メルセデスベンツ E300 ステーションワゴン & E320CDI (2006/9/26)
  前編 (E300 ステーションワゴン)


フェイスリフトにより良く見るとグリルが多少大型化されたフロントビュー。
プレミアムワゴンの本家本元のEクラスだけあって、流石の風格は新興勢力には真似の出来ない
ものがある。

今から約35年前に初めて運転したメルセデスが開発コードW123と呼ばれるコンパクトメルセデスのワゴン版であるS12 3、300TDだった。 当時はメルセデスなんていうのは殆ど街では見かけなったし、おまけにワゴンなどはそれこそ希少だった。それより何より、初めてハンドルを握った300TDは当時のディーゼルの常識を破る動力性能もさることながら、当時の国産車では最高のハンドリングと言われたいすゞピアッツアを上回る安定性とコーナリング性能に大変なカルチャーショックを受けたものだった。 それにインテリアのデザインや造りも当時の国産車とは全く別次元で、同じ自動車というカテゴリーで比較する事が出来ない程の存在だった。

米国における最近のプレミアムブランドの販売台数についてはレクサスLS試乗記にて解説しているので、こちらでは最近7年間のEクラスとそのライバルであるBMW5 シリーズおよびアウディA6の販売台数の推移を見てみよう。

車種名      2005年    2004年    2003年    2001年    1999年
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MERCEDES BENZ E  50.4千台   59.0千台   55.7千台   49.6千台   50.2千台
BMW 5er      52.7千台   45.6千台   47.0千台   44.4千台   38.2千台
AUDI A6/100    18.1千台   14.9千台   17.6千台   26.3千台   26.1千台
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手持ち資料の関係で1999年までしかデーターが無いが、それでも王者であったEクラスが 何時のまにか5シリーズに追い上げられてしまった状況が判るだろう。 1999年といえば不滅の名作であるW124から、トヨタに影響されて原価低減を大幅に実施して世間の評判をガタ落ちにしたW210に交代してから4年が経過して、Eクラスの独壇場に陰りが出ている頃だが、 それでもEクラス100に対して5シリーズ76と優位を持っていた。詳細なデーターはないが、確か1995年以前にはEクラス100に対して5シリーズ50以下だったと記憶している。 それが2005年にはついに逆転してしまった。特に現行Eクラス(W211)の人気を落としたのが例のフルエレキのブレーキシステムの不具合だが、これについては後半の試乗記体験の 中で解説する。


W123(1976〜1985)
コンパクトメルセデスとしては2代目となるW123。写真はワゴン(S123)の300TDで、これによりメルセデスはプレミアムワゴンの本家となる。


W124(1985〜1995)
これこそコンパクトメルセデスの最高傑作といわれるW124。最善か無かのポリシーに徹していた最後のメルセデス。発売当初は1年以上のバックオーダーを抱えていた。


W210(1995〜2002)
メルセデスが大きく方針を変え以前では考えられなかったコストダウンを随所に行ったため、先代に比べて安っぽさが目立ってしまった。7年というモデルライフの短さも並みのクルマと同じになった象徴か?

   
 
 

