MITSUBISHI PAJERO 3.2DI-D 後編(試乗編)
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既に警告したように、この試乗編はパジェロのオーナーは元より、パジェロの購入をマジに検討しているユーザーなどは、これ以降の文章を読むと間違いなく腹を立てるので、
お帰りください。


エンジンを掛けるとボディからも、シートからも、そしてステアリングホイールを握る手からもブルブルというディーゼル独特の振動を感じる。そういえば20年前のクロカン4WDブームの頃は、こんな感じだったのを思い出して懐かしい気持ちになったが、よく考えてみれば今時「それゃねえだろう」とう感じだ。

パジェロは20年前からフルタイム4WDにも関わらず、パートタイム4WDとしてFRでも使えるスーパーセレクト4WDが売りだったが、今でも当然ながら、これが採用されている。 勿論、最近の軟弱なSUVとは違い、副変速機で超低速運転も可能だ(ということになっている)。メーターは自光式だが、トヨタなどに比べると何となくダサい雰囲気に満ち溢れている。あっ、そういえば、これもヒュンダイに似ているような。

いよいよ走り出すために、ATセレクターを手前に引いてDに入れて、オーソドックスなレバー式のパーキングフレーキを解除して、フートブレーキを放すと車はゆっくりとクリープする。ディーラーの裏口から細い一方通行の道に出て20m程先の国道の合流するために、30km/h程度でユックリと前進させるが、この時もカタカタというトラックのようなディーゼル音が聞こえる。 公道に合流して加速すると、強力な低速トルクによる結構な加速感が、これまたディーゼルの騒音を伴って感じられる。充分な加速とはいってもディーゼルだから伸びはないが、5ATはポンポンとシフトアップしてゆき50km/h程度までの加速は簡単だ。脇の地方道に入るために減速すると、例によってディーゼルの振動がステアリングホールを通して手に伝わってくる。 丁度信号が赤になったので停止すると、やっぱりエンジンの振動が結構気にかかる。

 

パジェロの乗り心地は結構硬い。それも最近の国産車の進歩を感じるような、硬いけれども決して不快ではないという出来の良さとは異なり昔の硬さだ。まあ、そうは言っても空荷のトラック程には酷くは無い。この硬さがビシッとしてスポーティーな乗り味に繋がれば良いのだが、残念ながら安定性も決して良くない。去年乗ったトヨタウィッシュでは、中途半端にスポーティーな特性が裏目に出て、何とも安定性の低い乗り味だっ たが、パジェロもウィッシュ程ではないものの感覚は同様で、言って見れば出来の悪い代表的なフィーリングだ。従って、街中の50km/h程度が良いところで、それ以上に速度を上げると不安感を に襲われてくる。そんな具合だから操舵特性だって良い訳が無く、決して軽くはないがドッシリという言葉とは違い、これまた褒められたものではないが、それでもレスポンス自体はこの手の重量級のクロカン4WDとしては、決して悪くは無いのがせめてもの救いではある。

 

こんな状況だからコーナーリングを試してみる勇気は全く無く、途中のブラインドコーナーでは充分に減速してからの通過となってしまった。元々クロカン4WDのコーナーリング能力なんて低いのが当然だが、最近では乗用車ベースのSUVなどが結構まともな旋回能力を持ってきたのと、BMW X5に始まりポルシェカイエンなどの背の高いSUVとしては従来の常識を覆すほどの安定性・旋回性能を持つものが現れて基準が大きく異なった現在、パジェロのように古い時代の名残りを感じるような性能ではちょっと寂しいものがある。

ここまで評価としては良くないパジェロだが、ブレーキについては充分に合格点が与えられる。踏力は軽すぎず重すぎずで丁度良く、効きも悪くない。アルミホイールから覗くブレーキはフロントに鋳物製とは言え対向ピストンキャリパーを装着している。このキャリパーはランクルプラドと基本的に同一品と思われる。
 

 

ところで、パジェロのディーゼルエンジンは他車の新時代ディーゼルと比べて如何なのだろうか。現在、日本で発売されている乗用車登録のディーゼル車は国産車ではニッサンエクストレイル2.0GT、輸入車ではメルセデスベンツ E350BlueTECくらいだろうか。そこで、パジェロを含めた3車種のディーゼルエンジンのスペックを比べてみる。
 
    Mitsubishi Nissan Mercedes Benz
      Pajero
3.2DI-D
X-Trail 2.0GT E350 Blue TEC
車両型式 LDA-V98W DBA-ZGE21G DBA-212024C
エンジン・トランスミッション
エンジン型式   4M41 M9R 642
エンジン種類   I4 DOHC
DIESEL TURBO
V6 DOHC
DIESEL TURBO
総排気量(cm3) 3,200 1,995 2,986
  最高出力(ps/rpm) 190/3,500 173/3,750 211/3,400
最大トルク(kg・m/rpm) 45.0/2,000 36.7/2,000 55.1/1,600-2,400
トランスミッション 5AT 6AT 7AT
 

燃料消費率(km/L)
(10・15/JC08モード走行)

10.6/10.4 14.2/13.8 13.4/12.4
  パワー/排気量(ps/L) 59.3 86.7 70.7
価格
車両価格 411.6万円 314.0万円 798.0万円
備考 EXCEED   AVANTGARDE

こうして見ると、排気量とパワーの関係や燃費を比べて、その優秀性を判断すれば
   メルセデス > ニッサン > 三菱
となってしまう。

何言ってんだ。クルマは乗って何ぼだと言われそうなので、振動と騒音について比べてみると、メルセデスのディーゼルはアイドリングで神経を集中すれば僅かな振動が感じられる程度で、言われなければディーゼルとは判らない。 フル加速をした時はディーゼルらしいエンジン音が多少聞こえるが、これとて極僅かで、これなら回転数が伸びないだけで、ディーゼルのデメリットは殆ど無い。 エクストレイルはメルセデスと比べれば流石に差が付いてしまい、アイドリングでも多少の振動を感じるし、フル加速ではディーゼルエンジンの騒音がモロに聞こえてしまう。 そして、パジェロのアイドリング時の振動はメルセデスと比べてマダマダだと思ったエクストレイルよりも酷く、更にブルブルという一昔前のディーゼル丸出しだし、フル加速だって煩いと思ったエクストレイルよりも更に盛大なディーゼル独特のノイズが轟きわたる。すなわち、走った結果も
   メルセデス > ニッサン > 三菱
となる。

今回はあくまでもターボディーゼルのモデルを試乗した結果であり、もしかしてガソリン版だったら結構良いのかもしれない。パジェロのバリエーションにはGRというベースグレードがあり、ガソリン3.0Lなら300万円くらいだから、今の時代、ミニバンを買う事を思えば決して高くないし、ちゃあんと7人乗れるから、息子のサッカークラブの試合 の時のクルマ出し当番でも活躍できる。それに、安定性が良くないといっても、ミニバンに比べれば似たような物だし。

ということで、パジェロの立場も多少は立てたところで、今回は終了とする。

注記:この試乗記は2011年3月現在の内容です。