まずはGS350から乗ってみる。クラウンの3ℓでも十分な速さだったから、3.5ℓのGS350は更に速いであろう事は乗る前から想像できるが、適度な重さのスロットルペダルは初期ストロークで飛び出す事も無く、それでいて深く踏めば勢いよく発進する。普通の人が普通に使うセダンとしては十分過ぎるほどの動力性能だから、土建屋の社長が買ってもクレームにはならないだろう。6ATのレスポンスも良く、踏めば短いタイムラグで即座にしかもスムースにシフトダウンして加速する。V6としては3.5ℓと大き目の排気量であることから、高回転までスムースとはいかないが、4000rpmを過ぎてからも振動や騒音も我慢できる範囲で、同じV6 3.5ℓのフーガ350GTと比べても、むしろスムースなくらいだ。(ニッサンのVQ35エンジンの出来が悪いとも言えるが)
ところが、GS430に乗り換えてみれば、流石にV8は伊達ではない。低速からトルクフルで、滑らかに余裕で回る高級感は350とは違うクルマと思ったほうが良い。通常の市街地を流すような走行では、回転計の針は1100rpmとアイドリングに毛の生えたような低回転で回っているから、静かなのも当たり前だ。ただし、以前乗ったマジェスタは基本的に同型のエンジンでも、さらに静かな印象だったが、GS430は多少スポーティにチューニングされているようだ。
4.3ℓのフルスロットルは想像通りに速い!350でも十分すぎる程に速いが、更に速いし、意外と高回転域でもスムースに回る。と、言うよりも、あっという間にシフトアップポイントに達するので、振動が如何の、音が如何のと言っている前に終ってしまう。カタログ上の最高出力は350の315psに対して430は280psと寧ろパワーが無いように思えるが、発生回転数が350の6400rpmに対して5600rpmと低く、最大トルクは38.4kg-m/4800rpmに対して43.8kg-m/3400rpmと、圧倒的な低速トルクがパワフル感をもたらしている。 それどころか、GS350はフーガ350に比べても低速からのトルク感では負けているように感じる。GS350は見かけのパワーよりも、実用的なトルクを重視して最高出力を落とした方が、より使い易いし、レクサスというブラントに合っているような気がするが、世間の無知な連中にレジェンドよりパワーが無いなんて言われるのが悔しいので、スペック上でそれ以上を狙ったのか?
GS350のステアリングは適度な操舵力と、これまた適度なレスポンスで、面白くは無いが不満もない。クルマ好きが楽しもうと思えば結構振り回せるし、運転なんて如何でもよいオッサンやオバはんでも危険なく運転できる。BMW5シリーズの楽しさは無いが、ド素人には返って危険が無いし、直進性だって普通のドライバーから見ればGSの方が良いと感じるだろう。かと言って、メルセデスEクラスのように鬼のような直進安定性という程でもない。要するに、これと言って特徴は無い代わりに、減点も殆どない、実にトヨタ的優等生のクルマに仕上がっている。
コーナーリングも弱いアンダーで安定して旋回するから、これまたマニアからド下手ドライバーまで、誰が乗っても不満は出ないだろう。それに、結構軽快で、ステアリングを切った時のレスポンスだって決して悪くない。
それに比べて、GS430の操舵力は軽い。と、言ってもマジュエスタ程軽くはないが、GS350に比べれば操舵性は大人しく、より大きな排気量は余裕と高級感のためで、決して峠をかっ飛ばすためではない。スポーツ性ではGS350>クラウンアスリート>GS430>>クラウンロイヤル>>>マジェスタというところだ。
乗り心地は双方ともフラットで、低速から路面の突き上げもなく、マンホールなどの段差も上手く吸収する。ただし、よーく耳を澄ましていると、路面の凸凹を吸収するたびにリヤの当たりから極僅かではあるけれど、ギシギシという音というかフィーリングが伝わって来たから、5シリーズ程にはガチガチのボディではないのだろう。この乗り味は以前乗ったクラウンアスリートに似ている。
乗り心地に関しては、V6のクラウン(特にアスリート)とV8にマジェスタでは相当に異なったから、GS350とGS430も味付けが異なるかと想像していたが、強いて言えばSG430の方が重量からくるマイルドさはあるが、クラウンのように大きく味付けが違うことは無い。
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