Alpine A110 (2020/1) 後編 その1


  

それではいよいよ試乗を始める。

今回の試乗車はレンタカーの為に都心のビルの地下駐車場で車を受け取る。外観は意外と車高が高めに見える傾向があり、少なくともベタベタに低いスーパーカールックでは無い。まあサイズも比較的小さめなので雰囲気としてはトヨタ86的な感もある。

ドアを開けて乗り込む時は流石にサルーンとは違い低い車体に潜り込む感覚だが、とは言え極端に乗りづらい事も無く、感覚としてはポルシェ ケイマン/ボクスターと似ている。なお、今回の試乗車は少し穏やかというかコンフォート志向のリネージの為にシートは一般的なスポーツシートであり、サイドの峰もそれ程立ってはいない事も意外に乗り込み易い原因でもある。

ところで前編でも触れたが、本来のアルピーヌらしさではよりスポーツ志向のピュアだろうが、ピュアの予約は全て埋まっていて、今回のリネージもやっと空きを見つけたくらいだった。と言う事で、ピュア狙いのユーザーからすると多少結果が変わるかもしれないが、まあその辺は各自で判断願いたい。

乗り込んでドアを閉めてシートベルトを締め、さてシートの調整はというと、リクライニングは昔の欧州車ではメジャーだったダイヤル式で前後はシート前方下のレバーと何れもマニュアル式だ。そしてなぜか上下は電動となっている。まあこれもリネージだから大分文化的だが、ピュアではバックレストは固定だし上下調整はやる気になればボルトを外して穴位置を代えるという方法だが、体格の違う夫婦で共有するなどの場合は、交代の度にボルト位置交換ともいかず、ハテ、どうするのだろうか?

なおピュアのシート形状はコテコテのスポーツ仕様、というかレーシング仕様であり、シートサイドは極端に立ち上がっているから、如何考えても乗り降りは大変そうだ。という事で、実用を考えればリネージという選択も悪く無い気もしてきた。

写真11
コンフォート志向のリネージはスポーツシートと言っても比較的おとなしいモノが付いている。

 

写真12
リネージのシート調整は前後とバックレストが手動で上下のみ電動となる。これがピュアではバックレストは調整が出来ない。

 

シートに座ると、座り心地や前方視界など全てに於いてケイマンと似ている。全幅 1,800o と決して狭くないのに、実際の室内は狭い事もソックリだが、まあ似たような構成のクルマなのだから当然だが。

次にイグニッションを ON するのだが、渡されたキーは電子キーというよりもマルでカード式キーという感じで、しかもそれを入れるスロットは何と助手席側のダッシュボードの中央位置にあり、これはどう考えても左ハンドルそのままだが、まあそれでも右ハンドルがあるだけでもマシと考えて、一度締めたシートベルトを外してから大きく左に手を伸ばしてカードを挿入する。

そしていよいよエンジンをスタートさせるが、これはセンターコンソール上に目立つ朱色に"START STOP" と表示されているボタンが目に入るので、誰が考えてもこれがスタートスイッチという事は判る。次にブレーキパダルを踏むが、そのペダルはいかにもそれらしいアルミスポーツペダルだが、その配置はブレーキペダルが中央より寧ろ右寄りであり、右足で踏むという事を考えれば実に合理的だ。また左端のフートレストは幅広で、言い換えればこの配置は米国式に左足でブレーキを踏むには全く適していない。この辺は欧州車としてのプライドだろうか?

次にATのセレクターをDに入れるのだが、それらしきレバーはコンソール上には無い。そうか、最近流行のコラムシフトだな、と思ってステアリングコラム付近を見るが、ここにもそれらしきレバーは無い。気を取り直してコンソール上を再度良く眺めると、D・N・Rという3つの大きな押しボタンスイッチがあった。これはDを押せばDレンジだろうとは誰でも考えるし、実際にDボタンを押すと外周が点灯してDレンジである事を示している。因みにNを押せばNレンジは判るがPはどうするんだといえばもう一度押すとPになるようで、NとPの識別はNボタンの点灯する色が変わる事で識別できる。

そしてパーキングブレーキは意外にもオーソドックスな電動パーキングのスイッチがスタートスイッチ手前にあり、これを押すことで解除される。なおその更に手前にあるスイッチで自動解除も選べるようだ。なぜ "ようだ" なのかといえば、時間が無くて実際には試していなかった為だ。

発進しようとして気付いたのはサイドミラーが妙な方向に向いている事で、よく見れば畳まれているようだった。そこでスイッチを探すが、世間一般のようにドアのアームレスト付近を見たが無い。そこでふと視線を前方に移すとダッシュボード右端にそれらしき小さなスイッチがあった。

地下の駐車場をゆっくりと発信する時のスムースさなどは DCT とはいえトルコンを含めた世間一般の水準に達しているから特に意識しなくても普通に走る事が出来る。地上に出て、そういえばライトスイッチって何処にあるんだろうと思い、ドイツ車のようなダッシュボード右端を見たが、ここには前述のミラー調整スイッチしかない。となれば国産車みたいにステアリングコラムを探すしかない。ただし欧州車だから当然ウィンカーは左であり、このレバーにライトスイッチが仕込まれていた。


写真13
カードキーのスロットは何と助手席側中央にある。


写真14
ダッシュボード右端はミラー調整スイッチのみ。

写真15
ライトスイッチは国産車同様にウインカーレバーに組み込まれているが、勿論国産とは逆に左側にある。
右がワイパースイッチというのは欧州車として一般的だ。

 


写真16
センタークラスターのトップにあるディスプレイにナビは無い。仕方なくポータブルナビが後付してあった。
スタートスイッチはコンソール中央の判り易い位置にあるが、コンソール上にATセレクターは無い。


写真17
右側に寄ったペダルは右足でブレーキを踏みやすい。


写真18
ATセレクターはボタンスイッチ式となっている。

とろこでルノーの高性能版ターボエンジンは2010年より 1.6L ターボ 200ps の M5M が使用されてるが、このエンジンは別名 MR190DDT 、要するに日産の MR エンジンであり、アルピーヌのエンジンは M5P 、すなわち MR190DDT のバリエーションである事は明白だ。こんなところでもルノーは日産の技術にオンブにダッコという事か。

つづきはその2にて。

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