BMW 218i Gran Tourer (2015/6) 前編

  

既にBMW 218i Active Turer 試乗記で取り上げたBMW 初の小型 FWD ワゴンは、BMW 車のオーナーからすればブランド価値は下がるとも上がることはなく、それでなくても3シリーズセダンなんて最近は街中に溢れているから希少価値の希の字も無くなっているのに‥‥。

しか〜し、BMW を甘く見てはいけない! 何と今度は Active Turer の兄弟分としてホイールベースを延長して3列シート、7人乗りにしたグランツアラー (Gran Tourer) という新シリーズが登場したのだ。さっ、三列シート?? そうです、日本のミニバンでお馴染みのファミリー丸出しのあれを BMW も出してしまったのだ。FWD だけでは飽きたらずに3列シートのミニバン?みたいなクルマまで出すというのは、もうBMW は以前のBMW ではないのかもしれない。

それでは3列シートは否定すべきかといえば、これはある状況においては充分に実用価値がある。そのある状況というのは7人乗る状況が発生した時だが、これは若い世代ならば偶に実家の両親が遊びに来て、子供2人とともに一族6人でファミレスにでも行くという場合で、この時に2台に分乗するよりも明らかに効率が良いし、なにより両親からすれば孫と一緒のクルマに乗るという楽しみを満喫できる訳だ。

それでは最初に諸元を元に Gran Tourer と Active Tourer を比較してみる。

先ずは長さ方向では Gran Tourer は Active Tourer のホイールベースを110o (2,670 → 2,780) 延長し、更に全長は215o (4,350 → 4,565) 延長することで、3列シートを実現していることが解る。そして幅方向はといえば、全幅もトレッドも全く同じだから、要するに Active Tourer の幅方向はそのままで長さを伸ばしたということだ。えっ? そんなの当たり前だ。今さら言うなボケ! って、随分品の悪い読者だなあ。

エンジンについては 218i 同士を比べると、これは全く同じものだ。と、思いきや、確かにエンジンは同じのだがそれに継るオートマチックトランスミッションが Active Tourer の6速から8速に変更されていた(*1)。理由は定かではないが、違い将来のマイナーチェンジで Active Tourer も8速化されるのか、それともコレについては差別化されたままなのか? 次に車両重量は Active Tourer の 1,460kg に比べて Gran Tourer は 1,570kg と110kg も重いが、これが延長したボディーと3列目のシートの分という事になる。

それでは早速エクステリアの写真を見る事にする。Gran Tourer を見た第一印象は何やら堂々と立派であり、下手をすれば3シリーズ以上の存在感を感じるくらいだ。これがベースとなった Active Tourer ではそれ程感じなかったのが何故か不思議だが、実は長さの違い以外にもう一つ、全高が Gran Tourer の場合 95o (1,550 → 1,645)も高い事も原因の一つになっている。 更にはリアゲートも Active Tourer ではウエストラインより上を寝かせて、同じくルーフラインもCピラー以降を寝かせることで、どちらかと言えばクーペ的なデザインとなっているが、 Gran Tourer のリアゲートは3列目のパッセンジャースペース確保のために可成り垂直となっていて、これらの違いが結果的に Active Tourer より一回り以上大きく見える原因となっているようだ。

結局両車はBピラーまでは全く同じと思っていたが、よくよく見ればウエストラインから上、すなわちグラスエリアは Gran Tourer よりも広 (高) くなっていたから、フロントドアなども完全に同じではない事になる。と、文章でゴチャゴチャ言っても解りづらいだろうから、以下の写真を参照してもらった方が早いだろう。

  *1 このクルマに試乗した時点では正式な諸元が発表されていない為に他の資料を使用したのだが、後編を書く当たって何となく腑に落ちないこともあって BMW の最新資料をチェックした処、何と Active Topure と同じ6速だった。


