SUZUKI SOLIO X 後編
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ソリオのエンジンは前編で説明したように型式は勿論、性能までスイフトと全く同じだ。それで、ボンネット内を比べてみると下の写真のように、見た目は成る程殆ど同じだった。それでも補記類の位置は微妙に異なるのは、ボディの上 物が違うことからで、ストラットタワーの位置なども多少違うようだ。



走り出した第一印象は、どうもイマイチ重々しいという感じがする。同じパワー トレインを積んだスイフトより30kg重いソリオは、当然スイフトよりは動力性能で不利になるのだが、その重量差以上に重さを感じてしまう。 そして、これはスイフトの試乗記でも指摘したが、副変速機付きCVTはフルスロットルを踏んでもモア〜っという感じでユックリ加速する。同じタイプのCVTを塔載したマーチの方がはるかに活発なのは何故だろうか?
そうはいっても、1.2Lの普通車だから660ccの自然吸気エンジンを搭載する軽自動車より加速感は明らかに上回るが、ターボモデルと比べると決して大きく勝っている訳ではない。 それでも、、危険を感じるほどには遅いパッソの1.0Lに比べれば大いに勝ってはいる。ソリオにはスポーツモードが付いているので試してみたが、確かに回転数は高めに推移するが、決定的に動力性能がアップするという訳でもなかった。
 

走り出して最初に感じたことは今時のコンパクトカーの常識に対して操舵力が大きいことで、しかも重いだけでなく何やら摺動抵抗が多いというか、操舵機構のどこかを擦っているような感覚がある。 特に低速走行時には顕著で、直進時に微妙な修正をしようとステアリングにすこし力を加えても動かないので、さらに力を増すとある時点で突然動きだして思った以上に方向が変わってしまうという、どうも有難くない特性だった。このクルマのベースとなったスイフトはそんな挙動を見せなかったから、今回の試乗 車が偶々不具合を持っていたのかもしれないが、これが本来のソリオの特性だとすれば、要改良項目だろう。

上記の操舵特性は、速度を上げていくとマシになってくることと、旋回特性自体は狭くて背の高い外観から想像するほどには悪くないのが救いだった。 極普通の田舎道で中速コーナーに対して60km/hくらいで進入してみたが、大きなロールもなく、アンダーステアもそれ程には感じない程度でクリアできたから、Bセグメントのコンパクトカーとしては決して悪くないし、軽モドキのハイトワゴンというスタイルを考えれば充分に合格といえる。

乗り心地は最近のクルマらしく硬めではあるが決して不快ではないし、勿論荒れた路面でもポンポンと跳ねることもない。この点ではラクティスのライトバン的な乗り心地よりも勝っている。またブレーキについても、軽い踏力で良く効くから、このクルマの主目的である街中での走行には全く問題はない。 ところで、ソリオを街中専用ではなく一家に一台のミニバンとして、長距離の帰省にも使うとしたら、さて、どうなんでしょうかね。 残念ながらソリオでの高速走行の機会は無さそうなので何ともいえない。そいうえば、昔に比べて大きく進歩した軽のハイトワゴンでの高速走行というのも興味があるが、チャンスがあったとしても軽での高速走行は正直言ってチョッと躊躇してしまう。
 

スズキのBセグメント車はソリオのベースであるハッチバックのスイフトと、少し小さい欧州向けのスプラッシュがあり、これに今回のソリオを加えた3種類のBセグメント車と同じスズキの軽であるパレット、更には国産Bセグメントの覇者であるホンダフィットを加えたスペックを一覧にしてみた。

      Suzukii Suzuki Suzuki Suzuki Honda
      Solio 1.2G Swift 1.2XG Splash 1.2 Palette T Fit 1.3G
 

型式

  DBA-MA15S DBA-ZC72S DBA-XB32S DBA-MK21S DBA-GE6
寸法重量乗車定員
全長(m) 3.710 3.850 3.715 3.395 3.900
全幅(m) 1.620 1.695 1.680 1.475 1.695
全高(m) 1.765 1.510 1.590 1.735 1.525
ホイールベース(m) 2.450 2.430 2.360 2.400 2.500
  最小回転半径(m)   5.0 4.8 5.2 4.5 4.7
車両重量(kg)   1,000 970 1,050 950 1,010
乗車定員(   5 4 5
エンジン
エンジン型式   K12B K6A L13A
  エンジン種類   I4 DOHC I3 DOHC Tuebo I4 SOHC
総排気量(cm3) 1,242 658 1,339
  最高出力(ps/rpm) 91/6,000 88/5,600 64/6,000 99/6,000
最大トルク(kg-m/rpm) 12.0/4,800 11.9/4,400 9.7/3,000 12.8/4,8000
トランスミッション CVT
  駆動方式 FF
  パワーウェイトレシオ(kg/ps) 11.00 10.7 11.9 14.8 10.2
燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)
21.0 23.0 18.6 21.0 24.5
サスペンション・タイヤ
サスペンション方式 ストラット
トレーリングリンク トーションビーム トレーリングリンク トーションビーム
タイヤ寸法 前/後 165/65R14 175/65R15 185/60R15 165/55HR14 175/65R14
ブレーキ方式 前/後 Vディスク/ドラム Vディスク/ディスク
価格
車両価格 138.3万円 124.4万円 123.9万円 138.6万円 123.0万円
  備考         660L
120.8万円

表を見れば、ソリオと軽自動車のパレットは大きさがマルで違うのが判るし、ターボ付きでも自然吸気のソリオに比べてパワーウェイトレシオでも大いに差が有る。 その割には実際に乗ってみると軽ターボも結構速いのだが。
軽のハイトワゴンと同じパッケージングのBセグメント普通車というコンセプトは、先代ワゴンRソリオやシボレーMWなどを偶には街で見ることでも、ある程度の需要はあったのだろう。それが、今回の新型では 、出来が良いと評判のスイフトをベースとしたのだから、内容的には進歩したことで、もしかするとチョッとばかり当たりとなることも考えられる。残念なのは、イマイチの変速制御や、ギクシャクする操舵機構など、詰めの甘さも見えてしまうことだが、これは今後の改良を期待することにしよう。 軽ハイトワゴンをそのまま大きくしたBセグメントという手があったとは、と悔しがるライバルもいるかもしれない。

注記:この試乗記は2011年1月現在の内容です。。