BMW X1 sDrive 18i & xDrive 18d (2018/4) 後編


  

18d の試乗が終わりクルマから降りて数分後にはボディーカラーもホイール類も一見すると殆ど同じ 18i が目の前に来た。ドアを開けると同じデザインライン (xライン) だがシートが標準のコンビシートという処が違うのが判る。クルマに乗り込んでドライバーズシートに座るとセンターがファブリックの標準シートは直前に乗った 18d のレザーシートに比べて明らかに滑りが少なく、寧ろ身体が安定するように感じる。それ以外では全く変わらない 18i のスタートボタン (これも18d と同じ) を押すとエンジンは始動するが、ここで神経を集中すると僅かではあるがエンジンの振動を感じる。その振動も3気筒という事で4気筒とは違うし、本来振動の大きい筈のディーゼルエンジンを搭載した 18d の方が明らかに振動が少ないし、振動自体の質も良い。やはり奇数 (3気筒) というのは完全に隠しきれないようだが、まあ特に気にしなければ気が付く事も無い程度のレベルではある。

それでは国産の3気筒と比べて如何かと言えば、国産の場合多くは軽自動車であり、0.66Lと1.5L では振動の量が違って当たり前であり、言い換えれば 1.5L を3気筒で実用化する BMW の技術も大したもので、伊達に社名を "バイエルンのエンジン工場” と名乗っている訳では無い。なお国産普通車で3気筒といえばトヨタ パッソの1.0L 3気筒があるが、これは排気量がBMW よりも小さいから有利な筈だが、比較すればより振動は多く騒音は安っぽいから流石のトヨタも BMW には敵わない。と書いてみたが、パッソはダイハツブーンの OEM 版だからエンジンもダイハツ製だった。ダイハツのルーツは 1907年の「発動機製造株式会社」で、その後は他にも○○発動機という会社多く出現したころから、識別のために大阪の発動機製造だから大発と略したことに端を発している。という事は、ドイツ式に言えば OMW とでも言うのだろうか。

次にフロア上にある BMW としては1〜2シリーズのみで使用されているメカ式のセレクターレバーをガチャガチャと引く‥‥筈が、何か違う。実は 18i の場合、昨年の変更でトランスミッションがトルコン式からDCT方式に変更されたのだった。それに伴いセレクターも電子化されたようだ。
セレクターでDレンジを選択した後は直前に試乗した 18d と何ら変わる事は無く、ユックリと発進して駐車場内を移動する。この時18d に比べて特にのトルク感が劣るという事も無かったが、最初に公道に出て加速した際にはやはりディーゼル特有の太いトクル感を感じる 18d に比べれば、ギア比の違いでカバーするとはいえ実際には多少細く感じるは仕方ないだろう。しかし1/2 スロットル程度でも回転数の上がり具合は流石にガソリンと感じるところだ。

ガソリンエンジンのメリットは高回転時だから、ここで走行モードを SPORT に切り替えて、先ずはタイミングを見て2/3スロットル程度で加速して見るが、それでも回転計の針は楽々と4,000rpm くらいまでハネ上がる。4,000rpm といえば 18d では既にトルクが大きく落ち込んでいる回転数だから、そのフィーリングの差は大きい。今度は前車が左折の為にこちらも停止寸前まで減速してからの再加速でフルスロットルを踏んでみると、6,000rpm まで一気に上がっていくし、吹けあがりは3気筒とは思えない程スムースだ。ただし多少聞こえる排気音とメカ音は3気筒らしく決して気持ちの良いモノではないが、まあ気にしなければ特に問題は無い。因みに 18i のレッドゾーンは 7,000rpm だから、マニュアルモードで引っ張ればあと1,000rpm 回せる事になるが、流石に3気筒ターボでは6,000rpm くらいが良いところだろう。なお、出力特性を見ると、18i の最高出力は6,000rpm まで維持している。

ということで、18i のエンジンはガソリンらしく低域では多少のトルクの細さは感じるがストレス無く高回転まで吹けあがるのは実に気持ちが良い。とはいえ、これは各自の好みもあるが‥‥。

尚、前編で使用した両車のエンジン特性を再度掲載しておく。

今度はマニュアルシフトでミッションの変速レスポンスを試してみる。今回の試乗車は両車ともパドルスイッチが付いていないから、マニュアル操作はコンソール上のセレクターレバーを使う事になる。18i は DCT だからそのレスポンスに期待が出来るが、ポルシェの PDK のようにレシングカーばりのレスポンスを期待すると落胆するが、トルコン式の 18d よりは迅速なシフトが感じられる‥‥ような気がする。

次に操舵性とコーナーリング特性はどうだろうか。実は走り始めて最初に感じたのは 18d に比べて操舵力が軽めで、レスポンスが実に良い事で、明らかに鼻先が軽いというのが感じられる。動力性能では一概に 18d に勝っているとは言えない 18i だが、このステアリングレスポンスは乗った瞬間に違いが判るくらいの差がある。車両重量が 18d の 1,660s に対して 1,520s と140sも軽い 18i はその差の多くがフロントとエンジンとトランスミッションであろう事は想像が付く。3気筒1.5L の 18i に対して4気筒2.0L の 18d は、これに加えて駆動方式が 18i の FWD に対して 4WD だからトランスファーなど駆動関係の重量が大きい事は容易に想像できるから、まあ当然と言えば当然なのだが。

今度はコーナーリングを試してみる。コース途中のコーナーは20分程前に 18d で走ったのと同じ場所だから比較し易い。それで最初にコーナーに入った瞬間から弱いアンダーステアは有るものの安定して回っていくのが感じられ、何よりも微妙なコースの修正等がやり易い。RWD の1シリーズには敵わないが、まあ FWDとしては充分で、最近の良く出来た FWD と同等以上だ。尤もX1は SUV だからコーナーリングを追求するようなクルマでは無いが‥‥。

最後のブレーキについては、同じブレーキならば理論上は140s 軽い 18i が有利なのだが、これについては特に違いは感じられなかった。同じブレーキでもバキュームサーボの特性などは違うかもしれないし、4WD と FWD では重量配分も異なるし、この辺は今の技術ならどうにでもなる処だ。


写真51
タイヤサイズは18i および 18d 共に xLine では 225/50R18。


写真52
他の BMW 車と異なりフロントキャリパーが大きいのは FWD ベースで前後の重量配分がフロント寄りという事だろう。。

それでは結論を言うと、あくまで個人の考えだが、これはもう 18i で決まりだ。何よりも吹け上がりの良いエンジンや、軽快なステアリングは BMW らしいものだからこれを選ばない手は無い。しかもベースグレードなら 417万円から用意されている 18i に対して 18d は470万円からと、その差は約50万円にも及ぶ。燃費の面では 18d が有利とはいえ、燃料代で元が取れるには相当な距離を走る必要があるから、先ず回収できるオーナーは稀だろう。

あっ、まあ、ディーゼルを選ぶ事に口を出さないけれど、世の中の省資源ブームに載せられて割高のディーゼルを買うのもねぇ。