BMW M3 Coupe (2008/7/12) 後編 ⇒前編


 

試乗車には、新型のM3にオプションとして設定されている”M Drive パッケージ”(45万円)が装着されていた。これはEDC(エレクトリック・ダンパー・コントロール)とMサーボトロニック・パワーステアリング。そしてEDCやDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)およびエンジン・レスポンスの設定を画面上で変更できるM Driveが装着されている(写真19)。これは画面に入力されたセッティングをステアリングスイッチのMボタン(写真18)で呼び出すことが出来る ものだが、色々と弄ることが出来るといっても、最初だけは喜んで使ってみるが、結局は忘れ去られるような気もする。 ただし、画面での設定などをしなくても、コンソール上のシフトレバー左のスイッチで、パワーモードとEDCモードが切り替えられる(写真23)。

アイドリングは、この手の高性能車としては静かで振動も少ない。 クラッチペダルはエンジン始動の際に既に踏んでいるので(最近のクルマらしく、クラッチを踏まないとエンジンが始動できない)V8 4ℓの大トルクを繋げることを考えれば、想像よりも遥かに軽い踏力である事が既に判っているが、この軽さは135iと同程度だ。 ギアを1速に入れてクラッチを徐々に繋げていくと、ミートポイントも判りやすく繋がりも穏やかだから、特別なテクニックなどは必要ない。ゆっくりと走り出すと、流石に4ℓの大トルクは低回転からも充分な駆動力を発揮するから、 8000rpm以上も回せるハイチューンエンジンとはいえ、その気になれば3速1000rpmから速度を上げることも可能だ。
スロットルのレスポンスは当然ながらモードによって異なる。先ずはノーマルで走って見ると、これでも決して苛つく程トロくはないし、 街中を走る分には充分に高性能を味わうことが可能だ。上手い具合に片側2車線のバイパスで先頭を走っている時に、先の方の信号が黄色になるのが見えた。 先頭での信号待ちにチャンスとばかりにコンソール上の”POWER”スイッチを押すと、LEDが点灯してパワーモードであることが知らされる(写真23)。 そして、青信号を確認して1200rpm程度で大人しくクラッチを繋いだ一瞬後に、一気にスロットルペダルを床まで踏んでみる。国産車に比べて、いや3シリーズと比べても重いM3のスロットルペダルを一気に踏むには、ドライバーがその気になってコレャッと踏む必要がある。 この時、車両重量が1630kgという決して軽くないM3の回転計は、アッというまにレッドゾーンに近づくが、この時の方向安定性は5000rpmを過ぎた辺りで多少右に流れたので修正が必要だった。 M3の回転計はイエローゾーンが7800prmのため、今回は7500rpm程度を目処に2速へのシフトアップを行った。 この時の速度は約60km/hで、即2速にシフトアップしてクラッチを繋げると回転計の針は4500rpm辺りを指している。そこでまたフルスロットルを踏むと、6000rpmまでグングンと延びていくが、この時点で取り合えず一般道の加速は止めておく。 この先は、これから向かう高速道路に入るまでお預けとしよう。片側2車線のバイパスというのは、100km/hくらいでも危険を感じない(事実、クルマとドライバーの腕がソコソコなら、全く危険はないと思う)ので、覆面や白バイからすれば最高の漁場でもある。 これが本当に危険な場面だったら、追尾するほうだって命がけとなるから、そんな事はやらない。それでも、偶には若い覆面の運ちゃんが深追いしてコーナーから飛び出し、電柱に激突して2名殉職、なんていう記事がネットで検索すると出てくるようだが。

