ポルシェ ボクスター (2003/07/22)
 

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試乗車一覧




※この試乗記は2003年7月現在の内容です。現在この車種は新車販売が終了しています。現行車は新型ボクスター(987)にフルモデルチェンジされています。

車で行けば40分程度で行ける所に、新しく出来たポルシェセンターへ行って、ポルシェ・ボクスターに試乗してきた。

ショールームはそれ程広くは無いが、2台展示するには十分で、911とボクスターが、それにたしかカイエン各1台展示されていた。雰囲気はこの手の輸入車ディーラーとしては、普通だけど、行き成り行くには勇気がいるだろう。

ボクスターで一番気になるのは、手荷物が置けるか?なので、まず、展示車でトランクを確認すると、意外に広い。リアには3シリーズの半分程度のスペースが確保されており、さらにフロントは奥行きは少ないが、深さはかなりのスペースが用意されているので、2人が数日の旅行をするのは可能だろう。ただし、車内には'03モデルから付いたグローブックスがあるのと、シート背後に薄いが物入れらしきスペース(なぜかスライドドアというか引き戸が、まるで、仏壇の隠し扉のごとく)があるので、薄いサブバック程度は入るだろう。しかし、アタッシュケースは、助手席に置くか、2人乗るなら、トランクに入れることになる。

フロントホイールの奥にはブレンボーのキャリパー(勿論、brenboではなPORSCHEマーク)が見える。展示車も試乗車も2.7ℓの廉価版のほうで、3.2ℓのボクスターSは無かった。  

試乗車は展示車と同じく2.7(LHD、5AT)のボクスターで、ソフトトップは閉めた状態で乗りこんだ。乗るには、それ程アクロバット的な動作は必要ないが、それでもセダンのようにはいかない。乗りこんでドアを閉めた時のフィーリングは、ダントツの剛性感で、サッシュレス(オープンだから当たり前だが)ドアで、こんな剛性感というのも始めての経験だ。シートはBMWのMスポーツのようなバックスキン風と言うか、アルカンターラと呼ばれているような素材で、勿論座り心地、形状共に文句無し。

着座位置は当然低いが、MR−Sの方が遥かに低い。ミッドシップカーという言葉から想像するような、地面を這うようなドライビングポジションではない。ロータスエリーゼあたりとは、根本的に異なり、いかにも実用車という感じで、これは911を含めたポルシェの昔からの特徴だけど、だから自分もガキの頃は、ポルシェというものが理解出来なかった。フェラーリやランボルギーニの文句なしのカッコよさに比べて、ポルシェはガキには理解しにくいから。

車内は適度にタイトだが、新フェアレディZのようにわざとらしくタイトな演出をする事もない。左ハンドルだったこともあり、ステアリングとペダルの位置関係など、実にフィットし、操作しやすい。

車内からルーフの内張りとか見ると、これがソフトトップとは思えない程に良く出来ている。あとで、911の展示車(クーペなので勿論屋根つき)で確認したが、殆ど雰囲気は同じだった。それに、インテリア全体も、ボクスターと911では殆ど同じ。メーターも、シフトレバーも同じ。目隠して乗った後、前しか見なければ、門外漢には区別がつかない。

 アイドリング時のエンジン音は、想像とは異なり、かなり静かで、最近の高級セダンに近い程。高性能エンジンらしく振動は多少はあるが、BMW330iのアイドリング(恒にデロデロいう音と、結構な振動がある)に比べて、遥かに文化的で普通の車ッぽい。なんの変哲も無いレバー式のパーキングブレーキをオフにして、ユックリとストットルを踏むと、車はスムースにしかも静々と(ポルシャらしくなく)走り始める。チョッとスロットルを踏んだ瞬間に飛び出す国産車とは異なり、ATでも、実に操作し易い。この点は、メルセデスもBMWもアウディもみな同じ。ディーラーの駐車場から幹線道路には、一度狭い一方通行路を通る必要がある。ここで、感じたのは、慣れない左ハンドルということもあるが、それにしても、狭い道では、幅に気を使う。それも、その筈で、全幅1780mmはセルシオよりチョット狭い程度で、しかも結構着座位置が低いから、なおさら幅広く感じる。ただし、小回りは結構効くし、ボンネットも視界に入っているから、慣れれば何とかなるだろう。

さて、幹線道路(片側2車線)に出て、流れに乗って走ってみる。普通に走る分には、そこらの実用車とそう変わらず、乗り心地も悪くない。3シリーズのMスポーツ程度の硬さで、路面の継ぎ目などで多少の突き上げはあるが、ボディ剛性が半端じゃないので、不快感は全くない。むしろ、(トヨタの)Bbあたりよりは、遥かに快適だ。

前が空いて来たので、スロットルを少し踏んでみると、そのレスポンスは流石にポルシェのフラット6で、4000RPMを超えた頃から、気持ちの良いエンジン音が何処からが聞こえるが、耳の直ぐ後ろという違和感は無い。それに、音量も適度で、決して騒々しくは無い。このへん、実に上手い!スピードメータは小さく、おまけにフルスケール300km/hなので、ゆっくり走っているようでも、3桁くらいは直ぐ出てしまう。メルセデスもBMWも、チョット気を許すと3桁出ていることはあるが、ボクスターの場合は、さらにスピード感が無い。  

少し慣れたので、後方に車がいなくなったのをチャンスと、2車線をすばやく左右に車線変更してみたが、その時の安定性と、レスポンスは、今までに経験した車の中で、ダントツの最高点を付けられる。これはもう、口では説明できない。帰りに自分の320で同じことをやってみたが、320が不安定なセダンに思えてしまった。もし、ボクスター乗って感覚麻痺したあと、マークUで同じことやったら・・・・・・・新聞の地方版に名前載るだろうなぁ。

ブレーキフィーリングも、これまた最高で、320程踏力は軽くは無いが、剛性があり、踏んだだけの減速度が出る。おまけにクルマがリアヘビーのMIDエンジンなので、荷重移動から言っても理想的で、実際にその安定性も、これまた初体験のダントツ。3シリーズだって、雑誌の比較テストでは、ブレーキの安定性は飛びぬけて優秀と言われているが、それより遥かに上だった。

さて、価格的には525iのMスポーツあたりと、そう変わらず。911は非現実的だけど、ボクスターなら何とかなりそう。一家三人が車で出かけるチャンスは1年に1回、有るか無いか。そのときはマークUのレンタカーでも借りるか。それなら2シーターをファミリーカーにしても良いんじゃないか?

試乗すれば欲しくなるのは目に見えていたので、これまで避けていたのではありますが。ついに乗ってしまった。セールス氏によると、ボクスターと水冷になってからの911はそれ以前(空冷911)に比べて、全ての意味で別物だそうで、信頼性や乗りやすさなど、BMWあたりとそれ程変わらないレベルになったとか。そのぶん、面白さも低下したとも言えるけれど、それでもポルシェの良さは今だ健在とも感じた。