写真1
第一印象は妙に大きくて立派に見えることで、3シリーズ以上の存在感すら感じるくらいだ。


写真2
斜め後方から見ても実に立派だ。


写真3
こうして比べるとフロントはボンネットから下は同一に見える、というか写真では区別がつかない。

写真4
側面から比べてみると全長で215o、ホイールベスでは110o長く、更には全高でも95o 高い Gran Tourer は Active Tourer より一回り大きく感じる 。

なお Gran Tourer の全高の違いはウエストラインから上、すなわちグラスエリアに高さが高いことが写真で確認できる。

そしてもう一つの違いは Gran Tourer のリアゲートがより垂直のために尚更大きく見える原因となっている。


写真5
リアはテールランプの形状やゲート自身のプレス形状などの違いが結構ある。

3列シートとなるとリアラゲージスペースが心配だが、実際にリアゲート開けてみると‥‥確かに狭い (写真6) 。しかも現実は写真で見る以上に狭くて、日記では ”軽自動車並み!” と表現したが、まあそれはオーバーだとしても少なくともBセグハッチ並しか無い。しかしサードシートを倒して5人乗りとすれば、逆に並みの5人乗りよりも奥行きは深くて、このクラスではダントツのスペースとなる (写真8) 。更にはセカンドシートのバックレストも倒してしまえば結構なスペースが出現するから ”ライトバン” 代わりにも使えて、例えば趣味でロックバンドでもやっていれば、ドラムセットとかキーボードとかが楽勝で積載できる。えっ? 趣味じゃあ無くてプロにも最適だって? いえいえ、ごく一部を除けばプロのロックミュージシャンの多くは食うや食わずのワーキングプアー状態だから、BMW を買うなんて夢のまた夢だろう。

話は変わってLuxury の場合、リアゲートは5シリーズ ツーリングなどと同様に電動式となっているが、勿論締まり方は例によってギーっ、ガシャンというヤツで、5シリーズなら腹が立つが2シリーズの場合はまあそんなモンだろうと気にもならない (写真9) 。

ところで3列目使用時のリアのラゲージスペースが少ないということは、後部からクルマが突っ込んできた場合などのクラッシャブルゾーンでは明らかに不利だし、3列目のシートに座っていた子供が事故で死亡する例は結構耳にする。とはいえ普通の事故ではそれ程までのことはないだろうが、運悪く無免許で飲酒してフルスロットルで赤信号を突っ走ってきた米国製ピックアップトラックに横っ腹 (後部斜め側面) に激突された、何ていうこともある訳で、まあこんな化け物みたいな鉄の固まりに 100q/h くらいで激突されればどんなクルマでも只では済まないし、ドライバーも含めてどの位置に乗っていようが同じということもあるが‥‥。


写真6
3列目のシートを使用するとリアラッゲージスペースはBセグコンパクトハッチ並みの狭さになる。


写真7
Active Tourer 同様 Luxury には電動式リアゲートが標準装備されている。


写真8
3列目のシートを倒せばCセグメントとしては、というよりも5シリーズワゴンも顔負けの広いスペースが出現する。
更に2列目のシートも倒せば、もう殆ど商用車クラスのスペースを確保できる。

Gran Tourer の最大の特徴は3列シートの7人乗りという部分だから、先ずはその3列目のスペースを見てみると、まあこれはハッキリ言って子供用という狭さだった (写真9-1) 。勿論それでも家族構成では充分に役に立つシチュエーションもあるだろう。それに前述のようにサードシートを倒せば5人乗りとしては絶大な広さのラッゲージスペースを持つというメリットも有るがら、約30万円の価格差も使用条件次第では充分に元が取れそうだ。

それでフロントとリア (2列目) のインテリアについては Active Tourer とほぼ同じとなっている (写真9-2) 。ただしルーフが高いとう違いがあるが、それはサイドウィンドウの部分でありウエストラインから下は共通と思っても良いだろう。

