BMW X4 特別編 [X4 vs Macan 後編 その1] 特別編へようこそ。 前編でも御注意申し上げたように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。 クルマというのは走ってナンボだからここからの試乗比較が要となる訳で、デザインがどうした云々 (最近はこれをデンデンと読むように閣議決定されているらしい!)もまあ否定はしないが、見た目だけの批評ってえいうのは流石に情けない。それで先ずはクルマに乗り込むが、どちらも最近の SUV らしく昔のオフロード車のようによじ登る事は必要とせず、普通に乗用車感覚でドライバーズシートに座る事が可能だ。この点では最近のミニバンも同様で、まあファミリーカーとして使用するのに子供やジジババが乗るのに苦労する、なんていうのでは失格だ。その点では積載量は抜群だが旧来のキャブオーバートラックの流れを汲む1ボックス車、要するにトヨタ ハイエースや日産 キャラバンでは前席に乗り込むには結構その気になってよじ登る必要があり、ああこれはやっぱりトラックなんだぁ、と納得する場面だ。 そして運転席に座ってみると、そこはやっぱり SUV だけあってサルーンに比べれば視線は明らかに高いから寧ろ視界は広く意外に運転し易いのに気付く筈で、これがこの手のクルマが好まれる一つの理由かもしれない。それでもまあ3シリーズオーナーが X4 に初めて乗っても多少の違和感程度で済むだろうが、これが 911 やボクスターのように地を這う低さから突然マカンに乗ると大いに違和感は感じるだろう。ただし X4 とマカンを比較すればそれほど運転感覚が違う事も無い。 エンジンの始動はそれぞれ BMW とポルシェの仕来りに従って、X4 は 3シリーズ等でお馴染みのダッシュボード上のステアリングホイール左側の押しボタンスイッチであり、マカンはこれまたボクスター等でお馴染みの電子キーをダッシュボード右端にあるスロットに差し込み右に撚ることで始動する。 高性能車というのはスタートスイッチを入れた瞬間に如何にも高性能そうな音で目覚める事でオーナーも幸せになるのだが、今回の2車は特別そのような事は無い。以前の BMW では普通のサルーンでもエンジン始動時は本格的なスポーツカーも顔負けの音がしたのだが年々大人しくなってしまって、今では特別な感動を伴うには最低限でもMパフォーマンスくらいにならないと味わえないような気がする。という事で X4 も随分と大人しい目覚めだが、言い換えれば高級サルーンちっくな雰囲気はある。それではマカンはといえば、これまたポルシェのブランドから想像したらば殆どサルーン的に静かなのでガッカリするかもしれない。ただしマカンの場合はトップグレードのターボではエンジンが掛かった瞬間からポルシェらしいエクゾースト音が聞こえる訳で、まあこの辺は味付けとかヒエラルキーとかが大きく影響しているのだろう。そりゃあ、まあ、600万円チョイのエントリーグレードで一千万円超のターボ並の音がしたら、これでいいやという事で 600万円を選んでしまうようでは商売に差し支える‥‥かどうかは判らないが、いやまあ当然それはあるだろう。 エンジン始動の次に必要な儀式としては AT セレクターをDに入れる事になるが、そのレバーはどちらもセンターコンソール上に配置されている。そのコンソールも両社のポリシー通りで、要するに BMW は多少のスイッチ類とコマンドダイヤルという比較的シンプルなものだが、マカンはこれまたポルシェではお馴染みの中央のATセレクターを挟んで両側にズラリ並ぶスイッチ類が特徴的という具合だ。 コンソールが対照的という意味では側面から見る (写真下) と X4 ではV字型であり、マカンはポルシェらしくフロント側から結構斜めに下降していて、これは 911 等と同様である。そのコンソール上の AT セレクター手前には両車共にパーキングブレーキのスイッチが配置されていて、これを押すと解除できる。 なお最近のポルシェのパーキングブレーキはダッシュボード右下端にあるレバー式スイッチを使用するのだが、この方式は他にメルセデスが採用している程度で、国際的にはマイナーな方法になりつつある。マカンがポルシェとしての常識を打ち破って、パーキンブレーキのスイッチをコンソール上に配置したのは、ポルシェとしてはボトムだという事を思い知らせるためか、それとも今後発表される新型では 911 を含めてこの方法になるのか‥‥? ペダルについて言えば BMW はごく最近まで一千万円超のMモデルでさえショボいウレタンパッドだったくらいだから X4でも当然ながら安っぽい奴が付いている。そして今まで知る限りは全てのモデルがアルミのいわゆるスポーツペダルだと思っていたポルシェとしては、マカンは異例のウレタンパッドであり、何の事はない結果的に両車共に似たようなモノが付いているわけだ。 それでは早速走り始めると、X4 で走り出して最初に感じるのは4気筒 2.0L ターボエンジンのスムースなことで、シルキーシックスといわれた 6気筒に迫るものがあったのは ”バイエルンのエンジン屋” としての面目飛躍というところか。対するマカンは X4 程のスムースさは感じられないが、まあ世間の水準には行っている。それでデフォルトのノーマルモードでの巡航時の特性だが、X4 2.8i は 1.9トンの SUV をターボとはいえ 2.0L で駆動するのだから、ハテ如何なモノかという危惧もあったが、いやいやどうして、普通の用途なら全くストレスは無い。最近のクルマは省エネのご時世から巡航時の回転数を極力低く抑える傾向があり、このクルマも状況によっては 1,000 rpm 位まで回転が下がるが、8AT ミッションはこまめなシフトアップ/ダウンによりストレス無く巡航する。 これに対してマカンはトルコンスリップの無い PDK でしかも 7速 という事あるが、それ以上にシフトスケジュール (制御ソフト) が良くないようで、 1,000 rpm 位からの緩い加速ではかなりレスポンスが悪いからドライバーはついつい余計に踏み込んでしまい、そうすると長いタイムラグの後に突然シフトダウンしてそこからドッカーンと加速を始める。この点では X4 と比べると明かに差が付いている。 ところで、ボンネットカバーを開けて中を見比べると、両車のエンジンの搭載位置の違いが目に付く。要するに X4 は目一杯後方に搭載することで前後の重量バランスを均等にしているが、マカンは世間の並のクルマと同様に前方にオーバーハングして搭載されている。これについては後ほど詳しく述べる事にする。
しかし考えてみればマカンは一応ポルシェの製品だから、走行モードをスポーツにする事で本領を発揮するかもしれない。ということでこの続きはその2にて。 |