VOLVO V70 NORDIC (2010/11) 前編 ⇒後編


ボルボの代表車種であるV70は2007年の末にFMCされた現行型が国内販売され、2008年1月には中間グレードであった3.2SEに試乗している。 しかしこのNA3.2L版は2009年7月のMCにてカタログから落とされ、現在は5気筒2.5Lターボの2.5T LE(499万円)と、装備を省いた廉価版のノルディック(449万円)、そして最上級車種として3Lターボ+4WDのT−6 Rデザイン(699万円)の3車種が販売されている。 今回試乗したのは廉価版のノルディックで動力性能などは2.5T LEと同一のため、双方の乗り味にはそれ程大きな違いは無いだろう。なお、内外装については双方を比較しながら紹介する。

中間グレードの2.5T LEと廉価モデルであるノルディックのエクステリア上の違いは、標準ホイールが17インチから16インチへダウン、ルーフレールとフォグランプを省略というところで、特にホイールサイズの違いによる見かけの安っぽさは多少感じる。 V70はリアオーバーハングも長くてワゴンらしく、アウターサイズはワゴンの王者であるメルセデスEクラスより少し小さい程度で、チョッと見れば同じくらいに堂々としている。実際にV70のリアラッゲージスペース (写真4-1)の広さはEクラス(写真4-2)に近いくらいに広く、BMW5シリーズに比べれて積載という実用性では遥かにまさっている。 なお、リアゲートの開閉はノルディックについては手動で行うが、2.5T LEの場合は電動で開閉し、開ける時はテールゲートのウィンドウ下の取っ手内のボタンを押せば電動で上がっていく。そして、閉める時はテールゲート底面にあるボタン (写真6)を押すと僅かなモーター音と共にゲートは下がり、閉まる寸前でユックリとロックされる。 この雰囲気を高級感のある順に並べれは、
   メルセデスEクラスワゴン>ボルボV70>BMW5シリーズツーリング
となる。このサイトでは何度も指摘しているように、本来格下のボルボにも負けるBMW5シリーズツーリングのパワーテールゲートの安っぽさは、早急に何とかするべきだと思う。
 


写真11
こちらは中間グレードの2.5T LEで価格は499万円。

 


写真2
ノルディックのリアビューは他の上級モデルと大きく変わらない。
 

 

写真3
BMWツーリングなどに比べてリアオーバーハングが長く、Dピラーも垂直なため、如何にもワゴンらしいスタイルをしている。
それでも下の写真のEクラスワゴンには大きさでも敵わないが、ベースモデル(E250)同士でも200万円安いンノルディックは買い得感満点ではある。


写真4-1
広いラッゲージスペースはワゴンとしての実用性が高い。
 

 


写真5
リアシートのバックレストは簡単に前方に倒れて、”ライトバン”的な貨物スペースが出現する。
 

 


写真4-2
メルセデスEクラスワゴンのリアスペースはV70を更に上回る。
 

 


写真6
V70 2.5T LEに装備されている電動リアゲートのスイッチはメルセデスやBMWと同様にゲート下端にある。
 

 

室内の第一印象は北欧テイストというよりはドイツ車風だから、メルセデスCクラスやBMW3シリーズと比較しても、違和感が無い。インテリアにおける中間グレードの2.5T LEと廉価版のノルディックの最大の違いは、2.5T LEのシート表皮がパーフォレーテッドレザーというベンチレーション用の小穴があいたレザーシートを標準としている事だ(写真10-3)。これに対してノルディックは サイドがT-Tec/テキスタイルという人口皮革(写真10-1)で、座面がファブリックというシート表皮となるが、今回の試乗車にはオプションのレザーパッケージが装着されていたためにシート表皮は本皮となっていた(写真10-2)。 T-Tec/テキスタイルはV50では上級グレードに採用されていたもので、T-Tec自体は決して悪くない と思うが、これは個人の趣味だから何ともいえない。ところで、レザーパッケージのオプション価格は30万円もするから、これを装着したノルディックは479万円となり、2.5T LEとの差はたったの20万円まで縮まってしまう。この20万円差で、17インチホイール、ルーフレール、フォグランプ、ハイパフォーマンスオーディオ、パワーテールゲート等が省略され、しかもレザーシートとはいってもベンチレート機構が付かない事を考えれば、 ノルディックにレザーパッケージを付けるなら誰が考えてもあと20万円追加して2.5T LEを買ったほうが得と思うだろう。ただし、このレザー分が値引きとなるような売り方をする場合も充分に有り得るが・・・・。

シートの調整はドライバーズシートについては全グレードでメモリー付きパワーシート(写真10-4)が採用されているが、助手席側はノルディックのみ手動となる。このシートの座り心地は同価格帯のメルセデスCクラスやBMW3シリーズと比べれば、特に優劣はないが、車体寸法の近いEクラスや5シリーズ程には良くない 。まあ、V70は図体こそEセグメント並だが価格はDセグメント並だから、これは仕方がないだろう。それでも、レガシィ辺りから乗り換えれば、う〜ん、流石に欧州のプレミアムブランドだ、と悦に入ることになる。

