ブレイド 褒めゴロ 試乗記

ご注意:この試乗記の内容は大きく偏っています。事実に反する事は書いてありませんが、誇張や想像は大いにあります。
 


VWに代表される欧州のCセグメントハッチバックの典型的なスタイルに見えるが、良く見れば、フロントのデザインは
クラウンを始めとするトヨタ製の高級車と共通の顔をしている。

昨年の末に突如発売されたブレイドは、今までの国産車には無かったカテゴリーのクルマだ。しかし、このクルマの評判は決して良くない。いや、それどころか、一部の辛口を売り物にするスクープ系の雑誌では、評価に値しないとのことで、星(☆)一つの最低評価を下されていたとか。雑誌という従来から認知されているメディアがこんな状態だから、玉石混合のウェブサイト、取り分け個人ブログやHPでは、ブレイドをボロクソ言うのがトレンドのような状況にすらなっている。本当に、そんなにダメなクルマなのか?ライバルとおぼしきVWゴルフと比べて、果してどうなのだろうか。というわけで、今回はブレイドの試乗記をお届けしよう。

ディーラーの駐車場で見るブレイドは、VWに代表される欧州のCセグメントハッチバックの典型的なスタイルに見えるが、良く見れば、フロントのデザインはクラウンを始めとするトヨタ製の高級車と共通の顔をしている。これに対して、カローラにクラウンの顔をつけた安易なデザインなどという奴がいるようだが、メーカーとして同じコンセプトのシリーズを大きさの大小に関係なく、共通のデザインとすることによるアイデンティティの確立は今や当然のこと。より大きいとはいえ同じトヨタの高級車ラインナップの一つでもあるクラウンとイメージが似ているのは、寧ろ当然のことだ。ブレイドを批判する輩に限って、BMW1シリーズが7や5シリーズと共通のデザインであることを評価していたりする。BMWがやると確立されたアイデンティティで、トヨタがやると安易なデザインの使いまわしというのは、最初にBMWは正義でトヨタは悪役という前提の元の意見である事がアリありとしている。

リアビューはかなり個性的だし、クリアレンズを使用したテールランプがアクセントとなっている。このクリアレンズに付いても何だかんだ言われているが、現車を見るとなかなか若々しく、メーカーのいうターゲットである団塊世代のみではなく、若い人にも十分にマッチする。リアハッチを開けると、ハッチバックとしては例外的に奥行きのあるラッゲージルームがある。唯一残念なのはサスの張り出しが左右にあることだが、これはこのクラスのクルマのリアアクスルがトーションビームという安物を使っているのに対して、ブレイドはダブルウィッシュボーンという高級な構造になっているのが最大の理由だ。例えばポルシェの場合では、ベースグレードなら600万円程度から買えるボクスターではリアにストラットが採用されていてこれはブレイドより格下だ。ベースグレードでも1000万円軽く越えるカレラ以上になって初めてマルチリンクというブレイドと同クラスのサスになるという事実を考えてみれば、ブレイドが如何に高級な仕様か理解出来る筈だ。


写真1
クルアレンズのリアビューは若々しい雰囲気で溢れているから、団塊世代と言わずに、若者にも似合いそうだ。

 


写真2
ラッゲージルームはハッチバックとしては十分な広さがある。とはいっても、ゴルフバックが載るかという議論が必要なオーナーにはマークXを勧める。

 


写真3
ドア上部とグローブボックスの内装材にはアルカンターラが使われている。内張りにアルカンターラを使うというのは従来でもレクサスLSやBMW M5クラスしかない。

 


写真4
上段は標準グレードのファブリックシート、下段はGグレードに装着されているアルカンターラ/レザーのコンビ。予算があればGグレードが勧められるが、ファブリックでも十分な満足感はあるだろう。

 

ドアを開けると、先ず最初に目に付くのが話題のアルカンターラ(人工裏革)を貼ったドア上部の内装だ。ドア以外にもグローブボックスやメーターフードにもアルカンターラが貼られて、しかも端部はシッカリと縫いつけられて(ステッチ)いる。内装にアルカンターラを使っているのはトヨタ系ではレクサスLSのウエストラインから上の内装材に、また輸入車ではBMW、それも千数百万円もする5ℓ  V10、500psのM5くらいしか覚えがない。シートについても試乗した上級グレードであるGでは座面がアルカンターラでサイドがレザーを採用している。この組み合わせはポルシェボクスターの標準シートとソックリだが、ボクスターはサイドがブレイドのように本物のレザーではなく人工皮革だから、結果的にはブレイドのシートはボクスターより更に上等といえる。

