<速報版>レクサス IS250 & 350 (2005/10/7)

 

 


レクサスGSなどのレクサス一族の形というか、マークXの親戚というか。しかし、Lマークが無ければ何のクルマか
判らないし、Hマークを付ければホンダとも見える。さらに、Hマークを少し傾ければ・・・。

レクサス開店と同時に用意されたのはGSとSCの2車種。価格も一番安いGS350でさえ520万円で、このラインナップでは幾らなんでも商売がやり辛いだろう。そこで、GSから1ヶ月遅れで待望の ISが発売された。ISはV6 2.5ℓのIS250と3.5ℓのIS350がある。今回もその両方を比較試乗しGSと同様に、まずは速報版として発表することにした。

前回試乗したGS350がオプションてんこ盛りだったのに比べて、ISの試乗車は2台とも標準ファブリックシートのIS250(390万円)とIS350(480万円)だった。ISには他にタイヤと足回りを走りに振った”バージョンS”が15万円高(IS250:405万円/IS350:495万円)、レザーシートと本木目パネル等を装着した豪華仕様の”バージョンL”が45万円高(435/525万円)となる。なお、AWD(4WD)はIS250のベースグレードとバージョンLのみが設定されており、それぞれ2WDに対して35万円高となる。

IS250とIS350の外観上の差はリアのエンブレムくらいで、タイヤ・ホイールでさえ同一品を使う。強いて識別したければ、フロントホイールから除くブレーキキャリパーが異なる点だが、これについては後ほど述べる。

ISがアルテッツァのフルモデルチェンジ版ということは、今や周知の事実だが、GSがアリストの正常進化版とすると、こちらは旧アルテッツァに比べて、明らかに大きく、クラスが少し上がった感じだ。正面から見た感じは、何やらマークXを絞ったような、それでいてHマークを付ければホンダ車に、マツダのマークを付ければマツダ車に、それどころかHマークを傾ければお隣の国の新型車といっても通りそうな、何とも国籍不明、典型的アジアンカーと言ったところだ。これでは、このクラスで、この手のアグレッシブなスタイルの本家本元の3シリーズは当然として、発表から数年を経て、しかも最近何かと落ち目のメルセデスと言えども流石は腐っても鯛で、ISと比べればCクラスが如何に格調高いかが良く判り、外観からはISの勝ち目は皆無だ。これらライバルと同じベース価格4百万代で勝負するには、幾らISが一クラス上のエンジンを備えているとしても、あまりにもお粗末だ。

運転席に座ると、先日のGSがトヨタにしては安っぽいと感じたが、そのGSより下位のISは更にシンプル(要するにチャチ)だし、バージョンL以外のパネルは、まるで携帯電話のような質感のシルバー塗装が施されたプラスチック丸出しだ。GSのセンターコンソールはATセレクターの隣に小物入れの蓋が有るほど幅が広く、そのデザインの基本は、そのまんまクラウンだったから、好みの問題は別とすれば、其れなりのトヨタ的豪華さはあったが、ISにはそれが無い。最もBMWだって旧モデルは5シリーズ(E39)の豪華さと広さに比べて、3シリーズ(E46)は質素で狭かったから、レクサスも意識していたであろう事は十分に考えれる。ところが、BMW3シリーズは最近のフルチェンジ(E90)で5シリーズ顔負けの上級志向になってしまった。この辺は追うものの辛さか。

GSのシートは欧州のライバルに比べて、見掛けはとも角、座り心地は感心しなかったが、それより下位のISがGSより良い訳がないだろうと思って乗ったら、やはり想像通りに良くなかった。試乗車はどちらもファブリックシートだったが、サイドが目の粗い平織りなのは良しとして、表面の光った、しかも滑りやすく趣味の良くない座面の生地が、更に座り心地を台無しにしている。現物は見ていないが、バージョンSの座面の生地は、もう少しマシなようだ。勿論、ケチったウレタンは密度も低そうで、ただ平らなだけで、とても長時間のドライブをする気にはなれない。


GS以上にチャチなISのダッシュボード。写真はバージョンLなので木目パネルが装着されて
いるから、まだ見られるが、標準グレードは携帯電話のような質感のシルバー塗装の樹脂製。
ステアリングホイールに巻かれたレザーは中学生の運動靴のように安っぽく、これを毎日握る
のは辛いものがある。

試乗はIS250から始める。2.5ℓ V6エンジンは、普通に街中を走る分には十分で、スロットルのレスポンスも悪くないし、踏み始めをワザと敏感にしてトルク感を感じさせる等という小技も使っていないのは、まあ合格としよう。6ATはGSと同様にレスポンスも良く、踏めば短いタイムラグで即座にしかもスムースにシフトダウンして加速する。この点ではエンジン性能云々を語ることすら不可能なほどにトロイ4速ATが全てをスポイルしているスカイライン250GTに比べて、遥かに優れている。伊達に150万円高い訳ではないようだ。
フルスロットルを踏んでみれば6000rpmまで苦も無く回るが、4000rpm過ぎてからの音や振動は、特に不快ではないが、ビーンという安っぽい音は如何考えても400万円の音でなく、精々250万円程度の価値だろう。そういえば、このエンジン音はマークXに似ていると思って後で調べらたら、マークXは4GR-FSEで、IS250は------>4GR-FSE。あれっ!同じエンジン?しかも、最高出力もトルクも全て同じ。要するに、富裕層向け400万円小型プレミアムカーであるIS250と、庶民のハイソカーである250万円のマークX250は全く同じエンジンだった。