シート表皮は Standard がグリッド・クロス と名付けられたファブリック、 Luxury では座面に通気穴の開いたパーフォレ-テッド・ダコタ・レザーだからこれらは Active Tourer と同一となっている。今回の試乗車はデザインラインが Luxury で Standerd (358万円) よりも53万円高い411万円だから、インテリアについてはCセグメント車としては随分と高級な内容となっているが、Standard モデルだと、もっと質素なので念の為。

この価格差の約50万円をどう考えるかはオーナーの考え次第だが、好みの問題を超えて Luxury の質感は国産Cセグメント車では得られないものだから、ここは一つ何とか工面してでも Luxury を買いたいものだ。それでは Standerd の内装はといえば Gran Tourer の写真は未だ用意していないが、Active Turer については前出のBMW 218i Active Turer 試乗記で Luxury と Standerd の内装を比較しているから、興味のある方はこちらを参照願いたい。ハッキリ言って大いに差はある。


写真9-1
Gran Turer の最大の特徴である3列目のチートは、精々子供用くらいのスペースしか無い。

写真9-2
Active Tourer の室内を見るとグラスエリアを除きB ピラーまでは全く同じだし、セカンドスペースも事実上同じであることが判る。


写真10
Luxury のシート調整は Active Tourer と同じ、というか3シリーズとも同じタイプの電動式となっている。


写真11
デザインラインがLuxury なのでシート表皮は BMW ではお馴染みのダコタレザーが標準装備されている。


写真12
フロントドアーのインナートリム、というよりもドア自体が ウィンドウ部分を除いてActive Tourer と共通のようだ。


写真13
そして Luxury の質感の高さも Active Tourer と同じで、BMW の3シリーズ以上と変らない。

インパネついては Active Touere と事実上同一だから今回は省略‥‥というのも不親切なので、一応以下に写真を並べてある。それにしてもレザーとウッドを多用したインテリアの高級感は今更ながらCセグメント車としては飛び抜けていると感じるし、これだけでも400万円の価値は充分にあると思うが、まあこの辺は各自の好みの問題でもあるが、少なくともこれよりもプリウスのインテリアの方が良いと感じるユーザーっているのだろうか??

写真14
インパネは一見したところでは Active Tuere との違いは見つからない。


写真15
センタークラスターやその中の機器やパネル類も Active Tourer と共通となっている。


写真16
この写真を見てActive Tourer か Gran Tourer かを当てられるかといえば‥‥無理でしょう、というくらいん同じだ。


写真17
オーバーヘッドコンソールにはルームライトとそのスイッチ、そして緊急電話のスイッチ?が付いている。


写真18
ドイツ車ではお馴染みの回転式ライトスイッチは Active Tourer は勿論、1シリーズとも共通となっている。

次にもう少しセカンドシート周辺について見回してみると、 Active Tourer との違いとしてセカンドシートが大きく前後可能なことで、これによりサードシートを使わない時にセカンドシートの足元スペースを十分に取るために後部にセットしたり、一番前にセットしてバックレストを畳めば広大なラゲージスペースが出現したりと中々の実用性を発揮している。なお、これは Gran Tourer に限らないがセカンドシートのセンターアームレストを出して小物入れやカップホルダーが出てくる場面も写真に収めてある (写真19) 。なおフロントのセンターコンソールの後端にはリア用のエアアウトレットがついている (写真20) 。


写真19
セカンドシートのセンターアームレスト出すと、そこには小物いれとドリンクホルダーが出現する。


写真20
フロントセンターコンソールの後端にはリア用の会えアウトレットがあるのも最近のクルマの定番だ。

前述のようにインテリアは基本的に Active Touere と同じなのに、何故か今回の Gran Tuere の方が高級感が強調されたのは3列シートというファミリーカーというどちらかと言えば高級とは縁遠いクルマが多いという先入観があった事が大いなる理由だと思っている。

何時ものように走行については後編にて。

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