既に1960年代でもメルセデスと言えば本来はフルサイズのセダン、現行で言えばSクラスの事を指すのが普通だった。フルサイズより小さいメルセデス 、すなわちコンパクトメルセデスの初代は1967年に登場した縦目の200(W114)だった。 コンパクトの2代目はW123(1976〜1985)と呼ばれ日本にも結構輸入されたが、コンパクトとはいうものの全幅は1800mmもあり、当時の日本車に比べれば何処がコンパクトなんだという大きさと、ベースグレードである4気筒2.3ℓでさえ600万円を越える価格は、クラウンの最上級車でさえ300万円以下の時代ではとても庶民の手に出来るものではなかった。
3代目のW124(1985〜1995)は先代を更に改良したコンパクトメルセデス史上の最高傑作で、発売当時は大変な人気からバックオーダーは1年以上となり、欲しくても手に入らない状態が続いた。まさにメルセデスの黄金時代で、このW124は今でも大切に乗っているユーザーがいる のを見かける。 恐らく、最近のメルセデスを見ると自分のW124と比較して普通のクルマになってしまって、買い換える気がしないのだろう。
現代のEクラスの凋落の原因となったのが1995年に発売されたW210で、実際に先代と見比べてみれば内装はチャチだし、ドアを開けてチョウバンを見れば先代のコレデモかというゴッツいスチールブロックの溶接品は、チャチな板金製のボルト止めだったりと、至る処にコストダウンの跡が見え見えだった。 この辺は長年手抜きに慣れている国産車のように上手く出来ない事もあって、実際以上に安物化したように見えたのも悲劇ではあった。
次のW211は2002年の発売だから先代のW210は7年間の寿命だったことになる。本来Eクラスというのは10年毎のサイクルでモデルチェンジしていたし、だからこそ安心して長年乗れたから価値も高かったのだが、7年では普通のクルマになってしまった事になる。 そして7年という短いサイクルの先代から一新したW211ではあったが、目玉商品のフル電子式ブレーキ制御のSBCに根本的な欠陥があり2度のリコールという最悪の結果とともに、2003年に発売されたライバルのBMW5シリーズ(E60)の出来の良さも追い討ちをかけた。 E60はどちらかと言えば保守的で目立たなかった先代のE39に対して大きくコンセプトを変え、 既に7シリーズで話題になったiドライブは当然ながら、高級サルーンの常識を破るように極めてクイックなアクティブステアリングや、先代とは打って変わって鷹のようなアグレッシブなデザイン、更にはフロント部分の殆どをアルミ化したボディなどで人気を集めて順調にEクラスを追い詰めていくことになった。
そして今回、メルセデスはW211の大幅な改良を行った。外見上でも良く見れば、ラジエターグリル周りが変わっているが、これは新旧の2台を並べれば結構違いがあるのだが、別々に見れば良く判らないのはメルセデスのアイデンティティが確立しているからでもある。 最大の変更点は例のフルエレキのブレーキ(SBC)をオーソドックスなマスターシリンダ式のブレーキに戻したことで、これはSBCに対する敗北宣言を意味する。B_Otaku の試乗記ではW211の前期型が発売された当時に早速試乗記を発表したが、当時は今ほど徹底した試乗記ではなかったし、 その後はBMWに比べてメルセデスの試乗記が殆ど無かった事もあり、今回は久々にEクラスを扱うことにした。


このくらいのサイズになるとワゴンらしい雰囲気が出せる。以前からEクラスワゴンはプレミアムブランドとしては可也実用性を重視している。


側面から見ると、他車に比べれは実用的な設計だが、流石に最近のクルマだけあってDピラーは可也寝ているがCクラスよりは実用的に振ってはいる。 実用思考とはいえ側面からのスタイルは中々魅力的だ。

今回の大幅な改良は06年8月に実施されて、これによりラインナップはベースグレードであるE300(672万円)と内外装・装備を充実したE300アバンギャルドS(752.9万円)、 話題の新時代ディーゼルであるE320CDIアバンギャルド(840万円、デリバリーは12月頃)と続き、従来までの中心車種だったガソリン3.5ℓのE350アバンギャルドS(871.5万円) と最上級モデルのE550アバンギャルドS(1035.3万円)、更には4WDのE350 4マチック アバンギャルド(861万円)という結構なバリエーションを持っている。
更にワゴンボディがセダンに対して約50万円高でE300アバンギャルドSを除く全ての車種に設定されている。ワゴンの充実ぶりも流石は本家メルセデスで、5.5ℓのプレミアムワゴンなどはBMW5シリーズにもラインナップが無いから、 お金持ちのワゴンマニアには貴重な存在だし、更にAMG E63ステーションワゴン(1442.7万円)すら用意されている。


広いラッゲージスペースは、このクルマのコンセプトがファッションワゴンではなく実用車であることの証となる。


この雰囲気はやはりメルセデス。レクサスには無い何かがある。


リアスペースに不満は無いが上級セグメントのSクラス程の余裕はない。


こちらはE350アバンギャルドSの後席。シート表皮や内装材に差があるので見た目の高級感は多いにあるが、実際の使い勝手ではE300と変わることはない。


E300に標準装着の布シート。実用上は不満は無いが、やはりベースグレード丸出しではある。この地味さが本来のメルセデスでもあるのだが。

 