既に述べたようにM3にはパワーモードの切り替えがスイッチがある。このモードの切り替えを知らないでノーマルモードだけで試乗すると、『M3のレスポンスなんて普通のクルマと大して変わらない』というコメントになるかもしれないから、BBSバトルが大好きな脳内オーナー読者は、 ここのとろこを突っつくと宿敵をコテンパンにやっつけられるかもしれない。このように最近の(超)高性能車はどれも似たようなモードの切り替えを持っているから、短時間の試乗に先立っては、事前に調査しておく事が必要だ。中には、 隣に営業マンが乗っているにも拘らず、トロい省エネモードのみで試乗したなんていることもあるようだから、これでは結果は大いに変わってしまう。その理由は、一般のユーザーに高性能モードを使わせて、コントロール不能での事故を起こされるのが怖いから、知らん顔してトロいモードだけで試乗させる場合が多いようだ。それでも、普通のセダンオーナーだったら充分に感動してくれるだろう。 事実、今回もパワーモードでの1速フルスロットルでは前述したように一瞬当て舵が必要な場面があった。高性能車に慣れた運転好きのドライバーなら何という事はないが、BMWをブランド物として乗っている、決して運転の上手くない タイプのドライバーだと、カードレールや中央分離帯と仲良くなってしまう事も有り得る。そんな現実から、ディーラーが試乗に神経質になるのも判らないでもないが。
さて、フルスロットル時の音はといういと、窓を閉めていると意外に静かで拍子抜けするが、音質自体は実に子持ちの良いBMWらしい音が聞こえる。試しに窓を開けてみたらば、4000rpmからのサウンドは結構な音量となり、更に8000rpmに向かっての排気音とメカ音のハーモニーは外にいる赤の他人に聞かせてやるのが勿体無いと言いたくなる程だ(「 バカ野郎、聞かされるほうはいい迷惑だ」といわれるかも知れないが)。 そして、この音質も音量も兄貴分のM5にとてもよく似ている。 ただし、新M3の排気音は耳を澄ませれば明らかにV8のビートが聞こえてくるのは、先代の直6が好きな人には不満かもしれない し、個人的にも前回乗ったMロードスターの直6エンジンに魅力を感じる。
Mロードスターの試乗記でも触れたが、BMWの高性能車はM3も含めてギア比がローギアードな設定となっている。これには8000rpm以上まで回るハイチューンの自然吸気エンジンを搭載していることもあるが、実際に乗って見ると 意外に伸びが無いと感じるかもしれない。そして、排気量の割には線が細い感じで、確かに速いことは速いが、なにか迫力が無いと感じるのは今回のM3もそうだし、F1譲りのV10を積んだM5でも同様 な傾向があった。さらには信頼できる某老舗自動車雑誌の加速データーをみても、M3のゼロヨンデーターはポルシェカレラは勿論のこと、ランエボなどにも多少劣る結果になっているから、体感として感じたイマイチ感は気のせいではないのだろう。な〜んて書くと、3シリーズや5シリーズオーナーは怒り狂うだろうし、 アンチビーエム派(いや国産命と呼ぶべきか)はそれ見たことかということで、例の論争に油を注ぐ事になる。そして行き着くところは米国ではM3の$56,500に対してランエボ]は$38,290だから、その差は約$18,000という議論となるが、この話は勝手に何処かでやってもらおう。

さて、M3のシフトフィーリングはといえば、前回試乗して酷評だったMロードスターのMTに比べれば、明らかに操作し易いが、多少の粘っこさは残っているし、2速から3速へのシフトもNで確実に右に送らないと引っかかったり、1速側へ入ろうとしたするのは相変わらずだ。 この点では135iクーペが最も良かったから、シフトフィーリングとしては
  135i > M3 >> Z4 Mロードスター
という感じになる。
そして前回試乗したMロードスターは極端にレスポンスを上げたスロットル特性から、シフトアップ時に回転を合わせる時に狙った回転数を維持できず、どうしても回転が合わない状態でクラッチミートする傾向となって、何とも美しくないシフト操作となってしまった。 『それは、オマエの腕が悪いからだ』と言われればそれまでだが、今時この特性は何とも時代遅れだ。これはもしかして、Mロードスターはワザとそのような特性にして雰囲気を盛り上げているのかもしれない、とも思っている。これに対してM3はといえば、例えパワーモードがスポーツに設定されていてもシフトアップ時の回転合わせは右足の微妙な調整に追従してくれるから、 チョッと慣れたドライバーならば殆どショックのないクラッチミートが可能となる。

