Toyota Crown 2.5 Hybrid RS (2018/8) 後編 その1


  

今回の試乗車 2.5ハイブリッド RS は従来のアスリート相当のグレードで、ボディーカラーはブラックという事もあり中々スポーティーで、以前のオヤジクラウンとは一線を画している。

シートは標準のファブリックでは無くオプションのレザー表皮が付いていて、クラウンという名前から想像するフニャフニャシートでボロクソ言えるのを期待したが裏切られてしまい、現代の標準的なシートで欧州車と比べてもそれ程悪くは無い代物だった。しかも見た目はイマイチのレザー表皮もゴワゴワだったり滑るような事も無く、この面でも最近のクラウンは進歩している。

スタートスイッチはダッシュボード右端の押しボタンで先代とは多少の位置の違いはあるがスイッチ自体は同じモノだ (写真31) 。またその付近にあるサイドミラーの調整スイッチ自体も同じものに見える。このブルーに "POWER" と表示された丸いスイッチを押すと正面のメーター類に灯が灯るが、このメーターは最近流行りの全面が一枚の液晶パネルという方式では無く、二つの対称に配された大径メーター自体は少し横からみると盤面よりも浮き出した位置に配置されているのが判り、CG では不可能なリアルな立体感が表現されている (写真32) 。なお先代 (S210) では大径メーターのパネルもスチールパネルのようだが、新型 (S220) では表示自体は液晶のようだ。

因みにクラウンは2世代前のS200 (2008年) クラウンハイブリッドで世界初の全面液晶パネル (トヨタはファイングラフィックメーターを呼んだ) を使用したのだが、その次の S210 ではメーターは一切液晶を使用していない。10年前の液晶によるフルCGでは性能的 (画面品質)に時期尚早だったのだろう。


写真31
配置は違うが基本的の同じスタートスイッチで、ミラーの調整スイッチも同じユニットに見える。

写真32
S220はメーター全体がフル液晶ではないが、メーターの文字盤は液晶方式。
S210 はメカ式メーターだが、実はその前の S200でフル液晶を採用したが時期尚早で失敗した経験がある。

AT セレクターは新旧共にコンソール上に配置されているが、S210 ではセレクター以外には何も無く実にあっさりとしていたが、S220 ではEVモードスイッチやパーキングブレーキのスイッチ等がある (写真33) 。またシフトパターンも S210 のジグザグゲートから新型は直線式で根元にレザーブーツが掛ったタイプと時代の遅れを取り戻している。ただしパターン自体はどちらもマニュアルモード付きの典型的なティプトロタイプとなっている (写真34) 。

そしてパーキングブレーキは S210 ではトヨタ車でお馴染みの足踏み式だったが、新型ではコンソール上で ATセレクター手前にある電気式のスイッチに変更となり、これまたやっと世間の水準に追いついた形だ (写真35) 。

セレクターをDに入れてパーキングを解除してブレーキペダルを離して僅かにアクセルを開くとクルマは音も無く前進する。う〜ん、流石はクラウン‥‥いや待てよ、ハイブリッドだから当たり前だった。そのままユックリと駐車場内を移動するといつの間にかエンジンも掛っているようにも感じるが、このクルマには回転計が無い為に判らない。勿論慣れればメーターの何処かに表示されているのを確認出来るのだろうが‥‥。


写真33
S210 ではセレクター以外には何も無かったが、S220 ではEVモードスイッチやパーキングブレーキのスイッチ等がある。


写真34
S210 のジグザグゲートから新型は直線式で根元にレザーブーツが掛ったタイプとなった。
しかしパターン自体はどちらもマニュアルモード付きの典型的なティプトロタイプとなっている。


写真35
パーキングブレーキは足踏み式から、コンソールの電気式のスイッチへとやっと世間の標準に追いついた。

公道に出てからハーフスロットルで加速してみると、ハイブリッド独特のトルク感は確かに感じるが穏やかだ。この道は国道とはいえ旧道で片側1車線で結構混んでいたので制限速度の50q/hは中々出せない程度の速度範囲で、この速度帯で流れに乗って走っていると電気モーターのアシストも適度で、これぞクラウンという気楽な走りが出来る。やがて県道に進むと、ここは交通量が少ないので寧ろ巡航速度の帯域が高く、それではと走行モードをスポーツに換えてみる。走行モードの切り換えはセンタークラスター中間部のディスプレイを使って iPad のようにディスプレイの画面をタップしてセレクトする (写真36左) 。

そこで "SPORT" を選ぶと、行き成りトルク感が増大し、レスポンスも向上する。ただしステアリングの重さやレスポンスの明らかな変化は感じられなかったが、後程カタログで調べたらば、ステアリングやエアコンも変化するような事が書いてあったが、何か別の設定でもあるのだろうか。付け加えると SPORT モードを選んだ時の表示はメータークラスター中央のディスプレイ上に極々小さな “SPORT” の文字が表示されるので、こんな小さい字を年寄りが読めるわきゃねえだろう! 思ったが、良く見るとメーターのパネルの色使いが通常のブルーからレッドを基調としたものに変化するから直ぐに判別出来るのだった (写真36) 。

ところで最初に走り出した時に気が付いたのはフロントウィンドウ越に何やら表示が見える事で、要するにヘッドアップディスプレイが付いていたのだった (写真24) 。この手のモノは以前から何回か試したが、今回のクラウンは今まで体験したどのクルマよりもハッキリと視認出来る事では流石にクラウン!視点が先方にあるので近くが見辛い年代 (別名“老眼”) のドライバーが多いであろうクラウンには重要だが、これはセーフティーパッケージ (12.1万円) の装着が必要となる。このヘッドアップディスプレイには走行速度、制限速度、ハイブリッドのチャージ状況、車線逸脱情報が表示されるから、ハッキリ言ってこれだけで運転の為に必要な情報が全て確認出来るが、慣れ、というか習慣となるには時間が必要だ。


写真36
走行モードはディスプレイをタップして選択する。SPORT モードではメーターのパネルが赤を基調としたものになる。


写真24
ヘッドアップディスプレイは見易くて見易い。これぞ年寄りに優しいクラウンらしい装備だがパッケージオプションとなる。

つづきはその2にて。

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