LEXUS GS350 F Sport 試乗記 特別編
  [Lexus GS350 F Sport vs Toyota Crown 3.5 Athlete 前編]

特別編へようこそ。何時ものように、このコーナーは、この先の記事を冷静に読める知識と教養を身につけている読者のみ閲覧ください。従って、この先に何が書かれていようが、笑って受け流す事が出来ない方はTOPページに戻るかブラウザを閉じてください。

TOPページに戻る


今回の比較はレクサスとトヨタという、いってみればトヨタ自動車同士の比較という初めての企画となるが、いつもならば輸入車対国産車という各派閥が喧嘩腰で口(くち)プロレスをやるようなシチュエーションなのだが、今回は実際には同じメーカーという点ではイマイチ盛り上がりに心配がある。とはいえ、大衆ブランドのトヨタとプレミアムブランドのレクサスの対決と考えれば、やはりトヨタを擁護する庶民と、その庶民を横目で見ながら自分たちは住む世界が違う、という乗りのレクサス派との対決‥‥というには、497万円のクラウン3.5アスリートは庶民では買えないし、GS350はといえば、680万円ではセレブには程遠く精々中産階級向けだから、この手の対決も無理そうだ。

と、冒頭でくだらない事を書いたが、まあこれは毒舌のプロローグとうことで、それでは早速本題に入っていこう。今回選んだ車種はレクサスGSが350 F Sportという走りに振ったモデルで、名前からしてBMW M Sportのパクリなのだけれど、これに関してはメルセデスがAMG Sport、アウディがS LineなどというM Sportのパクリをやっている訳だから、レクサスだけを攻めるのは不公平だ、ということで不問にしよう。

そのGSについては、今でこそプレミアムブランドですと気取ってはいるが、米国で展開したレクサスチャンネルでの初代GSは、日本で言うところのアリストだった。そう、GSはヤンキーの憧れ、直線番長のアリストの直系子孫というわけだ。そしてGSは言い換えれば北米クラウンであり、型式をみても初代アリスト(GS)と9代目クラウン、そして初代クラウンマジェスタの関係は

クラウン S141(2.0 2.5)、S143(3.0)
クラウンマジェスタ S141(4.0)、S147(3.0)
アリスト S143(4.0)、S147(3.0)

となっているから、GSは単にクラウンのバリエーションだった訳だ。ところで当時のアリストが兄弟車とも言うべきクラウンに比べて客筋が悪かったは、アリストの販売網がオート店とビスタ店、後に合併してネッツ店だったことが原因だと思っている。ようするにクラウンを販売するトヨタ店には古くからのお得意さんで、中小企業の経営者やエリートサラリーマンが多かったのに対して、ネッツ店のお客さんは‥‥‥ハッキリ言って、まあ、なんですよ。

ところで9代目のクラウンといえば、発売時には思い切って丸みのあるデザインとしたところ、小さく見えることから、ユーザーたちは「こんなのクラウンじゃない」と評判はボロクソとなり、どうにもならなくなったトヨタは2年後のMCでフェイスリフト、どころか事実上全く新しいエクステリアといえるほどの変更で、本来の四角いクラウンのイメージを取り戻した。トヨタはクラウンを真っ当なクルマにしたくて、定期的に大英断をしてきた歴史がある。例えば、4代目(1971‐74)はスピンドルシェイプと呼ばれる丸みを帯びたスタイルを試みたが、クラウンの歴史に残る不人気車となってしまった。結局クラウンがマニアには全く相手にされない駄目クルマなのは、ユーザー自身に問題があるということだ。まあ、確かに町工場のオヤジ達は手強いが、それにしてもユーザーにはエリートサラリーマンだって少なからずいる訳だし、町工場のオヤジだって一国一城の主で従業員を養いながら世間を渡っている訳だから能力が低いわけはない。それなのに、それほどまでにユーザーレベルが低いのも不思議だが、あっ、まてよ、クラウンユーザーの多くを占めるのは農家のオヤジという現実があったっけ。

 

そして2代目のアリストもまたクラウンの兄弟車だったし、更に3代目はアリストではなくレクサス店の国内展開に合わせてアリスト改めレクサスGSと米国と同じになった。そしてこの時GS350の価格は520万円で、2代目アリストの最終モデルはS300が366万円(消費税別)だったから、約150万円も値上がりしたことになる。勿論装備の違いや最初の3年間はメンテが只になる、BMWでいうところのサービスフリーウェーも価格に含まているという事もあるが、それにしても100万円は確実に高い。

それではレクサスなんてアホらしくて買ってられないし、買う奴が只の見栄っ張りか? といえば、そう単純なものではない。そこで下の写真をご覧いただこう。

一般にホテルやレストランを格を知りたければ、トイレを見るのが一番早いなどといわれているが、左の写真を見れば成程レクサスは伊達に高いわけではないと納得するものがある。そして、整備に出した時の引取までの時間を過ごす待合室だって、下の写真を見れば判るだろう。



そんな訳で、アリストのブランドを変えただけで100万円もボッタクリやがって、という世間の批判をかわすためにも、今回の新型GSはプットフォームをクラウンとは別仕立てとしたそうだ。そこで2.5Lも含めて新型のGSとクラウンの仕様を比較して見る。えっ? 下の表、日記で見たのと同じで、使い回ししてんじゅあねぇか。って? よ、余計な事を言うんじゃねえ!

