BMW 323i (2005/12/17)
※この試乗記は2005年11月現在の内容です。現在この車種は MCにより仕様が変更されています。

 




アウディ A4


BMW 320i


BMW 325i


BMW 330

 


外観上で325iとの違いは殆どない。
4気筒の320iとはグリルの縦桟にメッキがある事で区別できるのはE46と同様だ。

BMWの新型3シリーズ(E90)は、発売当初のラインナップが4気筒2ℓの320iと6気筒3ℓの330i、そして中間グレードである325iとなっていたが、320iの408万円(AT)と325iの530万円との差は120万円以上もあり、これでは6気筒は欲しいが、とても予算的に無理という状況が結構ありそうだ。
BMWの、とりわけ3シリーズの場合は、新型にFMCされた直後はベースグレードの4気筒と上級の6気筒が、まずは発売されるのが何時ものパターンだ。先代E46の時も、まずは4気筒の318iと6気筒の328iと323iが発売されて、その約1年後に320i(6気筒)が後追いて発売されている。

そして、E90も噂どうりに323iが発売された。既に320i、325i、330iは試乗記を発表済みなので、今回は相違点のみに留める。E90の詳細に関しては、これらの試乗記を参照されたい。
 


後ろから見ても325iとの識別は難しい。
唯一最大の相違点は323iのエンブレムだが、だからと言ってこれを外せば、323iである事がすぐにバレる。
一番恥ずかしいのは”M”のエンブレムを貼ること!

2本出しの排気管が6気筒であることを示している。
ボンネットの中の風景は、これまた全く区別がつかない。
エンジンも外観上は全く同じ。

323iの標準モデルは価格が480万円。320iより約70万円高いが、325iよりは50万円安い。E46時代で言えば320iに相当するモデルで、そういう面では今後の売れ筋車種となる事は間違いない。

323iという型番から想像するのは2.3ℓという排気量だが、実際には2.5ℓだ。それでは325iと何が違いかといえば最大出力が325iの218ps/6500rpmに対して323iは177ps/5800rpmとなっていて、要するに排気量が同じながらデチューンされている。エンジン型式はどちらもN52B25Aと同じ。パワーが約20%ダウンしているが、排気量が同じ事から 最大トルクは325iの25.5kgm/2750〜4250rpmに対して23.5kgm/3500〜5000rpmと8%しかダウンしていない。

外観上での325iとの違いは、ちょっと見ただけでは判らない。4気筒の320iなら少なくとも排気管が1本出しで、それと判別できるが、6気筒の323iは325iと同じ2本出し。強いて外観上の違いといえば標準のホイール形状が異なることくらいだろうか?と、思って調べてみれば、標準モデル同士は全く同じだったから、要するに外観上では区別がつかない。結局、識別の手立てはリアのエンブレムのみという事になる。実際E46時代にもエンブレムを外した排気管2本出しのクルマを度々見た。オーナーはこれでグレードが判らないだろうと思っているのだろうが、325iならワザワザ外さないから、これこそ320iですと言っているようなものだが・・・・・・。
 


ファブリックシートは座り心地も良いし、見かけも悪くない。

323iというグレードから言って、手動調整でも十分とは思うが、シート位置のメモリーも備えたリッパなパワーシートを装着している。

試乗した標準グレードのシート表皮はファブリックだが、他の3シリーズと同様に形状も座り心地も 国産とは比べれば遥かにレベルが高い。今更ながらシートについての国産車と欧州車のレベルの違いを思い知らされる。シートなんていうものはカーメーカーが自社で作ることは無いのだから、国産車だって富裕層向けのプレミアムブランドを謳うならば、欧州のシートメーカーから買ってくれば良いと思うのだが、何故かやらない。
このシートは標準で電動による調整機構が付いている、いわゆるパワーシートっていう奴だ。しかし、323iという買い得グレードの性格からして、手動調整を装着して、その分の価格を下げてもらいたいと思うのだが、それではユーザーが承知しないのか、それともマークXあたりにスペックで負けるのが嫌なのか。
考えても見れば、このクルマの主要ユーザーであるプチセレブな家庭では、ウィークデイは奥さんが運転して買い物や友人と会ったりのセカンドカー用途として使い、土日にはダンナが乗ってフラフラと近所に出かけるのに使うから、毎週乗るたびに手動調整では、自分の位置を思い出すのにひと苦労だから、シート位置が記憶できるメモリー付きシートは重宝するかもしれない。

