Volkswagen up! 特別編
  [Volkswagen up! vs Suzuki Wagon R Stingray T 前編]

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VWの新型Aセグメントハッチバックのup!はベースモデルのmove up!(3ドア)が149万円だから、これは国産の軽自動車であるワゴンR スティングレイTの146.9万円にぼぼ等しい。そんなこともあり、up!とワゴンRを特別編で比較してみようかという目論見は以前からあったのだが、果たしてマトモな勝負になるのだろうか、という疑問もあった。そこで取り敢えず日記で両車の写真比較をしてみたが、これはもしかしたらば結構勝負になるかもしれない、という面もあり、遂に今回この両車を特別編で比較することにした。

ところで、初代ワゴンRが発売されたのは1993年だから、もう20年も昔の事となってしまった。初代のアウターサイズは全長3.295x全幅1,395x全高1,640-1,695mmという、旧世代の寸法だった。この旧寸法の軽は衝突安全性などを考えれば、とても乗る気にならない代物だったし、さらに当時のスズキの技術ではエアバッグやABS装着の遅れなど、ライバルのダイハツがトヨタ系の強みを生かした最新装備でスズキを圧倒していた。正直言って当時のスズキなんて自動車メーカーとは言えないようなお粗末さだったから、あれを買うユーザーが信じられなかった。それにダイハツとて、当時の旧規格軽自動車では極論すれば走る棺桶という事実も変わらなかった。

2代目ワゴンRは1998年に発売されたが、このモデルは軽自動車の新規格に合わたFMCであり、アウターサイズも全長3.395x全幅1,475x全高1,640-1,685mmと拡大された。これは初代に比べて全長100mm、全幅80mmの拡大であり、一見僅かに思えるが、ギリギリ寸法の軽自動車では車両としては大いに進化することになった。

ワゴンR自体は出来の悪さにも関わらず、初代から大いに売れたのはコンセプトの勝利だろう。それまでは小さな寸法枠で無理に2ボックスハッチとするのが当たり前だった軽自動車にハイトワゴンという上下にスペースを稼ぐというアイディアは、在る面では革新的だった。と言いたいところだが、軽でワンボックスタイプというのはホンダの名作スッテップバンが最初だろう。だから、ホンダファンから見れば名作ステップバンをパクってオリジナルぶっているワゴンRなんぞは腹が立つ事おびただしい、なんていうこともありそうだ。普通に考えて狂信的信者の数から言ったらばスズキよりもホンダの方が圧倒的に多いような気がする。狂信的信者といえば、他にはスバルがあった。いや、割合の多さではファミリーカー主体のホンダよりもスバルだろう。

 

などど、余計な事を言っていると先に進まないので本題に戻ると、ワゴンRはその後も常にクラスの牽引役となり重畳に進化していった。実は初めてマジにワゴンRに試乗したのは数年前で、モデルとしては先代(4代目)であり、丁度スズキの軽が劇的に進歩していった頃で、実際に乗ってみればそれまでの軽自動車の常識からすれば驚く程にマトモに走るのには驚いたものだ。それより一年ほど前にニッサンブランドでピノとして販売されたアルトに試乗して、殆ど危険といえるような安定性とパワー不足に唖然としたものだが、それから一年後には同じスズキとは思えない程出来の良いワゴンRが出たわけだ。そのどうしようも無かったアルトも4代目ワゴンRの一年ほど後にFMCされて、先代とはマルで別物の、マトモに走るクルマに進化した訳で、要するにスズキの軽が普通車ユーザーのダウンサイジング用としてマトモに比較対象に出来るようになったのは、ほんの数年前から最近にかけてということになる。

さて、例によって最初はスペックによる数字の比較から始めることにする。今回の比較についてはup!の場合、ドア数やグレードによる装備品の違いはあるものの、エンジンは自然吸気の3気筒1Lのみであるが、ワゴンRの場合はラインナップに自然吸気とターボの両エンジンが用意されている。今回は対戦相手が1Lの小型車登録だから、対抗上ターボモデルが主役となる。まあ、自然吸気のFXでは価格的にみてもup!との比較は無理があるが。