E350アバンギャルドSのレザーシート。白いステッチが独特の雰囲気を醸し出している。これと比べるとE300は地味だ。

試乗はE300ステーションワゴン(722.4万円)に加えて、次の週には話題のディーゼルセダンでもあるE320CDIにも乗ってみた。 先ずはE300ワゴンから。

E300はファブリックシートや16インチタイヤなど上級グレードに比べて高級感はないし室内も質素なモデルだ。とは言え、そこはメルセデスワゴンだからベースグレードでも独特の風格がある。 特に試乗車は白(カルサイトホワイト)いボディーカラーのために全長4.85mの大柄なボディを更に大きく見せる。以前からメルセデスのEクラスワゴンは立派なラッゲージスペースを持っていて、ライバルの5シリーズワゴンと 異なり実用性も重視していた。 同じメルセデスでもワゴンという存在をファッションに振ったCクラスワゴンとは対照的だ。


デビュー当時は安っぽさ丸出しだったW211も今では十分高級な質感を復活した。
落ちぶれたとは言え、そこはメルセデスでBMWとは違う雰囲気が漂っているし、レクサスGS
では歯が立たない。むしろ、クラウンの方が対抗馬として期待が持てるのではないか?


E300のV6 3.0ℓエンジン。231ps/6000rpm、 300N-m/2500〜5000rpmを発生する。
エンジンにカバーを被せたのはメルセデスが最初だったようだが、今になってみればボンネット一面
にカバーを付けたレクサスLSに比べれば補記類が良く見える。

久々のEクラスセダンは運転席に座ってみればメーターパネル正面の大きな速度計や左には時計があるなど、メルセデスの特徴は昔と変わらないし、確かに最近はチャチになったと言われている内装だって 良く見れば結構質は高い。試乗車はベースグレードのためにシートがファブリックであったり、ウッドトリムが安っぽいなどと上級グレードのアバンギャルドSなどと比べるとイマイチ地味だが、本来のメルセデスは質素だったはずだから、これが寧ろオリジナルの雰囲気なんだとも言える。
ATのセレクターをDに入れて、さてパーキングブレーキの解除はと探してみれば、ステアリング右よりのダッシュボードに立派なリリースレバーが付いていて、これを引くとパーキングブレーキは解除された。最近は大衆車にまで足踏み式のパーキングブレーキが装着されているが、踏むたびにオン・オフを繰り返すプッシュ ・プッシュタイプが主流で、高級車でさえもこの方式が採用されている事が多い。最近のメルセデスが原価低減に走っているとは言え、パーキングブレーキの解除一つをとってもやるべき事はやっているのを見ればホッとするものがある。
ブレーキを放してスロットルをゆっくりと踏んで見れば、これも昔に比べては大分軽くなっているが国産車のように踏んだ瞬間にガバッと開いてトルク感を感じさせるような小細工はしていないのは当然だ。走り出した第一印象は排気量3ℓで最高出力 231psという数値の割には加速はイマイチで、第一印象ではクラウン3.0あたりの方が余程速く感じる。一台で財を成した土建屋の社長だったら、こんなに遅くてマジェスタより高いなんて いうのは詐欺だと怒るに違いない。ただし、昔からメルセデスのエンジンは少なくとも1万km程度は走らないと如何にも重いのは常だから、下ろしたての試乗車では何とも言えないが、何れにしても有り余る動力性能ではない。
現行Eクラスは7速ATを装備するが、6速あれば充分なのに何故に7速かという疑問は置いておいて、その動作は当然 ながら極めて滑らかだ。50km/h程度からフルスロットルを踏むと、反応は決して早くは無いが妥当なタイミングでシフトダウンされる。3ℓV6 エンジンはBMWの直6のようにスムーズでも官能的でもないが確実に回転は上昇して、結構スムーズに5500rpm程度まで回った。試乗車がセダンより 140kg重いワゴン(車両重量1820kg)であったため、これがセダンならもう少し速かったろうと思う。このE300ワゴンの加速性能はBMW525iツーリングよりは多少速いが、530iよりは大分遅く感じた。とか何とか言っても実用には充分だし、元々このクルマのコンセプトやユーザー層から考えれば、これ以上の動力性能は不要だとも言える。 このような必要にして十分だが、一瞬の加速性能を求めるとチョット物足りないと言うのは、ベースグレードに共通して言えることで、Cクラスも5シリーズも3シリーズも皆同じ。要するに最後は予算次第ということになる。駐車場からゆっくりと出口に向かい、公道に出る時にステアリングを一杯に切ったら、その時の操舵力は非常に軽いし、例によってフルステアでの回転半径はこのクルマのサイズを考えれば驚くほどに小さく小回りが効くのも伝統的だ。しかし通常走行時では適度の重さとなるし、メルセデスらしく直進性は抜群に良い。ところが、その割には結構クイックなのも事実で、この辺はライバルの5シリーズを意識したのだろうか。まあ、アクティブステアリングを装備して異常なまでにクイックな5シリーズ程ではないにしても、試乗したE300ワゴンもアクティブステアの無い3シリーズに近いクイックさと、軽快さを持っている。と、言ってもこのクルマで峠を攻めるのは向かないし、そんな用途を目的としてこのクルマを買うユーザーもいないだろうが、メルセデスは昔から操舵性能 自体は可也のハイレベルで、その性能をBMWは走る楽しみのために使われる事を想定しているのに対して、メルセデスは安全・快適な移動を目的としていて、高いシャーシー性能はあくまでアクティブセーフティーの一部と考えているようだ


