Nissan Juke 16GT Four 後編
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エンジンの始動は最近の国産車の常識どおりで、インテリジェントキーを所持して メータークラスタの左端にある丸いボタン(写真左下の↑)を押す。アイドリング時に気が付くのは、エンジンが極めて静かで振動も全く感じないことだ。このエンジンはもしかして、と淡い期待と共にブレーキペダルから足を放して、ユックリとアクセルペダルを踏んで駐車場内を移動 してみると、既にターボっぽさ、というか低回転でのトロさを感じて、ちょっと嫌な予感がする。

 

公道の手前で一時停止して、クルマの切れ目に合わせて軽い段差を下りる形で本線に入るが、この時に行き成りガツンっという強い突き上げを喰らう。 本線で2/3スロットルくらいで加速するが、やはり最初のレスポンスは良くない。それでも一度速度が乗ってくると程々の加速をするが、1.6Lターボというスポーティーな仕様から、ミニクーパーSのような特性を期待すると落胆することになる。クーパーS(AT)の場合は184ps、24.5kgmで車両重量は1,270kgだからパワーウェイト(P/W)レシオは6.9kg/psで、 これに対してジューク16GTは190ps、24.5kgmと殆ど同等で、寧ろパワーは上回っているのだが、車両重量が1,380kgのためにP/Wレシオでは7.3kg/psとなるが、数字上ではそれ程の差は無い。

ミッションはクーパーSが6ATであるのに対してジューク16GTはCVTということもあり、今度はマニュアルモードでの発進加速を試してみる。 赤信号で停止して、ATセレクターをDからMの位置にして、メーター内の表示も”1”になっていることを確認して青信号によりフルスロットルを踏むと、クルマはモアーっと加速をしていくが、回転計の指針 の上がりかたはユックリとしていて、本当に1速なのかいな、と疑うほどだ。しかし、ここで、ハッと気が付いた。最近の車はエコだのナンだのとモード切替えがついていて、これがエコモードなんかだと人を馬鹿にしたような、これでもかというレスポンスの悪さだったりする 場合がよくある。 そこでモードスイッチを確認すると、エコではなかったが、ノーマルに設定されていたので、早速スポーツに切り替える。そして、次の信号で再度挑戦する。青信号と共にフルスロットルを与えると、今度は先ほどと全く 異なり・・・・というのを期待したが、あまり変わらない。回転計の上がり方をよ〜く見ていれば確かに少しは速いのだろうが、まあ五十歩百歩というところか。

ところで、上記の2回のフル加速では何れも加速を終了したら、「急加速は危険で不経済なので止めましょう」なんていうアナウンスが聞こえてきた。こんなトロイ加速の何処が危険なんだ!?
いや、サスの出来が悪いので、この程度でも本当は危険なのかな?
そして、不経済というのは、ドッカンターボで燃料垂れ流しだからかな?
なんて言いたくなるくらいの間抜けぶりだった。丁度、門前に「猛犬注意」なんて看板があるから、ドーベルマンでもいるのかと思ったら貧弱な柴犬だった、みたいな気持ちだろうか。

 

最初に公道に出る瞬間に段差を下りるショックが、ガツンと今時珍しいくらいの下品な突き上げだったから、その後の状況も概ね想像はできたが、走行中の乗り心地は勿論悪い。しかも重心が高い訳だから、速めの速度でコーナーに入るなんていうのは、余程の怖いもの知らずということになるし、事実チョッと速めでのコーナー進入だって固くてストロークの短そうなサスの状況が感じられて、転倒の恐怖も感じるという、これまた今時珍しく汗臭いクルマだ。 そういえば40年くらい前の国産スポーツタイプっていうのは、こんな感じだったような記憶がある。 それではステアリング系自体は如何なのかといえば、まあ、特別トロくはないが、決してクリックでもない。救いは妙にスポーティーを狙ってオーバーアシストの不安定な特性にしなかったことで、操舵性自体は決して良くないものの、ボロクソ言いたくなる程でも無い。
試乗車は4WDモデルでカタログによれば「1.8L以下クラスでは世界初のコーナーリングを楽しむための4WDシステム」だそうだが、実際のコーナーリングは少しアンダーステアが強めで、前述した固めすぎた足回りと高い重心により、とてもではないがコーナーりングなんて楽しめる代物ではない。それでも、まあ、普通のクルマの流れに乗って走る分には特に問題はないが、それならば、同じジュークでも15RXでも充分ということになる。

まあ、それにしても、走ると曲がるは2百数十万円という価格からしたら、とても合格点は与えられないが、それでは止まるはどうだろうか?ジューク16GTのブレーキは一言で言えば「普通」で、ストロークも適度だし、踏力も軽すぎず重すぎずで、効きも悪くない。というわけで、止まるは何とか合格だった。

ジューク16GT FOURの245.2万円という価格は、 プジョー207GTの260万円に迫り、ルノートゥインゴGTの240万円よりも僅かとはいえ高いという、もうどうなっているんだ、と言いたくなるくらいの割高価格だ。

そんな16GT FOURも、ネットでプロの評論家が書いた試乗レビューというヤツを見たらば、動力性能はコンパクトSUVクラスとしては申し分なしの10点満点で、 操縦安定性も引き締められた足が魅力の9点となっていた。そうかあ、プロの目から見れば、そんなに凄いクルマだったんだ。修行の足りないB_Otaku には、ジューク16GT FOURの良さは理解できなかった。因みに 複数のディーラーで売れ行きを聞いてみたらば、どこもジュークの1.6Lターボは未だかつて売れた事がないそうだ。やっぱり、素人には理解できないんだなぁ、この良さが・・・・。


注記:この試乗記は2011年9月現在の内容です。