次にIS350に乗り換えると、先日乗ったGS350と同じエンジンを搭載しているとは思えないほどに低速(低回転)からトルクフルで、チョッと右足に力を入れれば、グイグイと加速する。車両重量はISとGSでは70kgしか違わないから、この差は何なんだろう。IS350の場合は直前に乗ったIS250と比較流している事もあるが、それにしても随分と違う。と、思ってミッションのギア比を調べたら、6速ATは全く同じだが、最終減速比はGSの3.679に対してISは4.083とローギアードで、さらにタイヤはGSが225/50R17に対して、ISは225/45R17とタイヤ径でもISが小径だから、最終的にはISの方が遥かにローギアードに設定されている。この理由は、さて?GSは高級志向なので回転数を下げて静粛性を求めたと思いたいが、もしかすると、GS350は上級のGS430とのトルク感を差別化し、IS350はパワフルを強調してISシリーズの上級グレードである事を試乗したユーザーに納得させるという確信犯的な設計では?と疑わずにはいられない。

ISにはGSと違い、ステアリングホイールを握ったままマニアルシフトが出来るパドルスイッチが付いている。これは手前に引くとそれぞれ、右でプラス、左がマイナスとなる点では、他社のパドル式と同様だ。この手はBMWのSMGやアルファロメオのセレスピードで採用されている方式だが、これらは何れもシーケンシャルのセミオートだから、これが無いと使い物にならないが、ISの場合はトルコンATだから何処まで必要なのだろうか?トルコンでこのようなパドルスイッチが付いているのはレジェンドがあり、どちらもATとしては結構素早いレスポンスで、使う気になれば、ソコソコ使い物にはなる。スイッチのフィーリグはマアマアで、ウルサイ事を言えばアルファのセレスピードのようにカチッとしたフィーリングを求めなたいが、取りあえずは合格としよう。
実はISのマニアルモードで気になるのは、マニアルといっても、セレクトした位置でのシフトロックで、例えば4に入っていると1〜4速までのATとして作動することだ。普通、この手のシーケンシャルシフトは4速を選んでいても、停止すると自動的に1、もしくは2にシフトダウンしているが、ISの表示は4のままで、すなわち、普通のATとして作動するが、4以上には上がらないという事になる。まあ、それでも低いポジションを選べば、事実上マニアルと同じなのだろうが、どうも釈然としない。

つぎにステアリングは、と言えばIS250は可也軽く、ひいき目に見ればクイックと言うべきなのだろうが、これは寧ろチョロチョロと不安定と表現するのが正しい。マジな欧州車を知らなければ、実にクイックでスポーティーで、BMWを追い越したなんていう勘違いする奴もいるのを見越してのセッティングのような気がする。元々マークX辺りと共通の大衆プラットフォームで、無理にスポーティなクイック感を演出するから、こんな特性のなるのだろう。
IS250に比べて車重が30kg重いIS350は、その重量差の多くがフロントに積まれるエンジンだと思えば納得出来る程に穏やかではある。と、言っても基本は同様で、やはりチョロチョロと不安定な性格は変わらない。
しかし、コーナーリングは弱いアンダーで安定して旋回しているから、国産車としては決して悪いクルマでは無いが、この程度の特性は今の国産車ならば、マークXでもスカイラインでも250万円クラスのクルマでも十分に達成している。だから、流石は400万円のクルマ!BMWにある面では勝ってさえいると、言う奴がいたら眉唾ものだ。

乗り心地は今日の常識では非常に硬い。それも、硬い中にもしなやかさがある、出来の良い欧州車と違い、ただ硬く不快なだけで、チョッとした路面の凹凸でガッツン、ガッツンと下品に響いてくる。これは典型的な国産高性能車の乗り味で、ステアリング特性とともに、安物のプラットフォームに出来の悪い足回り、そして、使えないダンパーの組み合わせを無理して高性能に見せかけるために、今時こんな特性にしてしまったのか?なにもメルセデスやBMWでなくとも、スカイラインやレガシーあたりだって、しなやかさと安定性は適度に達成しているのに、”富裕層”向けのISが走り命の”エボ”みたいな、ケツの青いガチガチ特性にしているのは疑問がある。


