BMW  335i (2006/11/25) 前編 ⇒後編

 







 

    
     外観上では他のグレードとの大きな差は見つからない。この独特の雰囲気はヤハリ本物の持つ味で、
     スカイラインもこれと比べるとチョット辛い。
 

BMWの看板スター、3シリーズに新たなモデルが加わった。その名も335i。この型番を聞けば誰もが3.5ℓと思うだろうが、実は3ℓのツインターボで、 これはメルセデスのC200が1.8ℓスーパーチャージャーで2ℓ相当というのと同じ考えだ。最近の欧州車、特にメルセデスとBMWは特にこの傾向があるし、 レクサスでもハイブリッドは同様の名称を付けている。 まあ、排気量がどうであろうとも、それだけの性能があれば良いわけだけれど、中には3ℓなのに3.5のような呼び名はインチキだと騒ぐ脳内オーナーもいるに違いない。
ところで、ターボと言えば今では日本のお家芸のようになってしまったが、BMWは何と今から30年以上前の1974年に2002ターボを発売していた。 このクルマは3シリーズの前身で小型4ドアサルーンの2002に直4、2ℓエンジンをターボチャージャーで加給することで170PS/5800rmpの最高出力と 24.5kg-m/4000rpmの最大トルクを発生した。1974年といえば、日本ではスカイラインGT−R(C110、通称ケンメリ)が6気筒2ℓで170PS/7000rpm 、18 .0kg-m/5600rpmという高性能ぶりだったから、当時の日本の先端技術も捨てたものではなかったが、同じ2ℓとはいえ流石はターボで、数値で見ても圧倒的な大トルクを発生している。そんなBMWも、その後は生産車にターボを載せる ことは無く、 自然吸気(NA)の路を歩んでいったから、最近ではBMWといえばNAというイメージになっていた。おっと、こういう事を書くと、当時の日本のJIS馬力なんてハッタリだから、同じ170PSと言ったって全く違うという脳内オーナーの兄ちゃんが居そうだが、まあ、それを言っちゃあ、お終めぇよ!それに当時のS20エンジンが世界的に見ても、十分にトップグループに入っていた事は否定できない。流石は技術のニッサン、と言いたいが、S20はR380のデチューン版だから、プリンスのエンジンだった。

そのBMWが久々に放ったターボモデルの335iに早速試乗する機会があった。既にご承知のように、先月20日に発表されたニュースカイライン(V36)の350GTに試乗してみたら、 なんと想像以上に出来が良かったので、それならこのクラスの本家本元、小型セダンのメートル原器ともいわれる3シリーズと比較をするのが一番と思い、発売されたばかりの335iに乗ることにした。 まあ、同じ3.5ℓクラスだから、ガチンコ勝負で比較してもバチは当たらないかと思ったら、知人達の間では幾らなんでもそれはスカイラインが可哀想だという意見が多数をしめた 。でも、まあ目標は高く持ったほうが本人の成長のためにも良いなんていう理由で正当化することにした。

335i(セダン)の価格は668万円。今回の試乗車はMスポーツパッケージ(33万円)の為に701万円という恐ろしい価格となり、これはスカイライン350GTの最上級グレードであるTypeSP(380万円)にナビ(約42万円)と4WAS(約14万円)つけて合計436万円としても、 価格差は約260万円にも達する。この価格差から考えても335iと350GTを比較するのは無謀には違いない。 それにしても最近のクルマは、いつの間にやら高くなっているようだ。335iに比べれば買い得というスカイラインにしたところで、調子に乗ってオプションを付けまくると総額は500万円を軽く越えてしまう。 スカイラインに500万円も出すのか?それも過去のGT−Rのようなモデルならともかく、350GTといっても普通の国産サルーンなのに、なんて思っている人も多いのではないだろうか。

335iの外観だけでは他の3シリーズと大きな違いはない。特にM-Sportパッケージを装着した場合は例え320iであろうとも17インチのゴ太いタイヤ&ホイールは共通となるから、 なおさら判別が付き難い。最近は国産車も高級サルーンと言われるクラスで、ヤタラに太くて大径のタイヤ&ホイールが流行っているようだが、この流行を作ったのがBMWであることは間違いない。 確かに見かけは格好が良いが、2ℓの150psに255/40R17というのは幾らなんでも疑問は残る。もっとも、どうせ走りなんてどうでもいいというフィーリング派には、オーバースペックだろうが、むしろハンドリングに難があろうとも関係ないのだろう。 なるほど、カッコは良いし、150psのクルマには見えない。しかもBMWだ!
話を戻して、335iの最大の識別点はリアの排気管で、3シリーズとしては始めての左右各1本の太い排気管が目を引く。 3シリーズの場合は4気筒の320iが左1本、他の6気筒が左に2本となっている。M3は別格として3シリーズの量産モデルで、排気管が左右から出ているのは珍しい。
 


