TOYOTA Prius PHV
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現行プリウスは 2015年末より販売されている4代目であるが、その派生モデルであるプラグインハイブリッド (PHV) については先代モデルが継続販売されていた。そしてこの PHV も約1年程遅れて先月より販売が開始された。そこで今回は先行して発売された HV と今回の PHV の、主として動力性能の違いを確認するために、お台場の MEGAWEB でちょい乗りしてみた。この新型 PHV の写真については何時ものように 3月8日からの日記にアップ済であり、興味のある読者はそちらを参照願うとして、こちらでは行き成り試乗結果へと進む事にする。

試乗車はプリウス PHV S “ナビパッケージ” というグレードで価格は 366.7 万円、ギョッ、そっそんなにするのか!シートに座った感じは勿論ベースとなるプリウス (HV) と同じで、電源を入れるのも同じ位置にある同じボタンを押す事でメーター類に火が灯る。と言っても例によってセンターメーターだから目の前には何も無く、視界の左端の液晶メーター類に火が灯っても大して認識は出来ないが。

試乗は最初の1周目を電気モーターのみで走行する、すなわち完全な電気自動車状態の EV モードで、2周目はエンジンとの併用による HV モードを試す事になる。モードの切り替えはインパネシフトのレバー左側に並ぶ3つの中の一番左のスイッチを押す毎に相互に切り替わる。AT セレクターは HV と全く同じであり、更には歴代プリウスから続いている電子式のレバーを使用し、そのパターンは右→下でドライブとなるのも何時もの通りだ。

出発の合図と共にユックリとアクセルを踏むと当然ながら音もせずに滑らかに発進する。本線に入ってクルマが真っ直ぐになったところでフルスロットルを踏んでみると殆ど無音で加速するのは EV そのもので、さてその加速感はと言えば成る程先代に比べれば多少勝っているように感じるのは今回の目玉であるジェネレーターも駆動モーターとして使用する方式が原因だろう。ただし、あくまで "感じる" 程度なのは2つのモーターを足してもトルク (1MN + 1SM = 203N-m) は先代の駆動モーター (3JM = 208N-m) と変わらず、というか多少劣るくらいだが、それでも最高出力はそれぞれ 72+31=103Ps と 82ps というように新型は 2割程勝っているから、最高出力がものを言うフルスロットル時では新型に多少分があるのも納得できる。なお他の "本物のEV" と比較するとどうかと言えば、やはりこれらに比ればプリウス PHV の EV モードは明らかにトクル感で劣るのが判る。因みに代表的国産 EV である日産リーフのトルクは 254N-m だからプリウスPHVの2割増しで車重は80kg 軽いから差がついて当たり前ではある。

一周目が終わって2周目に入るところで HV/EV スイッチを押して EV モードにする。これによりチョッとアクセルを踏むと今まで鳴りを潜めていたエンジンが回り出したのが認識できる。この状態での動力性能はそのまんま HV なのだが、それにしては何やらイマイチの動力性能で、新型プリウスは先代に比べて大きく動力性能が向上したのが体感できたが、この PHV はどうもそれ以下のような気がする。と思って後程調べてみたらば何と車両重量が200kg も重かった。要するに普通にハイブリッド車として使うならば HV のプリウスの方がメリットがある、という事になる。

世の中の常識として車両の低い部分に重量のあるバッテリーや電気機器を配置する EV のメリットとして低重心による走行安定性の向上があるが、プリウス PHV の場合は確かに重いバッテリーはリアアクスルの真上に配置されているし、HV との重量差である約200kg の多くがバッテリーだろうと推定できる。ただし、このバッテリー位置は本物のEV に比べると少し高い位置にある。という事は兎も角、それでは実際にスラロームで試したところでは確かに HV よりも低重心らしき雰囲気は感じられるが、200kg もの重量差は軽快さでは HV と大いに差が付くから、PHV の場合は安定性はあるが操舵レスポンスは良くないという結果で、とてもではないが高評価は出来ない情況だ。

ブレーキについてはお馴染みの電子システムの完成度も増々向上して、ドライバーはこれがフルエレキであるとは判らないだろう。HV に比べて200kg も重い車重は普通に考えればブレーキの負担がより大きく踏力も増えるは筈だが、この辺はフルエレキの強みで、ブレーキのシリンンダーに送られる圧力は大きくなっても踏んでいるドライバーには判らないという芸当が簡単に出来る。

プリウス PHV のベースグレードであるSは 326.2 万円で、同じくプリウス (HV) のSは 247.9 万円だからその価格差は 78万円と少なくはない。そしてその価格分のメリットがあるかと言えば‥‥まあ無いだろう。結局このクルマはトヨタとしては一つの提案をするという事で、これを本命として売りまくるという考えはサラサラないと思われる。そしてベース価格の約 326万円という価格はBMW 218i アクティブツアラーの355万円と29万円しか違わず、今回試乗したナビを装備した“ナビパッケージ” の 366.7 万円ならお釣りさえ来る金額だ。

何時ものように、どちらを選ぶかはユーザー次第‥‥と言いたいところだが、PHV について余程のモノ好きか世間知らずしか買わないだろう。

注記:この試乗記は2017年3月現在の内容です。