室内のトリムは325iと同じウッド(ポプラ)パネルで、その他の室内装備も両者は全く同一だから、50万円の価格差はエンジンの特性だけということか。
 


325iと全く同一のポプラウッドのトリムが貼られたダッシュボードやセンターコンソール。

325iとの差が基本的にエンジンのみということなので、早速走り出してみることにする。
第1印象としては325iに比べて直感的にパワーが不足するという感じはしない。確かに数字上のパワーは20%近くダウンしているが、トルクに関しては多少高回転側に寄っているとはいえ、最大トルクでは8%ダウンしているだけだから、実際に一般道を走る分には明らかな違いは見つからない程度だ。この差と言うのはE46時代の325iと320iの関係とソックリだ。E46の場合は320iが01モデルから、それまで2ℓだった排気量が2.2ℓ(170ps)となり、実際に乗った時に325iの190psとの体感上の差があまり感じられなくなり、その後325iは注文による取り寄せのみとなり、逆に320iはオーダーが増えて、これが値引き拡大につながり、一時期は4気筒の318i(2ℓ)よりも売れたくらいだった。

体感パワーは大きく変らない両車だが、エンジン音は大きく異なる。325iが常にヒューンという音を主として、その他メカ音が結構聞こえたのに対して、323iは遥かに静かで、まるで高級サルーンのようだ。BMWの場合はイヤーモデルによってチューニングが結構変るから、以前試乗した325iに対して、06モデルは静かになっているという事も考えられる。ただし、今後325iはMspを中心に売ってゆくそうだから、ファミリーユースのお買い得モデルが323iで、スポーティなマニア向けを325iとするなら辻褄が 合う。

E46の場合は排気量が小さい320iは、スムースさという点で325iより有利だったし、事実、歴代の6気筒でも最高にスムースだったM54型エンジンの、しかも排気量の一番小さい2 .2ℓは、スムースな回転という点では他に類が無い程だった。これに対して今回の323iは排気量という点では325iと同一だから、トルクの無い分をスムースさでカバーできない辛さがありそうだ。さて、実際は如何かといえば、323iのエンジンは十分に軽快だし、走行200km程度の試乗車でも高回転までスムースだ。4000rpmを過ぎたあたりからヴィーンというバルブ音らしきメカ音が聞こえるが音量自体は小さく、特に気にはならないが、その音といい、音量といい、何だかトヨタクラウンのようだ。これならば、国産上級車からの乗り換えユーザーには素直に受け入れられるかもしれない。そして、325iとの最大の違いは、そこから先のトップエンドまでと言うことになるが、323iの6500rpmに対して325iの7000rpmのレッドゾーンが、それを物語っている。と、言っても、普通のユーザーからすれば如何でも良い事だろうが・・・・。

ところで、この2車のエンジンの眺めはと言えば、写真で判るとおりに殆ど区別がつかない。従って ボティ外観どころかボンネットを開けても、区別はつかないことになる。もちろん、内装も同じだから、リアのエンブレム以外は区別がつかない。あとはエンジンをバラすしかないか?いや、まさかエンジンの中も同じなんてことはないよね!?
 


3シリーズに共通のメーター。マルチファンクション・ステアリングホイールは6気筒系に標準装備。

323i(左)と325i(右)の唯一の違いは、回転計のレッドゾーンが6500rpmと7000rpmとなること。

操舵性については今更如何こう言うことは無いくらいに、お馴染みのBMW特性だ。ただし、前回乗った325iはダイナミックパッケージ装着車だったために、タイヤが1サイズ(225/50R16に対して225/45R17)大きく、サスも1ランクハードなものが装着されていたので、路面に大きな轍がある 場面では多少のワンダリングを感じたが、今回の323iはそんな気配もなく、実に安定したコーナーリング特性だ。操舵力も適度に重いし、中心付近の反応も敏感過ぎず、さりとて鈍感でもない。小金持ちのオバちゃんが運転しても安定して走るし、元走り屋のオトウさんが運転すれば、其れなりのスポーツドライブができる。 クルマ好きの若者がヒョンな事から323iを運転したなら、こんなに面白いクルマを何も知らない小金持ちのオバちゃんがトロトロ走るなんて、宝の持ち腐れも良いところだなんて悔しがったとか。