2002ターボ(1974)
直4、2ℓターボで170PS/5800rmpの最高出力と 24.5kg-m/4000rpmの最大トルクを発生した。


他のグレードと判別する方法は左右各1本の太い排気管。4気筒は左1本、6気筒は左2本となる。
こうして見ると、リアデザインに関してはニュースカイラインだって負けてはいない気がする。
 


リアスペースは当然普通の3シリーズだから決して広くは無いが、パーソナルセダンとしては十分だ。
 

 


ドアの開口部を良く見ると高剛性の秘密が判る。リアとともにドア開口部を狭めてもフレームの強度をアップしている。

 


ドア・シル・プレートの”M”マークがチョッと恥ずかしい。
これがリアエンブレムならニセM3になってしまう。
 

 
街中で見かけるニセM3のE46-318i M-Sp。
 

前置きはこのくらいにして、早速乗り込んで見よう。ドアを開けると、ドア・シル・プレートにMのロゴがあるが、これはチョッと気恥ずかしい。街中で見かける 、318iのリアエンブレムを剥がして”M”を貼るのと同じノリで純正装着しているのが情けない。 次にシートに腰を下ろしてみれば、M−Sportに標準のスポーツシートはハイラインに比べて硬めだが、それでもポルシェ程のカッチカチではない。基本的には3シリーズ の室内は共通で、特にM−Sportは320iから335iまで基本的には同一の内装を持っている。 但し、335iは標準でiDRIVEが装着されるから、見た目には結構イメージが違う。320iにiDRIVEを装着した場合のオプション価格は29.5万円だから、453万円の320i Mspに装着するには高すぎる。 そこで普通は社外品のナビをダッシュボード中央上部に後付することになるが、これが結構カッコがわるい。ただ、最近は一見標準装備のように見せるダッシュボード上のカバーもあるので、少しは見られるようになった。 正面のメーターは欧州車に流行の外形にリングが付いたタイプで、BMWお馴染みのものだ。スカイラインが国産丸出しの光学式メーターを採用しているのとは対照的で、欧州車のユーザーなら、「そうコレだよ」と納得のメーター形状だが、 国産車を乗り続けてきたユーザーにはスカイラインのようなメーターの方が違和感がないらしい。レクサスも同様だが、こういうところを見ていると、最初から欧州プレミアムカーの代替ユーザーなんか期待していないのではないか、 なんて疑問すら湧いてくる。シルバーのアルミ製トリムやパネルはスカイラインも採用していたが、特にドイツ車はアルミのパネルが好きなようだ。以前のアルミパネルは何とも品の無いパチンコ屋のパネルのようだったが、 いつの間にかセンスの良いものが主流になってきた。慣れとは恐ろしいもので、スカイラインにしても、以前は高級車の証でもあったウッドパネルの装着車両をみると、何やら時代遅れに感じるようにさえなってしまった。 そして、久々に見るBMWサルーンのインテリアは、これに慣れてしまうと、どうしても国産車に乗ると、その違いが気になってしまう。それはお前が欧州車偏重だからだと言われればそれまでだが、多くの欧州車オーナーは同じ思いをするだろう。 もしも、スカイラインやレクサスISなどのインテリアが気に入って、今では欧州車なんかよりこっちのほうが上だと思うなら、BMWもメルセデスも気にせずに、迷うことなく国産車を買えば良い。 実際にこのクラスの国産車は、それだけ見ていれば決して悪くは無いのも事実だ。
 


基本的には他の3シリーズにidriveを装着した内装だから、ディスプレイが無い事を除けば320iのM-Sportと大きく違わない。
 


シルバーリングのアナログメーターを見つめながら、通気孔のあいたレザーのステアリンホイール握って中央の七宝焼きのBMWマークを見ながらの運転は、 自分がBMWオーナーになった喜びを感じる。この感覚を感じられないのなら、スカイラインを始めとする国産車で十分かもしれない。

 


idriveが装備されている為にセンター上部にはディスプレイが備わる点が325i以下とは異なる。
 

 


今回からは車内にキーがあれば認識するようになったのでスロットに差し込む必要は無い。これでマーチ並みになったわけだ。
 

 


一般道の普通のコーナー程度では、相当に無茶な速度で進入しても難なく通過してしまう。

 

そして、いよいよ走り出す事にするが、このつづきは後編にて。

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