既に説明したように試乗車には電子式の可変ダンパーであるEDCがオプション装着されていたので、先ずはノーマルで走ってみると、当然硬いが決して不快ではないという例の欧州製スポーツ車独特の乗り味で、まあ今更言うまでもないという状況だった。 前回のMロードスターと比べれば圧倒的にボディの剛性感が勝っているから安心感も抜群だが、意地悪くいえばMロードスターのような際どい面白さもないし、ポルシェカレラのように金庫の中で運転しているという程でもない。次にEDCをスポーツに切り替えるとコンソール上のスイッチの2つのLEDが点灯する(写真23)。スポーツモードでは当然ながら硬くビシッとするが、 ポルシェのPASMのスポーツモードのように、どう考えても街中では使えないほど硬くて、これはサーキット専用だと思えるくらいに大きく特性が変わる訳ではない。確かに切り替えれば違いが判るが、 ハッキリ言って存在の必要性に疑問を持ちたくなる。そういう意味ではパワーコントロールも同様で、何やらマニアックというよりも玩具っぽいのが気にかかる。そしてココまでやってみたら、何やら比較が無意味に感じてきて、今回はコンフォートモードは試さなかった。そして、その後は全てパワーもEDCもスポーツモードに統一しての試乗とした。
 


写真18
左に330km/hフルスケールの速度計、右には8200rpmからレッドゾーンの回転計と下部に組み込まれた油温計。
そして、分厚いアルミのリングを持つメータと、3色を糸を使うステアリングのステッチという、何れもMのお約束をクリアしている。
左側スポーツの4つのボタンで左上の丸にMがMドライブのメモリー呼び出し用。
 


写真19
Mドライブのセッティング画面。細かいセッティングはメモリーに保存して、ステアリングスイッチで呼び出す。


写真20
iDRIVEの操作(後方のシルバーの)リングはMDriveの操作も兼用する。

写真21
ペダル配置はLHD仕様という事もあり、スペースも配置も適切だ。標準と変わらないゴムの滑り止めの付いたペダルはシラケる。ここはアルミ製を奢りたい。
 

 


写真22
6MTのシフトノブもMマーク付きのお馴染みのモノ。
Mロードスターとも共通だった。


写真23
面倒なディスプレイでのセッティングをしなくても、ある程度の設定は写真のスイッチで即座に可能となる。
写真はPOWERがスポーツ、EDCがスポーツプラスの状態。

 

ステアリングはBMWらしく重めでズッシリとしているが、他のBMWと違うのは剛性感がさらに向上していることと、中心付近の不感帯がBMWとしては少ないのもM3だからこそだ。 試乗車にオプション装備されているM Drive にはパワーステアリングの特性を2段階に変えられるMサーボトロニック・パワーステアリングが装着されていた。 今回は限られた時間の中での試乗ということと、EDCとPOWERのモードを試した結果から、Mサーボトロニックもステアリング特性が大きく変わることも無いであろうと思ったからだ。事実、スポーツモードのままで、市街地から高速道路まで全く違和感無く走行することが出来た。確かに一般のBMWに比べればレスポンスは良いが、決して過激すぎて危険というほどではないし、この手のクルマ、しかもMT車を選ぶようなオーナーならば、スポーツで固定しても問題はないと思う程度の特性だった。
このクラスになればハンドリング云々などと言ったところで、一般公道では限界どころか遥か"とば口"しか体験できないから、言ってしまえばどの車種だって充分な性能という事になる。と、言っては身も蓋もないので多少の感想を述べて見るが、その前に一言。日本の公道というのは本来が2.5mの大型車がギリギリで走行できる程度の幅に 作られているから、大型車よりも幅が狭いとはいえ運転席の見晴らしが商用車 (中大型トラック)と比べて大きく劣る乗用車では、車幅1800mm級になると左右のマージンは決して十分ではない。これが、5ナンバーサイズだと全幅1700mm未満となるから、その差は100mm、片側でいえばたったの50mmしかないのだが、 この50mmの差は絶大で、旧レガシィ(BH5)に乗ってみると実に幅を取りやすいし、コーナーでも車幅に対する余裕からくるコーナーリング速度の上昇は、日本の公道では幅狭車が圧倒的に有利であることが実感できる。そういう状況を考えれば、M3の1805mmの全幅や1630kgの重量は、もはやコーナーリングマシーンとしての限界を超えている。実は今回のハンドリングコースはレクサスIS−Fと全く同じ場所で、それではM3とIS−Fのコーナーリングはといえば、感覚的にはどちらも良い勝負ともいえる。 動力性能については体感的に、とてもではないがBMWのMエンジンと勝負するのは可哀想なIS−Fだったが、コーナーリング自体は結構楽しめたし、勿論その程度の楽しみなら重いのデカいのといっても、M3だって充分に楽しめる。しかもポルシェカレラのような癖もないから、誰でも有る程度の速度でコーナーをクリアできるが、それが 逆にマニアに嫌われるかもしれない。そして、同じBMWの135iと比べれば全幅1750mm、車両重量1530kgという、M3に比べて幅で−55mm、車両重量で−100kgの差は、コーナリングの楽しさでは圧倒的に勝っているのも、M3の辛いところでもある。M3のコーナーリングは余りの楽しさに1千万円超のクルマであることを忘れて、気が付いたら結構本気でコーナーを攻めていた・・・・・・・という、事実には全く至らなかった 。