例によってボタンだらけのメルセデスの操作パネル。


7速ATのセレクターはポジションの表示が左側にありRHDだとレバーの陰になる。

Eクラスのブレーキについては既に知られているように今回のMCでフル電子制御、いわゆるブレーキバイワイヤのSBCからオーソドックスなマスターシリンダ方式に変更(逆行?)された。SBCは通常ブレーキペダルを踏んでもメカ的には全く繋がっていないから、この時のストロークや踏力をセンサで感知して必要なブレーキ圧をキャリパーに送るように制御を行う。と、言う事は何らかの故障が生じたらば、幾らブレーキペダルを踏んでもキャリパーへ圧力は送られずにノーブレーキの暴走車になるという最悪の事態になってしまう。勿論こ れは絶対にあってはならないので、その為にもう1系統の緊急用マスターシリンダを持っている。そして、もしも電子システムに異常を感知したら、この緊急用の系統に切り替わり、ブレーキペダルの力は直に非常用のマスタシリンダを押すのだが、この系統の容量が小さいことと前輪のみ作動することから、通常のブレーキに比べて効きは極めて低い。法規では失陥時の非常ブレーキ性能は 足踏みの場合は操作力が70kg以下で減速度比が0.3G以上と規定されているが、これは大の男が目一杯の力でペダルを踏んずけても雪道程度の減速しかできないことになるから、このクルマのドライバーとして結構多いであろう 良家の若奥様では殆どノーブレーキ状態だろう。さて、この欠陥の原因はと言えば、色々言われているが、一番多いのは配線系統の接触不良からのセンサー異常検出のようだ。このSBCはフル電子制御で、もしも電気的な故障が起こったら大変な事故に結びつくために、各種のデーターを監視して万全に備えているのだが、これが仇になって しまう。すなわち、あるセンサーの信号線コネクターの接触が悪くて、一瞬の接触不良を検出した制御装置は、「これはイカン!故障だ」と早トチリして緊急ブレーキに切り替えてしまう。この時ドライバーから見たら、極平和に運転している時に何の前触れも無く行き成り警報とともにディスプレイにブレーキ故障により至急停止せよという旨の警告が現れてパニック状態で、とにかくブレーキべダルを踏んでみれば殆ど止まらない。やっと路肩に停止した時には、このクルマには二度と乗りたくないという経験をしてしまう。そんな訳で、2位のBMWに2倍程度の差をつけてプレミアムEセグメントの王者であったEクラスは、あっという間に2位転落と相成った。 それにしてもBMWにしてみてば棚からぼた餅とはこの事で、何だか気が抜けたんじゃないかなどと想像してしまう。