シートに座って室内を眺めてみれば、自分が2ボックスのハッチバックに乗っているというよりも、大型の高級サルーンに乗っている錯覚を覚える程に各部の質感も良い。ブレイドの内装をカローラ系のオーリスと同じ金型(かながた、樹脂成型 の型)を使った共通部品だという輩がいるが、オーリスとは表面仕上げなどが全く違う。それにグレード(価格)差の大きいモデルで基本的に同じ金型を共用して、表面仕上げや材質を変えることで差別する例はいくらでもある。例としてはBMWの場合なら525i(628万円)とM5(1350万円)の内装の金型は共通だし、メルセデスのC180(409万円)とAMG C55(903万円)だって同様だ。

国産車のシートは欧州車に比べると大いに差がついている部分と言われていて、ゴルフのシートは長時間乗っても疲れないとも聞くが、元来クルマは長時間の連続運転は疲労の面から集中力を欠いたりするので、 事故防止の面からも決して好ましくない。したがって、ブレイドを始めとする国産車のシートは無理な長時間の連続運転を防止する意味で、1時間も運転すれば腰が痛くなって休憩したくなるから、安全面では実に好ましいシートだと断言できる。


写真5
この高級感に溢れるダッシュボードの眺めは、トヨタマークよりもレクサスのロゴが似合いそうだ。


写真6
メーターパネルの中央上部のディスプレイには各種情報が表示される。BMWなどでは当たり前のこのディスプレイだが、国産ハッチバックでは他に例がない。

 


写真7
ATのセレクターは最近では標準的な4ポジション+スポーツモードにマニュアルを備えたティプトロ方式。パネルやシフトレバーは実に高級感に溢れた質感だ でレクサスブランドでもいいくらいだ。

 

それでは、早速走り出してみようと思って、スターターボタンを押そうとしたのだが、何の気なく回転計を見れば、針は700rpm辺りを指しているではないか。そうか、エンジンは掛かっていたのだった。普段はアイドリングが煩くて振動もあるようなクルマに乗っているので、マルでレクサスLSやクラウンマジェスタのような極端に振動も音も少ない高級車独特のアイドリングに気が付かなかったのだ。

このクルマのミッションはCVTを採用しているが、セレクターのポジションはP-R-N-Dにスポーツモードとマニュアルモードを加えたティプトロ方式だから違和感は全くない。走り出した瞬間に感じるのは、これまた小型ハッチバックの常識を覆す、まるでクラウンにでも乗っている錯覚を起こしそうな重厚な走り味だった。この重厚感はVWゴルフでは絶対に味わえないだろう。2.4ℓという車体に対して不釣合いにも思える大きな排気量だから、うっかりスロットルを踏んだら、 何処へ行くか判らないような危険なクルマを想像するかもしれないが、ブレイドは極めて安定しているし、その強大なトルクを余裕に使って、高級な走りを追求している。ミッションもCVTとしては例外的に違和感はなく、何も知らないで乗ったドライバーは、ブレイドがトルコン式のATだと思うに違いない。今度はセレクトレバーをDから右に倒してスポーツモードを試してみる。このSモードではブレイドの走りは一変して、3000rpm辺りを多用するという極めてスポーティな走りになる。更にレバーを手前に引いて見ると、綺麗にシフトダウンをして次の加速に備えている。これなら、普段は出来の良いCVTに身を委ねて疲れない運転をして、その気になったときにはSやマニュアルモードで飛びっきりのスポーツドライブが出来るから、言ってみれば1台で2台分、すなわち平日の仕事はメルセデスEクラスの如く楽チンに、休日のプライベートはポルシェボクスターの如くスポーティーに使い分ける事ができる 。

ブレイドの2.4ℓ 2AZ-FEエンジンは(167ps/6000rpm、22.8km-m/4000rpm)ハリアー2.4と共通だ。ハリアーはレクサスRXの日本名だから、ブレイドのエンジンはレクサスと共通であり、 本来レクサスブランドで売られるべきプレミアムカーをトヨタブランドで売られているために、超買い得の値段がついているのだ。何というお買い得なクルマなのだろう。 最近は趣味のブログなどで試乗したクルマに対してケチをつけまくるのが辛口と勘違いしているようだ。そういう素人ブロガーには、この ブレイドの良さが判らないのだろう・・・・・。


写真8
ボンネットの中の2.4ℓ 2AZ-FEエンジンは167ps/6000rpmの最高出力と22.8km-m/4000rpm
の最大トルクを発生する。このエンジンはハリアー2.4と共通だ。ハリアーはレクサスRXの日本名だから、
ブレイドのエンジンはレクサスと共通であり、本来レクサスブランドで売られるべきプレミアムカーをトヨタ
ブランドで売られているために、超買い得の値段がついている。

