BMW 116i Sport (2011/11) 前編


BMWの新型1シリーズは、先日120iに試乗して実に良い結果を得られたが、試乗車の120i Sportは車両価格が387万円であり、これにナビを付けると400万円を超えてしまう。 Cセグメントハッチバックである1シリーズは、もっと手軽な価格であるべきで、なにより400万円超ならばDセグメントを買うのが筋だろう。 そこで、120iに比べてStandard同士で59万円、StyleやSportなら69万円も安い116iを検討してみたくなる。となると、116iにも乗ってみようということで、早速試乗してみた。 なお、今回は120iの続編としての位置づけのために、必ず120i試乗記を先に参照ください。

先ずは、スペックの確認から
 
    BMW 新1シリーズ (F20)
      116i Sport 120i Sport
 

車両型式

  DBA-1A16 DBA-1A16

エンジン・トランスミッション

エンジン種類

  I6 DOHC Turbo

エンジン型式

  N13B16A

総排気量(cm3)

1,598
 

最高出力(ps/rpm)

136/4,400-6,450 170/4,800-6,450

最大トルク(N・m/rpm)

220/1,350-4,300 250/1,500-4,500

トランスミッション

8AT
 

燃料消費率(km/L)
(10・15/JC08モード)

17.6/16.6

17.2/16.6

 

パワーウェイトレシ(kg/ps)

10.3 8.4

タイヤ寸法

  205/55R16
 

ブレーキ

前/後

Vディスク/ディスク

価格

日本国内価格

318.0万円 387.0万円
 

備考

Style, Sport:
308.0万円
Style, Sport:
367.0万円

120iの試乗記で、116iにもある程度触れていたので概要はご存知とは思うが、両車の違いはエンジンのチューニングのみで、ハードウェアは全く同じのようだ。なにぃ〜!エンジンのECUのコントロールプログラム書き換えただけで60万近くもボッタクっているのか? と、思ってしまうが、実は日本仕様の場合、120iは116iよりも標準装備が充実しているのだった。

両車の概略も判ったところで、エクステリアを比べてみれば、116iと120iの違いは殆ど見当たらない。唯一の識別点はリアのエンブレムくらいだろうか。なんて書くと、タイヤ/ホイールが違うから判るじゃあないか、なんていう輩が湧いて出てきそうだが、タイヤなんていうものはボルト数本で取替えられるのだから、重要な相違点とはならないのだ。

ところで、こうして新1シリーズのエクステリアをマジに眺めてみると、サイドに流れる複数のラインがドアノブ位置の強いプレスラインと下段のリアブリスターフェンダーのラインを外側に張り出して、その中間 の面は車幅方向で少し狭い(絞って)というデザインが、実際に見ると実に魅力があり、先代のチャチな雰囲気が全く無くなった (写真3)。
 


写真1
ホイールを除けば、この角度で見ても116iか120iかの区別は付かない。


写真2
リアも同様にエンブレムくらいしか相違点が見つからない。
それにしても、新1シリーズのサイドライン、特にドアノブ位置の強いプレスラインや張り出したリアフェンダーは、写真よりも実車を見ると結構イケている。
 

写真3
サイドには7本のラインが通っていて、タイヤハウスの切り欠きまで含めてラインが繋がっている。
 

それでは、120iは116iに対して何が付いてくるのかといえば、その内訳は下の表のようになっている。
 
     116i 120i オプション価格
(
 

サーボトロニック(車速感応式パワーステアリング)

35,000
 

電動フロントシート(運転席メモリー機能付き)

161,000
 

マルチファンクションステアリング

25,000
 

コンフォートアクセス

 
 

ETC車載システム(ルームミラー内臓タイプ)

135,000
 

ライトパッケージ(ドアハンドル照明、リーディングライト

プラスパッケージ
 

ストレージ・パッケージ(インパネ下部収納スペース

 
 

標準装備  □オプション

 オプション合計 356,000

こうしてみると大物は「運転席メモリー機能付き電動フロントシート」と「プラスパッケージ」だが、電動シートは夫婦で共用するなどの場合は特にメモリー機能が欲しいが、一人で乗るなら全く不要だろう。そして、プラスパッケージというのは単なる便利機能、それも 大して有用とも思えないものが多いから、これはオプションにしてもらいたいものだ。 でも、それはそれとして、116iに対して35.6万円分のオマケが付いている訳だから、その分を考慮すれば両車の価格差は23.4万円となる。ここで欧州価格を調べてみたら、ドイツ国内価格では116iが€23,850に対して120iは€26,750だった。 ところが、ドイツの販売価格は19%の付加価値税が含まれているから車両本体のみの価格はそれぞれ€22,714と€25,476であり、その差は€2, 762で、これを日本円に換算(¥107/€)すれば約29.6万円となる。ここで日本での価格差23.4万円から、消費税5%を考慮すれば 消費税抜きの本体価格差は約22.3万円であり、 欧州での価格差である約30万円よりも少ないことになるが、これはもう少し詳しく欧州仕様の装備差を調べる必要がありそうだ。

しかし、パワー(トルク)が欲しいだけのユーザーにまで、要りもしない装備を抱き合わせるなんて、やっぱり、これぁ押し売り商法だ、なんて言いたくもなるだろうが、まあまあ、ここは一つ堪えて下さいな。