一般道では今や高級志向過ぎて、マニア憧れのスーパースポーツらしさが無くなってしまったM3だったが、それでは高速道路ではどうだろうか。ということで、いよいよ高速道路のインターへとクルマを進める。多くの場合、試乗車にはETCが装着されていない。 勿論今回のM3にもETCは付いてなかったし、おまけにLHDという最悪の条件で、インターの料金所の一番左側のゲートに入る。ここに左ハンドル用の発券機があるのだが、これが路肩より一段入った草むらに立っていて、しかも高さが低いから、クルマの中から手を出して券を取る事は不可能で、一旦車から降りて通行券を取ることになる。 実際にETCを一番喜んでいるのはLHD車のドライバーかもしれない。
通行券を取る段階で大騒ぎだったが、加速車線で2速60km(4500rpm)からフルスロットルを踏むと、車は一気に加速して7500rpmで3速に入れた段階で既に100km/hに近い速度が出ている。ただし、この程度の加速性能はポルシェカレラは勿論、価格的に1/3程度のランエボ]だって、いや150万円の中古のランエボZだって味わえるから、何も1千万のM3に限った事ではないのが 、これまた辛い。
本線を流していると前が空いてきたので、90km/hから3速にシフトダウン。回転計の針は4200rpm付近を指している状態から、一気にフルスロットルを踏むとバックレストに上体がめり込むような加速で、一気にヤバイ速度に到達する(写真26)。このような使い方がM3には一番合っているのだが、 チョット踏み過ぎれば日本の法律では犯罪になってしまう。同じ事をやっても、ドイツでは合法で日本では犯罪という事実は、悲しいかな日本が後進国である証 でもある。まあ、速度無制限にしろとは言わないが、幾らなんでも100km/hというのは実情を無視しているのではないか。
M3の高速安定性は、当然ながら並のクルマとは次元が違う。200km/h以上で安全に巡航できる設計なのだから当然だし、180km/hでリミッターが掛かって、それ以上は保証しないで もよい国産車とはマルで条件が違う。高速での操舵性も適度にクイックで、右に左にと車線を変えてクルマの間をすり抜けるような、超ひんしゅく物の運転だって楽に出来るが、この手の走りは より低いボディのポルシェカレラには一歩を譲る。
何れにしても、新型M3の本領はワインディングよりも高速巡航にあるようだ。
 

  
写真24
V8 4L 420ps/8,300rpm 40.8kg・m/3,900rpmを発生するエンジン。 カバーには当然ながらMのロゴとV8の文字が見える。
これを見る限りでは現行3シリーズ(E90〜92)はV8搭載を前提に設計されたようだ。
 


写真25-1
他車の流れに乗って3速で2500rpmを維持すれば速度は約55km/h弱(計算上は52km/h)⇒⇒⇒

 


写真25-2
この程度のコーナーなら簡単にクリアーするが、1805mmの全幅や1630kgの重量は決してコーナーリングマシーンにはならない。
 

 


写真26-1
高速道路上で3速で4200rpmを維持すれば速度は約90km/h弱(計算上は87km/h)⇒⇒⇒

 


写真26-2
そこからフルスロットルを踏めば、クルマは強烈な加速を見せ付ける。
 

 

