HONDA S660 簡易試乗記 特別編
  [HONDA S660 vs DAIHATSU COPEN 前編]

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ホンダ S660 の試乗を機に軽 (自動車) スポーツカー比較ということで S660 と ダイハツ コペンおよびスズキ アルト RS の3車種を写真で比較したのが 6月26日からの日記 だが、やってみて感じたのは予想通りに実用ハッチバック車ベースのアルト RS とオープンスポーツの他2車とは土俵が違いすぎることだった。そこでこの特別編ではS660 とコペンに絞っての対決をやってみることにした。日記と違いこちらでは当然ながら走行性能の比較もするわけだが、この性能に関しては実用車ベースのアルト RS が軽量ボディを武器にして圧倒的な性能差を見せつけるという、スポーツ2車からすれば何とも情けない事実でもあり、結局アルト RS を無かったことにすることで何とか試乗比較を成り立たせるというのが本音だったりする。

という訳で、確認のために日記で使用した比較表を再度掲載する。こらっ、誰だ? 使い回しだ、何て本当の事を言う奴は!

それにしてもアルト RS の軽量ボディに比べて何故にコペンなんて200kg も重いの一体何故なのかという疑問があるだろう。その理由を想像すれば、一つにはオープンボディーという剛性確保の難しい構造のために、どうしても補強が増えてこれが重量増となってしまうことだ。

しかし、若しかして軽量設計技術ではスズキの方が上ではないかという疑問もあるが、技術のホンダやトヨタ傘下のダイハツのボディ軽量化技術がスズキよりも劣るということも考え辛い。そうなるともう一つ考えられるのは開発予算の問題だ。開発費というのは一般に売上の5%といわれているから、絶対的な販売台数の少ないオープンスポーツに対して充分な販売台数を期待できる実用車では開発にかける予算がマルで違うから、アルトではボディの設計にも充分な開発体制で臨めるために複雑な強度解析を多用して、より軽量なボディを設計することが出来るという事態が想像できる。まあ、あくまで想像だが。

それでは早速エクステリアの比較から始めよう。

今更言うまでもないが両車は同じオープンスポーツとは言ってもオープンの方法も違うし、ボディの構成ではエンジンの搭載位置が S660 がレーシングカーやスーパースポーツのようなリアミッドシップであるのに対して、コペンは言ってみればフロントエンジンでしかも FWD だから、この面ではアルトと同族となってしまう。そして既にこの時点で両車の操舵性の差が見えてしまうが、まあそれは気がつかなかったことにして話を進めよう。

軽自動車であるからには全幅は必然的に軽の規格から 1,475o と決まってしまうが、高さについては S660 の 1,180 o に対してコペンは 1,280 o と 100o も高い。従って見た目でも S660 の方が如何にもスポーツカーらしいプロポーションが得られているが、コペンはといえば‥‥まあこれ単独に見ていれば気がつかないが S660 と比較すれば一目瞭然で、悪く言えばダルマのようにコロンっとしている。

真後ろからの比較では S660 のリアデザインがフロントと共通のモチーフとなっていているのが判る。リアのデザインというのは個性的なものが少ないことから、好き好きはあるとはいえこれは結構イケる。対するコペンは結構平凡なデザインとなっていて、個性は感じられない。

次にサイドから比較すると、軽自動車だから全長は規格一杯の3,395o と共通だが、ホイールベースについては S660 が 2,285 oとコペンの 2,230o よりも55o 長いのはミッドシップエンジンというレイアウト上からのものだ。

ところで S660 のウエストラインは後方に向かって大きくキックアップしているが、コペンは水平に近いのも対照的だ。ミッドシップエンジンの S660 はフロントにエンジンが無いために前端を低く出来るためにウェッジシェイプが実現し易いという有利さがある。

そしてこれまた両車の大きな違いはオープンボディといっても S660 は頭上のみがオープンとなるタルガタイプであるのに対して、コペンはリトラクタブルハードトップを採用している。この方式のメリットは言うまでもなく、クローズド時には完全にクーペと同じ耐候性を発揮することで、キャンバストップの不安定さや遮断性の悪さに比べると大いなるメリットがある。しかし、これは言い換えるとキャンバストップの使い辛さが逆にオープンカーらしいノスタルジーに浸るという楽しみが無い訳で、実際にBMW のカブリオレでは4シリーズは実用的なリトラクタブルハードトップだが、より非現実を求める6シリーズでは敢えてキャンバストップを採用しているくらいだ。

