してしまう程なのだ。それでも7人乗りモデルには1シリーズではマネの出来ない7人の乗車定員があるが、5人乗りモデルでは、それこそ1シリーズで代用できるのではないか 、ということで検索エンジン経由等で初めてお出でのかたは、BMW116i試乗記も 是非ご覧下さい。

注記:この試乗記は2011年11月現在の内容です。