次に標準のStandardに対するSportおよびStyleの価格は下記のようになっている。
 
  Standardrd Style Sport
116i 308万円 318万円 318万円
120i 367万円 387万円 387万円

Standardに対してStyleおよびSportの価格差は116iが+10万円で120iでは+20万円と、何故か116iの方が10万円安い。装備の主な違いはシート表皮や内装が異なることと、Sportはシート形状もよりタイトなスポーツシートとなり、また両車とも標準タイヤ&ホイールが120iではStandardの205/55R16から225/45R17へとアップされる。 更に外観上はスポイラーの色が違うなどがあるが、これは大した違いではない。なお、116iの場合はタイヤサイズは変わらず、ホイールのデザインのみ変更とな り、これが10万円安い理由だろうか。

それでは室内を見てみよう。
基本的には120i Sportと同じ眺めの116i Sportだが、既に述べたようにシートの調整方法が違うために、120i のシートのサイドにある電気スイッチ類がメカ式のレバーになっているのが見える。シート自体はStandardやStyleよりもサイドのサポートがしっかりしたスポーツシートで、黒いファブリック表皮に赤いステッチが入っている点では全く同じだ(写真 5)。

また、Sportに装着されるスポーツシートの特徴として、シートセンターの先端部分を前後することで多くの体系のドライバーに対して、一番適した太もものサポートを調整できる(写真 6、7)。
 

写真4
Sportの室内はブラック基調に赤いステッチやラインが入っている。
基本的には116iと120iは同じ。


写真5
シート自体は同じ形状のスポーツシートだが、116iは手動調整であるのに対して、120iはメモリー付き電動となる。
 


写真6
Sportのシートは前端が前後するので、あらゆる体系のドライバーに適合する。

 


写真7
前端の前後は@を引いてロックを解除してから手動で前後する。なお、Aは116iの手動調整で座面先端の上下調整のロック解除用で、120iでは電動となる。
 

 

ドアのインナートリムを比べてみると、フロントについては116iと120iの差は無いといってよい。ところが、リアの場合は120iには下部にボトルホルダーが付いている (写真9)。ちょっと意味不明な差別化ではある。

インパネについても両モデルとも殆ど変らないが、細かいことをいえば、120iにはマルチファンクション・ステアステアリング(写真11、116iではオプションで2.5万円)が付いている。そしてコンソール上はといえば、ATセレクターは全く同じで、違いといえばコンソール上のATセレクターの前 方にあるスペースが116iではカップボルダーになっているのに対して、120iでは左がインテリジェントキーの保管スペースとなっている小物入れ と呼ぶアダプターが付いているが、これは外して本来のカップホルダーとしても使用できる。この他にも細かい違いがあり、これは116iでもパッケージオプションとして設定されている。
 

写真 8
フロントドアのインナートリムは116iと120iに差はない。


写真9
リアドアのインナートリムは120iが下部にドリンクホルダーを設置しているが、この差別化の意味はなんだろうか?
 

写真10
写真で見える範囲では116iも120iもほぼ同じだが、良く見ると多少異なる部分がある。
 


写真11
ステアリングホイールはどちらもSport専用のレザー仕上げと赤いステッチが施されているが、120iにはスポーク部にスイッチを組み込んだマルチファンクション・ステアリングが付いている。
 

写真12
ATセレクターは同一だが、その前方にあるスペースが116iはカップフォルダーで、120iは左がインテリジェントキーの保管場所とな る小物入れが標準となる。



なお、カップホルダーとしての使用時には小物入れは取り外す。

写真13
コンソール部分を横から見ると、結構立体的な造形をしているのが判る。

今回の新1シリーズ(F20)の概要が伝わってきた時に、全車にiDriveが標準ということを聞いて 、全車にナビが標準 だと思ったのだが、標準のiDriveにはナビは付属せず、それ以外の設定がダイヤルとディスプレイで出来るということだった。 iDrive付きといえばナビが付いていると思っていたのだが、今回からは方針が変わってしまったようだ。そしてナビ付き(オプションで116iは27万円)のディスプレイが8.8インチであるのに対して、ナビの無い標準iDriveは6.5インチのディスプレイとなる(写真 15)。また、コマンドダイヤルも周辺のスイッチの数やダイヤルの移動も左右のみなど、ナビ付きとは異なっている(写真14)。 更に、メータークラスター内をみれば、ナビ付きは回転計内にインフォメーションディスプレーを組み込んでいる(写真16)。ただし、この極端な円高で為替差益の還元が叫ばれて、他社が価格変更に踏み切ったりしたら、価格据置でナビを標準化するなんていう予感もするが・・・・・・。
 


写真14-1
ナビ装着車に対してボタンが2つ少なくダイヤルの移動も左右のみの2方向。
 

 


写真14-2
一見形は同じだがナビ関連のボタンスイッチが追加され、ダイヤルも4方向に動く。
 

 


写真15-1
ディスプレイが6.5インチとなる。

 


写真15-2
8.8インチディズプレイが装着される。
 

 


写真16-1
インフォメーションディスプレイは中央下のみ。

 


写真16-2
回転計の中にもインフォメーションディスプレイが組み込まれている。
 

 

結局インテリアも116iと120iは実質同じで、120iに追加された機能・装備は無くても困るものではない。

次はいよいよ走りについての比較をしてみよう。
この続きは後編にて。  

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