先ずは別仕立てとなったシャーシーに関する寸法では、まずGSのホイールベースが2,850oで、対するクラウンは2,850oと‥‥あれゃ、おんなじだ。でもトレッドが違う。GSはクラウンよりもフロントが+30o、リアは+45oと何れも拡大されている。どうだ、参ったか! やっぱ、違うんだよ。

その他の部分の比較は後程ユックリと行うとして、次はエクステリアを比較して見る。

同じトヨタのEセグメント車で、アウターサイズもクラウンが幅方向に少し狭いが、概ね同サイズとなっているし、デザイン的にも共通点が多い。初代アリストはイタルデザインでジャガーのプロトタイプ用をモデファイしたというから、その結果は当然ながらクラウンとは全く異る欧州テイストだったが、今回の新型では、極めて似通ってデザインとなっている。

そして、両車のフロントには例のスピンドルグリルが付いているが、大胆さではクラウンアスリートがGSを勝っているようにさえ思える。しかし、そのアスリートでさえ、見慣れれば別に特別変とも思わないから、世間のうるさ形がゴチャゴチャ言っても、実際にグリルが変だからフーガを買った、なんていう話はトンと来たことが無い。まあ、この手の輩が実際にGSどころかクラウンだって買うことはないだろう。かといって、このサイドの読者のようにクラウンどころかGSだってダサいからBMWを買った、ということもないようだ。

リアについても、テールランプの形状を変えているので違うイメージに見えるが、基本的には大きく変わることはない。ただしトランクリッドの開口ラインは、ほぼ水平のアスリートに対して、GSはテールランプの形状に沿って両端で上方に上がっている。

GSとクラウンは長さ方向については全長、ホイールベースともに同寸法であり、オーバーハングは写真で見る限りではGSのフロトンとが幾分短いようにも感じるが、大きな差はない。

次はいよいよ室内を比べてみる。GSの場合、流石にカラーバリエーションが5種類と豊富だから、インテリアカラーが違うと雰囲気も変わるだろうが、写真のガーネットは結構派手だ。 アスリートの場合、写真右下のテラロッサはオプションで標準はブラックとなる。GSに比べてアスリートのインテリアカラーは2種類しかない。

シート表皮はGSには本皮が標準で付くが、写真のGSはレクサス得意のセミアニリン本皮(オプション)ではない。アスリートはクラウンとしてはスポーティー な欧州調の表皮で、ロイヤルの演歌調のベロアというオヤジ丸出しの素材とは差別化されている。なお、アスリートにもオプションで本革シートが用意されてい る。

シート調整はどちらも電動ではあるが、スイッチ部分の出来はGSの方が明らかにコストを掛けている。そしてサイドスカットルプレートはGSが"LEXUS"でアスリートは"CROWN"となっている。

ドアのインナートリムは意外にも雰囲気的には大きな違いはないが、デザイン自体は大きく異る。そして質感自体を比べると、やはりGSが上手のようだ。

先代までのGSはクラウンと共通の如何にもトヨタ臭いインパネだったが、FMCに際して欧州調というかBMWなどに共通の横長を基調としたタイプに変更と なった。これはビッグマイナーを実施したLS も同様であり、マイナーチェンンジとはいえインパネは全く別モノとなったことからも、今後レクサスはトヨタブランドとは別の道を歩むようだ。

センタークラスターはGSの場合、最上段に横長基調のディスプレイを配し、エアアウトレットを挟んでオーディオおよびエアコンのコントロールパネルを配置するというBMW5シリーズを彷彿させるレイアウトとなったのに対して、クラウンはジャパンオリジナルでガンメタのパネルや極彩色のタッチスクリーンな ど、旧人類が喜びそうな如何にもクラウン的な物となっている

今回は同じ会社の同クラス車の比較という今までに無い企画ということも有り、室内の比較としては項目が少なくなってしまったが、その分は与太話で勘弁してもらう形になった。まあ、偶にはこういうのも良いかと‥‥。

ということで、この続きは後編にて。

⇒後編へ