オープンカーの場合は屋根を開けた時にその屋根を格納するスペースを必要とするが、軽自動車の場合はこれが只でさえ狭いスペースを更に狭くしている。S660 の場合はタルガトップをクルクルと丸めてこれをフロントにある格納ケースに収納する。ということは S660 の唯一のスペースであるフロントラッゲージスペースは丸めたタルガトップの格納場所に使ってしまったために小さなカバンすら置くスペースが無い。

これがコペンの場合はリアに多少のトランクスペースがある‥‥と思ったら、ここは折り畳んだハードトップの置き場であり、これまた殆ど物は置けない状況だ。尤もリトラクタブルハードトップ方式のクルマはコペンに限らずトランクスペースは殆ど無いのが普通で、例えば BMW 4シリーズカブリオレなどもトランクスペースの殆どがルーフの収納スペースに使われている。

次に室内を見渡すと、シートは両車共見るからにサポートの良さそうなスポーツシートとでもいうものを装備しているが、その中でも形状的にはコペンの方がサポートの張り出しも多くて如何にもそれらしい。まあ FWD という実用車のレイアウトにオープンスポーツカー風のボディを乗せたコペンだから、せめてシートくらいはスポーティーに装う、何てえ事は口が裂けても言わないが‥‥。

両車の着座位置は写真で見ても S660 の方が低いのが判るのは全高の違い 100 o 分の全てが着座位置の低さに使われているからだ。結局、この点でもミッドシップレイアウトというスポーツカー専用の特殊なレイアウトを採用している S660 の特徴が解るところだ。

シート調整はどちらも手動式で、これは軽自動車というよりもフィット等の小型車でも同様であり、パワーシートについては未だある程度高級なクラスでないと装着されないのが現状だ。

シート表皮は S660 の場合、写真のものは サイドが本皮でセンターがラックススエードのコンビだがこれは上級のαの場合であり、下位グレードのβではファブリックでセンターはメッシュとなっているが、αのサイドに使用されている本皮は結構安っぽい。コペンの場合はフルファブリックで写真のようにセンターはメッシュでサイドにはステッチも入っているなど質感は高く、S660 の本皮よりもセンスが良いのは流石にトヨタ系のダイハツならではだろう。

ドアのインナーパネルについてはどちらもいわゆるプラスチッキーな質感でこの辺りは所詮軽自動車と言いたくなるが、軽とはいえ200万円のクルマだからもう少し何とかならないのだろうか。その中でもコペンの場合はつや消しクロームの大きなドアグリップなど、結構頑張っているのはこれまたトヨタ系の得意技である内装の上手さだ。

そのドアトリムに付いているアームレストには世間の常識としてパワーウィンドウのスイッチが付いているのだが、コペンにはこれが無い。それではいったい何処にあるのかといえば、センターコンソール上だった。ただし2世代前のBMWでもウィンドウのスイッチはセンターコンソール上にあったから別に珍しいものでは無いし、最善か無かの時代のメルセデス (W123) も同じ位置にパワーウィンドウスイッチあった覚えがある。

インパネを見て気が付くのは両車共センタークラスターが普通車に比べて極端に幅が狭い事だが、これも軽自動車の宿命である。

その狭いセンタークラスターだが、両車共特別なレイアウトでエアコンの操作スイッチ類を配置している。オーディオについては S660 の場合はステアリングスイッチで操作する専用品がラインオプションに設定されているが、ナビの取り付けは考慮されていない。まあ、S660 の特殊性から言ってナビがマトモに付かなくても大きな問題は無いと考えてのだろう。

コペンの場合はインパネ天部に2DIN サイズのケースを取り付け、そこに市販のオーディオ一体ナビを付けるという世間の常識どおりの方式を使用する。

大分長くなってきたので、この続きは後編にて。

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