アウターサイズをみると、長さについてはup!の全長が150o長いがホイールベースは逆に5o短い。と言うことはワゴンRはクルマの4隅一杯にホイールが付いているということで、この徹底したレイアウトは軽規格という足かせに対しての努力の結果であり、逆に天下のVWでも足かせ無しの自由さが多少の詰めの甘さとなったのだろう。今度は全幅を比べてみるとup!は150oも広いのは、ワゴンRがこれまた軽規格に縛られているからだが、こうしてみると軽の一番のハンディはヤッパリ狭い全幅ということになる。元来、国産車は車幅という面では欧州車に比べて随分と狭かったのだが、このところ急激に世界の基準に合わせて来て、コンパクトハッチでも車幅が1,700oの5ナンバー規格をはみ出しているものが増えてきた。しかし、軽の場合は従来の概念のままだから、相対的に狭く感じるわけだ。ワゴンRの1,475oという車幅は初代カローラ(1966年~)の1485oと比べれば10o狭いだけだから、半生記前の小型車は今の軽自動車並だった訳だ。因みにこの初代カローラの車重は710sだから、ワゴンRのノンターボモデル(FX 780kg)よりも70sも軽量だった事になる。

ワゴンRの狭くて高いプロポーションは真正面と真後でup!と比較すればハッキリと認識できる。up!だって決して低くてスマートと言うわけではなく、どちらかと言えば背高の部類なのだが、ワゴンRと比べるとまるでスポーツカーのように見える。

ところが側面から見ると2車は意外と似ているのに気が付く。結局スペースユーティリティと空力特性(低燃費)を追求すればこういう形に落ち着くのだろう。

リアのハッチを開けるとホイールベースがほぼ同じということもあり奥行き方向はそれほどの差はないが、車幅が175mmも狭いワゴンRは車幅一杯のスペースで頑張ってはいるがやはり狭い。まあ、世間の常識からすればup!だって狭いのだが。

 

そして、いよいよ室内を比べてみると‥‥‥

雰囲気は意外にも似ているが、ハイトワゴンのワゴンRはシートボジションが高いのが判るだろう。後席の足元はup!でも必要な広さを確保しているのに驚くが、ワゴンRは更に足元に余裕がある。ここはミニマムスペースの軽自動車で長年苦労してきたスズキのノウハウが天下のVW以上の結果をもたらした、ということのようだ。

ここで内装をもう少し詳しく見ていくと、インテリアの比較では定番であるシート表皮はといえば、どちらも織目の粗いファブリックで、欧州の低価格車では定番のもので、その面ではワゴンRというよりもスズキのシートが欧州車的な感覚ということだ。これはマツダにも言えることで、ジャパンオリジナルではなく、グローバルスタンダートなのは欧州で勝負しているからだろうか。なお、シート調整はどちらも全て手動であり、パワーシートのオプション設定はないし、もちろん本革シートも無い。

ドアのインナーパネルは意外にも肘の当たる部分にクロスを使ったり、パワーウィンドウの操作パネルにはピアノブラックのような光沢仕上げをしたりというワゴンRが、プラスチック丸出しのup!より質感で優っていたが、ワゴンRはトップグレードのスティングレイTということで、輸入Aセグメント車のup!と同価格という国産軽自動車としては目一杯の高級車という事実は伊達ではない。そして、多くの一般ピープル(パンピー)はやっぱりフォルクスワーゲンなんて高いばかりのボッタクリだ‥‥と、感じるに違いない。

そしてインパネを比べてみると‥‥

ドアのインナーパネルではワゴンRに軍配が上がりそうだったが、インパネになると今度はup!がピアノブラック風のインテリアトリムを水平に、しかも幅(高さ)広で使っているのに対して、今度はワゴンRがプラスチッキーな素材を丸出しにしている。

エアコンはup!は全グレードでマニュアルのみでオートエアコンの設定やオプションは無いのに比べて、ワゴンRにはオートエアコンが装備される。ワゴンRの場合上位モデルのスティングレイのみならず、ベースモデルのFXでもオートエアコンとなる。こういう電子技術は日本が得意中の得意だから、むしろフルオートで共通化した方がコストが低かったりするのだろうか?

オーディオはup!の場合、センタークラスターのエアコンコントロールユニットの下に一体化されていて、ナビはダッシュボードトップにポータブルタイプを載せて使用する。ワゴンRのオーディオは工場オプションでCD付きラジオが設定されていて、これを選択するとセンタークラスタ上部に装着される。ナビを付ける場合にはオーディオレスで発注し、このスペースにオーディオ一体型のナビをディーラーオプションまたは後程カーショップなどで付けることになるのは、国産の低価格車に共通の方法でもある。

ということで、ここまで2車を比べてみたが、まあ一長一短というか、どちらが明らかに優れているとも言えなさそうだ。なんて書くと、VWファンが怒りそうだし、VWの勝ちを宣言すればドイツ車偏重だと騒ぐ奴がいたりと、中々やりにくいアイテムだが、何の小細工なしでもここまでは互角の勝負をしている。しかし、クルマは走ってナンボだから、やはり操作系や走行性能などを比較しないと始まらない。

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