確かに良く出来た操舵感だが、人間の欲求には際限が無いから、こうなると最近のBMW各車に標準装着されているランフラットタイヤ(RFT)が恨めしい。RFTでこれだけの操舵感が出せるのだから、パイロットスポーツ2(PS2)あたりを履かしたら、さぞかし楽しいクルマになるだろうに。なんて、言いたくもなる。

323iのブレーキは如何かと言えば、これまた325iと同一のフロントがアルミボディのキャリパーを装着しており、ということは形状からして同じ330iとも同一(ローター径は別としても)という事だ。すなわち、6気筒のブレーキは基本的にはアルミボディのキャリパーで4気筒がE46からキャリーオーバーした鋳鉄ボディということになる。当然フィーリングも他の3シリーズと同 じだから、世界のスタンダードでもある効き味を堪能できる。


前後とも7J16ホイールと225/50R16タイヤを装着する。これも325iと待ったく同じ。

323iのフロントは330i、325iと同じアルミボディのキャリパーが装着されている。3シリーズの6気筒系はすべてこのタイプのようだ。320iはE46と同じ鋳鉄製のボディとなる。

普通に使う分には動力性能で325iとの大きな差は見出されない。そして、そのトルク感は、奥さんの買い物用には勿体ないくらいのオーバースペックだし、クルママニアでもある亭主が久々の日曜日にコーナーを攻めてみても結構楽しめる。勿論、腕の良いドライバーがその気になっても特に物足りなさを感じることもない。さらに、エンジンパワー以外の装備や外観は全く同じで、値段だけが50万円安い。と言えば、既に325iを購入したユーザーから見れば、冗談じゃないと怒鳴り込みたい気持ちも判るが、その代わりに10ヶ月 早く新型を堪能出来たのだし、動力性能に大きな変りは無いと言っても、フルスロットル時のトップエンドの性能では1枚上手なのだから、十分元は取っ ている筈だ。
それでは323iに対して70万円安い320iはと言えば、個人的にはハッキリ言って価格の安いこと以外にはメリットが無いように思う。そうは言っても、70万円というのは無視できない金額だし、最初は118iあたりをターゲットにして、どうせなら3シリーズの方が使いやすいし、多少高くても十分にメリットがあるなんていう営業マンの口車に乗って、320iを検討しだした経緯なら、これ以上の予算の増額はご法度だ。 だから、ある程度クルマ購入資金に余裕のあるユーザーなら、迷わず323iを選ぶことを勧める。323iなら、準ブランド短大出の見栄っ張りな奥さんが”ベンツC180”に乗る友達と会う時に乗って行っても十分に優越感に浸れる。プラダのバッグやロレックスのレディスデイト(勿論白/金のコンビ)とも良く合うから、クルマを買うにあたっての最難関である山の神の稟議にも問題が少ない。
盆暮れに奥さんの実家に帰っても、現役時代には”ベンツ”(デーラーの試乗車上がりの190E)に乗っていた事もある義父が、流石はウチの婿さんだけあってセンスが良い、とタンノイのスピーカーから流れるブランデンブルグ協奏曲を聞きながら上機嫌になるメリットもある。

と、ここまで来てハタと考えた。480万円出せば130iが買えるじゃないか!その昔の独身時代はボロ車とは言え峠を攻めたオトウさんとしては130iは理想のクルマだ。だが、しかし、家族から見れば、狭い、ウルサイ、乗り心地悪い。何より問題なのは、オトウサンが電車で会社に通っているウィークデーは奥さんの買い物クルマとしても使わなければならなのに、奥さんは教習所の仮免以来、MT車に乗った事がない。
ところが、マイホームのカーポートは1台分しかないから、奥さん用に軽自動車を買うわけにもいかない。こんな事なら、あの時もう一踏ん張りしてカーポート2台付きの隣の区画を買っておくべきだった、なんて思ってお隣を見れば、ボクシーノアとミラが停まっている。折角2台分あるのに、あんなクソクルマなんか置きやがって!なんて怒ったところで、如何にもならずに、未だ20年のローンが残っている我が家を見つめながら、130iを諦めて323iに決めるかと一人つぶやく。しかし、130i、良いよなぁ〜。