<速報版>レクサス GS350 & 430 (2005/9/16)

 

 


右から、今回試乗したGS350とGS430。左端はソアラ改めSC430。
こうして見ると、一応はレクサスの顔というのがあるのが判る。

只今、日本中のクルマ関係の話題を独占中のLEXUSブランドの販売車種はGSとSCの2車種のみ。しかもSCは、この間までソアラと言っていたクルマそのものだから、事実上のレクサスというのは現段階ではGSのみとなる。このGSはV6 3.5ℓのGS350とV8 4.3ℓのGS430がある。今回はその両方を比較試乗した。なにしろ、話題のレスサスGSだから、取り合えず速報版として発表することにした。本編は後日アップするので、それまでは速報版にて我慢を願いたい。

試乗車はGS350(520万円)にオプションとして本皮シート&トリム(27.3万円)とマークレビンソンサラウンドシステム(約34万円)という性能とは関係のない、如何でも良いオプションを装着していたから、同じものが欲しいとなれば580万円超となる。
そして、もう1台の試乗車はGS430(630万円)は、何故か標準ファブリックシートだった。

GS350とGS430の外観上の差はホイールとリアのエンブレムくらいか。ニッサンのフーガがヤケに背が高いのに比べればGSは真っ当な4ドアセダンと言って良いのか迷う程に背が低い。実際にリアシートに座ってみれば、身長170センチ級では頭の先は天井スレスレという具合だ。

運転席に座ってみれば、ダッシュボードの材質がチョッと目には上手く革目のシボを出しているが良く見ればトヨタにしては安っぽく、更に指で触ってみれば多少は凹むが、かなり硬い。欧州車のように弾力がありパッドとしても十分な目的を達している弾性樹脂を使ったダッシュボードに慣れていると、とても買う気にはなれないと思うが。ただし、組み立て精度などは良く、初期の現行Eクラスのように、パネルの継ぎ目の隙間がずれていたりということはない。

シートの座面はフラットで硬めだが、硬い中にもピシッと密度の高いウレタンが体を支える欧州のライバルに比べると、ただ平らなだけで、これでは長距離の運転では疲れるような気がする。残念な事に、椅子に関しては日本は何時まで経っても欧米には敵わないようだ。
標準のファブリックシートの表皮は、従来のトヨタ製高級車の定番だった毛足の長い、チョッと見には豪華な、しかし良く見れば安物の化繊モケットモドキとは違い、欧州車的な荒く織ったものだ。しかし、座面が多少滑るのが気に食わない。
オプションのレザーシートは座面に細かい穴があり、ベンチレーション機構がついているらしいが、そんな事よりも肝心の座り心地は、ファブリックの標準シートと同様に見かけの割には良くない。レザーの質も良く見れば、これまたイマイチ。BMW5シリーズのレザーシートとは言わず、1シリーズでさえも独特のシボとシワがあり、GSより高級感も座り心地も上だ。なんて言うと、シワを付けたシートが嫌いな人からは、返ってGSのように表面が平らな革のほうが良いと言われそうだが、確かにジャガーのシートはシワはなく、ピンっと貼られているが、GSに比べて質感・乗り味は各段に優れているし、コットンパンツで座っても滑らない。同じ服装でボルボV70のレザーシートに座ったら、ツルツル滑って使い物にならなかった。ボルボに乗る階層はチノパンなんて穿かないのかな?それに比べればGSはマアマアだが・・・・。

と、まあ悪口を並べてしまったが、これらは世界の定番EセグメントであるEクラスや5シリーズ、そしてA6の御三家と比較した場合で、国産車としては良いところまで迫ってはいる。が、値段も迫ってしまった。


ダッシュボードやドアの内張りなどの樹脂は硬く、良く見れば質感もイマイチだ。
ライバルのEクラスや5シリーズも最近はチャチになったと言われているが、この内装では
欧州製プレミアムブランドのオーナーがGSに乗り換えようとは思わないのではないか?

まずはGS350から乗ってみる。クラウンの3ℓでも十分な速さだったから、3.5ℓのGS350は更に速いであろう事は乗る前から想像できるが、適度な重さのスロットルペダルは初期ストロークで飛び出す事も無く、それでいて深く踏めば勢いよく発進する。普通の人が普通に使うセダンとしては十分過ぎるほどの動力性能だから、土建屋の社長が買ってもクレームにはならないだろう。6ATのレスポンスも良く、踏めば短いタイムラグで即座にしかもスムースにシフトダウンして加速する。V6としては3.5ℓと大き目の排気量であることから、高回転までスムースとはいかないが、4000rpmを過ぎてからも振動や騒音も我慢できる範囲で、同じV6 3.5ℓのフーガ350GTと比べても、むしろスムースなくらいだ。(ニッサンのVQ35エンジンの出来が悪いとも言えるが)

