Porsche 992 Carrera 4S (2019/7) 後編 その1


  

ドアを開けて車内に乗り込むと、低い座面や狭い前方視界、その割には左右フェンダーの峰が確認出来る独特の感覚は 911 そのものだ。シートは気のせいか以前より座面が硬く感じるが勿論身体全体を上手くサポートする。エンジンの始動は他社のように押しボタンでは無く、昔の金属キーを思わせるレバーを右に捻る。その場所は勿論その昔のルマン式スタートから続く伝統でシフトレバーの反対側、すわなち右ハンドルならダッシュボード右端となる。

エンジンが始動するとそのアイドリングは結構静かで、997時代の様にガッチガチのボディー全体がブルブルと震える異様な雰囲気は無く、極普通の高級車という感じだ。ただし試乗車はオプションのスポーツマフラーが装着されていたので、エンジンが掛った瞬間の一瞬のブリッピングでは車外からそれらしい音が聞こえる。

ATセレクターは最新のポルシェの常で電子式となったが、その形状は一足先に電子式となったカイエン (厳密にはその前にパナメーラー) のモノとは一目で違いが判る。写真22のようにレバーは小さく、これを引いてみるとカチッと引っ掛かり、更に引くとストッパー位置で止まりDレンジとなった。ここで手を放すとレバーは前方の最初の位置に戻される。電子式なのに結構ストーロークは長く、似たような方式である BMW とはフィーリング上で大いに異なっている。

パーキングブレーキは電動式でコンソール上の最後端位置にあり、これを押す事で解除するが、そのままアクセルを踏んでも自動で解除されるようだ。そしてゆっくりとアクセルを踏んで公道の手前で本線のクルマの流れが切れるのを待つ。やがて後続車がいなくなったので 1/4スロットル程度でステアリングを左に切りながら本線に入り、そこから軽く加速する。先代の 991 Ph2 ではノーマルモードでもチョイとアクセルを踏んだだけでドヒャーと飛び出したが、今回の新型は極普通のレスポンスだから、アクセルワークは容易だ。
 ⇒ Porsche 991 CarreraS Phase2 試乗記 (2016年5月)

とはいえ少し多めにアクセルを踏めば即座に強力な加速を得られるが、一般道では前車が遥か先のように見えてもあっという間に迫って来る。データー上では 0−100km/h 加速性能は 3.7秒で、これは 911ターボの3.0秒よりも0.7秒も遅い!事になるが、街中では100km/h に到達する訳も無く、となると街乗りでの実用領域では体感的にも違いは無い。というか、恐らく今後発売されるであろうスタンダードのカレラでもそれ程は変わらないだろう。経験的に0−100km/h 加速が4秒以下ならば一般道での体感では殆ど変わらない気がする。


写真21
エンジンの始動は他社のように押しボタンでは無く、昔の金属キーを思わせるレバーを右に捻るのもポルシェ流だ。


写真22
コンソールのデザインは全く異なり、新型は妙にシンプルだ。

写真23
ATセレクターは最新のポルシェの常で電子式となった。パーキングブレーキもダッシュボード下からコンソール上に移動している。


写真24
ペダルは同一部品の使い回しのようだ。

ところで目の前のメータークラスターだが、今回からはセンターの大径回転計以外は全てカラー液晶のCGとなった。まあセンターに大径アナログメーターを残したのはポルシェの拘りだろうが、それをやっても 991 までの目の前に5つのメーターが並んで、これぞ 911 という感じが無くなってしまったのも何とも寂しい (写真25) 。これじゃボクスター/ケイマンとあまり変わらないじゃないか!倍もする値段なのに如何してくれる、っていう気持になるだろう。

写真25
センターの大径回転計以外は全てカラー液晶のCGとなった。しかし5連のメーターが並んでこそ911なのだが。

この先はその2へ続く。

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