Subaru Impreza 1.6i-L (FF) 後編
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黒いサイドサポートに白いステッチが入ったシートは、一見スバルとは思えないくらいに洗練されたが、残念なことにサイズが少し小さめだ。座ってみれば、柔らか目だが腰はしっかりとしているからマアマアの出来と言えるだろう。 サイズの小ささといい、柔らかいが張りのある座り心地といい、何やら2世代前の3シリーズ(E46)を思い出すから、BMWの10年遅れくらいには近づいたようだ。それでも、少し前までのスバルのシートは20〜30年くらい遅れているんじゃないか、何て言いたくなるくらい酷いシートだったから、これでも大きな進歩かもしれない。

イグニッションはオーソドックスなキーを使用するタイプだが、上級モデルではインテリジェントキーとなる。

駐車上の中をユックリと走らせて一時停止して車の切れ目を待つが、この時のアイドリングの振動を感じるのだが、何故か力強さを感じた。 それにしても、この雰囲気はどこかで覚えがある、と脳裏に浮かんだのが、そう、ポルシェだった。公道に出てハーフスロットルで加速すると、低回転域から充分なトルクを感じ 、先代インプレッサ1.5に比べて明らかにトルク感がある。たったの0.1Lでこれ程違うのは驚きだが、スペック上は5ps,0.4kg・Mしか変わらないから、スロットルの非線形特性が上手くいっているのだろうか。 こんな小細工もトヨタ譲りかもしれない。先ずは幅8m程度の地方道を50km/h程で巡航してみると、いかにも剛性感たっぷりという感じのボディやチョッと硬めではあるが国産車としては珍しくしっかりした、それでいてしなやかな足回りに、良く出来た欧州車の雰囲気を感じる。 このしなやかな乗り心地は先代でも感じたが、今度の新型は相対的にチョッと硬くはなったと共に、しっかり感は増したように感じる。

前方の信号が赤になり、停止するとエンジンがストンっと止まった。このクルマにも今流行のアイドリングストップ機能が付いていた。再始動はブレーキペダルを放しても、増し踏みしても作動するので、先ずはブレーキペダルに載せた足を更に強く踏んでみると、即座にエンジンが始動した。 この再始動は、セルモーターの音がグーくらいで、他車と比べても平均以上の出来だった。信号が青になったので、今度はフルスロットルを踏んでみると、中間加速ではあれ程トルクフルだったエンジンは、ガーというあまり高級そうには感じないエンジンやメカ音とともに、所詮は1.6LのCVTだと感じる程度の加速になってしまう。 ハーフスロットル以下ならば力強いトルク感を感じたのだが、まあそんなものだろう。

ニューインプレッサのステアリングは適度な操舵力とレスポンスで、実用車としては実に良いチューニングであり、極々普通のドライバーから結構なマニアまで、正に誰からも文句 は出ないだろう。試乗車はFFだったが、一般道を走っていて適度なコーナーを抜けるてみると、その素直な特性に感心する。 アンダーは極少なく、FF小型ハッチバック車としての出来の良さは本家のVWゴルフと比べても引けをとらないし、先日試乗したマツダアクセラと比べても、大きく引き離している。試乗コースの途中に、4コーナー程だがチョっときつ目のコーナーが連続するところがある。 そこで準備としてCVTをマニュアルモードにするためにスイッチを探したが・・・・無い!ATセレクターのDから横に倒したLというポジションは低めのレシオになるだけ で、目的は降板用だった。 しかなたくDのままで、先ずはチョイと速めの速度で小細工なしに素直に進入し、速度維持のために僅かにスロットルを開ける程度で流すようにコーナーをクリアしてみたが、全く問題なく通過した。次に、もう少し速度を上げて、コーナー入り口で少し減速して、コーナーの頂点が見えたところで加速してみたりと、いくつか試みたが、全く破綻なくクリアしたところをみると、このクルマのコーナーリング能力はマトモな神経では公道で破綻しないくらいの実力がありそうだ。



ニューインプレッサのブレーキは最近の国産車らしく適度に軽い踏力で充分に効くから、少なくとも一般道で80km/h以下なら全く問題は無い。 試乗が終わって車から降りて、ホイールの隙間からキャリパーを覗いて見たら、極々一般的な片押しキャリパーながら4輪にディスクブレーキを装着していたし、リアキャリパーのシリンダー部分は色から見てアルミ製のようだ。 キャリパーを覗いた後に、ふとタイヤを見たらば、何やらやけにハイトが高く感じたが、標準の195/65R15というタイヤは今となっては随分大人しいサイズとなってしまったからだろう。

それではここでインプレッサのライバルを想定して主要緒元を比較してみよう。
アクセラについてはインプレッサのライバルとして文句はないだろう。それ以外のオーリスとティーダは全長が短く、従来からのハッチバックだから、ステーションワゴンとの中間である前2車とはカテゴリーが少し異なっている。ティーダは来年春にFMCされた新型が発売される予定で、既にオフィシャルフォットが発表されているが、 現行車と比べると明らかにCピラー
が幅広くなっている。



結局、今現在では真の国産ライバルはアクセラのみということになり、そのアクセラの場合は話題のSKYACTIVを採用しているのは2.0Lで1.5Lは3年前のまんまだから、結局 1.5〜1.6Lクラスではインプレッサの独壇場となってしまった。 マツダファンには悪いが、インプレッサと比べたらとてもではないが適わない。まあ、2Lならばスカイアクティブということで燃費で勝つということも考えられるが、乗り味を比べたら全く勝負にはならないし、内装の出来だって安物丸出しののアクセラは辛いものがある。

と、インプレッサを褒め称えたところで、実際の売れ行きはどうかといえば、発売前から予約が殺到して納車は来年春から・・・・・なんて話は全く聞かないし、恐らく、大して売れないだろう。 それでも海外向けを含めれば採算ラインを超える程度は売れるのではないか。そして、インプレッサといえばSTIが気になるし、旧GTのような中間的車種も今後設定されるだろうか?
ところがスバルからは来春にトヨタ86との兄弟車であるBRZが発売される訳で、スポーツ度の強いCセグメントクラスを欲しがるマニアはこちらの方に行ってしまうだろうから、STIは別カテゴリーとしてもGTのような中間的な車種は廃止となる可能性もある。さ〜て、BRZが今から楽しみだが、価格を別としても2ドアスポーツクーペという、所有するための敷居の高さはインプレッサの比ではない。ということで、クルマ好きも来年はたっぷりと悩むことになりそうだ。

注記:この試乗記は2011年12月現在の内容です。