V70で感心するのは、リアラッゲージルームのサイドウィンドウにもエアコンの噴出し口(写真8-2)があることで、これは恐らく凍りついた外気でもウィンドウの凍結などを防ぐのではないかと思われる。こういう処は北極圏に近い北欧のクルマだけの事はある。そして、今度はドアのチョウバンを見てみれば、国産車のチャチなプレス加工品のボルト止めしたのとは違い、スチールブロックを溶接するというBMWと共通の方式になっていた (写真11)。ただしBMWよりは多少華奢な造りではあるが、それでも真面目に作ってある事には間違いない。ボルボはフォードグループとなった先代V70から手抜き を初めて、世間の評判を大いに落としてブランドイメージは凋落の一歩を辿ったが、現行のV70からは心機一転で真面目なクルマ造りをしたようだ。そういえば、現在ボルボはフォードグループを離れて中国資本 (吉利汽車集団)となってしまったが、今後の製品に対する影響はどうなるのだろうか?
 

写真7
リアスペースの足元は外観ほど広くは無い。写真はフロントがノルディック(オプションのレザーシート)でリアは2.5T LE。


写真8-1
Bピラーに組み込まれたリア用エアコン吹き出し口。

 


写真9
リアシートは簡単に畳めて”ライトバン”に変身する。

 


写真8-2
リアラッゲージルームのサイドウィンドウにはエアコンの噴出し口がある。目的はデフとスターのようで、流石は北国のクルマだ。
 

 


写真10-1
ノルディックの標準シートはサイドがT-Tec、座面がテキスタイルのコンビとなる。

 


写真10-2
試乗車は写真のようにオプションの本皮シートが付いていた。2.5T LEと異なりベンチレーションの穴が無い。
 

 


写真10-3
2.5T LEのシート表皮は座面にベンチレーション用の穴が開いたパーフォレーテッドレザーとなる。

 


写真10-4
ノルディックのシート調整はドライバー側のみメモリー付きパワーシートで、それ以上のグレードは助手席側にもモリー付きパワーシートが付く。

 

写真11
ドアのチョウバンはボディに溶接してあり国産の プレス品のボルト止めとは出来が違う。だだし、BMW程には頑丈そうではない。
 

 

フロントダッシュボードからセンタークラスターにかけてのインテリアの雰囲気は、北欧テイストというよりはドイツ車的で、その面ではドイツ車オーナーがV70に乗り換えても大きな違和感は無いだろう(写真12)。ダッシュホードの表面の ソフトバッドは結構見かけの良いシボが入っているし、アルミのトリムも表面には縦横の2方向に粗いヘアラインが入っていて結構ユニーク で高級感もある(写真15〜16)。

センタークラスタは最近のボルボでお馴染みのフローティングパネルで、操作部分は薄いパネルで浮いている。そのパネルを採用した代償は、今時ナビをつけるスペースが無いことで、結局は苦し紛れにダッシュボード天板にポップアップ式のディスプレイを 後付けしたような形になってしまった。まあ、高い位置にあるディスプレイは走行中の視線移動が少ない事から、最近は各車とも極力高い位置に付ける傾向はあるが、V70の場合はポップアップすると真四角のディスプレイが前方視界を邪魔して、実に運転し辛い(写真13)。 なお、このナビは日本国内向けには標準装備されているようだ。

フローティングパネル上のスイッチ類(写真14)は、人間の形を模したエアコンスイッチなどこれもボルボ得意のものだ。そしてエアコンスイッチの上部にはテンキーの付いた携帯電話用のスイッチが並ぶが、これは日本では殆ど意味をなさない。そういえばメルセデスも同様なテンキーがあったのを思い出した。

という訳で、現行V70の内装は廉価モデルのノルディックでも結構高級感があるから、国産車から乗り換えるユーザーは今までとは一味違う雰囲気に浸れる。
 

写真12
ダッシュボードからセンタークラスタ付近のデザインは、如何にも北欧風という訳でもなく、どちらかとえばドイツ車的だ。
このデカいドンガラで449万円という価格を考えれば、内装の質感は立派なものだ。


写真13
後から付け足したようなナビのディスプレイは、立ち上げ時に前方視界の邪魔になる。
 

 


写真14
ボルボお馴染みの人間を模したエアコンスイッチと、その上のメルセデス的にゴチャゴチャした携帯電話の操作パネル。更に上がオーディオスイッチ類。
 

 


写真15
ドアインナートリムの質感なども悪くは無い。

 


写真16
パッドのシボも適度に高級感がある。アルミのトリムは縦・横にヘアラインが入っている。
 

 

さて、室内も充分に見回したので、いよいよ走り出すことにするが、この先は後編にて。  

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