Subaru Forester 2.5 X-BREAK (2018/10) 後編 その2 |
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ここでエンジンルーム内に目を移すと、見た目では先代ターボモデルと似たようなデザインのカバーが掛っているハイブリッドに比べるとカバーが無くて補機類がゴチャゴチャ見える、スバルの NA エンジンではお馴染みの光景が見える。排気量はハイブリッドの 2.0L + 電気モーターに対して、X-BRAKE 2.5L と排気量が大きいが、まあその差は直接乗り比べて何とか判る程度だった。 それ以前にフォレスターのボンネットフードを開けておくには支えのロッドを手動で立てる事が必要で、高級車志向を目指すスバルなら、これはチョイとマズいだろう。 |
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今度はフォレスターのライバル車と比べて、パワー的にはどの程度なのかを検証して見る。比較相手としては国産の小型クラス SUV として 日産 エクストレイル、トヨタ C-HR そして輸入車代表として BMW X1を引っ張り出してきた。 結果としてはこの中ではフォレスターの動力性能は数値上では決して悪くない事が判る。4車の中にはターボ車が2台含まれているが何れもエンジン排気量が小さく、フォレスターは NA とはいえトルクでさえもターボ車に勝っているのは2.5L という他車に比べて大きな排気量が効いているようだ。 う〜ん、そうかあ。フォレスターの動力性能は決して悪い訳では無いのかぁ。その割には実際に乗った時に感じる動力性能は決して良くないのだが。若しかして試乗車の走行距離が少なくて未だ当たりが付いていなかったのかもしれない、と思って写真からオドメーターの表示を調べたらば 1,051km だった。成る程これなら考えられる。ポルシェの水平対向エンジンでは最初の1,000q なんてどうしようもなくて、5,000q でもマアマアで、1万q 辺りから調子が出てきて 2万キロ過ぎると絶好調となるが、若しかしてフォレスターも同様なのだろうか? なおフォレスターの最大のライバルと目されるエクストレイルはエンジン排気量が小さい事から数値上ではフォレスターに負けている。それでは実際の走りは如何だったかと思って過去の試乗記を調べたが、残念ながらハイブリッドのみでガソリン車には試乗していなかった。尤もエクストレイルの場合はハイブリッドとガソリン車のエンジンは共通だから、何かの参考になるかもしれないと一応リンクを貼っておく。 また残る2車については以下の試乗記を参照されたい。 さて次は操舵性を試して見るが、ハイブリッドの試乗記にも書いたように、モーターの特性チェックなどを重点にした為に手が回らなかった旋回性をこちらで試して見る。操舵力自体は適度に軽くてレスポンスもまあ程々に良いが、その軽快感はハイブリッドよりも多少良いかもしれない。車両重量は X-BREAK では 1,530s とハイブリッドの1,640s よりも 90s も軽いが、これまたそれを肌で感じる程では無い。 今回は途中のコーナーから前回よりも速目の速度で積極的に侵入してみたが、アンダーステアは弱くて安定性も良い。スバルの4WDも経験が長いだけあって国産の SUV としては間違いなくトップクラスだ。というか他車が大した事が無いという事もあるが。 X-BREAK の標準タイヤは 225/60R17 でこれは Advance の 225/55R18 よりもホイールサイズが1サイズ (1インチ) 小さい。その分乗り心地は多少改善される筈だが、実際にはそれ程大きな違いは無かった。それにしても X-BREAK のホイールを最初に見た時にはマルで鉄っちんホイールにキャップでも付いているのかと勘違いするようなデザインで、これも個人的には好きになれないものだ。 |
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ブレーキについては何故か先程乗った Advance と違い低速でチョイと踏んだら思いの他喰い付くように効いて驚いたが、それ以後も低速でブレーキングする度に毎回そういう事態になった。これは若しかしたらハイブリッドの Advance とはブレーキ特性を変えてあるとか、パッドの材質が違うとか、何が相違点があるのかもしれない。そこで色々ネット上を調べてみたらばメーカーが発表したと思える説明図を発見した。これによると少なくとも 2.5L NA ではブレーキのストロークと減速度の関係が旧モデルに対してよりショートストロークとなっているという事をアピールしている。 しかしこの図を良く見るとストロークが0の時でも減速度が 0.3m/s2 位になっている。ええ〜っ、ブレーキを放しているのに減速度って、間違いじゃないの? と思うだろうが、実はこれは本当の事で、ディスクブレーキ、取り分け片押しタイプのキャリパーではピストンの無い側 (外側とかアウター側と呼ぶ) は常にパッドがローターに触れている状態で、この為に引きずりトルクが発生している。この値は普通 50s-cm くらいはあるのでタイヤの半径を35cmとするとタイヤの外側では1.4s の引きずり抵抗がある事になる。まあ大した事は無いが、それでも燃費には影響するので余り大きな声では言えない特性だ。それをスバルは馬鹿正直にグラフに載せているが、普通はストロークは0点を外して誤魔化すのだが‥‥まあそれがスバルらしいとも言えるが。 因みにこの特性図はストローク vs 減速度曲線であり、ブレーキの効きに一番関係する踏力は表わしていない処がまたチョイとイマイチだ。尤もこの図で能書きをコえていた評論家の先生もいるようだが、内容を全く理解していない事が判ってしまう。まあ評論家何て言うのは多くが雑誌の編集者上がりだから、クルマ自体については素人なので、こんなもんだろう。と挑戦的な事を言ってみる。 この X-BREAK の標準ホイールは最近のクルマにしてはスポークがやたらと太く、隙間が少ないので内部のブレーキが殆ど見えない。それでも僅かな隙間から見えるキャリパーと、基本的に装備のみ違う Premium のブレーキを参考にすれば、スバルお馴染みのフロントに2ピストンタイプを使用していると推定できる。 |
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さて結論だが、結局 2.5L NA の X-BREAK と 2.0L ハイブリッドの Advance の動力性能はシビアに比較すれば確かに違うが、大まかに言えば似たようなものであり、ライバルと比べてスペック上では多少勝るが体感的には特に強力というものでも無かった。一つにはフォレスターといえば初代からのイメージで強力なターボエンジンを搭載して SUV 離れした動力性能のイメージがあるし、事実先代モデルではターボの XT がラインナップされていて、実際に乗って見ても実に良いクルマであり、しかも価格は新型のハイブリッドとほぼ同じという事で、新型の買い得感は大いに薄れてしまった。まったく、一体何の為のフルチェンジだったんだ、何て言いたくなる。 これはもう早急にターボモデルをラインナップする必要があるが、その時の値段は如何するのだろうか。先代と同等だとハイブリッドと同価格帯であり、これではハイブリッドの良さはマルで無くて、結局大幅値引きでもしないと売れないだろう。まあ何とも間抜けな商品体系を作ったもので、その辺が群馬のセンスなのだろうか。 |