ブレイドの操舵特性はマイルドの中にも決して鈍感ではないという、実用性とスポーティを両立した絶妙なセッティングがなされている。リアのサスペンションに金を掛けたご利益は、安定し た挙動と重厚な乗り心地を両立していることだ。この乗り心地の良さという点では、ライバルのVWゴルフではブレイドの足元にも及ばない。それでいて操舵力は軽いから平日は奥方の買い物用として使われても文句は出ないだろう。今回は十分にワインディン グ路を試せなかったが、本来なら箱根旧道にでも持っていって思う存分に振り回してみたい・・・・と、思わせるに十分な予感を感じる。

ブレーキは適度な遊びのあとに、これまた適度な食い付き感と丁度良いストロークで、実用車のブレーキとしては何の文句もない。踏み始めの正確さはVWゴルフを凌ぐほどだ。最近の国産車のブレーキは数年前からみれば、 相当に進歩の跡がみられるが、このブレードも安物の欧州車などでは足元にも及ばないブレーキフィーリングを感じられた。 大部分の国産ハッチバックのリアサスはトーションビームとドラムブレーキだから、リアにダブルウィシュボーンとディスクブレーキを持つブレイドとでは、最初から全く比較にならないのは言うまでもない。


写真11
6.5J16ホイールとフロント205/55R16タイヤを装着する。写真のリアにもディスクブレーキが装着されている。

 

 

今まで国産車の空白地帯で、欧州車の独壇場だった上級コンパクトハッチバックという分野に果敢にも挑んだトヨタブレイドは、世間からはボロクソ言われているようだ。しかし、今回乗ってみた結果はVWゴルフやBMW1シリーズに比べて、巷で言われている程劣っているとは思えなかった。このクラスでは抜群と言われるゴルフのGTIはブレイドよりも100万円以上 も高い。しかし、GTIの動力性能なんて250万円のマツダRX−8より明らかに劣る。そんなコストパフォーマンスの悪いクルマを絶賛して、ブレイドをボロクソ に評価をするのは、明らかに最初に結論有りの気がする。まあ、下の覧を見てもらえば、ブレイドの勝利はいうまでもないが・・・・・。

              ブレイド      ゴルフ GLi      BMW 116iM-Sp
(全長×全幅×全高)mm  4260X1760X1515  4205X1760X1520     4240X1750X1415
車両重量          1390kg    1380kg       1350kg
エンジン          
 総排気量(ℓ)      2.362      1.984        1.596
 最高出力        167ps/6000rpm   150ps/6000rpm     115ps/6000rpm
 最大トルク     22.8kg-m/4000rpm 20.4kg-m/1500-4750rpm  5.3kg-m/4300rpm
トランスミッション      CVT         6AT          6AT
              (7速シーケンシャル)
リアサスペンション     ダブルウィシュボーン     4リンク      5リンク       
リアブレーキ         ディスク         ディスク      ディスク
タイヤ              205/55R16     195/65R15        195/55R16
価格              224.7万円    282万円        337万円

英国には以前バンデンプラスプリンセス(通称バンプラ)というクルマがあった。 当時(1964年)の小型車であるモーリスADO16をベースにモケットの内装、ウォールナットのウッドパネル、レザーのシートなどを装着していたもので、 ウィークデーはロールスロイスのリアシートに収まっている貴族が、休日のプライベートタイムに自らハンドルを握るのに最適だった。 聞くところによると、当時の英国の一流ホテルでは、ジャガーはもとよりロールスロイスよりもバンプラの方が優先的に扱われていたそうだ。こう考えていくと、ブレイドはVWゴルフなどのライバルではなく、 正に現代日本のバンプラなのではないか?だから、VW程度にステータスを感じている程度の庶民や、ITや不動産で一儲けした成り上がりには理解できない世界であるに違いないのだ。

レスサスブランドは最廉価のIS250でも価格は400万円に迫るし、IS350に至っては500万円に近い。これではいくら内容が良いと言っても現実的には我々一般市民にはとても手が出ない。 しかし、ブレイドならば無理をすれば何とか買えそうだ。しかも、レクサスと違って値引きも期待できるから、更に買いやすいだろ。 ブレイドの標準グレードは約225万円だから、ゴルフGLiよりも約60万円も安く、しかも内容的には上回っている。 これだけメリットの塊りでもあるブレイドは、しかし世間での評価は極めて良くない。このクルマのコンセプトを多くの日本人が理解出来るまでには、現在の日本の文化レベルは至っていないのは如何にも残念だが、 これはもう少し時間が必要かもしれない。トヨタには現状にメゲズに地道にブレイドの良さを広めていってもらいたいものだ。
えっ、それ程までに気に入ったのなら、自分で買う気はあるのか、ですって? あっ、いや、まあ、その・・・・。我が家の経済状態では、その、ちょっと、予算が。