試乗車はアイボリーの内装と黒のダッシュボートの組み合わせは、決して好きになれない。こういう明るい色は、本来オシャレな筈なのに・・・。

イグニッションをオンにすると指針だけが浮き上がって、その後、メーター全体が現れる。こんな子供だましを毎回見せられると思うだけでオーナーになる気が消失する。

ブレーキはIS250とIS350では大きく異なる部分だ。
最初に乗ったIS250のフロントはクラウンなどと共通なシングルピストンのピンスライドタイプキャリパーとバキュームブースター付きのマスターシリンダーというオーソドックスなシステムを採用している。
このブレーキのフィーリングは悪くない。すなわち、軽い踏力で効き始め、更に踏み込んだ時のストロークも適度に短く、この点では欧州のライバルと比べても特に遜色は無い。マークXがストロークは長いし効きは悪く、ゼロクラウンも各段に進歩した操縦安定性に比べて、最大の欠点がブレーキだったが、レクサスの場合はブレーキは結構イケル。
次のIS350はGSと同じ、アルミのオポーズドキャリパーを奢り、更にシステムもGSと同じ電子制御を採用している。この制御方式については何故か概要すら発表されていない。ブレーキバイワイヤの筈なのだが、それなら、メルセデスがEクラスに採用して大問題を起し、今やメルセデス神話の崩壊とともに大変な窮地に陥ってしまった原因となった程に難しいシステムなのだから、これを物にしたトヨタは自慢しても良い筈なのだが・・・。
このシステムを装着したレクサス車は、全部で3車種に乗ったが、GS350が抜群のフィーリングでBMWどころか、ポルシェにさえ迫るといってもオーバーではない程だったのに、GS430は長いストロークと、力を入れても効かないという悪い代表のようで、今回のIS350はその中間だった。すなわち、IS250よりは多少良いが、これだけ金を掛けた割にはIS250との大きな差は見出せなかった。このバラツキは気になるが、原因は一体何なのだろうか?今後の宿題としておこう。


IS250とIS350とも共通な8J17ホイールとフロント225/45R17、リア245/45R17タイヤを装着する。
フロントはリアと共通の幅広ホイールに225タイヤをつけたので、まるでヤンキーの引っ張りタイヤ。台形になったタイヤは”富裕層”には似合わない。

フロントブレーキはIS250がクラウンと同等なピンスライドのシングルピストンキャリパー(写真左)で、IS350がGS350と同じアルミオポーズド4ポットと大きく異なる。

さて、このISを結論づける前に、実は念のために試乗直後に全く同じコースをIS250の開発時にベンチマークとしてであろう旧3シリーズ(E46)で走ってみた。車種は320iで現行E90と異なり6気筒2.2ℓエンジンを搭載している。何の事はない、試乗の帰りにチョッと回り道をして、試乗コースを走ってみただなのだが・・・・。

まず、動力性能はIS250に比べて排気量で0.3ℓ、パワーで45psの差があるが、実際にはトルク感は変らないどころか低回転からの抜群のレスポンスが何とも気持ちが良い。更にスロットルを踏んで回転を上げると、そのウルトラスムースなエンジンはまるでローターリーエンジンの如く軽くスムースに回って、あっという間にレッドゾーンに達する。IS250の215psが、台上での計測時なら何とかなる程度の数字であるのに対して、320iは誰が踏んでも確実に170ps出ているという感じだ。この辺がスペックでは語れない世界で、此ればかりは体験して見ないと判らない。

次に操舵感はといえば、まずステアリング自体のスムースさというか、ラックギヤの精度やシャフトを固定するベアリングの精度、これら全てが寸分のガタもなく組み付けられているのが手に取るように判る。このフリークッションの殆ど感じられないステアリングは、普段は軽すぎる傾向にあると思っていたが、ISと比べれば遥かにドッシリして安定感がある。まず、このフィーリングと比較したら、ISは一体なんなんだと言いたい。

そして、走行時の感覚はといえば、これまた、ウルトラスムースと言うか、如何にも高精度のベアリングが回っているような、クルマ全体が滑るように路面を進み、路面の凸凹も多少のショックはあるが見事に吸収して、クルマ自体はフラットこの上ない。最近はポルシェのカレラやボクスターと比べられたり、5シリーズ(E60)や最新の3シリーズ(E90)と比べて、そろそろ潮時との結論を出されている可愛そうな320iだが、こうして最新のレクサスと比較してみたら、何の事はない、これでも次元が違う程に出来が良いではないか!

実は、この後に念には念の為と新型325iのダイナミックパッケージという、言って見れば旧Mスポーツに相当するモデルにも試乗した。最初の計画では同じ2.5ℓのライバル同士としてIS250と比較をしようと思ったのだが、最新の325iのスポーツサスの乗り味や、エンジンのチューニングと音などが想像以上に出来が良く、言ってみれば並の県立高校と県下一の私立中高一貫高の大学受験結果を比較するようなもので、いくら何でも県立高(レスサスIS250)が可愛そうすぎる。と、いう訳で325iは別途単独の試乗記とすることにした。325iのオーナーおよびオーナー予備軍の皆さんには、しばしの時間を頂きたい。