BMWは伝統的にブレーキに金を掛けないという方針があるようだ。聞いた話だが、BMWのエンジニアにとっては、ブレーキへの予算をあと少し増額してもらえれば、ライバルに対して大いなるアドバンテージを得られるのにと嘆いているとか。総額では千数百万円近いM5ですら、 ホイールから覗くのは片持ちの、フローティングもしくはピンスライドと呼ばれるタイプのキャリパーだ。今の世の中、他社では高性能車や高級車には、アルミの対 向ピストン(オポーズト)キャリパーを装着しているから、これは営業的にも不利になるだろう。実際にM5オーナーの多くが、ブレンボーのキャリパーへの改装を希望しているようだ。
そして、今回のM3のキャリパーも、残念ながらピンスライドだった(写真29〜30)。このタイプはピストンが片側(内側)のみの為に、両側のパッドとローターの隙間を確保するにはピストンのストロークを倍にする必要がある。 たとえば、ブレーキ開放時に片側0.3mmの隙間をとる場合、オポーズトキャリパーならば両側のピストンがそれぞれ0.3mmの隙間を持ち、ブレーキを掛けた時の遊びも0.3mmとなる。ところが、フローティングキャリパーの場合はピストンの遊びストロークは0.6mm必要となる。これはドライバーがブレーキペダルを踏んだ時の遊びストロークがオポーズドならば半分ですむ事になる。 ポルシェでも、ランエボでも、オポーズドキャリパーのクルマのブレーキを踏んでみると、遊びが殆ど無いのを実感する筈だ。
さて、それでは実際にM3のブレーキはといえば、フローティングキャリパーとしては遊びは少ないほうだが、効き味は例によってBMWサルーンと同じで、ちょっとペダルに足を乗せただけでガツッと効くタイプ 。これまで何度も指摘してきたように、この手の特性は普通のサルーン用には良いだろうが、走りを重視する高性能車としては全く適していない。
 


写真27
リアには255/40R18タイヤが標準装着されている。


写真28
そしてフロントは225/45ZR18タイヤが標準装着されている。
 

 


写真29
リアキャリパーは鋳鉄製のオーソドックスなピン
スライドタイプ。ローターは穴開だが、やけに穴が大きく、強度が心配なのはフロントも同じだが。

 


写真30
フロントも同様にピンスライドで、420psの高性能
スポーツとしては見た目だけでシラケる。ただし、ボディ(ピストンハウジングともいう)はアルミのようだ。
 

 

ビーマーの総攻撃を覚悟して言ってしまえば、M3は3シリーズの最上級モデルで、320とM3の関係はインプレッサ15とSTIのようなもの。STIの性能はフェラーリ360(430とまでは言わないが)やポルシェカレラ並だが、所詮はCセグメン トの実用車であるインプレッサのバリエーションだ。 同様にM3だって基本は320と何処が違うといわれても反論は出来ないし、BMWサルーン(320どろこか530クラスでも)のオーナーが試乗すればあまりの動力性能に唖然として、世界最高のスポーツクーペと思うだろうが、残念ながらこの程度の動力性能は400万円以下のランエボ]でも手に入ってしまう。だから、国産高性能ターボ車のオーナーからすれば、「なぁんだ、M3なんて1000万円もするのに大したことはないじゃないか」となり、ビーマーとの喧嘩になってしまう。

前回の試乗記でZ4 Mロードスターを取り上げたとき、ネガティブな面も多いが、確かに面白いし6気筒のMエンジン(S54)を味わうにはコレしかないと思った。そして、今回M3に乗ってみたら、益々Mロードスターが魅力的に見えてきたのが本心だ。そこで脳裏に浮かんだのが、Z4とはいえクローズドボディのMクーペだった。これなら、剛性もロードスターより遥かに上だろうから、走りの質もアップしているに違いない。 と、そんな事を思っていた矢先に、今年の十勝24時間耐久レースの結果を見たら、なんとZ4 Mクーペのワンツーフィニッシュだった。
Z4 Mクーペの価格は813万円とM3に比べて約200万円も安い。しかも人気が無いから、新品同様のアプルードカーを探せば500万円代で手に入るようだ。人気が無いクルマは買う時は安くても売るときも安いから同じではないかという意見もあるだろうが、M3だって今や特別なクルマではないから、リセール抜群とは言えないだろう。
そして、500万円でもマダマダ高すぎるというならば、Z3 Mクーペはどうだろうか?玉数も少ないし、発売中止してから8年程は経過しているかから車両の損傷程度も心配だが、価格的には200万円代の前半で買えそうだ。ただし、スタイルは超個性的だから、好みがハッキリ分かれるとは思うが・・・・・。





何だか、M3自身の評価がイマイチのように感じるかもしれないが、今回の6MTではなく近日発売のツインクラッチによる2ペダルならば、超高性能なファミリーカーとしての存在意義があるのではないだろうか。それも4ドア版の方がより向いているかもしれない。

注記:上記は2008年7月の内容です。4ドアサルーンのM3は既に発売されています。