ところが、GS430に乗り換えてみれば、流石にV8は伊達ではない。低速からトルクフルで、滑らかに余裕で回る高級感は350とは違うクルマと思ったほうが良い。通常の市街地を流すような走行では、回転計の針は1100rpmとアイドリングに毛の生えたような低回転で回っているから、静かなのも当たり前だ。ただし、以前乗ったマジェスタは基本的に同型のエンジンでも、さらに静かな印象だったが、GS430は多少スポーティにチューニングされているようだ。
4.3ℓのフルスロットルは想像通りに速い!350でも十分すぎる程に速いが、更に速いし、意外と高回転域でもスムースに回る。と、言うよりも、あっという間にシフトアップポイントに達するので、振動が如何の、音が如何のと言っている前に終ってしまう。カタログ上の最高出力は350の315psに対して430は280psと寧ろパワーが無いように思えるが、発生回転数が350の6400rpmに対して5600rpmと低く、最大トルクは38.4kg-m/4800rpmに対して43.8kg-m/3400rpmと、圧倒的な低速トルクがパワフル感をもたらしている。

それどころか、GS350はフーガ350に比べても低速からのトルク感では負けているように感じる。GS350は見かけのパワーよりも、実用的なトルクを重視して最高出力を落とした方が、より使い易いし、レクサスというブラントに合っているような気がするが、世間の無知な連中にレジェンドよりパワーが無いなんて言われるのが悔しいので、スペック上でそれ以上を狙ったのか?

GS350のステアリングは適度な操舵力と、これまた適度なレスポンスで、面白くは無いが不満もない。クルマ好きが楽しもうと思えば結構振り回せるし、運転なんて如何でもよいオッサンやオバはんでも危険なく運転できる。BMW5シリーズの楽しさは無いが、ド素人には返って危険が無いし、直進性だって普通のドライバーから見ればGSの方が良いと感じるだろう。かと言って、メルセデスEクラスのように鬼のような直進安定性という程でもない。要するに、これと言って特徴は無い代わりに、減点も殆どない、実にトヨタ的優等生のクルマに仕上がっている。
コーナーリングも弱いアンダーで安定して旋回するから、これまたマニアからド下手ドライバーまで、誰が乗っても不満は出ないだろう。それに、結構軽快で、ステアリングを切った時のレスポンスだって決して悪くない。

それに比べて、GS430の操舵力は軽い。と、言ってもマジュエスタ程軽くはないが、GS350に比べれば操舵性は大人しく、より大きな排気量は余裕と高級感のためで、決して峠をかっ飛ばすためではない。スポーツ性ではGS350>クラウンアスリート>GS430>>クラウンロイヤル>>>マジェスタというところだ。

乗り心地は双方ともフラットで、低速から路面の突き上げもなく、マンホールなどの段差も上手く吸収する。ただし、よーく耳を澄ましていると、路面の凸凹を吸収するたびにリヤの当たりから極僅かではあるけれど、ギシギシという音というかフィーリングが伝わって来たから、5シリーズ程にはガチガチのボディではないのだろう。この乗り味は以前乗ったクラウンアスリートに似ている。
乗り心地に関しては、V6のクラウン(特にアスリート)とV8にマジェスタでは相当に異なったから、GS350とGS430も味付けが異なるかと想像していたが、強いて言えばSG430の方が重量からくるマイルドさはあるが、クラウンのように大きく味付けが違うことは無い。


こうして見ると、トヨタ車であることは一目瞭然!
シートは昔のクラウンよりはマシだが、平坦でサポートも悪く、乗っていると疲れる。

メーターは目盛板に同心円状のヘアラインが入っているので、光の具合によっては指針と同方向に光の帯が出来て、しかもクルクルと回る。これを高級と感じるか、邪魔クサイと感じるかによって評価は異なる。

ブレーキはGS350、430とも共通で、特にフロントはアルミ製対向4ピストン(オポーズド)のキャリパーを装着している。オポーズドと言えばブレンボーが有名だが、トヨタ系のブレーキシステムメーカーであるアドヴィックスは既にセルシオ用としてアルミオポーズドを量産しているから、GS用もセルシオ用からの展開だろう。
このクラスのサルーンでオポーズドを装着している例は内外共に例がない。まあ、オポーズドを付ければ良いというものでもないが・・・・。
実はブレーキフィーリングについては、走行距離が250km程のGS350と120km程のGS430では大きな違いがあり、GS430は十分なμ(摩擦係数)が出ていない感じで、これは典型的な初期の当たり(慣らし)不足の状況だった。同じような状況は走行25kmと降ろしたてのボクスター(987、標準でブレンボー製を装着)でも経験している。したがって以下の記述はGS350を主としている。