中央が大きな速度計で右の回転計は小さく左には時計というメルセデスらしい配置。回転計を見ながら必死でコーナーを攻めるクルマでないのは間違いない。


シートの調整スイッチもドア側に付く。その前方はミラーの調整ボタン。

今回、先進のSBCを廃止したブレーキについては試乗車が下ろしたての新車でパッドの当たりが付いてないと思われる状態なので何とも言えないが、 少なくとも試乗車の状態はストロークが長く、しかも剛性感がない。そこで強く踏んでから素早く踏みなおしてみるとブレーペダルは最初に比べて遥かに手前で手ごたえがある。 これは初回の踏み込みでマスターシリンダのピストンが前進した状態で一気に下げたので、大きな遊び分のブレーキ液を送り込んだままでペダルが後退したためで、この 現象は剛性不足で液量が大きいブレーキの特徴だ。 メルセデスのブレーキと言えば、ガチッとした剛性感に富んだ独特の安心感が特徴だったが、試乗車は明らかに普通のクルマ、それもあまり出来の良くない部類に成り下がってしまったようだ。 SBCのチョンボは未だに尾を引いているのは間違いない。
実は試乗した後にフロントホイールを覗いて見れば、ベースグレードであるE300はE350のようにアルミ4ポット対向ピストンではなく、鋳鉄製のフローティングタイプのブレーキキャリパーが見えた。 昨年当たりからEクラスのフロントは対抗ピストン(恐らくブレンボー製)と思っていたが、ベースグレードは安物が付いていた。W124以前は低グレードでもエンジンが非力なだけでシャーシーや安全に関る部分は全く共通だったら、相対的に低グレードほどアクティブセーフティがオーバースペックになっていた。 ところが、最近のメルセデスはグレードによりブレーキに差を付けるという、まるでレクサスIS(IS250は鋳鉄で、350がアルミ対向4ピストン)と同じではないか。
ストロークが長くフィーリングが良くない点を除けば、ブレーキの効き自体は決して悪くはないから、特に気にしなければ問題はないし安全性からも十分には違いない のだが、 メルセデスの中核車種となるとチョットねぇ。まあ、メルセデスのことだから2年もすれば、いや早ければ来年あたりにはチャンと改良されているとは思うが。

と、ここまでの部分、すなわちエンジン、ステアリング、ブレーキなど個々の性能を見てみれば決して特出している訳ではない。それでは、700万円も出して400万円のクラウン程度なのかと言えば、ある面(人によって)ではイエスだが、 実はEクラスの魅力は別の部分なのだ。先ず何より走っていて安心感がある。そんなのは気のせい?ドイツ車オタクのエコヒイキ、あばたもエクボ?そう思うのは勝手だけれど、一度メルセデスを運転してみれば経験のあるドライバーなら感じるはずだ。先ずは前幅1820mmと結構幅は広いのに、その広さを全く感じない。そして、全長4.9m弱の長さにも関らずヤタラと小回りが効く。 メルセデス御馴染みのボンネットの先端に立つスリーポインテッドスターは道路の路肩を探るのに極めて役に立つ。そしてステアリングは、これでもかという程の直進安定性で文字通り矢のように直進する。 さる、お金持ちの知人の奥さんは「わたくし、国産車は怖くて運転できないんですの」といって、10年を超えたW124の最後期モデルに乗っていたが、確かに“ベンツ”だからこそ、あの鈍そうな金持ちのオバちゃんでもチャンと安全にクルマを運転出来るのだろう。この感覚こそがメルセデスを買う最大のメリットであり、オシャレでスポーティーなBMWとは根本的に違う、 堅実な実用車がメルセデスなのであって、値段が高いのは高級なのではなくて、安全な移動の道具として出来る限り良質な設計と部品を使用しているからなのだが、残念ながら最近は以前ほど徹底はされていない。 それでも、久し振りにEクラスを運転してみて、その運転のし易さは未だ健在なので安心した。 腐っても鯛、コケてもベンツということか。


E300には225/55R16タイヤが装着される。


E350アヴァンギャルドSには245/45R17タイヤが装着される。


ベースグレードのE300のフロントキャリパーは鋳鉄のピンスライド(型持ち)方式が装着されている。ブレーキという重要な部品に差を付けることは「最善か無か」時代のメルセデスでは考えれなかった。


この写真はE350アバンギャルドSのフロントキャリパー。アルミ対向4ピストン(恐らくブレンボー製)が装着されている。安全は金で買える。まるでレクサスISのようだ。


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