ブレーキペダルに足を乗せると、短い遊びの後にグッと制動力が立ち上がるのは、それこそBMWに似ている。特に驚いたのが、ソコからのストロークの短さで、この点では最近ストロークが多少長めになったBMWを完全に上回っている。今まで経験したブレーキでこれよりストロークの短いのはポルシェ911カレラSとボクスター986のポルシェ一族のみだ。(新型ボクスター987も当たりが付けばカレラに迫っただろう)
まあ、ストロークが短かければ良いというものでもないし、最近の欧州各社のブレーキは以前よりストロークが長くなる傾向にあるから、一概にGSが最高とも言えないが。
同じオポーズド(しかも4輪)を装着しているセルシオは、ブレーキフィーリングが難点だったが、このGSは大きく進歩している。効き始めから踏力に比例して立ち上がる制動力は実にコントロールし易い。実はフロントのパッドには独テキスター社のT4146という材質を使っている。これは、BMWなどが使用している材質そのものだ。
ただし、何事にもデメリットというものがある。T4146の最大の欠点は磨耗が速く、ローター攻撃性も強く(パッド交換2回に1回はローター交換要、最悪毎回交換)更に、フロントホイールはあっという間にブレーキダストで真っ黒になり、しかも放って置くと取れなくなってしまう。欧州車のユーザーなら当たり前の、この問題にレクサスユーザーがどういう判断をするか楽しみだ。

ブレーキフィーリングの良いのは判ったが、それでは急制動時の車両の安定性は如何だろうか?これを調べるためにGS430で、2車線のバイパスで、前後にクルマがいないのを確認してから、一度加速して、即座にブレーキペダルに足を乗せると、完全に踏力が立ちあがる前に行き成り減速度を感じて、リアは一瞬ロックに向かう音と感覚を感じて驚く。ABS作動には至らなかったが、これからロック寸前まで力を入れようという一瞬前に、勝手にブレーキ力が立ち上がったのは、GS430のみ装着されているEBC(電子制御ブレーキ)の仕業らしいが、なんとなく余計なお世話のような気がするが・・・・。
お蔭で、高減速度の時の踏力とブレーキ力がどのくらいリニアか試そうという目論見は失敗に終ってしまった。


GS430に標準の5スポーク、8J18ホイールと245/40R18タイヤ。
フロントブレーキは17インチのアルミ対向4ピストンキャリパーと外形φ334mmのローター。

GS350に標準の10スポーク、7.5J17ホイールと225/50R17タイヤ。
ブレーキはGS430と共通で、350だからといって差を付けていないのは立派!

以上がGSに試乗した結果だが、さて、こうして振り返って見ると、確かに良いクルマなのだが、これといった特徴はないし、乗っていて楽しいというものでも無い。この感覚は10ヶ月程前に乗ったマークXとソックリではないか!勿論、マークXよりレベルは遥かに高いが。
その中でも、GS350の520万円というのは、まあ許されるか?しかし、BMW525iだって価格的には570万円と50万円しか違わないし、今のところ値引き無し、ワンプライスのGSに比べれば決算時期やイヤーモデル遅れの大幅値引きなどで実質価格は逆転するかもしれないとなれば、はて、どちらを選ぶか?GS350が525iに確実の勝てるのはヨーイドンのゼロヨン加速くらいだから。
と言っても、525万円のレジェンドに比べたらGS350が圧倒的にお勧めだ。なんて言うと、またホンダオタクが怒りそうだが、100人中99人以上はGSを選ぶと思うのだけれど。

実はGS試乗の後、その足でBMWデーラーに寄って展示してあった525i-Mspの運転席に座った瞬間に、あれっ!GSは一体何だったんだ?と思うほどに、シートは体にフィットするし、ダッシュボードからの風景といい、自然なステアリングやペダルの配置等・等、実に良く出来ている。それにドアを閉めた瞬間の、あのズシンッとくる重厚感や、インテリアの質感、いや、そんな一つ一つが如何したといううよりも、室内全体、クルマ全体から発せられる雰囲気がまるで違うのを目の辺りにして、何とも表現出来ない虚脱間を感じてしまった。レクサスGSを運転しながら、ああだ、こうだと考えながら、踏んだり、離したり、回したりしたのは一体何だったんだ!?
この違いが気になる(判る)人は、絶対にGSを、いやレクサスを買うことはないだろう。

性能では勝り、価格でもメリットがある筈のグランドセイコーはロレックスには勝てなかった。レスサスを一言で言えば、クルマ界のグランドセイコーか?